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アレだよ、アレ。…って、なんだっけ。
各々ネタバレすればいい
しおりを挟むジャンさんが言ったように、俺たちはあまりにも互いのことを知らなさすぎるかもしれない。
サリーくんが使った、精霊魔法のこともそう。そもそもで、そういう魔法をサリーくんが使えることに驚いた。
きっとそれは、俺だけの話じゃないはずだ。
「アペルのことは、大賢者っていうこともあって…と、いろいろ目の前でどんどんやらかしてくれるんで、かなり知ってることも多いんですが」
ジャンさんが言ったことに、ちょっと待ってよと止めにかかろうとすると。
「あー…それは同意っすね。コッチから聞くまでもなく、いろいろ手の内を明かしてくれるし、感情が顔に出やすいからわかりやすい」
「それがアペルだな、うん」
サリーくんもカムイさんも、揃ってそれに補足説明みたいなもの付けてくるし。
「ちょ…っ、それは言いすぎじゃ」
面白くなく思って、文句のようにそう言えば三人して「えー?」みたいな顔を向けてきた。
「なんでみんな、そんな顔してんのさ」
思わず言い返すと、「だってな」「ねえ」「ですよね」と連係プレーのような会話が続く。
「アペルほど、わかりやすいやついねぇだろ」
カムイさんがどこか呆れた顔つきで、俺を見て薄く笑う。
「だから付きあえるってとこもあるけどな」
って、言葉を結んだ。
「それっていいことに聞こえないんだけど」
バカにされてる…とも言い切れない。実際、バカにされてるのかもだけど。
俺がそう言えば、ジャンさんがゆるく首を振る。
「こういう世界で生きてきてないアペルだからこそ、擦れてなくてホッとするんですよ。なんていうか、裏表がないっていうのはかなりレアなんです」
ジャンさんがそう切り出せば、うなずきながらサリーくんがその続きのように話を振って。
「俺たちがいる世界って、ようするに身分が結構モノをいうことが多いんすよ。だから、互いに腹の探り合いとかものすごい遠回しな物言いで相手を貶めるとか。それが日常化したとこにいたら、アペルみたいなレアなタイプに出会うとホッとするっていうか癒されるっていうか…面白いっていうか。ねえ、カムイさん」
話を振られたカムイさんはというと、チラッと右上の何もない空中へと視線を向けてから。
「確かに面白ぇな、アペルは。毎日一緒にいても飽きないくらい、何かしらやらかしてくれる」
俺をからかうようなことを呟き、笑った。
「……なに、これ。俺を評価する会かなにか開催されてるわけ? 誰得なの、これは」
ため息をつきつつそういえば、「だれとくってなんだ」とカムイさんがすぐさま聞き返してくる。
ああ、向こうの言葉でわからないことあったら聞いてくるいつものやつかと思い、答える。
「誰得っていうのは、誰にとって得なのって言葉を短くしたもののはず。だから、今の会話だと俺にとって得はなさそうなのに、誰が得するような話題なんだよっていうツッコミね。そういう意味で使ったの、今」
俺がそう説明をすると、ジャンさんが一番反応して何度もふんふんとうなずいている。
「面白い言葉がいろいろあるんですね、アペルがいた場所は」
「大した言葉じゃないでしょ、今のなんて特に」
「いやいや、こういう小さいものだって文化の違いというかそういうものは楽しいですよ。また気になる言葉が出てきたら、俺も質問してもいいですかね」
カムイさんが聞き返してきたことは過去にあったけど、ジャンさんからっていうのはそこまでなかったかもな。
「それは別にけど、大した面白さはないと思うのに。…それでもいいの?」
俺は元の世界でいたって普通に使ってきた言葉たちだから、何とも思わないけど。それでも、興味を持ってくれるのは悪くないよな。
「十分!」
ジャンさんがあまりにも嬉しそうに笑うもんだから、まあいいかと思ってしまった。
「無意識でいろいろ口にすると思うから、その都度聞いて?」
「了解です」
ジャンさんとの会話になっていた俺。その会話に二人が割り込んでくる。
「おいおい。元々俺のポジションだろ? それは。取ってんなよ、ジャン」
「あー! 俺だって質問したい! 俺もいいよね? ね、アペル」
