43 / 103
第三章 狂い始め
はじめてのお風呂
しおりを挟む出場種目決めたり、蓮夜達が親衛隊と話し合い設けたり、マリモに押し倒されたり、それを政宗に目撃されたり。
今日は色々とあった。
「あー……生き返る」
湯船に浸かりながら、濃い一日を振り返る。
一人で入るにしては広い浴室に、オヤジ臭い台詞と声が反響した。
「春都様。タオルと着替え、置いておきますよ」
扉越しに太一の声が聞こえた。
籠に持ってきたものを入れているのか、扉には屈んでいるシルエットのみが映し出されている。
「たーいちくーん」
「はーあーいー」
ジ◯リ映画、となりの◯トロのワンシーンを真似して名前を呼べば、躊躇することなく返事をしてくれた。
うん。
そういうノリがいい所、好きだよ太一さん。
誰もいない浴室で一人頷く。
「どうかされましたか?」
太一は間髪入れずに扉を開けてきた。
スーツのジャケットは着たままで、髪の毛もワックスで固めてあり、完全に仕事モード。
俺と一緒にいる限り、太一にとっては常に仕事モードなんだろうけど。
「風呂」
「熱過ぎました?」
「絶妙」
「よかったです」
「うん。……じゃなくて」
ポカンと口を開けて首を傾げている。
「お前、風呂まだだろ?」
「はい。あとでお借りしてもいいですか?」
「ダメ」
「えー。なんでですか」
「今入れ」
「え」
俺がマリモに「セックスしない?」と言われた時ぐらい、目を見開いていたと思う。
「早く。のぼせる」
「い、一緒に入るんですか!?」
「そーだよ。さっさと脱げ。そして秒で頭と体を洗え」
左右に視線を動かし、どうしたものかと必死に考えている。
その間も「たーいーちー」と名前を呼び続ければ、観念したのか「わかりました」と渋々了承した。
そしてふと気付く。
あれ。
これって、俺をソファーに呼んだ時のマリモと、やってること同じだな。
と。
「シャワー借りますね」
服を脱ぎ終えた太一が、タオルで体を隠すことなく、バスチェアーに腰掛ける。
そしてワックスで固めていた髪をお湯で濡らし、シャンプーとリンスで洗っていく。
シャンプーだけしか使わない人もいるらしいが、俺はリンスも使う派。
どうやら太一も同じらしい。
じっと見つめていると洗いにくいだろうと感じた俺は、浴槽の縁の部分に頭を乗せ、天井に顔を向けながら目を瞑る。
しばらくしてシャワーの音がやみ、目を開けて太一を手招きする。
きっとそうしないと、シャワーだけ浴びて出て行ってしまうだろうから。
「えっとー……お邪魔しますね」
遠慮がちに湯船に浸かる。
「遠くね?」
第一声はそれだった。
20
お気に入りに追加
1,401
あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる