おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~

ハル*

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アレだよ、アレ。…って、なんだっけ。

今日も、ゆる…っと

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気づけば、あの謁見の日から二週間経過。とある日の朝。

トーストしたパンで、サンドイッチっぽくいろいろ挟んだある意味ホットサンドが、今朝の朝食だ。

正式名称までは知らないんだけど、これはたしか父親が好きだったはず。休日に、俺と母親は普通のサンドイッチで、父親がそれで。

めんどくさくないの? と聞いた俺に、母親はなんでか嬉しそうに微笑むだけで答えてくれなかった。

もしかしたら、思い出の食べ物とかだったのかな。叔母さんに聞いてみたら、教えてくれたんだろうか。

それとコーンスープに、フルーツが入ったヨーグルトもつける。飲み物はお好みで。

「仕組み上、無理だって知ってたけど…俺の魔法で細工可能だったかもなのにな」

ふ…と思い出して、ヨーグルトの中のフルーツを食みながら、いつもと同じことをボヤく俺がいる。

「まーた言ってんのか、アペル」

「だってさー」

「お前がいた場所のその手の仕組みがどんなもんかわかんねえけどよ、終わっちまったもんはどうしようもねえもんだろ? 後付けでやれることがあんなら、話はまた別として」

カムイさんから慰めなのかよくわからない言葉を聞くのも、何回目かわからない。カムイさんは、ある意味ホットサンドのそれは、すでに4つ目。ずいぶんを気に入ったよう。

そんな俺とカムイさんの会話を聞き、ナナさん改めサリーくんが腕を広げた。

「アペル! モフります?」

さん付けは距離があるみたいで嫌だし、関係も変わったんだからと互いに呼び捨てになった彼が、尻尾を振りつつ笑顔で俺を待ってくれている。モフる・モフらない…が、日常使いの言葉になりつつあるのが怖い。

「…もうっ。サリーは、またそうやって俺を甘やかそうとする」

嬉しいような甘えちゃダメになりそうで怖いような…という気持ちのままに、横目でサリーくんを見ていれば。

「おい、アペル。俺を抱えながらサリーに抱きしめられると、全身まんべんなくモフモフじゃねぇか? …やっとくか?」

サリーくんのそれに便乗して、カムイさんまでもが俺を誘う。

「……俺のはモフモフじゃなくて、スベスベでしたっけ」

その傍らでコーヒーカップをテーブルに置き、なんだか悲しげにイチさん改めジャンさんが、毛が短い自分の尻尾を撫でていた。

「癒しにならない俺の体…。いつもながら、役に立てなくて…」

「ちょ…っ、待ってよ。そういうのばかり求めてるわけじゃないってば」

俺が慌ててそう言ってみても、カムイさんとサリーくんは互いに見つめ合ってから「嘘ばっかり」とニヤニヤしてるだけ。

「誤解しないでってば」

とか言い訳をする頃には、さっきまで凹んでいたのがずいぶんと軽くなっている。

これは叔母さんの口座にメッセージ付きの送金をしてから、時々口にしてしまう話。

どこぞのメッセージアプリだと、既読になったなってないがわかる仕組みになっている。

普通の銀行の口座は、振り込みになった・なってないくらいは把握できるとしても、本人が間違いなくその金を俺からの入金だと知った上で引き出したとかまでは把握不可。

だから、せめて前者の方だけでも叔母さんの目に触れたのかを知る手立てを、魔法に事関してはチートなんだから…元の世界の仕組みにはないとしても何かできたんじゃ? と考えてしまったわけで。

叔母さんの目に触れたのか、読んで俺だってわかってくれたのか、安心してもらえたのか。

(もしも、叔母さんが数文字だとしても俺に一言を送信したくなったとしても、手立てがない)

