銀獣-王道BLを傍観するつもりが巻き込まれました-【本編完結。SS公開予定】

レイエンダ

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第三章 狂い始め

激しく突かれたい

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 押し倒すことはあっても、押し倒されることはあまりなかった。
 この間、誠にベッドに無理矢理寝かされた時ぐらいだろうか。


「野山は俺に挿れてほしいの?それともー……挿れたいの?」


 ヤるつもりなんて全くないけれど、この体勢に持ち込むぐらい本気なのは、なんとなくわかる。
 だから聞いてみたいと思った。
 どっちがいいのかを。
 興味本位、というやつだ。

 アイツの情報だとネコなんだが、この状況だとタチなのかもしれない。

 なになにー。
 俺、挿れられちゃうのー?

 冗談じゃない。


「そうだなー。どっちでもいいってのが本音。春都先輩とできるなら、なんでもいい」
「へー。押し倒すぐらいだから、挿れたいのかと思ったー」
「そりゃ挿れたいよ?俺も男だし。でも、春都先輩に激しく突かれたい気もする」


 空いている方の手で、かけていたピン底メガネを外し、サイドテーブルの上に置いた。
 
 
「ドMかよー」
「そーかも。したことなんてないけど、春都先輩とならすげー気持ちいい気がする」


 下を向いているからか、前髪が肌から離れ、僅かな空間が生まれていた。
 メガネをかけていれば絶対に見えることはなかった瞳が、欲望に染まった瞳が、俺を見下ろしていた。

 サファイアのような、綺麗な青。
 顔全体が把握できたわけではないけれど、理事長や蓮夜達が騒ぐぐらいには、整った顔立ちをしているかもしれない。
 でも、人には好みというものがあるわけで。
 俺は全く興味を惹かれなかった。


「まぁ、俺はテクニシャンで有名だからねー」
「アソコがデカイっていうのも聞いた」
「おや。誰がバラしたのかなー。それは」
「麗香が去年、学校の夏旅行で見たって」
「あー。そういえば一緒の班だったかもなー」


 毎年うちの学校では、夏休み前に全校生徒で旅行に行く。
 ホテルや海を貸し切って、親交を深めるのだ。
 その時の話を、こいつにしたのだろう。
 どういう流れでその話になったのかは知らないけれど。


「春都先輩が好き」
「うん」
「だから、先輩とキスもしたいし、セックスもしたい」
「うん」
「ダメ?」


 首を傾げ、甘えるように聞いてくる。
 ダメに決まってるでしょ。
 俺はね、基本的に来るもの拒まずなんだけど、お前だけは嫌だ。
 理由は単純だ。
 生理的に無理だから。
 蓮夜達の好意に甘えて、拘束して、結果的に俺に仕事を押し付け、追い詰めたお前が。


「蓮夜達でいいじゃん。野山のこと、すっげー大切にしてくれるよー?」
「そうだね。そうなんだけど、俺は春都先輩のミステリアスな感じがいいんだ。人を寄せ付けないわけじゃなくて、寧ろ引き寄せるのに、どこか距離があって。そこがたまらなく好き」
「それはどうもー」


 意外にも、俺のことをよく見ていた。
 距離感なんて、他の人から言われたことなどなかった。
 言わないだけで、感じている人もいるのかもしれないけれど。
 

「だから、したい。春都先輩と」


 マリモの顔が迫ってくる。
 男との経験なんてないだろうに、なんの抵抗もなく自分からキスができるって、染まりすぎなんじゃない?
 この学校に。


「蓮夜達にしなよ」
「話、聞いてた?先輩がいいんだよ」


 迫る唇。
 黙ってキスされるほど、俺は大人しくないし、相手に困ってないわけ。
 言っても聞かないマリモを退かそうと、仕方なく手を動かした時だった。


『ピピーッ』


 生徒会室の扉が開いた。
 入ってきたのは蓮夜でも、あおちゃんでも、麗でもなく、


「……何してんの?」
「お、部活お疲れー」


部活帰りの政宗だった。


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