銀獣-王道BLを傍観するつもりが巻き込まれました-【本編完結。SS公開予定】

レイエンダ

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第三章 狂い始め

バカなの?

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 蓮夜の言う“ここ”というのは、もしかしなくても生徒会室の事だろうか?
 信じられない、の一言である。

 理事長に相談して、マリモに教師を付けた場合、朝から夕方まで生徒会室に居るという事になる。
 それを知った親衛隊が黙っているはずがないと、何故気が付かないのだろうか。


「正人。理事長のところに行くぞ」
「うん!」
「私も行きます」
「僕も行くー!」


 名案だと疑わない四人。
 これで嫌がらせから救われると信じてやまないマリモ。
 一緒にいれる時間が増えると、今後が楽しみで仕方がないという三人。


「政宗先輩も行きますよね?」


 “行きますか?”ではなく、“行きますよね?”という断定的な言い方。
 行くのが当たり前。
 行かないなんて事、あるわけが無い。
 その自信はどこから来るのか。

 容姿か。
 性格か。
 仕草か。


「大人数で押しかけるのは理事長に悪いし、俺は遠慮しておく。仕事もまだ残ってるしな」


 断られるわけがないと思っていたのか、マリモは少し不思議そうな顔をしていた。
 どうして来ないの?と。

 もしかしたら、今まで好きになった相手と、上手くいかなかったことがないのかもしれない。
 あくまで俺の予想だけど。


「そうだな。俺達だけで行くぞ」
「あ、うん」


 流れるような動作でマリモの手を取り、あおちゃんと麗は羨ましそうな目で見ながら、あとに続いて理事長室へと向かったのだった。

 どうなっても知らないからな。
 考える事が億劫なった俺は、心の中でその一言を呟き、書類に目を通すことに集中した。
 

「なぁ、春都」


 三人が生徒会室を出てから数分が経った頃、自分のデスクに戻って仕事をしていた政宗が、徐にパソコンから顔を上げた。


「んー。どしたー」


 タイピングをしながら返事をする。
 しかし、続きを話す気配は一切無かった。
 はぁ、とため息を一つ。
 四人で話し合いをしている間に入れた紅茶を口に含む。


「なーに?」


 政宗に目線を向けてから改めて問えば、満足気な顔をした。

 政宗は感情がわかりにくい、と周りの者は言う。
 どこが?と俺は思う。
 よく観察すれば、眉や目、唇などの些細な動きはあるわけだし、何となく想像はつく。

 わかりにくいから。
 そこで終わらせてはいないだろうか。
 理解しようとしなければ、いつまでもわからないままだというのに。


「あの三人、最近可笑しい気がするんだが」
「そうかもなー。全部恋のせいってことにしとこーぜー」
「それで片付けていいのか?さすがに仕事しなさ過ぎだろ」
「一応言ったんだけどさー。忙しいらしいよー?色々と」


 投げやりな言い方だったと思う。
 だからかな。


「俺からも言ってみるから」


 気を使わせてしまった。

 正直、三人分の仕事はどうにか処理しきれている。
 理事長へと報告も、教員達との打ち合わせも、全て。

 今改めて思うことは、


「それ、俺がやる。頂戴」


四人分じゃなくて良かった、ということだろうか。

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