でもそれは嬉しい割り込み方だ。
「……ふ…くくくっ。いいよ? みんな、気になったことは聞いてよ。俺もわかんないことは聞くと思うから…その都度教えてね」
また一歩みんなに近づけたみたいで、なんだか嬉しいや。
と、カムイさんが手を叩く。パチッと。
「さーて、恒例の脱線した話を戻す時間だ」
注意がそっちに向き、全員で互いを見合って苦笑い。まただったなぁと……。
「じゃあ、話を戻しましょうか」
最初に話を振ってきたのはジャンさんだったから、コレは正解か。うん。
「俺たち、互いの手の内を把握しなさすぎですよね。話せていないのが原因でもありますが」
どこか申し訳なさそうに、ジャンさんが言う。
「ナンバーズを辞めてから、今の環境に馴染むまで。十分時間はあったはずなのに、そのあたりの話をしてきていなかったなと…。大事なことだったのに、失念してましたね。全員」
そう言ってから、軽く頭を下げた。
「ただ、言えないことも互いにあるのも事実で、俺も言えないことが少なからずともあります。様子を見ていたとも言いますか」
それはあるだろうなと、なんとなく思ってた。さっきのサリーくんの様子もそれに近かった。
「気づいてはいたけど、時期が来たら知ることになるかなーって思ってたよ? 俺は。全員に対して気になることなんか、あれもこれもって書き出していったらいっぱいある。…でもさ、まだ信用も信頼も足りてないだろうし? 俺の方が助けてもらってばかりだし? だから尚更教えてもらうには、まだ…って思われてるんだろうって」
思ってはいたけど口にせずにいた思いを、口にしてみる。
「それに、互いの生活環境の違いで出てくる知識や経験の差とかは、そう簡単に埋められないものでしょ? だから、そういうとこで生まれる差を互いにどこまで埋めたり活かしたりするかっていう匙加減みたいなのが難しいなって」
と俺が言えば、「生活環境の差、すか」とサリーくん。
「うん。きっと多分違うでしょ。それぞれで、かなり。ましてや俺は別の世界から来たから、かなり違いが出るとことろは出るもんだしね。……俺がいたところ、そこまで身分の差ってのはなかったから。仕事上の階級っぽいので、アレコレあったりはするところはあっただろうけど。そこまでひどくではないんだよね」
地球でのことを思い出して、こっちの人にもわかりやすそうに言葉を噛み砕く。他にも言いようがあるかもだけど。
部長とか課長とか言ったって、わかんないだろう? あと、こっちでの王族がいわゆる皇室とかの関係なんだとしても、この国のそれほどじゃない気がした。
「…ふうん」
興味深そうにうなずいたのは、サリーくん。
「じゃあ、その手の話も含めて互いについて話していく時間を設けましょうか。…ね? ジャンさん」
そして、改めてどんな風に話をしていくか…提案をして。
「そう、だね。うん。…みんなのこれまでのことで話せること。それから、みんなが持っている…現状で明かせる能力とかあったら把握しあって、必要に応じて助け合おうよ」
ね? と、カムイさんの方を向いて首をかしげれば、「わかったよ、アペル」と子どもをあやすみたいな感じで撫でられた。
「撫でなくっていいだろ? この流れで」
とか言いながらも、カムイさんに撫でられるのは嫌いじゃないんだよね。実は。
撫でてくるその手を払うこともしないんだから、俺。しばらくそういう愛情表現みたいなものに飢えてた弊害なのかな。
すると、その後にサリーくん。続けてジャンさんまでもが、順に俺を撫でてニコニコしている。
「……これ、誰得? 頭、撫でられすぎてハゲちゃうんだけど」
俺がそう言えば、三人が揃って口にした。
「「「俺得に決まってる」」」
って。
「得してるって思えないんだけど」
恥ずかしくなってきて顔をそむけると、三人とも俺を見て笑ってる。そして「また脱線したな」とカムイさんが声を殺しながら笑った。
「っていうか、話が長くなりそうだから、食事しながらか…それか採掘すませてから家でのんびり話すかにしない?」
多分、この調子で話を何度も脱線させながらになりそうだから、時間は長くかかるんだろう。
俺がそう切り出すと「それもそうですね」とジャンさん。
