13 / 38
「公爵令嬢のプライドと友情」
【1】
しおりを挟む
*あらすじ*
平凡地味顔を自認する公爵令嬢は、婚約者である王太子の婚約相手が、美貌の妹へと変更されそうだという話を耳にする。
王太子の真意を確かめるため、親友である男爵令嬢とともに、地味顔を最大限に利用し、王宮への潜入を試みる。
______________________________
フランチェスカは、自分が平凡地味顔であることを比較的幼い頃に自覚した。
キラキラ度が圧倒的に足りていないのだ。
それはもう、四大公爵家筆頭クロフォード公爵家の長女と生まれ、物心ついたときから栄耀栄華を極めた王侯貴族に囲まれて育っていれば、多少鈍くてもわかろうというもの。
六歳上の兄も、五歳下の妹も、まばゆいばかりの麗々しい容姿。金色の髪に緑翠の瞳で傾国の美女とうたわれた母によく似ている。
一方のフランチェスカといえば、栗色の髪に水色の瞳で、これといって大きな欠点は無いが派手さもない平凡な外見をしていた。
ひとつ、大変良かった点を挙げるなら、両親のうち父親側によく似ていた。このことによって、兄妹とは似ても似つかなくても、公爵夫人の不倫疑惑は回避できた。
なお、貴族男性にしては珍しいほどの愛妻家で真面目一徹の公爵は、自分に似ていようがいまいが、子どもたちを分け隔てなく愛していた。
無用な甘やかしこそしなかったが、フランチェスカが兄妹と比べられ、惨めな思いをすることなどないよう、大変気を配っていた。
そうであるからこそ、フランチェスカが十五歳を迎えたときに、祝福と称して屋敷を訪れた王家の使者から受けた不快極まりない申し出も、「御冗談を」と一切取り合わずに切り捨てた。
それは――他の公爵家に近い年代の女子が生まれなかったことから、ごく幼い頃に大人の都合で取り決められた王太子とフランチェスカとの婚約の内容変更について。
後日改めて、公爵は王宮に呼び出され、国王から打診を受ける。
「あまりにも華やかさに欠ける王妃というのは、国民にとっても、外交の意味でも、あまり面白みがない。長子のローレンスが母親の形質をよく受け継ぎ子どもながらに麗しかったので、フランチェスカが生まれたときにも特に心配もせずに婚約を結んでしまったわけだが。こうも地味とあっては……せめて妹のマリアベルの方が王妃にふさわしいのではないかと」
迂遠なのか直接的なのかよくわからない言い草で「つまり、婚約をスライドしてみない?」と言われた公爵は、無表情で冷ややかに言い放ったという。
「おい、ふざけるな」
* * *
平凡地味顔を自認する公爵令嬢は、婚約者である王太子の婚約相手が、美貌の妹へと変更されそうだという話を耳にする。
王太子の真意を確かめるため、親友である男爵令嬢とともに、地味顔を最大限に利用し、王宮への潜入を試みる。
______________________________
フランチェスカは、自分が平凡地味顔であることを比較的幼い頃に自覚した。
キラキラ度が圧倒的に足りていないのだ。
それはもう、四大公爵家筆頭クロフォード公爵家の長女と生まれ、物心ついたときから栄耀栄華を極めた王侯貴族に囲まれて育っていれば、多少鈍くてもわかろうというもの。
六歳上の兄も、五歳下の妹も、まばゆいばかりの麗々しい容姿。金色の髪に緑翠の瞳で傾国の美女とうたわれた母によく似ている。
一方のフランチェスカといえば、栗色の髪に水色の瞳で、これといって大きな欠点は無いが派手さもない平凡な外見をしていた。
ひとつ、大変良かった点を挙げるなら、両親のうち父親側によく似ていた。このことによって、兄妹とは似ても似つかなくても、公爵夫人の不倫疑惑は回避できた。
なお、貴族男性にしては珍しいほどの愛妻家で真面目一徹の公爵は、自分に似ていようがいまいが、子どもたちを分け隔てなく愛していた。
無用な甘やかしこそしなかったが、フランチェスカが兄妹と比べられ、惨めな思いをすることなどないよう、大変気を配っていた。
そうであるからこそ、フランチェスカが十五歳を迎えたときに、祝福と称して屋敷を訪れた王家の使者から受けた不快極まりない申し出も、「御冗談を」と一切取り合わずに切り捨てた。
それは――他の公爵家に近い年代の女子が生まれなかったことから、ごく幼い頃に大人の都合で取り決められた王太子とフランチェスカとの婚約の内容変更について。
後日改めて、公爵は王宮に呼び出され、国王から打診を受ける。
「あまりにも華やかさに欠ける王妃というのは、国民にとっても、外交の意味でも、あまり面白みがない。長子のローレンスが母親の形質をよく受け継ぎ子どもながらに麗しかったので、フランチェスカが生まれたときにも特に心配もせずに婚約を結んでしまったわけだが。こうも地味とあっては……せめて妹のマリアベルの方が王妃にふさわしいのではないかと」
迂遠なのか直接的なのかよくわからない言い草で「つまり、婚約をスライドしてみない?」と言われた公爵は、無表情で冷ややかに言い放ったという。
「おい、ふざけるな」
* * *
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
月が隠れるとき
いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。
その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。
という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。
小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。
婚約破棄の慰謝料を払ってもらいましょうか。その身体で!
石河 翠
恋愛
ある日突然、前世の記憶を思い出した公爵令嬢ミリア。自分はラストでざまぁされる悪役令嬢ではないかと推測する彼女。なぜなら彼女には、黒豚令嬢というとんでもないあだ名がつけられていたからだ。
実際、婚約者の王太子は周囲の令嬢たちと仲睦まじい。
どうせ断罪されるなら、美しく散りたい。そのためにはダイエットと断捨離が必要だ! 息巻いた彼女は仲良しの侍女と結託して自分磨きにいそしむが婚約者の塩対応は変わらない。
王太子の誕生日を祝う夜会で、彼女は婚約破棄を求めるが……。
思い切りが良すぎて明後日の方向に突っ走るヒロインと、そんな彼女の暴走に振り回される苦労性のヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:29284163)をお借りしています。
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
いつの間にかの王太子妃候補
しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。
遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。
王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。
「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」
話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。
話せるだけで十分幸せだった。
それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。
あれ?
わたくしが王太子妃候補?
婚約者は?
こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*)
アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。
短編です、ハピエンです(強調)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる