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第三章 狂い始め
震えるスマホ
しおりを挟む初めて二人で風呂に入り、初めて風呂でセックスをした。
ギシギシと軋む音聞きながらベッドでするのもいいが、全ての音が反響する浴室でするのもかなり良いものだった。
「春都様、お待ちしておりました。タオルで髪の毛の水気を取ってからドライヤーで乾かしますので、こちらへどうぞ」
リビングに行くと、先に風呂から上がった太一がタオルとドライヤーを準備して待っていた。
俺が上がるまでの十分という短い間で乾かしたのか、髪の毛は水気を含んでおらず、普段固められている髪は力なく垂れ下がっている。
「悪いな」
「いえいえ。お風呂上がりのコーヒー牛乳も用意いたしましたので、お召し上がりください」
「あぁ」
机には俺のスマホと、雪◯のコーヒー牛乳が注がれたコップが置かれていた。
コップを手に取り堪能する。
うん。
うまい。
変わらぬ味に満足し、スマホを持ってソファの端に首を乗せるようにして座る。
座るというよりは、足を放り投げて寝転がっている態勢に近いだろう。
俺の頭のすぐ近くに胡座をかき、太一は丁寧にタオルで髪の毛を拭き始めた。
ーーー……トントントン。パンパンパン。
両手をそれぞれ左右に振るのではなく、タオルに水を染み込ませるように優しく挟んだり、時には手を叩くようにして拭いていく。
決して“自分で髪を乾かせない”というわけではない。
事後、抱き合って湯に浸かっている時に、「一緒にお風呂に入ったのですから、ご褒美をいただけますか?」と言われたのだ。
何を要求されるのかと思えば、ただ俺の髪を乾かせてほしいという造作も無い事だったので、快諾したというわけである。
頭に太一の手とタオルの柔らかい感触を感じながら、目を瞑る。
自分でやるよりも、人にやってもらう方が気持ちいのはなぜなのだろうな。
髪の毛にお湯を当てるのも、シャンプーを髪につけて泡立てるのも、美容師の手にかかれば極楽へと変わる。
時間がある時には外出届を出し、行きつけの美容室でヘッドスパまでしてしまうほど、俺は美容師の技術に惚れ込んでいるのだ。
全国の美容師さん。
いつもお疲れ様です。
心の中で美容師という素晴らしい職業についている方達へ労いの言葉を述べていると、不意に太一の手が止まった。
タオルからドライヤーに変えるのかと思ったのだが、目を開けて様子を伺うと、太一は徐に机の上に置いてある俺のスマホを手に取った。
「春都様。お電話です」
「誰から?」
太一の顔を見ながらそういえば、スマホのディスプレイを見ながら、何やら楽しそうに笑っている……というより、ニヤケている。
まるで用件を知っているかのような表情。
不思議に思っていると、ようやくディスプレイをこちらに向けた。
“着信 さくら”
あー……。
なるほどね。
あからさまに嫌な顔をすれば、「はい、どうぞ」と無理矢理スマホを押し付けてきた。
非難しようと口を開きかけたが、“早く出ろよ”とアピールすべく震え続けている手元のソレを無視できるわけもなく。
「……はぁ。もしもし」
ため息をつきながらも、仕方なく……本当に仕方なく電話に出る。
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