銀獣-王道BLを傍観するつもりが巻き込まれました-【本編完結。SS公開予定】

レイエンダ

文字の大きさ
上 下
38 / 103
第三章 狂い始め

殺っちゃっていい?

しおりを挟む



 体育祭の出場種目を決める五限が終わり、残りの授業も特に問題なく進んだ。
 そして今は放課後。
 生徒会室で黙々と仕事をしている。


「グズッ。マジでなんなの?俺が何したってんだよ。どうしたらいいわけ?」
「正人はわるくありませんよ。悪いのは親衛隊です。どうにかしないといけませんね」
「そうだな。親衛隊の奴らと話してみるか」


 なんていう会話をBGMに。

 マリモは気を許してきたのか、サボりの時もそうだが、かなり前から三人とタメ口で話している。
 そして変につくろうのをやめ、理事長の時と同じように口が悪くなった。
 順調に3人との仲を深めて言っているように思える。
 様々な困難を乗り越え、この中の誰かと付き合うのが王道らしい。
 そういえば、生徒会長である蓮夜と付き合うのが、“王道中の王道”なのだと、腐女子であるアイツが鼻息を荒くして言ってたっけ。


「正人。親衛隊呼び出して話してくるから、ここで大人しくしてろ」
「大丈夫です。ここに彼らは入れませんから」
「安心して待っててねー!」


 スマホを取り出して誰かに電話をしたかと思えば、徐に立ち上がり、三人は生徒会室を出ていく。


「ねぇ、春都先輩」


 話し相手が欲しいのか、ソファーに体育座りをしながら声をかけてきた。

 久々にマリモと話た気がする。
 それもそのはずだ。
 今まで三人の内一人は必ず一緒にいて、話し相手になっていたのだから。
 あとは、大好きな政宗に自ら声をかけて、無理矢理会話を成立させようとしていたぐらいか。


「んー?どしたー?」


 パソコンと睨めっこをしながらも、誰かと話していないと嫌なマリモの相手をする。


「春都先輩って、仕事大好きだよな。いつもパソコンいじってるし」


 Enterキーを押す音が、数秒前よりも遥かに大きくなる。
 何故ならば、俺は今、マリモに殺意を抱いているからである。


 “仕事大好きですよね”
 “いつもパソコンいじってるし”


 ……っちゃっていいか?

 仕事に追われてる元凶はお前だし、そもそも、タメ口で話すほどお前と仲良くなった覚えはない。
 今すぐにでも中指を立て、“fuck”という言葉を口にしたい衝動に駆られる。


「んー?そんなことないよー」

 動き始めようとする中指を何とか押さえ込み、俺は一言そう口にした。
 誰か。
 今の俺を褒めてくれ。

 “てめぇのせいだよ。死ねカス”

 と口にしなかった俺を、全力で抱きしめてくれ。


「そんなことある。今だってパソコンから目を離さないし」
「体育祭も近いからねー。やることがあるのよー」
「嫌がらせされて傷心中の俺を放っておく?普通」
「……」


 驚き過ぎて何も言えなかった。
 こいつは、自分中心に世界が回っているとでも思っているのだろうか。
 ……いや、あの不機嫌そうな顔は完全に思っている。
 そして目で語ってくる。
 “俺を慰めろよ”と。

 殺。殺。殺。
 脳内を占めるのは恐ろしい漢字一文字。

 ははは。
 どうしよう。
 殺意が芽生えて、光の速さで花畑ができそうだ。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...