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ここはどこ、俺は誰?
みんなで
しおりを挟む王城の控室の場所をあらかじめ聞いておき、そこへ転移。
そして、案内人の声に従って、謁見の間=大広間へと向かう俺とカムイさん。
肩に乗せているカムイさんには、何となくカッコつけたくて紺色のリボンを結んでみた。
ものすっごく嫌がられたけど短時間だからという理由と、可愛さが割り増しで俺が喜ぶからつけてという謎のゴリ押しで着けてもらえた。
とはいえ、首元が苦しい、邪魔くさい、十分に可愛いのにまだ足りないのか? などなど…大広間に向かうまでの間、ぼそぼそと愚痴を耳元で囁かれ続けることとなった。
「…ごめんって」
「二度とこういうの着けねえからな?」
文句を言いまくるカムイさんだけど、首のまわりのモフモフしたところの下部分にゆるく結んだだけだから、そこまで苦しいとかないのにと思う。
「わかったってば、もう」
何度目かのそのやりとりの後に、大きな扉の前へとたどり着く。
ゆっくりと開かれた扉の向こうには、国王陛下、鈴木のおじさん=宰相さん、上位貴族とかの部類っぽい服を着たのが20人ばかり、それとナンバーズにナンバーズの新しい上司っぽい人もいた。
魔法課のローブを羽織ったのも数人いて、あれだけゴッソリ人員がいなくなったから大変だろうななんて思いつつ、それだけの参加者の間を歩いていく。
真っ赤なじゅうたんが敷かれたそこを歩いていく先で、国王陛下と鈴木のおじさんが階段を下りてきた。
目の前の二人にも罰を与えて、三日経過している。親友でもなく悪友でもなく戦友でもなくなった二人。
二人で過ごす毎朝の日課は、やっぱりなくなったんだろうか。その二人に対して家族はどんな顔をして、おはようって言ったんだろうな。
ほんの少しの罪悪感を抱きつつも、顔には出さず。そうして、二人と向き合う俺。
国王陛下から俺への挨拶に始まり、先日の魔法課への罰についての話があり、その後…今回俺からこの場を設けてほしいという話をいただいたというところまでを会場にいる連中に向けて説明が行われる。
説明をしているのは、鈴木のおじさん。国王陛下は、その横で偉そうに突っ立ってるだけだ。
「…して、大賢者殿」
長ったらしい説明が終わって、やっと俺へ話が振られた。
「今回のこの場を設けたことについてだが」
と、切り出したところで、俺はブンブンと大げさに手を振った。
「ああ…そういうのめんどくさいから、普通に話そ。…話も短くすむ内容だし」
と俺が言えば、わずかな間の後に「承知した」とだけ返してきた国王陛下と鈴木のおじさん。
返事の言葉すら、俺が伝えておいた言葉そのままだ。よし、よし。
「俺の今後について、だ」
「今後、か」
国王陛下が、そこだけを繰り返す。
「そう。…大賢者としてそっちが何を求めているのか知らないし、こっちも知ったこっちゃない。…けど、力がある者は力なきもののために力をふるうべきと俺は考えている。…だから、何か有事の際には力や知恵を貸すことは構わない」
今回、召喚してこの国にって形で来たけど、近隣国の方にもこの謁見は映像で流れるようにセッティングをしておき、周知の事実という感じでこの謁見だけで情報の共有が完結するようにした。
(ってことは、イチさんの出身国にも映像が流れるってことだよね)
なんてことも考えながら、話を進めていく。
「…が、通常時は、普通に過ごすことくらい望んだって良かろう? 漂流者として異世界から俺のようなものを召喚して何を求めているのかそちらが明かさないのならば、それくらいのワガママは通しても何ら問題がないはずだ。事実、ここに召喚されて以降、バカどもに襲撃を受けるまではそのようにして過ごしていても、特に問題視もされずにいたはずだ。…実際、漂流者に関して伝えられたのは『ただ、ここにいてくれさえすればいい』ということだけだったろう? …ならば、基本的にはそれに従わせてもらう。国からすれば、単純に予算を使ってくれという話だった。……その点は相違ないか? 宰相さんよ」
