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一話
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『間もなくグワンラガ山入り口、グワンラガ山入り口です。この次はクリスタル・レイに停車します』
「え!? ちょ、ちょっと待ってくださいーっ!」
予想外のアナウンスに私は席を飛び出し、運転手に声をかけた。
「以前はギルタインの街まで行きましたよね。私、そこに用があるんですがっ」
「あー、お客さん。いつのお話をされているのかわかりませんが、ギルタインはもう廃墟で誰も住んでいないんですよ。そこまでバスを走らせる必要はないんです」
「なんとかなりませんか?」
「勝手にダイヤを変更するわけにはいかないんですよ、諦めてください。グワンラガ山入り口です、お降りのお客様は────」
「お、降ります降ります!」
席に取って返し、リュックを背負い、折り畳み式のサイクルを抱えて出口に向かう。
「えっと……いくらです?」
「どこから? ……あー、アンデルトからだと3400イルダンだね」
少ないとはいえ私以外の乗客もいる。急いで財布から卑金属で作られた3400イルダン分の硬貨を取り出し、料金箱に放り込み、乗客の視線に追われるようにバスを降りた。
ありがとうの声もなく、赤茶色の土煙を巻き上げてバスがUターンしていく。まだかろうじて残るアスファルトの上、陽炎に溶け込むように遠ざかるバスをしばしボンヤリと見送った。
「……予定が狂ったわ。バスは……うえっ、1日に1便しかないの!?」
崩れたアスファルト、崩れかけのバス亭。それらがなければ荒野のただ中に置いてかれたようにしか見えない私。
鉄パイプに金属板を打ち付けただけの、間に合せの時刻表を見れば、バスは1日に1便しか来ないらしい。昔来た頃は、まだ1日に3便はあったはずだけど。
いや、まあ、ここはバスが通るだけマシなのかもしれないけれど。
遠く、バス停の名でもあるグワンラガ山が茶色の壁のようにそびえる。その麓、埋もれるように点在する人工物から数本の煙が立ち昇っているのは、まだここに人が住んでいる証だ。
もっとも、バスの本数が露骨に減ってる。ここにバスが来なくなる日も遠くないのかもしれない。
「……感傷に浸ってる場合じゃないわね。夜までには着かないと」
折り畳んであったサイクルを展開し、リュックから日よけ用の厚手のマントを取り出して身を包むと、私はアスファルトの残骸を辿るようにペダルを踏み込んだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
昔、大きな戦争があったという。
国と国とではない。ここ大地と月とでだ。
夜空に浮かぶあの月に人間が住んでいたなんて信じられないけれど、昔は空飛ぶ巨大な船が、それこそ何隻も大地と月とを往復していたらしい。
歴史の教科書に書かれているから事実なんでしょうけど、お伽噺にしか聞こえないわね。今は空飛ぶ乗り物すら苦労しているっていうのに。
そんな、お互いに行き来するほどの間柄だった大地と月がどうして戦争することになったのか……。残念ながら、理由は判然としない。戦後のゴタゴタで資料が散逸してしまったのか、もしくは────。
「残したくなかったのかしらね」
私が生まれるはるか前の出来事だ、真実が明らかになることはないのかもしれないわね。
その戦争がいつ始まり、何年続いたのかはわからない。だけど終結したのは、今からちょうど60年前なのはわかってる。
といっても、終戦協定が結ばれたわけでもないらしいのだけれど。なぜかといえば、今から60年前、月が突然沈黙したからなんだそうだ。
