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終章 輝きを増す銀獣
壇上の理事長
しおりを挟む突然の緊急集会にざわついていた生徒たちが口を閉ざす。
視線は理事長にのみ向けられており、マリモ達以外はこれから告げられるであろう内容に興味深々のようだ。
「全校生徒の皆、おはよう。突然集合をかけたことを謝罪すると共に、素早く集合してくれたことに感謝する。ありがとう」
理事長室で話した時と同一人物だとは思えないほど落ち着いた口調。親戚相手だとポンコツになるということを知っている人物が何人いるのだろうか。
その内の一人であるマリモに視線を向ければ、蓮夜に寄りかかって足首のストレッチをしている。
理事長の話なんて興味がないと丸わかりな態度にため息をつく。
初めてがレイプで、慰めてほしいと好きな人に頼ったけど抱いてもらえなくて、寂しさを蓮夜達で埋めているマリモ。
この説明だけ聞けば同情を引ける内容なのに、誰にも相手にされない哀れな子。
普段の行いなのか、元から人に恨まれやすいのか。どちらでもいいが、社会に出てどう生きていくのかは興味がある。
「今回皆に集合してもらったのは、生徒会が正常に機能していないと多数の報告があった為だ」
「っ!」
そろそろ視線を戻そうとしたところで、眉間にしわを寄せたマリモと目が合った。
タイミングが悪いとしか言いようがない。
「あいつこっち見てんだけど」
抱きついていた類がすぐさま察知し、威嚇する。やめなさい、と目を隠すと文句を垂れた。
そして未だにこちらを見ているマリモに俺じゃないよ、顔を左右に振る。
信じられないのか視線は交わったままで、埒があかないので自分から反らした。
報告したのは風紀の奴らか俺の親衛隊辺りだろうか。よくやった、と全身を撫で回したい。望むのならキスも付けよう。
心の中で感謝の言葉を紡いでいると、理事長は言いにくそうに唇を噛んだ。
「嘆願書が……多数届いている為、生徒会の責務を全うしていない佐伯 蓮夜、姫路 葵、佐野 麗香を生徒会から除名処分とする」
その言葉に三人の親衛隊が悲鳴を上げ、妄信していた過激派メンバーは泣き崩れていた。
「除名、か」
誰かに向けるわけでもなく、情報を整理するために言葉にする。
生徒会の除名処分など前例はなかったはず。神妙な面持ちはそのせいなのか、こうなった原因がマリモだからなのか。
どちらだとしても、被害を被っていた俺や正宗、風紀委員には都合が良い。
「除名処分に伴い、役職が変更になった者と新しい生徒会役員が加わる為、新生徒会のメンバーと役職を発表する。
生徒会会長、鵤 春都。
副会長、西条 政宗。
書記、高岡 隼人、宮本 潤。
生徒会会計監査、八島 類。
以上の五名だ。新メンバーは生徒の投票により選出している。異論は一切認めないのでそのつもりで」
名前を控えていたであろう紙を折りたたみ、役目は終えたと言わんばかりに壇上から去っていく。
方向展開する際に一瞬だけマリモの方を見たのは、きっと気のせいではないだろう。
「大丈夫だ、って言ったろ?」
「「ろ?」」
じゃれ合うようにして抱き合っていた三人がおどけた様に笑う。
「共犯か」
「ちょっと!言い方ー!」
類が頬を膨らませてお腹を叩いてくるが、全く痛くない。
「怒んな。ありがとう」
「~~~~!イケメンなのがムカツク!」
「わかるー」
「なー」
この世の終わりみたいな顔をした親衛隊とは裏腹に、俺の気持ちは晴れやかだ。
新しいメンバーで仕事が始まるのは二学期からだろうが、憂鬱だった夏休みが楽しみになる程には嬉しい。
馬鹿の一つ覚えみたいに睨みつけてくるマリモと、除名処分になったことが未だに信じられないという顔をした蓮夜達は納得がいかないようだけどな。
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