元の場所で使っていたスマホがどうなっているのか、現状はなにもつかめていない。

叔母さんがいつもの調子で、俺のスマホあてに送信でもしてるかもだけど、ハッキングするってんでもないし…やりようがない。

それと、向こうとこっちの時間の進み方がイマイチつかめていないのも、その辺が難しい原因かもしれないや。

「…やっぱ、腕の中に来ちゃいます?」

サリーくんが、指先についてたパンくずをパンパンと軽く払ってから腕を広げる。

「アペル…俺を抱いてもいーんだぞ?」

カムイさんは、食べかけていたヨーグルトの器をテーブルに戻してまで…だ。

というか、2人のセリフが不穏…。

「筋肉しかありませんが、俺も選択肢に…」

ジャンさんまでもが、そこに参加してくる。

「だ、大丈夫だってば。心配かけてごめんって!」

どういう構図だよ。何も知らない人たちが見たら、どんな関係だよって誤解しか生まない。

「朝ごはん食べたらさ、また素材の採掘に行きたいんだけど。行ってきてもいい?」

それまでの会話をなかったことにする勢いで、今日の予定を口にする俺。

「…急だな。で、どこ行くつもりだ?」

「わかるかな、カムイなら。あの山…なんだけど」

そう言いながら思い浮かべたのは、カムイさんと向かった山だ。モリオンって石を掘りに行った山。

「あー……、あそこか? もしかして。普通にいけば、そこそこ時間がかかった場所だろ。ましてや、アノ市にいた時に行ったじゃねえか。あの時よか距離あんぞ?」

カムイさんはすぐにあの山だって気づいてくれたようで、話が進んでいく。話が早くていいな。

そういえばそうだったなと思い出しながら、自分の転移がどの範囲まで可能かを確かめてから。

「一回行ったから、思い浮かべたら転移できるってさ。マーカーつけてたっけな、記憶ないんだけど。あとは、カムイの角頼みなんだけど…付き合ってくれる?」

マーカーをつけていると、ゲームでいうところのセーブポイントみたいな感じになる。すっごく楽。

「ってことは、石関係か」

「うん。あの時、あの洞窟の入り口を塞いできたじゃん? あの洞窟、奥の方にまだ何かあるんじゃないかって思ってさ。それにあの洞窟もどこかに繋がってないかなって思って」

「あー…はいはい。じゃあ、この格好のままでいいな、俺は」

「のが、石関係の時は助かるよ。ちゃんと抱いてくから、カロリーも消費少ないでしょ」

「カロリーってのがよくわかんねえけど、必要なきゃコッチの姿の方が便利だしな。…いいぜ、付き合ってやる」

カムイさんと、これからの話をしていたところで、ふと視線を感じて横を向く。

「なに? ジャン」

ジャンさんが首をかしげてこっちを見ているもんだから、なんだろうと問うと。

「アノ市にいたんだっけ…と、思って」

そう話しながら、ジェスチャーでコーヒーのお代わりを求めてきたジャンさん。

「ミルクはなくてもいいの? また」

そう確かめると、欲しいかもとあいまいな返事だ。

「じゃ、添えるから好きに入れてみて?」

カフェオレとかラテとかじゃないなら、自分で調整してもらった方がいいや。

「おかわりどーぞ」

「どうもです。……ちょっとだけ、入れようかな。…うーん」

なんとも平和な悩みでうなってるジャンさん、可愛いや。

カムイさんとの旅の話の中で、どの街かとか…話してなかったっけ?

「うん。話、し忘れてたかな。召喚されてすぐにいた洞窟経由で、たどり着いたのがアノ市」

「ここから近からず遠からず、ですね」

不思議そうな顔つきで、俺を見ているジャンさん。ジャンさんも家族の誰か同様で猫舌かもしれないな。コーヒーに、すぐに口をつけないもん。

「あの街には、俺の幼なじみがいますよ」

「…へえ」

幼なじみか。なんかいいな、そういうの。

「カムイさん、カムイさん」

ジャンさんと話している俺の背後で、カムイさんに話しかけるサリーくん。

「その採掘、俺もくっついていってみたいんだけど。…ってか、旅っぽくならないけどいいの? これ」

サリーくんは、カムイさんに話しかける時だけ、まるでじゃれつく弟っぽくみえる。

「旅…は、そのうち場所を吟味してみてじゃねえの? その国の情勢とかもあるだろうしな」

「あ。意外と真面目な回答されて、ビックリしたー」

「お前なぁ。俺のこと、どんな奴だって思ってんだよ。…ったく。今日のに関しちゃー、行きたきゃアペルに交渉しろ。別に危ない場所でもないしな、あの山は。多分、問題ないんじゃないか?」

