銀獣-王道BLを傍観するつもりが巻き込まれました-【本編完結。SS公開予定】

レイエンダ

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第三章 狂い始め

周りの視線

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 いつも通りの朝。
 いつも通りの道。
 何もかもがいつも通りで、代わり映えのない光景。

 学校に行けば、マリモの噂話が嫌でも耳に入ってくるし、クソ野郎共は相変わらず仕事しないし。
 政宗がマリモの誘いを断って仕事を手伝ってくれるようになったからか、睡眠時間が一時間増え、四時間になった。
 たった一時間。
 されど一時間。
 以前よりも明らかにクマも体調も良くなった。
 良くなったと言っても、“マシ”なだけで、万全ではないのだけれど。


「眠い。だるい。眩しい」
「太陽がですか?まるでヴァンパイアですね」
「夜行性になりたい」
「身体がもたないので私は嫌です」
「性欲がやべえ。抱かせろ」
「お断り致します」


 車ではなく、歩いて学校へ向かう。
 入学式やマリモの送迎やらで、最近は乗ることが多かったが、基本的には徒歩だ。
 そして太一は必ず学校までついてくるし、俺が断らなければ基本的に迎えにもやってくる。
 最近は体調が心配なのか、いらないと連絡しても、迎えに行くときかない事の方が増えたがな。


「え、鵤……様?」
「……そうだと思う。だって佐山様もいらっしゃるし」
「そう、だよね?鵤様だよね?」


 校舎が近づくにつれて多くなる人。
 生徒会と風紀委員のみが住むことを許される役員専用の寮と、一般生徒の寮は別のところにあり、今通っている場所はその二つの寮生徒が合流する地点。
 学校に行くためには必ず通らなければならない道。
 ただでさえ広いというのに、俺の存在に気付いた生徒は、両端へと避け、惚けたようにこちらを見つめては、声を掛けてくる。

 しかし、今日は違った。
 連れにヒソヒソと声をかけ、どこもかしこも同じ言葉を口にしていた。
 “鵤様だよね?”と。
 “多分そうだと思う”と。


「皆さん驚かれてますね」


 口元に手を持っていき、笑っているのを隠しているつもりだろうが、口角が上がっているのでバレバレである。


「笑ってんな。犯すぞ」
「最近そればっかりですねー。欲求不満ですか?」


 意地悪気な顔で覗き込んだ。
 変わり果てた俺の髪を指にからませながら。


「お前がお預けするからだ」
「した分だけ、春都様の睡眠時間減るじゃないですか。今はとにかく寝ないと」


 俺の鞄を抱きしめるように持ち、そっぽを向いた。

 一人だと寝ないで仕事をするということに気付いたのか、毎晩一緒のベッドで寝るようになった。
 それからというもの、俺は太一の項を見る度に欲情している。
 十代の性欲は凄まじい。
 我ながらそう思う。


「チンコ爆発する」
「しません」
「したらどうすんだよ」
「しません」


 そんな会話をしていると、見覚えのある後ろ姿……というより、周りより群を抜いて背が高い男がのんびり歩いていた。


「西条様ですね。声をかけますか?」
「いい。でかい声出すのめんどくせえ」
「あ、でも気づかれたようですよ。春都様に」


 太一の言葉を聞いて再び視線を向けると、立ち止まって俺が追いつくのを待っていた。
 というより、驚き過ぎて立ち止まってしまった、という方が正しいだろう。


「なんで気付くんだよ。なんで止まんだよ」
「だって西条様は、」
「太一さん。その先は言うんじゃねえ。話しにくいだろ」
「おっと。失礼いたしました」
「わざとだな、お前」
「バレましたか」


 両肩を僅かに上げ、おどけてみせる。


「イメチェンか?」


 第一声は珍しく“おはよう”ではなく、目ん玉が飛び出そうなほど目を見開き、頭部をじっと見つめてからようやく言葉を発した。


「そー。似合うだろ?」
「え、あー……あぁ」


 そのやり取りを見て、斜め後ろでクスクスと笑う太一。
 今夜は何がなんでも抱く。
 そう心に決めた俺は、上の空な政宗と太一の三人で、あと数分で着くであろう校舎を目指す。
 周りの視線を浴びながら。
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