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第三章 狂い始め
一発ドカンと
しおりを挟む「……」
「あー……」
「な?」
洗剤のCMで使われそうな真っ白いタオルが、一部分、肌色に変色していた。
圭は色々な感情が混ざり合ってそうなったのか、ただ単にそうなったのか。
とにかく“無”。
蘭は精一杯爪先立ちをし、それを見つけると、言葉が見つからないのか、ボイスレッスンのように、一文字を息が続く限り発している。
誠は“行った通りだろ?”と、同意を求めるべく、二人の前に俺の顔を差し出し、反応を待っていた。
コンシーラーを取って露わになった目の下には、くっきりとクマがあって。
青みがかったそれは、青痣のように痛々しさを感じさせるものではなく、不安を掻き立てる青。
色白とも、色黒とも言い難い微妙な肌色に、不自然なまでに存在を主張していた。
指の腹で引っ張ると、色が若干薄くなる。
これは四種類あると言われているクマの中の“青クマ”というもので、過労や寝不足によって、目の周りが血行不良になり、皮膚を通してそれが見えてしまっているというわけだ。
太一が今朝、スマホで調べた内容なので、確実な情報とは言い難いが、病院に行く暇がない俺は、WEB上の情報を鵜呑みにするしかない。
何度も皮膚を引っ張っては、目の下を観察する誠。
その顔は真剣で、もしかしたら太一と同じサイトを見たことがあるのかもしれない。
化粧ポーチを家に忘れてしまった日に限って、天気雨が降ってしまい、化粧が崩れてしまった時のような絶望感。
普段化粧ポーチなんて持ち歩かなしそもそも化粧なんてしないけど、そんな感じ。
「誠。お前の邪魔くさいベッドに、春くんを寝かせといて。というか、押さえつけといて」
「んー?よくわかんねーけど了解!任せとけ!」
俺の意見など聞くはずもなく、ソファーとは別に置かれたセミダブルのベッドへと引きずられる。
何故ここにベッドがあるのか。
何故シングルではなくセミダブルなのか。
この際は気にしないことにする。
それなりに体格がいい俺を、いとも簡単にベッドへ押し倒す誠。
甘い雰囲気など一切なく、
「うわ、この構図やばい。ちょ、圭が来るまでに一発いい?」
「いいわけないでしょ。しかも、そんな短時間で終わるとか早漏かよー」
「ちげーわ!」
下世話な会話が繰り広げられていた。
押さえつけられたままあーだこーだ言っていると、圭が白いタオルを持って再び戻ってきた。
先程、肌色になってしまった白いタオルではなく、新しい物。
よく見ると、タオルから湯気が出ていた。
「蒸しタオル。すぐに効果あるかわからないけど、とりあえず付けて寝転がってて」
「いや、俺戻って仕事するしいいってー」
「転校生に“春くんがどうしても君と遊びたいって言ってるんだけど、遊んであげてー?”って言うか、蒸しタオル、どっちが、」
「蒸しタオルで」
「ん。最初からそう言って」
誠を邪魔だと言って蹴飛ばし、瞼の上に優しく乗せてくれた。
若干熱い気もしたが、最初だけで、すぐに心地よくなる。
「ゆっくり鼻で呼吸して」
圭の言葉に従い鼻でゆっくりと呼吸をすると、フローラルな香りが脳を刺激する。
俺の意識は、ここで途切れた。
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