とか話しているのが耳に入って、ジャンさんと振り返った。

「俺も行きたいです、そこ。連れて行ってくれません? アペル」

サリーくんよりも先に、ジャンさんが俺に交渉してきた。

「あ! 俺の方が先だったのに。アペル! 俺も一緒に、いいよな? な?」

留守中に2人になにか頼むつもりもなかったし、予定がなきゃ誘うつもりではあった。けど、まずは重要なカムイさんの予定次第だなって思ってたから、結局は後手になっちゃった。

「2人も一緒に来てくれるの? じゃあ、手伝ってもらうことあるかも。それと、錬成…する時…! そういえば、サリーが前に魔方陣か錬成陣のこと知りたいとか言ってなかったっけ」

「あ。憶えててくれたんすか? てっきり忘れてるとばかり」

「憶えてたけど、その手のタイミングなくて。やっぱりこういうのって実践込みじゃなきゃ、覚えにくそうでしょ」

と俺が言えば「確かに、そうかもな」とサリーくん。

「じゃあ、今回の錬成の方。その勉強会も兼ねようか!」

「予想よりも早くて、嬉しい! あ、イチさん…じゃなく、ジャンさんは?」

イチさんとナナと呼び合っていた時間が長かった二人は、互いへの呼び方を変えるのにまだ慣れないようで、時々こんな感じになる。

「錬成出来る出来ない別にしても、話は聞いてみたい。あの、広場で宰相向けにブレスレットを錬成で創った時は、距離もあった上にあっという間すぎたし、錬成陣を見るどころじゃなかったしな」

「ですよねー」

なんだ。ジャンさんも興味自体はあったってことか。そういうの、あまり口にしてくれないもんね。興味あることがあったなら、これから俺が一緒にいることで互いに学べることは学びあえたらいいな。

「じゃ、勉強会ついでの採掘かな」

って俺が言うと「勉強会がメインになったな」とか、カムイさんが笑った。

本当の旅に出るのは、もうちょっと後。備えあれば憂いなしって状態にしておきたいしね。

それと、この家を離れてもあの仕組みが使えるようにしたくて、この国と近隣国の国も絡めた広範囲でいろいろ過ごしやすくするために準備をしている最中。

時計があれば、決済自体は出来るようにしてあると鈴木のおじさんが言ってた。その部分は、俺がいなくなる間の段階で、近隣国とも話は出てたよう。

っても、んな話、知らないからさ。ここから逃げる前の時は。

居場所を知られたくないってこともあったから、きっと時計があっても使わなかったとは思うけど、あんな出来事がなきゃ結構な範囲で俺の生活は守られるはずだったんだな。

(ほんと、あんなことがなきゃ…)

キュッと唇を噛む。

俺にあの時のことを背負わなくてもいいと2人は言ってくれたけど、忘れることは出来ない。

生きてく中での分岐点の一つだったんじゃないかと思えるくらいに、俺の胸の奥にしこりみたいに残ってる出来事だったから。

「泊まりか? 日帰りか?」

カムイさんが話を振ってくる。

「あ、あぁ…。そうだなー。行ってみて、もうちょっと奥までってなれば、泊まりもアリかな? と。だから、特に食事の方の準備はしておくよ。寝る方は、カムイと2人きりの時同様で、あのクッションと結界でどうにかなるよ」