「じゃあ、これについては後にして、状況に応じて自分が役に立てることがあれば極力申請…で、詳しくは後で…ということでどうでしょうかね」
「言い方が、いちいち硬い」
「真面目か」
「ジャンさんらしいっすけどね」
三人で思わずツッコまずにはいられないジャンさん。
「そう…ですか? うーん。……だいぶ砕けてきたと思ってるんですけどねぇ」
本人も気にしていたっぽいな。
「じゃあ、これからに期待だね」
ふふ…と笑いながらジャンさんにそう言い返せば、どこか照れくさそうに笑ってごまかされた。
「ということで…! 採掘の方を優先しましょう、ひとまず」
そして、話を戻したのはジャンさん。
「おう」
「了解っす」
「だねー」
俺たちがそんな会話をやり取りしている間も、視界の中でサリーくんの肩に乗っかっているライラという精霊は、ずっとずーっとカムイさんを何度もチラ見していた。
「それじゃ、採掘だけどよ。…さっきの魔法が一部使えるのと使えないのがあるあたり、採掘にかかわってる気がすんだよ。……なんつーか、なんかが邪魔してるってか」
と言ったと同時に、カムイさんがホーンラビットの姿へと変化する。ってことは、さっきのレーザーとかは人化しないと使えないって制約がある技なのかも。
ピョンピョンと跳ねていき、いろんな方向の壁に向かって角を向けては首をかしげる。
「角がよ。……反応してる途中で途切れて、すぐにまた反応するとか。何かがあるのはわかってんのに、じゃあなんなんだって感じで」
「……鑑定とか、効かないな。素材探しの時のナビって、素材を確定してなきゃナビしてくれないから、それも使えないみたいだよ。カムイ」
「あー…やっぱそうか」
いつものようにいつものやり取りをする俺とカムイさん。
「ちょっと待った! そこのお二人!」
サリーくんが思わずと言った風に、小走りで俺とカムイさんの方へ駆け寄ってきた。
「ちょっとずっと引っかかってたんすけどね…その姿になってるのが採掘に関係あり?」
あれ? 説明してなかったっけ。と思いながら、ここに来るまでのやりとりをザックリ振り返る。
カムイさんと採掘の話をしてて、ホーンラビットの方がいいって話をしてたタイミングだかで一緒に行きたいって話になったんだっけな。
それと、アノ市にいたの? って話にもなって、採掘の時の俺とカムイさんのお約束みたいなものに関しての説明…って。
「あ! 説明、一切してなかった!」
「…だっけ?」
カムイさんは話が通じてるつもりだったみたいだ。
「まともに説明してないや、他の話になってる。採掘の話の後」
「…マジかー。じゃ、よくわからん状況でとりあえずくっついてきたって感じか。…聞きたいことあったら聞いてもよかったんだぞ? サリー」
カムイさんがそう言えば、サリーくんが「だってさ」と話を切り出す。
「ほっといても、いろいろ見せてくれるだろうから問題ないかーって思ってた」
俺のやらかし前提だったか。
「ジャンも聞きたいことあった? 何か気にしてた?」
ジャンさんの方へと目を向ければ、「まあ…はい」と笑むだけ。
これは思ったよりも、疑問を投げかけるの我慢してたっぽいな。悪いことしちゃった。ついてきてもらう側の俺から、採掘に関連することとして説明が必要なことは情報共有しなきゃだったのに。
彼らに直接影響がなきゃ説明がいらないかな? と思っても、それは結果だけでいえばこっちの都合や感情優先で。先に二人に話を振って、聞いておきたいってなったら話せばよかったんだ。
どこか二人を置き去りにしちゃってたな。これじゃ、一緒にいてってお願いした意味ないじゃん。
「…ほんと、ごめんね。二人とも」
ぺこりと頭を下げてから、二人に向き合って告げる。
「お互いのこともそうだけど、今日は先にここでの話をさせてもらってもいい?」
胸の前でギュッとシャツを握るようにこぶしを作れば、ジャンさんが一歩踏み出してきてまた俺の頭を撫でる。
「そんな表情しなくていいから、説明って形で十分なので話してもらっても?」
呟いている間、ずっとジャンさんのイイコイイコは続いていた。一体何往復撫でたんだ。
「…もう。わかったってば、ジャン」
と言って、撫で続ける手を掴んでそっと外す。
「じゃあ、地べたに座るのもアレだし、人数分のイスの大きさに分けようか。このクッション」