原因も理由も不明。その時すでに大地には月にまで行ける船が残っていなくて、確認することができないまま今日に至っている。
つまり、大地と月の戦争は、うやむやなまま終結したわけだ。世界に消えない大きな傷を残して。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ふう~っ。なんとか陽が落ちる前に着いたわね」
どれくらいペダルを漕いだのかしら。赤茶色に染まった腕時計を拭って確認すると……うわ、四時間か。道が悪いから速度が出せないのよね。水の予備が無かったら危なかったわ。
忘れられた道を走り、たどり着いたのは、かつてギルタインと呼ばれた街。赤茶けた山の麓に張りつくように存在している街だった場所は、砂に侵食されて、半ば自然に還ろうとしている。
昔は……それこそ戦時中は鉱山の街として相当賑わっていたと聞いたけれど、もはやその面影もない。戦中に鉱脈が枯れ、衰退の一途を辿ったらしい。戦中戦後、大量の物資が必要なのに肝心の鉱物が出ないとなれば、ね。
だけど、そんな衰退する街を、祖父は離れようとしなかったのだ。
「おじいちゃん……来たよ」
街の外れ。小さな工場のような建物が祖父の家だった。玄関脇にサイクルを置き、マントの土埃を払って裏手に回ると、石板が置かれただけのシンプルな墓が二つ、私を待っていた。
刻まれた文字が見えないほど風化した方は祖母の、そして真新しい石板に刻まれているのは間違いなく祖父の名だ。
祖父逝去。
その手紙が届いたのは三ヶ月前のこと。差出人は祖父の古い友人で、父宛てでなく私宛てに送ってくるくらいには、我が家の確執を知っている人だった。
祖母が亡くなったあと、父は何度も祖父に一緒に住もうと提案してきた。こんな滅びを待つだけの町に、祖父を一人で住まわせたくなかったから。だけど、祖父は父の提案を頑なに断り続けた。
私は幼心に、祖父がこの土地を愛しているような気がしていて、父に言われても祖父に引っ越しを提案できなかった。
「本当……。なにがおじいちゃんをこの土地にしがみつかせたの?」
石板に積もった砂を払い、水をかけて造花を供える。この炎天下、生花はさすがに持ってこれなかったし、そもそも多くの自然が失われた大地では花は凄く高価なのだ。
結局、祖父の態度が意固地に見えたんだろう。父は祖父と縁を切り、私にも会いに行くことを禁じた。もう五年になるかしら。
まあ、こっそり手紙のやり取りはしてたんだけどね。だから私に連絡が来たんだ。
乾いた、だけどいくらか涼しくなった風が町を駆け抜ける。ん、完全に陽が落ちる前に準備しなくちゃ。
「おじいちゃん、色々借りるよ」
一言断り、祖父の家に入る。
「こんなところかな」
完全に陽が落ちる前に準備は終わった。
死んだギルタインの街に電気は来ていない。水道も止まっているけれど、井戸が生きていただけ御の字だ。少なくとも身体は拭ける。
祖父の家から、まだ油の残っていたランタンをありったけ引っ張り出して裏庭を照らす。
埃をかぶっていたテーブルを拭いて墓の横に置き、近くに焚き火を用意する。日中の暑さが嘘のように夜は冷えるから、外にいるなら火が必要だ。幸い、燃やす物には事欠かないからね……。
「あー……ランタンいらなかったかな」
山の向こうから巨大な満月が姿を現した。十五~六年に一度だったかな、大地と月の距離が一番近くなる日に見られるスーパームーンだ。その明るさはランタンが不要になるくらいで、冷えた大地を冷たく照らした。明るすぎて星が見えないくらいだ。
テーブルに祖父の好きだった乾物を置き、やはり祖父の好きだったお酒を用意、缶の栓を開ける。
「私もお酒が飲める年齢になったんだよ」
冷蔵庫なんて機能していない。井戸水でお気持ち程度に冷やしておいたお酒の缶を開け、ぐびりと……ケホッケホッ!