「水は常にあるしな」

「そうそう。装備は必要ってほどでもないけど、念のために最低限の装備だけは…って思ってるんだけ…ど。……あー、その辺は2人に丸投げでいいか」

魔法ならいざ知らず、剣などの武器に関していえば本職に任せた方がいいだろう。

「いっすよ。テキトーに準備しとくんで」

「じゃ、まかせまーす」

そう話しながら、今日の朝ごはんは終わる。

一日三食を3人に出してみて、ちょっとずつ好みがわかりはじめる。食べ物に飲み物に、お酒に。

両親と一緒の時は自分の好みを知ってもらう側で、2人が亡くなってからは叔母さんがその役をしてくれて。

社会人になってからは、そういうことに気が行くこともないし、誰かと一緒にいる時間も取れなかったから自分が食べたいものを食べるだけだった。

高校生の時に短い期間だけど、彼女っぽい子がそばにいたことがあったし、それなりに友達もいたはず。

でも、あの頃の俺も、そんなに誰かの好物に合わせて飯を食うって感じじゃなかったっけ。

(もしかしてそういうのもあったから、あっという間に別れちゃったのかな。相手の子に、あたしに興味ないんでしょ? って言われてもいたし。…ダメな彼氏だったのかも)

そんなことを思い出しながら、この後の出先で食べられるモノの準備をする。

出来れば好きなものを持って行ってあげたい。俺の用事に付き合わせちゃうんだから、喜んでくれるようなものの方がいいよな?

