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第一章 転校生
転校生とご対面
しおりを挟む空は雲一つない快晴。
遮るものがないからか、太陽がいつも以上に眩しく感じる。
しかし、俺の心は土砂降りの雨。
なぜって?
「初めまして。生徒会会計監査の鵤 春都でーす。理事長室まで案内するためにお迎えに来ましたー」
「お迎え!わざわざありがとうございます!僕は野山 正人です。よろしくお願いします!」
面倒事を押し付けられてるからだよ。
予定では生徒会長である連夜が案内をすることになっていたのだが、懸念していた通り、転校生のことが気になりすぎて仕事が全くと言っていいほど進まず。
今日までには提出しなければならなない書類が終わらなかったのである。
そこで、全てが終わっていた俺が、仕方なく案内をすることになったのだ。
本当に仕方なく。
もしかしたら証明写真限定かもしれないと期待をしていたが、目の前にいるのはモジャモジャ頭にピン底メガネ。
今すぐにでも帰りたい。
心底どうでもいい。
「学校の詳しい内容は車で話すから、とりあえず乗って?」
「あっ、はぁーい!」
扉を開けてあげると、遠慮がちに中へと入って行く。
乗り終わったのを確認してから後に続き、扉を閉めた。
普段太一がやっていることをしているだけなのだが、キラキラとした目でこちらを見ている。
“紳士”などという言葉が頭に浮かんでいるのかもしれない。
普段であれば俺が車の乗り降りをする際には必ず扉を開閉する太一だが、さっさと終わらせてこの地獄の状況から逃れたい俺の心を察してか、静かに運転席に座っている。
運転席から降りて、扉を開けて、俺が降りて、自己紹介して、また扉を開けて、俺達が乗り込んで、扉を閉めて、運転席に戻って。
時間がもったいないったらありゃしない。
今はとにかく、早く終わらせたい。
その一心なのだ。
「じゃあ校舎に着くまでに学校と生徒会について簡単に説め……俺の顔に何かついてるー?」
説明を始めようと転校生…野山の方に顔を向けると、あのキラキラとした瞳で俺の顔を見続けていた。
しかし、俺が声をかければ、
「えっ!いや、なんでもないですっ!す、すみません」
と、顔を背けながら謝ってきた。
なんとなく君が何を考えてたかわかるよ。
まぁ、言わないけど。
時間が惜しいし。
「そ?じゃあ話し続けるぞー」
「はい!お願いします」
唯一はっきりと見える部分である口元を綻ばせ、陽気に返事をする野山。
元気だなー、とおっさんが遊び回る子供を見て言うセリフのようになってしまったが、冷めているだけであっておっさんではないと、ここで断言しておこうと思う。
俺はまだ、ピチピチの十六歳である。
十七歳間近の、ではあるが。
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