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第三章 狂い始め
もはや病気
しおりを挟む投げやりな言い方だけじゃない。
きっと政宗は、俺のクマにも気付いている。
問い詰めて来るわけでも、誠のように無理矢理触れてくる訳でもない。
目を細めて、眉間に皺を寄せるだけ。
何も言ってこない。
俺が答える訳がないと分かっているのか、ただ単に声をかけずらいだけなのか。
そういえば、誠達も理由までは聞いてこなかったな。
今まであまり考えたことはなかったが、俺の周りは良い奴ばかりなのかもしれない。
今はマリモに夢中な三人も、根はいい奴だし。
「さんきゅー。それ体育祭の資料なんだけど、競技順の横に時間が書いてないんだよねー。誘導にかかる時間とかも含めて、それぞれの競技開始時間を決めてもらえる?」
「わかった。役員用に入退場の仕方と、待機時の並び方も競技毎に作るか?」
「そーだねー。一応作っとくか。中学と違って予行練習に割ける時間も少ないし、実行委員に予め渡しといて、暗記してもらおう」
「了解。いつまで?」
期限を問われ、俺は口元に手を持っていき、頭の中にある様々な情報を引っ張り出す。
政宗に渡した仕事に、期日が近いのはない。
時間を出すのはそこまで難しくないはずだから、文章の確認なども考えて一時間ぐらいで終わるだろう。
そこから作成するとして、政宗なら明日中にはいけるか。
俺が最終確認して、明後日の放課後に体育祭担当の教員へ。
修正と確認を繰り返して、来週中には理事長に提出したい。
「明日の夜か、明後日の朝までに終わるー?」
「急ぎの書類はないし、明日の部活後には出来ると思う」
「さっすがー。じゃあ明日までで」
「わかった。他に何かあるか?」
「来週の木曜の五限に、全クラス時間作って出場競技を決めてもらうから、部活終わりに職員室に行って回収してきてほしい。そこから実行委員の出場競技確認して、誘導割り振るから。足りないところは先生達に協力要請しようかー。俺らも出場しちゃうし」
「資料は明日まで。来週の木曜に職員室によって出場競技書を回収、と」
鞄から手帳らしきものを取り出し、俺の言ったことを復唱しつつ、マンスリーのページを開いて書き込んてんいく。
他にも部活の時間や、各教科の宿題のページなどが書かれており、几帳面さが見て取れる。
俺はスマホの手帳アプリに全て書き込んでしまうが、政宗は手書きを好むらしい。
「大丈夫そー?」
「あぁ。ちなみに、全学年の実行委員との顔合わせとミーティングはいつだ?」
「お前が大会中に顔合わせ済みー。ミーティングは来週の金曜にやるって伝えてある。先生達に会議室かしてーって言ってあるけど、一応空いてるか確認しといてもらえる?」
「体育祭の担当は俺の担任だったよな。明日聞いとく」
「よろぴこー」
今言ったことも、明日の日付の部分に書き足していく政宗。
高校生でこれだけ細かくメモをする癖があれば、将来社会に出たらミスとか無さそうだなー。
こいつ。
そんなことを考えなが、互いに仕事を再開した。
体育祭のことやら、再来週から始まる朝の読書週間の準備やら、やることは山積み。
今後激化するであろう親衛隊の嫌がらせは、三人がどうにかするだろう。
仕事を放り出してるんだ。
寧ろどうにかしてもらわないと困る。
そう思いつつも見捨てられないのが俺の悪いところで。
情報があって損は無いし、何かあった時に三人で処理しきれないこともあるだろう。
と、考えてしまうのだから、もう病気かもしれない。
そんな自分に呆れつつ、スマホで親衛隊の子達に連絡する。
スマホを机に置き、これ起こるであろう騒ぎに頭を悩ませながら、仕事に取り掛かるのだった。
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