「…パン、出すんじゃなかったな」

ポツリと呟く、小さな後悔。

こういう時のランチメニューに、サンドイッチはうってつけだったろうに。

ま、でも…パンだけがこういう時の弁当向けってわけじゃないことも知ってるしな。

ベタなおにぎりランチにしよう。

何種類かの具材で、おにぎり。それから玉子焼きは、だし巻きと甘めのと分けて。今日の俺は甘い方がいい気分だ。

タコさんウインナー、ポテトサラダ、唐揚げはしょうゆベースと塩。個人的には、竜田揚げが好きだけど、それはまた別日にしよう。

茹でたブロッコリーも、たまに食いたくなるんだよな。他にももうちょっと、それっぽいおかずを持っていこう。

それと…うーん。デザートはどうしようかな。

「カムイ。あの山って、木の実とかあったっけ」

「どうだったかな。その辺の記憶は、あんまねぇな。…どうかしたか?」

「あー…いや。デザートをね? 現地調達にするか持っていくかってだけの話」

「…アペルなら、その辺の山に大抵なってるぞ」

「じゃあ、ナイフあったら大丈夫…か」

「あ! 俺、剥けるっす」

「ほんと? じゃ、頼っちゃおうかな」

「じゃあ、デザートだけは現地調達。万が一で、飯が足んなくなったら、アノ市でもここでも転移して、飯食えばいいしな」

「まあ…なるべく時間かかりすぎないようにするよ」

と、俺とカムイさんの会話にサリーくんが入ったりもし、今日の食事についていろいろ話していたんだけど。

キンッと高い金属音が鳴ったと同時に、「準備完了」とジャンさんの声がした。武器の準備が終わったみたいだ。

帯剣しているジャンさんの立ち姿は、何度見てもただただカッコイイという言葉に尽きる。俺の語彙力がないせいもあるけど。

それに…カムイさんもだけど、ジャンさんも結構いい声なんだよね。

背も高いし、気づかいもできるし、カッコいいし、声もいいし、所作もキレイだし、カッコいいし。

「ん? なにか?」

ジャンさんが俺の視線に気づき、首をかしげて俺を見てる。

俺は無自覚でモテそうでいいよねーという気持ちで見つめつつ、カッコいいよねと言おうとした。

…のに、出てきたのは別の言葉で。

「ジャン、モテそうで腹立つ」

とかいう、謎の拗ねた言葉で。

「え?」

「へ?」

「なん…?」

「は?」

ジャンさんは、何を言われたのか? と何で言われたのか? が不思議というか困惑しているような顔つきをし。

俺はといえば、そんなことを言うつもりなんかなかったのに、なんで出た? っていうのと、どうした俺! っていうので混乱していた。

「…心の声か、アペル」

カムイさんが、ボソッとツッコミを入れてくる。

「ち、違っっ!」

「まあ、実際モテましたよ? ジャンさんは」

サリーくんが、ジャンさんのモテ実績を報告をし。

「は? お前…っ、何言ってんだ。俺は怖がられることはあっても、モテたことなんか」

サリーくんの報告に納得がいかないと言わんばかりに、ジャンさんがすぐさま反論する。

「知らぬは本人ばかりなりって話ですよ。連絡先を明かすわけにもいかないって相手に伝えたら、アナログな手紙攻撃が何度あったか。俺以外にも何人かジャンさんにって、手紙を頼まれたのがいたはずですよ。俺はご自分で渡してくださいって言っちゃう方でしたけど、受け取っておいて捨ててるのもいましたね。だから、一時期、手紙をその辺に捨てるような人って噂があったの…もしかして知らないです?」

ジャンさんの反論に、ナンバーズの時のことだろう出来事を話すサリーくん。話は初耳だったようで、ジャンさんは愕然としていた。

「…俺。そんなもん、もらったことねぇぞ。立場上、どうしても威圧していなきゃいけない場面が多すぎて、そういうのを好まれないんだろうなって思っていたのに。…誰だ! 俺宛ての手紙を捨てた奴は」

ガッカリしながらも、憤りは収まらないよう。

「…さあ。誰だってでしょうかね。ジャンさん。ナンバーズの時は敵が多かったから、仕方がなかったかと」

サリーくんが、すこし憐れむように笑みを浮かべ、ジャンさんの肩にポンと手を置いた。

「これから出会いがあるように、祈っときます。…ね?」

って、言いながら。

「……これからのどこに出会いの場があるっていうんだよ、お前」

そんなサリーくんを、恨めしそうに見つめるジャンさん。

「旅先で、とか?」

大きな口で弧を描きながら、サリーくんが告げる。

「そうだよ! 旅先でなら、ナンバーズの時のジャンを知らない誰かと出会うかもしれないよ!」

俺もその言葉に乗っかって、ジャンさんを励ます。

「……出会い、あります? ホントに?」

「今日の採掘では無理でも、近々別の街に旅に出るから! ね?」

意外だ。

ジャンさんが、こんな感じで恋人を欲しがる気持ちを言葉にするとも思っていなかったから。

ま…ぁ、あれだよね。それなりにお年頃…だもんね。恋人の1人や2人、欲しいって思わないわけがないか。

「ジャン」

不意にカムイさんがジャンさんを呼ぶ。

「…なんですか、カムイさん」

猫背になりつつあった背を伸ばしつつ、ジャンさんがカムイさんへと向き合う。

「焦って、おかしな女を掴むなよ?」

カムイさんはそう言うと、面白そうにクツクツと笑った。

「……気をつけます」

相変わらずで話は脱線したりもするけれど、話をしながらも採掘の準備は整えられていく。

「さーて…準備いいか? お前ら」

カムイさんのその声に、サリーくんが肩を揺らして笑う。

「ここんちの家主感もあるけど、リーダー感もすぐに出てくるし。…見た目、こんなんなのに。カムイさん、面白っ」

と言いつつ、ホーンラビットの姿のカムイさんを指さす。

「…置いてくぞ」

「あ、嘘、ごめんなさい!」

そのやりとりを横目に、俺は声をかける。

「…もう終わった? 二人とも」

って。

「おう」

「…カムイさーん」

こんな感じで、転移陣の準備をしていた俺の方に、徐々に集まってくる三人。

「じゃあ、山の案内を。アペル」

ジャンさんの声に、小さくうなずいてからみんなに笑いかけて。

「うん。行こうか、みんな」

俺は転移陣を発動した。



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