銀獣-王道BLを傍観するつもりが巻き込まれました-【本編完結。SS公開予定】

レイエンダ

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第三章 狂い始め

はじめてのお風呂

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 出場種目決めたり、蓮夜達が親衛隊と話し合い設けたり、マリモに押し倒されたり、それを政宗に目撃されたり。
 今日は色々とあった。


「あー……生き返る」


 湯船に浸かりながら、濃い一日を振り返る。
 一人で入るにしては広い浴室に、オヤジ臭い台詞と声が反響した。


「春都様。タオルと着替え、置いておきますよ」


 扉越しに太一の声が聞こえた。
 籠に持ってきたものを入れているのか、扉には屈んでいるシルエットのみが映し出されている。


「たーいちくーん」
「はーあーいー」


 ジ◯リ映画、となりの◯トロのワンシーンを真似して名前を呼べば、躊躇することなく返事をしてくれた。
 うん。
 そういうノリがいい所、好きだよ太一さん。
 誰もいない浴室で一人頷く。


「どうかされましたか?」


 太一は間髪入れずに扉を開けてきた。
 スーツのジャケットは着たままで、髪の毛もワックスで固めてあり、完全に仕事モード。
 俺と一緒にいる限り、太一にとっては常に仕事モードなんだろうけど。


「風呂」
「熱過ぎました?」
「絶妙」
「よかったです」
「うん。……じゃなくて」


 ポカンと口を開けて首を傾げている。


「お前、風呂まだだろ?」
「はい。あとでお借りしてもいいですか?」
「ダメ」
「えー。なんでですか」
「今入れ」
「え」


 俺がマリモに「セックスしない?」と言われた時ぐらい、目を見開いていたと思う。


「早く。のぼせる」
「い、一緒に入るんですか!?」
「そーだよ。さっさと脱げ。そして秒で頭と体を洗え」


 左右に視線を動かし、どうしたものかと必死に考えている。
 その間も「たーいーちー」と名前を呼び続ければ、観念したのか「わかりました」と渋々了承した。
 そしてふと気付く。
 あれ。
 これって、俺をソファーに呼んだ時のマリモと、やってること同じだな。
 と。


「シャワー借りますね」


 服を脱ぎ終えた太一が、タオルで体を隠すことなく、バスチェアーに腰掛ける。
 そしてワックスで固めていた髪をお湯で濡らし、シャンプーとリンスで洗っていく。
 シャンプーだけしか使わない人もいるらしいが、俺はリンスも使う派。
 どうやら太一も同じらしい。

 じっと見つめていると洗いにくいだろうと感じた俺は、浴槽の縁の部分に頭を乗せ、天井に顔を向けながら目を瞑る。
 しばらくしてシャワーの音がやみ、目を開けて太一を手招きする。
 きっとそうしないと、シャワーだけ浴びて出て行ってしまうだろうから。


「えっとー……お邪魔しますね」


 遠慮がちに湯船に浸かる。


「遠くね?」


 第一声はそれだった。
 
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