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第二章 表と裏
邪魔ですマリモさん
しおりを挟む食堂の一件から二週間。
あの日から変わった事が三つある。
まず一つ目は蓮夜、あおちゃん、麗が夜の相手をしなくなった。
二つ目、マリモが生徒会室に入り浸るようになった。
三つ目、三人が全くと言っていいほど仕事をしなくなった。
「正人。お菓子食べますか?」
「食べる!ありがとう!」
「まーくん、僕にもお菓子ちょうだーい」
「はははっ。いいよー」
「そっちばっか見てんな。こっち見ろ」
「ちょ、顎掴むなよ!」
生徒会室にあるソファーに麗、蓮夜、あおちゃんの順番で座りながら、そんな会話をしていた。
数分の口論の末、マリモは蓮夜の足の間に、後ろから抱かれるような形で座っている。
三人がけのソファーのはずだが、麗とマリモが細いせいか、特に狭そうな印象は受けなかった。
それぞれがマリモと話すのに必死で、振り向いてもらおうと、あの手この手を使って興味を引こうとしている。
ーーー……パチパチパチパチ。
俺のタイピング音は、楽しそうに喋っている四人の耳に届くことはなく。
発せられては虚しく消える。
書類をパソコンの横に置き、キーボードを見ることなく文章を構成し、何かに取り憑かれたように、仕事を終わらせていく。
デスクの周りには積み上げられた書類と、自分で入れた紅茶があるだけ。
他のメンバーのデスクには、クリップでまとめられた二つか三つの書類の束があるのみ。
「あの、春都先輩を手伝わなくていいの?」
「大丈夫ですよ。春都は仕事大好きですから」
「そーそー!僕たちより仕事早いし、あれぐらいちょちょいのちょい!」
「許容範囲だろ。心配ない」
「そっかー」
小一時間ほど、一言も声を発さずパソコンと睨めっこをしているからか、見兼ねてマリモが三人に声をかける。
何が仕事大好きだ。
何がちょちょいのちょい、だ。
何が許容範囲だ。
誰か銃を持ってきてくれ。
今すぐに、あの世へ誘ってやる。
イライラが最高潮の俺は、怒りをenterボタンにぶつける。
タワーのように積み重なった書類は、元はと言えばお前達が担当するはずのものだ。
一週間前に渡した、二つ三つの書類さえも手付かずでデスクに放置されているから、仕方なく、こうして引き受けているだけ。
暇なら仕事しろ。
さっさと仕事しろ。
全てを終わらせ、即刻立ち去れ。
そして親衛隊達から罵声を浴びてしまえ。
物騒な言葉の数々を、頭の中で並べていく。
ある有名人が言った。
“思考に気をつけなさい、いつか言葉になるから”
一部、割愛はしているが、素晴らしい言葉だと、初めて目にした時に感じた。
そして、その通りなのかもしれない、とも。
この言葉が正しければ、俺が頭の中で浮かんだ物騒な内容の思考は、いつか現実になる可能性があるということ。
殺人鬼になる可能性が出てきました。
皆さん助けてください。
俺をこの状況から救ってください。
誰でもいいです。
この際、猫でもいいです。
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