落下してくる人向けで大きさを調整していた、あのクッション。それに手をかざして、応接セットじゃないけど人数分のクッションを用意する。
「ライラ…のは、どうしたらいい? サリー」
俺たちが話をしている間、ずっと黙ってサリーくんの肩にいた彼女。カムイさんへの視線は変わらずだけど、今からまた話をする時間になるだけに、その存在をほったらかしにするのはちょっと嫌だなって思った。
「あたしは、サリの肩に乗ったままでいい。寝転がりたくなったら、サリが座ってる横の方で勝手にゴロゴロしちゃうから」
サリーくんにくっついていはいるものの、俺へ向けて返事をくれたのが嬉しくてすこし顔がゆるむ。
「俺はいいっすよ」
「でしょ? サリだったら、いいって言うと思った。ふふっ。サリ、大好きー」
「うん、うん。俺も大好きだよー」
あー…これも気になる。ライラがいない時に聞いたら、答えてくれるかな。そのキャラ、なーにって。
聞きたいことをひとまず飲み込んで、これまで二人に逆に飲み込ませていたんだろう疑問に答えていく俺とカムイさん。
俺が持ってるスキルっていうか能力のナビの存在。錬成に絡んで必要なものがあって素材のナビが可能なら、矢印が出て教えてくれること。ただし、何か他の素材と一緒になっていると、それが出来ないことが以前あったこと。
カムイさんの角には、俺のナビとは違う感覚で素材があったら熱くなって知らせてくれるってこと。
ちなみに、カムイさんの角も素材として過去に使わせてもらったことがあること。
そのついでで、俺とカムイさんの出会いの話もした。
いつものことで、そのついでの話がいわゆる話が脱線した系になるんだけどね。
そこで俺同様に、カムイさんの強さを感じているらしい二人も、どうしてカムイさんが瀕死状態だったのかが気になったよう。
「そのうち話すって言っただろ? ……っっ! わかった、わかった。…三人してんな目で見てくるなよ。ったく。じゃあ…さっきのそれぞれの話するやつあったろ? …俺の話からでもいいか?」
思わぬところで、カムイさんの話が聞ける状況にもっていけた。俺もずっと気になってたからね。
「カムイがいいなら、俺も…聞かせてほしいって…」
しつこくなりすぎない程度に言葉を濁してそう言えば、「知ってた」とカムイさん。
「伊達にお前とリンクしてねえんだよ。従魔契約してるとな、いろいろなんとなく他の奴らよりも察せるみたいでよ」
どこまでリンクされるのか、まだわかってない部分はあったんだけど、カムイさんがあえて言わないでいたのかな。
それを知ってても、言わずにいた。…ってことは、言えない理由があったか、言いたくなかったか。他の何かか。
「…それを話しても、カムイには…何も起きない? 困らない? 悲しくなったり苦しくなったりしない?」
急に不安になってそう問いかけると、カムイさんの視線が何故かライラの方へと一瞬向いた…気がする。
首をかしげながら、カムイさんの言葉の続きを待つ。
「ちょっとだけ。…ちょーっとだけ、驚かせるってだけだ。俺の素性ってーか、過去に関係ありまくる話だからな。そこそこ長い話になるぞ? 眠たいやつは、即離脱になるぞ」
話の途中で寝ちゃうとか、絶対に嫌だ。
「昼寝っていうか、仮眠してからにしよう! 絶対!」
俺がそう言い切ると、カムイさんがゲラゲラ笑って「ガキかよ」って言う。
「うるさいよ、カムイ」
「ガーキ、ガキガキ、ガキアペルー」
「んぐっ」
ムカつきはするけど、これも多分ワザとだね。どんな感情かわからないけど、ごまかそうとしてる。だから、あえてその挑発に乗る。
「カムイの方が、ガキのくせに。二歳だろ? 二歳。お子ちゃまじゃん」
「はぁあ? まーだ、そのネタ引っ張るか」
「悪い?」
「悪いね! ったく、ガキはこれだから」
「ははっ。お子ちゃまはすぐに食ってかかるよねー」
「あぁん?」
「なにさ」
なんてやりとりを数回したら、「ま、いいけどよ」って感じで終わった。
俺もそれに倣って、笑うだけで終わらせる。
「なんだかんだで仲いいっすよね? 二人は」
サリーくんがボソッと呟いたそれに、「でしょ?」と俺は返す。
と、なぜかまたジャンさんがクッションを下りてまでして、頭を撫でてくる。…なんで?
