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第四章 転機
★逃がさない
しおりを挟む全力疾走した後、部屋に駆け込んだ。
しかしさすが太一というか、専属執事というか。
「私から逃げられるとでも?」
扉を閉めた数秒後には、同じく部屋に辿り着いていた。
胸を上下させている俺とは違って、太一は息一つ乱していない。
俺の方が若いはずなのに!
なぜだ!
「落ち着け。冷静に話し合おうではないか」
「文句はベッドで聞いて差し上げます」
早々に靴を脱ぎ、俺の手首を掴んで部屋の扉を開けた。
見慣れた自室。
執事である太一さんは、約二年程お世話になっているベッドに俺を投げつけましたとさ。
めでたしめでたし。
……なんてことはなく。
「……お前もかよ」
押し倒した俺の腹筋の一つ一つを、ザラザラとした舌の表面で執拗に舐め回す。
皿に残った僅かな餌を舌で舐め取る動物のように、それはそれは丁寧に。
「……っ、ん……は…」
「……満足か?」
誠が付けたキスマークに吸い付いたかと思えば、先程よりも濃くなったそれを見て微笑んでいた。
上体を起こして頭を撫でてやると、まだ足りないと言わんばかりに顔を近づける。
上書きした場所と反対の部分に始まり、徐々に上がってきて胸元にたどり着くまでには痣は三つになっていた。
そして胸、鎖骨、首……。
後半に関しては、もう鏡を見なければわからない。
沢山付けられているというのは確かだ。
「付けすぎ」
ようやく満足したのか、こちらを見て満面の笑みを浮かべている太一にそう言えば、「明日が休みで良かったですね」と返してきた。
土曜日の今日が体育祭で、日曜日は通常通り休み。
そして月曜日は体育祭の振替休日。
つまり、通常通り二連休ということだ。
「いや、明日は町に買い物行くんだけど」
「毎回変な女が声かけてくるんです。いい虫除けになると思いますよ」
「そうかもしんねーけど……」
太一と自分の体の間に手を突っ込み、付けられた痕を撫でる。
擦って消えるはずもなく、呆れる俺を嘲笑うかのように、自分の存在を主張していた。
これは明日、明後日で消えるのか?
いや消えないだろ。
自問自答していると、ガチャガチャと金属が擦れるような音が聞こえた。
いつの間にか俺の上から退いていた太一が、ベッドのすぐ側でベルトを外し、下着ごとスボンを退いでいた。
そしてジャケット、ネクタイ、ワイシャツ、肌着の順に素早く床へと落としていく。
引き出しからローションとゴムが入った四角形の袋を一つ取り出し、こちらに戻ってくる。
「やる気満々じゃん」
「元々する気ではいましたけど、予想外の出来事かありましたので」
「キスマークか」
「わかっていらっしゃるのであれば、話が早いです」
俺の腹に跨るようにして座り、右手にローションを垂らした。
指を下にし、先の方にローションが伝うのを待ってから前傾姿勢になり、手を自分の秘部へと当てがう。
「……んっ……っ、…っ」
間近で太一の吐息が聞こえ、それだけで俺の下半身は反応していた。
下着とハーフパンツを押し上げ、側から見てもわかるほど育っているそれは、今すぐにでも刺激が欲しいと無言の訴えをしている。
そんな上手くいくと思うなよ。
言葉も発っせない自分の息子にテレパシーを送ってみるものの、当たり前だが返答はなかった。
「……っ、よろしい、ですか?」
快感からか、己の行為そのものでなのか、火照った顔でそう尋ねてくる太一は、それはもう可愛くて。
「いいよ」
テレパシーを送っていた内容なんか忘れて、条件反射のようにそう口にしていた。
ハーフパンツと下着をずり下げ、側に置いていた四角形の袋を口で開けてから、既に戦闘モードである俺の“モノ”につけた。
顔合わせになるように再び上がってきた太一は、体を密着させ、自分の秘部を俺の“モノ”に擦り付けてくる。
「……っ、…ぁ……」
たったそれだけなのに、鼻から息が漏れたかのような声を漏らす。
垂れた髪を指で耳にかけてやれば、ローションが僅かについた手で、自分の中へと俺を誘う。
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