不遜な感じで問いかければ「相違ない」とだけ返してくる宰相さん。…うん、こうして見ているとあのクッションでうひゃひゃって騒いでいたのと同じ人とは思えないね。やっぱり。
「…ならば、そちらのその最低限の願いを聞き入れた上で、こちらの要望を叶えられる案を…今日、提案をしにきた」
俺がそう切り出すと「どのような?」と国王陛下が聞き返す。
「……ナンバーズから二名、俺への監視の意味も含めてもらい受ける。今後、この国だけじゃなく他国にも赴き、知見を得たいと考えている。俺はまだ、この世界については知らないことが多すぎる。もちろん魔法についても、だ。その際に随行するものとして、二名をナンバーズからいただこうか」
「二名、とな」
「…ああ。イチ、ナナ。この二名を指名する。その際にかかる二名への給料、生活費含めて諸経費についても俺向けの予算からの支出に加えるように。そうすれば、俺だけで大して減らないと頭を抱えていたはずの予算も減るわけだ。国は俺の監視が出来る上に、腕の立つこの二名ならば護衛としても使え、大賢者をどう扱っているかも表向きわかりやすくなるはずだ。かつ、召喚の理由の一つだろう予算も使える。そちらが損をするような内容ではないはずだ。…この場で結論を。国王陛下」
そこまで話してから、俺はその場からすこし離れて話し合いの様子も見守る。
(…のついでに鑑定してみたら、こんなことがわかるとはね)
うーん…と小さくうなってから、カムイさんに話しかけた。
「…第一段階でピアスのアレ、調節して待機してもらってもいい?」
ひそひそと囁きあう俺たち。
「どーしたよ」
「あの偉そうな人たちの中に、他国と繋がっているのがいてね。…カムイを盾に、俺と交渉するのを待ち構えてるんだよね。どういう形でカムイさんに接触するのかわかんないんだけどさ。…あの話、行ってないのかな? ナンバーズのバカ上司が、誰の何の攻撃を受けてああなったのか…ってさ」
見たら、一人や二人じゃなく、思ったよりもまとまった人数が他国と繋がっているようだ。
こういう機会でもなきゃ、俺って人物に絡むチャンスないから、どうにかしてここに紛れ込んだって感じか。人質のようなものがなきゃ、交渉できないとか…言葉とか会話って意味がないのかと思えてしまう。
(国王陛下が決めたのか、鈴木のおじさんが決めたのか。俺の話を周知させるための場にしては、ずいぶんな人選だったんだな。ついでにめんどくさい奴らを一掃しようとしてるってことかな? もしかして)
察しがよすぎると思っていいのか、それがハズレとなるのか。この後の展開次第だな。国王陛下と宰相さんの関係が変わったのが原因なのか、違うのか。
「…………カムイ」
「んー? どした」
「…会話って、意味ないのかな」
言葉を交わして、自分を知ってもらい、相手を知り、そうして関係を構築していくもんじゃないのかな。
「…言葉を扱うやつ次第だろ」
カムイさんは、とにかく俺と何でも話してくれるし、俺の世界の言葉で知らないことがあれば知ろうとしてくる。その距離の詰め方が、俺は嬉しく思える。
「…難しいね、誰かとつながるって」
ポツッと俺が呟くと、ちょっと間が空いてからカムイさんが、俺の肩に乗ったままで頬をすり寄せてきた。
モフモフが、気持ちいいや。
「…慰めてくれてる? もしかして」
あえて言葉にした俺に「んな、優しくねえよ」と素っ気ない言葉を返すカムイさん。
その言葉ですら優しさだってばさ、カムイさん。
この場のメンバーにバレないように、こぶしで口元を隠しつつ小さく笑う。嬉しさで顔がゆるんじゃうよ。
「大賢者殿、一つだけお答えを」
国王陛下が、俺の方へと振り向く。
「…なに?」
とだけ返せば、この姿について聞かれた。
「今後、この姿で過ごしていく。何に髪が反応して色が変化していたのか知らないが、あの姿になることは二度とない。俺の髪色を目安にしていただろうことが、今後は不可になる」
「…それは」
と言い淀む宰相さんという名の鈴木のおじさんに、当たり前の話をする俺。
「たまったま俺の髪色が変わって、それをどう判断するのかまでは知らないけれど、まるで顔色を窺うように関わられちゃ困るんだよね。態度を見てるだけで気分も悪いし。……ってか、元々さ、そんな風に相手の様子を伺って付きあうもんじゃないでしょ? 会話をしたり、相手の顔色や体調を気にかけたり、普段の相手の態度の差に違和感があるかないかを考えたり。……そうしていく中で、どうやって付き合っていくか近づけるかって創意工夫していくのが…誰かと繋がるってことじゃないの? 俺は髪色一つで距離を置かれたり近づかれたりするよりも、互いに自分が吐いた言葉で相手に近づきたいのか否か…を判断してく関係を望みたい。だから……髪色はこのままだ」
相手が抱えているような不安を、俺が一切感じていない訳じゃない。俺だって、不安といえば不安だ。
ましてや、元の世界で孤島のような部屋で黙々と作業していただけの、コミュニケーションとは無縁に近い男だったからな。いろんな意味で不安なのは、俺も同じだ。
「聞きたいことは、それだけ?」
俺がそう聞き返すと、国王陛下は宰相さんと目配せをするだけ。まわりにいる奴らは、ただガヤガヤと意見にもならない言葉を吐きあうだけ。
「……他に何もないなら、決定で。…それとも他に何か?」
俺がそう言った時、一瞬、肩が軽くなった。
「…あ」
俺が結んでほしいとお願いしたリボンを握られ、カムイさんの体が後ろへと引っ張られた。
振り向くと、そこに誰の姿もなく、バランスを崩したように宙に浮くカムイさんの姿があるだけ。認識阻害か透明化かなにかか? 自分以外にその手の能力を持っているって意識がなかったかもしれない。ミスった!
「カムイさん!」
とっさに叫んだ俺に、「だから言っただろ」とカムイさんの呆れたような声が聞こえたと同時に、ドカンッ! という音と謁見の場を白く光らせるような稲光が走った。
「ギャアッッ!」
「うごっ!!!!」
「グッ!」
声がしたのはまだいいとして、稲光が収まったと思えば、足元には10名ほどの人やら獣人やらがゴロゴロ。
揃ってみんな白目をむいて、気絶している。
(一番弱くって言っといたはずだけど、もしかしてこれって二番目だった? 光り方も結構激しかったよね)
とか思いながら、カムイさんの方を見ると俺が見る前から顔をアッチに向けているんだけど。…ドウイウコト?
彼らに鑑定をかけ、まわりにいる輩にも改めて鑑定。
「……ここまでが、そっちの思惑? それとも何も知らずにこの場に呼んだの? コイツら」
闇魔法で捕縛をし、近くにいた護衛に連れて行くようにと風魔法で放り投げた。
国王陛下と宰相のおじさんに声を低くして聞けば、ここまでの人数になっているとは把握しきれていなかったよう。
「しっかりしなよ、アンタら…この国の一番上なんじゃないの? それとも俺に頼る気満々で、気を抜いていた?」
とか聞けば、半分は合っていたみたいで、言葉に詰まってた。
「そんな状態でいるつもりなら、有事の際にも手も知恵も貸さないよ? 誰かの力だけに寄りかかる国なんか、亡びた方が早いでしょ」
そう言って、カムイさんへと手を伸ばす。
「リボン外すね? 本当にごめん、嫌がってたのに」
指先でリボンを摘まんで、しゅるっと結び目を解く。
「この状況を予測して、ワザと結ばせたのかと思ってたけどな」
「そんなつもりなかったよ。…カムイの可愛らしさも、もっと周知されたらいいのにって思ってただけで」
「…はいはい」
「…本当にごめん」
「わかったって。…んな顔すんな? コイツらがバカなだけで、お前はそうじゃないだろ? …なら、いいや」
そうして、カムイさんをまた肩に乗せる。
「――――で、コッチが伝えた要望は、全部飲んでくれるよね? っても、俺の方がアンタたちよりも立場が上だったっけ? …なら、許可はいらないんだよね? …イチ、ナナ。…来い」
