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第二章 表と裏

★少し、休みませんか?

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「…っ、……っ、…」
「ん……ふぁる…としゃま…ん、はっ」


 口の隙間から漏れる吐息。
 それは苦しそうであるものの、不快感よりも快感の方が優っているような、そんな表情。

 白と黒で統一され面白みのない、殺風景な部屋。
 クチュクチュとワザと音をたて、行為を続ける目の前の男。
 自分から誘ってきたというのに、時折上目遣いでこちらをみたかと思えば、照れたように目を伏せた。


「んっ、ふぁ……っ!春都、様。足…っ、で」
「俺だけ気持ちいいなんて、不公平だろ?」
「あっ!…ゃ、っ、擦らないで…っ」


 椅子に座る俺の足の間に顔を埋め、“モノ”を咥えていた太一。
 スウェットの布を押し上げている彼自身を見て不憫に思い、足の指で先端部分を弄ったり、足の裏で押し付けるようにしながら擦る。
 次々と与えられる快感に耐えるように、俺の太ももに手を置いて、俯きながら必死に声を押し殺していた。
 頭を撫でてから、指で耳を弄ぶ。
 ピアスに触れてみたり、裏の部分を撫でてみたり、指を入れてみたり。


「んっ!」


 すると両肩が跳ね、俯いていた顔を上げた。


「指、やだ……っ」
「なんで?」
「ゾワってする、から」
「ふーん」


 動かしていた足を止め、立ち上がる。
 驚いた顔をする太一の手をとり、ベッドへと連れて行く。
 真ん中辺りに胡座をかき、自分の“モノ”を指差す。


「乗って」
「……はい」


 自らスウェットとボクサーパンツを脱ぎ、ベッドの下へと落してから、俺の元へとやってきた。
 足を踏まないように広げて立ち、遠慮がちに俺の上に座った。

 服を脱いでいる間に準備していたローションを手に垂らし、蕾に触れる。
 縁の部分を指の腹で撫で、馴染ませていく。
 ゆっくりと中指を入れると、耳元で微かに、「んっ」と息を飲む声が聞こえた。
 中指を数回出し入れし、一度引き抜いてから人差し指、薬指と増やしていく。
 気付けば指は三本に。
 寄りかかるように座っていた太一の肩が、出し入れするたびにピクリと小さく動く。


「も…ぉ、欲しい。春都様……んっ」


 我慢ができないと、キスをしながら腰を動かし、“モノ”同士を擦り合わせてアピールしてくる。


「欲しいなら自分で着けて、入れろ」
「……はい」


 太一の前に正方形の包みをチラつかせ、頰にキスをする。
 包みを受け取り、封を開けてから、慣れた手つきでつけていく。
 つけ終わったところで少し腰を浮かせ、片手で俺の“モノ”を固定し、自分の蕾へと当てがう。
 解れたそれは簡単に先端を飲み込み、中へと誘う。
 直に感じる熱が、心地いいとさえ感じた。


「んっ、っ…ぁ」
「……っ。いい子」


 根元まで飲み込んだところで、今度は唇にキスをする。
 すると、「へへへ」と柔らかく笑った。
 その笑顔があまりにも可愛くて、我慢ができずに腰が動いてしまった。


「あっ!あっ、ん!…っ、ま、って」
「悪い。止まんね」
「や、だ。止めて、イ…っちゃ、うから」


 下の様子を伺うと、入れたばかりだというのに、言葉通り限界が近いようだった。
 イきそうならイけばいい。
 腰を止める理由にはならない。
 意地悪げな笑みで太一を見上げると、察したのか、左右に顔を振りながら懇願する。

“少しだけ待って欲しい”

と。


「あっ、……ゃ!…っ、んぁっ!なん、でおっきく…なっ、て」


 その仕草が余計に俺を煽るのだと、未だに彼は気づいていない。
 両手で尻を鷲掴みにし、広げながら奥を何度も何度も突く。


「っ、ふっ……ぁ、あっ!んんっ!!!」


 限界を超えたのか、両足に力が入り、しがみ付くようにして達した。
 中が急速に締まる。
 俺の“モノ”が千切れてしまうのではないかと、思ってしまうほどに。
 顔をしかめ、イかないように耐えていると、舌を出してキスを強請っている太一と目が合う。


「……可愛い」


 愛くるしくなり、思わず口にした言葉。
 顔を赤らめながらも微笑み、互いに唇を寄せた。

 恋仲ではないはずなのに、求めあってしまう。
 “セフレ”と言われれば、そうなのだろう。
 しかし、この関係をその言葉で一纏めにするとなると、腑に落ちない自分がいる。


「春、都様。っ、春都様」


 抱きつき、キスを求め、そして自ら腰を動かし始める。
 微かに緩んだ中は、俺の形にフィットし、時折締め付けてくる。
 ここまで体の相性がいい相手に、俺は今まで出会ったことがない。

 堪らない。
 気持ちいい。

 この行為が終わった後、待ち受けているのは地獄の書類整理だというのに。
 今だけは、この快感に溺れていたいと、そう考えてしまう。


「は、る…っ、様。もっと」
「っ!ほんと、おま、ぇ、は」


ーーー……少し息抜きをしましょう。


 そう言ってしゃがみ込んだ太一の誘惑に負けてしまった。
 最後までする気など、なかったというのに。


「後で…っ、手伝えよ」
「……、っ、あっ、……ふふっ。は、い」


 再びキスを交わし、覆い被さるようにしてベッドへと押し倒す。

 束の間の休息だと、言い訳をして。
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