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終章 輝きを増す銀獣
★時間を埋めるように
しおりを挟む腰を支えながらベッドに下ろす。
後ろで組まれていただろう手足が外れ、互いに服を脱ぎ始める。その間も欲求の高まりを抑えきれず、唇を貪り続けた。
衣擦れの音を耳にする度、太一の素肌が露わになっているのだと思うと酷く興奮した。
「……ふっ、…ん」
舌を絡ませ、時折先端を吸い上げる。甘美な声と共に漏れた吐息が人中にかかった。
太一の視線が下半身へと移る。追いかけるように目線を動かせば、着衣はスウェットと下着を残すのみになっていた。
布を押し上げている中心は、空気に触れるのを待ち望んでいるように見える。
「はる、んっ」
名前を呼び終わる前に唇を重ねた。
後頭部に右手を添えながらベッドに押し倒し、左手で下着ごと脱がしていく。一つずつ丁寧に脱がしていく余裕なんて今の俺には無い。
太一のことを考えれば、前戯に時間をかけてゆっくり慣らすべきだと理解はしている。
だが、興奮が最高潮に達しかけている状態で頭に浮かぶのは〝直ぐにでも挿れたい〟という獣のような考えだった。
僅かに残っている理性で自身の指を唾液で濡らす。解す為に秘部へ触れると、粘り気のある液体が零れてきた。
その正体がわからないほど無知で、経験が浅いわけでもない。
「たい、」
仕返しと言わんばかりに口を塞がれる。太一の手によってスウェットは脱がされ、露わになった中心を軽く扱いた。
「んっ……春都様、早く」
羞恥心を捨て、入れやすいように足を開く。そそり立つ俺の剛直を自ら秘部へと当てがい、先端を飲み込んでいく。
グチュッと水気の含んだ音がした。中は既に濡れていて、粘度のある液体が絡みついてくるのがわかる。
下唇を噛みしめながら、緩やかに押し広げられていく感覚と刺激に身を委ねる太一。
〝準備をしていた〟という決定的な言葉は無い。だけど、そういうことなのだろう。
「ひぁっ!あっ、あ、あぁっ」
久々のセックスだ。
ゴムをつけていないけど大丈夫か?
無理させないようにしないと。
感情が慌ただしく溢れてくる。
気遣う言葉は浮かぶのに、思考と行為が切り離されているかのように、激しく腰を打ち付けている自分がいた。
「いぃ!そこ……っ、あぁぁっ!もっ、と欲しっ……いぁ!」
膝裏に手を入れて抱え込むようにベッドへ押し付ける。
喘ぐ太一の声を余すことなく拾いたくて、口元に耳を寄せ、キスもせずに無心で突き上げた。
「あ、待って、待って待って。そこはぁああぁぁぁ!」
己の欲求を求める獣と化していた俺は、太一の静止に耳を貸す事が出来なかった。
行き止まりだと思っていた場所に容赦なく突っ込むと、先端が未知の世界に誘われる。
「んぐっ、あぅ!そこっ、入っちゃっ……、いけないとこおぉっ」
「でもっ……きもち、ぃ」
ローションと自身の我慢汁に加え、中が吸い付いてくるような感覚と程よいうねり。断続的ではなく持続的な快感に夢中になった。
腰が止まらない……というより、止める気なんて元からなかった。
愛撫もなく、只ひたすら快楽を貪る自分に驚きながらも、こうなるのは太一が相手だからという確信もあった。
「はる、と様……っ、あぁっ!んっ、ひぅっ!っ、んぐっ!」
「太一、太一。ハル……ハルって呼んで」
「で、もぉっ」
「お願い。呼んで」
ハルという呼び名はあいつとの記憶とリンクしていた。だからこそ誰にも呼ばせなかったし、呼んで欲しいと思ったことも無い。
春ちゃん。
春くん。
ハルの後に敬称がつくのが俺にとってのボーダーライン。だけど、太一には呼んで欲しいと思った。
好きだから。
大切な人だから。
大事にしたい人だから。
「ひぁっ、んんっあぁ……ぅ…は、るっ」
「っ!……太一。太一」
あぁ、どうしよう。ただ呼ばれただけなのに、心も体も満たされる。
「イっ、く」
「中……中にっ、ほし…ひあぁぁっっっ!」
太一の頭を自分の肩に押し付けるようにして抱き込み、最奥で欲を吐き出す。
「うっ……っ、っ」
痙攣しながら達しているのが、短い呼吸と体の震えから伝わってくる。
「太一。好きだ。好き。大好き」
好意に向き合おうとしなかった過去を塗り替えるように、すれ違っていた今までを取り戻すように、言葉を紡いだ。
コクコクと腕の中で動く頭。遠慮がちに鼻をすする音が聞こえた。
「愛してる」
回されていた手に力がこもる。それだけで十分だった。
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