「ってことでさ、採掘に関しての話は多分これで終わりかなって思う。質問あったら随時受付中でーす」
片手を少しだけあげてそう呟けば、サリーくんが親指と人差し指で輪を作ってオッケーと示してきた。
「…ね、サリ。話は終わったのよね?」
不意にライラの声が割り込んできた。
「うん。一応ね。何かあった?」
サリーくんは指先でライラの頭を撫でながら、そう問いかける。
くすぐったそうに首をすくめながらも、顔が嬉しそうに笑ってるライラ。笑顔のままでサリーくんに、話を続けた。
「さっきのあそこのことなんだけど」
そう指さした場所は、カムイさんが落ちて、ライラによって穴を開けたところだ。全員その場所へと目線を上げて眺める。
「幻影魔法っていうか、アレ。…多分、ノームの野郎の仕業よ? 体重設定した仕掛けでしょ? 配置されてた仕掛けって」
パッと見てすぐにわかったのか。…すごいな。なんて感心していたら、補足説明が入った。
「その設定体重が、ノームの体重の平均値だもの。それ以上だとここに来られないってやつね? 自分たちの一族にプライドがあるノームらしいといえばらしいけどね」
ノームの体重、か。
ふ…とカムイさんの方を横目に見て、この姿のカムイさんはノームって人種と同じ重さというデータを頭に入れておく。新情報だ。
「今、俺の方をチラッと見たろ? アペル」
「ちょっとだけ?」
若干ごまかしつつ、微笑んでみる。
「………あとで憶えとけよ? アペル」
何でそこまで怒るかなぁ。
「って、ちょっと待って」
あれ? と思う。重たくて落ちるってことはよくある。仕掛けとしてはしやすい。…のに、逆。それはずっと気になってた部分だ。
そして、ライラが今…言ったよね。ノームってプライドが高いって。そのノームの体重の範囲以外は入れない場所。入ることを許されない…とも言う?
「え? それってもしかしてだけど……何かを隠しておきたかったか、ノーム以外に入らせたくはなかった? その場所が、ここ?」
ブツブツとひとり言を言いはじめた自分に気づきもせず、「いや…でも同じ体重の誰かが入ってきた時の対処って?」とかイコールの先にたどり着くまで呟く俺。
「あーぁ。魔方陣の解析や構築とおんなじ状態に入ったな、あれ」
「ですねー。…落ち着くまで待ってましょうか」
「だな? って、アペルがさっきから言ってることについての話し合い程度はするか」
「了解です。…ね、ライラ。アペルが言ってること、聞こえてるよね? 関係してそう? それとも大ハズレ?」
「まあ、合ってるといえば合ってるけど、まだ完全に正解じゃないわ。…って、なーに。この人。大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、すごく集中して考えているだけだから」
「…ふぅん。……でも、あたしが口にしたわずかな情報だけで、ここまで考えるって自体が面白い生き物だわ。この…えーっと」
「アペルだよ。憶えてね? ライラ」
「わかったわ。正直、サリが誰かと仲いいのは面白くないけど。…で、あたしから正解は言わなくていいのね?」
「……アペルがこれでどう? って聞いてきたら、教えてやってくれるか? ライラ」
「あ……っ、の、はい……了解、です」
「え? …ライラ? どうしたの? カムイさんは、怖い人じゃないよ? そんなに恐縮しなくてもいいのに」
「や…、あの…うん。大丈夫。怖いとかじゃ…ないから」
俺がうんうん考え込んでいる間に、こんな会話がかわされてて。ライラとカムイさんの間に流れる空気の不自然さに、ジャンさんとサリーくんが俺が早く落ち着くのをものすごく待ちわびていたなんて気づきもせず。
「あ! ってことは、こういう考えもアリか!」
ある種の暴走をして、みんなの方へと視線を向けた時。
「今日は長すぎだ、アペル」
カムイさんが呆れた口調で呟いた言葉に、心底そう思ってましたって顔をされることになった。
「……重ね重ね、ごめんなさい」
そうして答え合わせの後に、ジャンさんからその状況を説明してもらうんだけど。
(俺が気にしたことは、間違ってなかったんだな)
と確信して、後で聞くことの一つにそれも加えることにしたんだ。
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