俺がそうやって2人の名を呼ぶと、ナンバーズの列の中から二人が抜けて俺の前へと跪いた。
「えー…っと、あのバカ上司が抜けた後のトップはアンタだっけ?」
顔だけ新しい上司とかいうやつに向けて、俺が決定事項として伝える。
「新規のナンバーズの試験を二か月以内に行うように。2人が抜けた後は、早めに埋めた方がいい。引継ぎが必要な内容はなさそうだから、このままもらっていくよ? 現ナンバーズ。…その中にも、よからぬ奴がいるようだから、試験自体をやり直した方がいい。…まあ、試験だけじゃなく…しっかりと人選をするように。…頼んだよ?」
と告げてから、跪いている2人へと目配せをして立たせる。
「…行くよ」
「「はい」」
スッと立つ姿は、こういう場に合ってて、しかもカッコイイ。こういう所作が、しっかり身についているって感じ。
「鈴木」
おもむろに宰相さんを、そう呼ぶ。…と、場がざわついた。誰だ、と。
「連絡は、アレで」
とだけいい、認識阻害しているけれど、ブレスレットがついている手を指さした俺。
「…承知しました」
そして、頭を下げる国王の次に偉いだろう宰相。…という流れで、序列がハッキリしただろうか。
「国王陛下もな」
何かあったら、鈴木のおじさん経由で連絡寄こせと暗に伝える俺。
「承知しました」
オマケで国王陛下も呼んで念押ししたのに対し、ちゃんとお返事してくれた。よし、よし。
俺たちが赤いじゅうたんを踏みつつ扉まで歩いていけば、何も言わずとも扉は開かれた。
背後で倒れている奴らを除いて、全員が頭を下げているのがわかった。
謁見の場を出て、扉が閉ざされた。…とほぼ同タイで、「帰るよ?」の俺の言葉で帰宅だ。
転移をしたのが、俺の家の前。で、中に入るまでは気を抜かない。あの時のことがあるからね。
玄関に入り、順に上がっていく。俺を最後にし、ドアを閉めた。
「――――っっっはーーーっ!! つっかれたぁーーー!」
ローブを乱暴につかんで、その場で剥ぐように脱ぐ。玄関を上がってすぐの場所で、四つん這いの格好になったかと思えば、溶けたようにゆっくりと床にうつ伏せになっていく俺。その姿はまるでスローモーションみたいだったろうな。
「もー、やんない。二度とやんない。胃が痛い…。吐きそう。限界。ああいうの、マジでヤダ」
その場から自力で動くこともせず、寝ころんだままグチグチと文句を言い続ける俺。
「はいはい。…ナーナ、コイツ運んでやって? どうせまともに眠れてねえんだろ? 寝室でいいんじゃね?」
「はいはーい」
軽い返事の後に、俺をひょいと抱えて廊下を進んでいくナナさん。
「ごめんんんんー」
「いいっすよー」
「ついでに、着替えも手伝ってもらっていい?」
「いいっすけど、なんで?」
「なんか、緊張とけたからか、体の力が上手く入らないんだ」
「…気持ちだけじゃなく、体の方も脱力しすぎたんすね?」
「仲間にさせた初日に、本当にごめん」
「謝んなくていいのに」
「…なんか、カッコつかなくて情けないなぁ。俺」
とか話しているうちに、寝室に到着。ナナさんは、俺をそっとベッドに下ろしてくれた。
「パジャマはどれに? これ? それともこれ? ……それとも、これ?」
おもむろにクローゼットを開き、あれやこれやとパジャマっぽいのを手当たり次第に見せてくるのはいいんだけど。
「…最後のそれはパジャマじゃないってわかってて、あえて見せたでしょ」
あの黒歴史の塊みたいな服を見せるのは、マジで勘弁。
「あはは。この服たち、一体なんだろうって思ってたんすよ。…そのうち教えてほしいっす」
なんて言われたけどさ、ぶっちゃけそれはちょっと…ヤダ。
きっとあの日以降で、家の中をいろいろ見られたんだろうなって思ってはいたけどさ。知ってても、口に出さないで欲しかったのに。
「んー…気が向いたらね」