「あ、あ~……。もっと弱いお酒にしておけばよかったかしら。おじいちゃんってば、よくもこんな強いお酒を飲んでたわね」
乾物をかじり、お酒をちびりちびりとやる。
祖父はこの『お月見』という晩酌が大好きだった。今年がスーパームーンの年でよかったけれど、できれば生きている間に一緒したかったな。
『お月見はな、大地に取り残された月の兵士が始めたんじゃ』
『そうなの?』
『ああ。……今じゃ普通に行われているお月見じゃがな、もともとは、そこに見えるのに帰れぬ月を想って、兵たちが始めたものだったんじゃよ……』
ふと、昔、祖父のお月見に付き合った時に聞いた話を思い出した。
戦争が終結した後、大地に取り残された月の兵たちは苛烈な残党狩りに追われたと聞いている。多くの兵が殺され、わずかな生き残りが大地の民のふりをして各地に潜伏したらしい……と祖父は言っていた。
祖父の話が本当かどうかわからないけれど、帰れぬ故郷を想いながら酒を飲むという話は実にありそうで、私は好きだった。
「ひょっとしたら今この瞬間にも、別の場所で故郷を想いながらお酒を飲んでいる月の兵の生き残りがいるのかしらね……」
祖父の墓に語りかけながら、私は静かに晩酌を続けた。
「え!? ちょ、ちょっと待ってくださいーっ!」
予想外のアナウンスに私は席を飛び出し、運転手に声をかけた。
「以前はギルタインの街まで行きましたよね。私、そこに用があるんですがっ」
「あー、お客さん。いつのお話をされているのかわかりませんが、ギルタインはもう廃墟で誰も住んでいないんですよ。そこまでバスを走らせる必要はないんです」
「なんとかなりませんか?」
「勝手にダイヤを変更するわけにはいかないんですよ、諦めてください。グワンラガ山入り口です、お降りのお客様は────」
「お、降ります降ります!」
席に取って返し、リュックを背負い、折り畳み式のサイクルを抱えて出口に向かう。
「えっと……いくらです?」
「どこから? ……あー、アンデルトからだと3400イルダンだね」
少ないとはいえ私以外の乗客もいる。急いで財布から卑金属で作られた3400イルダン分の硬貨を取り出し、料金箱に放り込み、乗客の視線に追われるようにバスを降りた。
ありがとうの声もなく、赤茶色の土煙を巻き上げてバスがUターンしていく。まだかろうじて残るアスファルトの上、陽炎に溶け込むように遠ざかるバスをしばしボンヤリと見送った。
「……予定が狂ったわ。バスは……うえっ、1日に1便しかないの!?」
崩れたアスファルト、崩れかけのバス亭。それらがなければ荒野のただ中に置いてかれたようにしか見えない私。
鉄パイプに金属板を打ち付けただけの、間に合せの時刻表を見れば、バスは1日に1便しか来ないらしい。昔来た頃は、まだ1日に3便はあったはずだけど。
いや、まあ、ここはバスが通るだけマシなのかもしれないけれど。
遠く、バス停の名でもあるグワンラガ山が茶色の壁のようにそびえる。その麓、埋もれるように点在する人工物から数本の煙が立ち昇っているのは、まだここに人が住んでいる証だ。
もっとも、バスの本数が露骨に減ってる。ここにバスが来なくなる日も遠くないのかもしれない。
「……感傷に浸ってる場合じゃないわね。夜までには着かないと」
折り畳んであったサイクルを展開し、リュックから日よけ用の厚手のマントを取り出して身を包むと、私はアスファルトの残骸を辿るようにペダルを踏み込んだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
昔、大きな戦争があったという。
国と国とではない。ここ大地と月とでだ。
夜空に浮かぶあの月に人間が住んでいたなんて信じられないけれど、昔は空飛ぶ巨大な船が、それこそ何隻も大地と月とを往復していたらしい。
歴史の教科書に書かれているから事実なんでしょうけど、お伽噺にしか聞こえないわね。今は空飛ぶ乗り物すら苦労しているっていうのに。
そんな、お互いに行き来するほどの間柄だった大地と月がどうして戦争することになったのか……。残念ながら、理由は判然としない。戦後のゴタゴタで資料が散逸してしまったのか、もしくは────。
「残したくなかったのかしらね」
私が生まれるはるか前の出来事だ、真実が明らかになることはないのかもしれないわね。
その戦争がいつ始まり、何年続いたのかはわからない。だけど終結したのは、今からちょうど60年前なのはわかってる。
といっても、終戦協定が結ばれたわけでもないらしいのだけれど。なぜかといえば、今から60年前、月が突然沈黙したからなんだそうだ。
原因も理由も不明。その時すでに大地には月にまで行ける船が残っていなくて、確認することができないまま今日に至っている。
つまり、大地と月の戦争は、うやむやなまま終結したわけだ。世界に消えない大きな傷を残して。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ふう~っ。なんとか陽が落ちる前に着いたわね」
どれくらいペダルを漕いだのかしら。赤茶色に染まった腕時計を拭って確認すると……うわ、四時間か。道が悪いから速度が出せないのよね。水の予備が無かったら危なかったわ。
忘れられた道を走り、たどり着いたのは、かつてギルタインと呼ばれた街。赤茶けた山の麓に張りつくように存在している街だった場所は、砂に侵食されて、半ば自然に還ろうとしている。
昔は……それこそ戦時中は鉱山の街として相当賑わっていたと聞いたけれど、もはやその面影もない。戦中に鉱脈が枯れ、衰退の一途を辿ったらしい。戦中戦後、大量の物資が必要なのに肝心の鉱物が出ないとなれば、ね。
だけど、そんな衰退する街を、祖父は離れようとしなかったのだ。
「おじいちゃん……来たよ」
街の外れ。小さな工場のような建物が祖父の家だった。玄関脇にサイクルを置き、マントの土埃を払って裏手に回ると、石板が置かれただけのシンプルな墓が二つ、私を待っていた。
刻まれた文字が見えないほど風化した方は祖母の、そして真新しい石板に刻まれているのは間違いなく祖父の名だ。
祖父逝去。
その手紙が届いたのは三ヶ月前のこと。差出人は祖父の古い友人で、父宛てでなく私宛てに送ってくるくらいには、我が家の確執を知っている人だった。
祖母が亡くなったあと、父は何度も祖父に一緒に住もうと提案してきた。こんな滅びを待つだけの町に、祖父を一人で住まわせたくなかったから。だけど、祖父は父の提案を頑なに断り続けた。
私は幼心に、祖父がこの土地を愛しているような気がしていて、父に言われても祖父に引っ越しを提案できなかった。
「本当……。なにがおじいちゃんをこの土地にしがみつかせたの?」
石板に積もった砂を払い、水をかけて造花を供える。この炎天下、生花はさすがに持ってこれなかったし、そもそも多くの自然が失われた大地では花は凄く高価なのだ。
結局、祖父の態度が意固地に見えたんだろう。父は祖父と縁を切り、私にも会いに行くことを禁じた。もう五年になるかしら。
まあ、こっそり手紙のやり取りはしてたんだけどね。だから私に連絡が来たんだ。
乾いた、だけどいくらか涼しくなった風が町を駆け抜ける。ん、完全に陽が落ちる前に準備しなくちゃ。
「おじいちゃん、色々借りるよ」
一言断り、祖父の家に入る。
「こんなところかな」
完全に陽が落ちる前に準備は終わった。
死んだギルタインの街に電気は来ていない。水道も止まっているけれど、井戸が生きていただけ御の字だ。少なくとも身体は拭ける。
祖父の家から、まだ油の残っていたランタンをありったけ引っ張り出して裏庭を照らす。
埃をかぶっていたテーブルを拭いて墓の横に置き、近くに焚き火を用意する。日中の暑さが嘘のように夜は冷えるから、外にいるなら火が必要だ。幸い、燃やす物には事欠かないからね……。
「あー……ランタンいらなかったかな」
山の向こうから巨大な満月が姿を現した。十五~六年に一度だったかな、大地と月の距離が一番近くなる日に見られるスーパームーンだ。その明るさはランタンが不要になるくらいで、冷えた大地を冷たく照らした。明るすぎて星が見えないくらいだ。
テーブルに祖父の好きだった乾物を置き、やはり祖父の好きだったお酒を用意、缶の栓を開ける。
「私もお酒が飲める年齢になったんだよ」
冷蔵庫なんて機能していない。井戸水でお気持ち程度に冷やしておいたお酒の缶を開け、ぐびりと……ケホッケホッ!
「あ、あ~……。もっと弱いお酒にしておけばよかったかしら。おじいちゃんってば、よくもこんな強いお酒を飲んでたわね」
乾物をかじり、お酒をちびりちびりとやる。
祖父はこの『お月見』という晩酌が大好きだった。今年がスーパームーンの年でよかったけれど、できれば生きている間に一緒したかったな。
『お月見はな、大地に取り残された月の兵士が始めたんじゃ』
『そうなの?』
『ああ。……今じゃ普通に行われているお月見じゃがな、もともとは、そこに見えるのに帰れぬ月を想って、兵たちが始めたものだったんじゃよ……』
ふと、昔、祖父のお月見に付き合った時に聞いた話を思い出した。
戦争が終結した後、大地に取り残された月の兵たちは苛烈な残党狩りに追われたと聞いている。多くの兵が殺され、わずかな生き残りが大地の民のふりをして各地に潜伏したらしい……と祖父は言っていた。
祖父の話が本当かどうかわからないけれど、帰れぬ故郷を想いながら酒を飲むという話は実にありそうで、私は好きだった。
「ひょっとしたら今この瞬間にも、別の場所で故郷を想いながらお酒を飲んでいる月の兵の生き残りがいるのかしらね……」
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