とかなんとか…ひとまずって感じで約束でもない約束をかわし、着替えさせてもらってからベッドに寝転ぶ。
「…って、なん…っ、で」
その後にしたナナさんの行動に、思わず言葉に詰まった。
「なんでって、約束したじゃないすか」
「え? なんの?」
さっきまでのことにプラスして、目の前の光景に動揺が隠せない。
「添い寝するって言ったじゃないすか」
そう言うナナさんは、大きな体をベッドに横たえている。
「モフモフさはカムイさんより少ないかもしれないっすけど、きっといい感触かと。…どうぞ! 腕枕つきです!」
ゴロンとベッドに横たわっているナナさんの尻尾が、ご機嫌なのかブンブンと振られている。
「じゃ、じゃあ…すこしだけね?」
寝転がっていた場所から体をズラし、ナナさんの腕に頭を乗せる。
「こういうのってどう乗せたらいいの? 頭乗っけてたら、血が止まったりしないの?」
若干、首を浮かせてぷるぷる震えながら。
「ブフッ」
その俺の姿を見て、ナナさんがふき出す。
「笑うなんてひどい」
「笑って…なんっ、ってない…しっ…ククッ」
「あ」
100パー笑ってるじゃん。
むぅっ…と膨れて、睨みつけた俺の頭を、ナナさんがそっとズラす。
「こう…やって、頭ってよりも首の下の隙間に腕を入れてんのが多いっすよ」
そして、腕枕での寝転がり方のレクチャーをしてくれる。
「される側じゃなくて、する側になったこともないんすか」
ナナさんのその質問に、頭の位置を調整しつつ答える。「ないよ」とだけ。
「暇があっただろう頃は幼すぎて、腕枕ってもんでもなかったはず。年頃になった時には、暇も相手もなかったから試せなかった」
苦笑いを浮かべながらそう言えば「じゃあ、初・腕枕っすね」なんて返されて、言われてみればそうだなとうなずく。
「どうっすか? 腕枕は」
改めて聞かれて、ナナさんの方に向いたり天井を仰いだりして具合を確かめた。
最後にグルッと体の向きを戻して、ナナさんの方へと向いてから答える。
「腕枕っていうか、フサフサ感が気持ちいいよ。心地いい」
嬉しさのあまり、笑顔を浮かべながら。
「……よかった」
って、ナナさんも同じように笑顔を浮かべてて。なんだかやけにホッとしたなぁと思ったら、気づけば眠りに落ちてた。
夢の中に半分足を突っ込みながら、2人の呼び方を変えたいなっていうのと話していた装飾品を創ることを思い出していた俺。
「イヤーカフ…それとも…」
夢の中で2人にいろんなものを手当たり次第、アレもコレもと創りまくって叱られて。
「名前…」
彼らの本当の名前を呼んで、夢の中で一足先に旅に出る。
行き先はずっと向こうの山を三つも越えた先の街。
「ご飯なに…食べ…っか」
その街の特産品を片っ端から注文をして、テーブルいっぱいに並べて、食べ比べをして。
「美味し…ふふっ」
楽しい時間をめいっぱい楽しんで。
――――元いた場所にいたら味わえなかった時間を、独りじゃなく4人で過ごす。
「…あっ! ナーナ! お前、何してんだよ」
とか、ナナさんの戻りが遅くて様子を見に来た2人に添い寝が見つかり。
「シーッ。今、寝たばっかなんすから」
それでも、気持ちよさげにニヤつきながら眠る俺を起こさないようにと、それ以上カムイさんは声をあげず。
「……何の夢を見てるんでしょうね?」
イチさんは、ニヤニヤしている俺の顔を覗きこんでは、笑みを浮かべていたらしい。
「さっきは多分…俺らに何創るかって感じの寝言で、その後はなんか食ってたっぽいっす。美味しいってニヤついてたし」
口を開けて眠る俺の鼻先を、カムイさんが角で軽く小突いて。
「一足先に飯食ってんなよ、おい」
文句を言いながらも、笑ってたらしい。
俺が目を覚ますと、すこし大きめのベッドに、全員でギュウギュウになって寝てて。
「あ……暑い」
しっかり抱きしめられた格好で寝ていた俺は、暑苦しさに愚痴を吐いた。
第一章~end~
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