おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~

ハル*

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ここはどこ、俺は誰?

「はい、おしまい」ってなる、手前。

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ローブを着てから、まずは認識阻害魔法を行使して姿を消す。

一応あの3人からは見えるように、対象外のマーカーをつけた。

そうして、浮遊魔法で浮いて空高く舞い上がる俺。それを見て慌てる3人に、人差し指で内緒の形を見せてから笑んで。

――攻撃魔法の方は、行使されるまでまだ猶予があると見た。

先に展開しなきゃならないのは、天候の方。こっちは、俺たちの思惑とかは無関係で自由にどうにかならない。嵐が来るっていえば、来るんだよ。

そういう状態になってしまえば、奴らが目論んでいたように状態を悪化させる魔法とかを使えば悪用できる代物ではある。

だから、今までよりもちょっとひどい嵐って程度で終わるくらいに留めさせなきゃ…なんだ。ま、今回にいたっては、俺の魔法でいろいろやらせてもらうんだけど…。

ってーことで、先にあの魔法陣をアイツらが仕掛けた魔法陣の上にコッソリと展開して、これも見えないようにしておこう。

結局は名前らしい名前がつかなかった、エアードームの貯水バージョンのアレ。範囲が範囲なもんで、マジでバカでっかい。違う属性同士で色が反応し合って、また黄色になったその魔方陣が一気に広がっていく。

今回はさっきまで俺とカムイさんがいた街の方にも影響があるって話もあったから、隣り合わせの街を含めて…合計6つの街をフォロー。思ったよりも広範囲。奴らが仕掛けた魔方陣は、この街のみのもの。さすがにそこまではやらなかったのか、やれなかったのか。

まだ雨が降っていないのは知ってるから、インベントリの方は開けないでいいね? 降り始めてから開けてみよう。

名前…アウラドームとかも考えたんだけどねー。オーロラっぽい感じがしたけど、まんまはなんか違うなってなって…決められず。で、現在…! ってなもんでさ。

あとは、風。軽減…ってくらいしか浮かばん。風力発電の仕組みでもあれば、そっちに回せるのにな。

…で。

これから一番問題になっているいくつもの属性の魔法陣を消してしまうつもりなんだけどさ、一気に消したと同時に犯人に向けて捕縛の闇魔法『バインド』が発動するようにする。アレもコレも阻害かけなきゃだから、なかなか骨が折れる。

捕縛っていっても、ただ動きが怪しいってだけの理由でテキトーに捕まえられないから、雨のように糸を垂らしておく。悪意にだけ反応して、相手の足元を絡み取る仕掛けにして。ここの調整が難しい。

感情に反応って、まるでウソ発見器みたいだもんね。…原理的にはそれに近いんだ、人の心の闇に反応する感じで設定。コソ泥とか火事場泥棒って類も捕まえちゃったらどうしよう。ま、捕縛は捕縛ってことで…よし、いい感じ。

俺から見たら、無数の糸が空から細かい光のようにも見える。…あのみんなに、キレイに見えてたらいいなー。感想…聞きたいけど我慢だ、我慢。今はそれどころじゃないってば。

捕まえた相手が今回のバカな連中だってのが確定した時点で、捕縛の糸に魔力を吸う効果を足す。ある意味、物理的に魔力を使えない状態にする。魔力が足りなきゃ、魔法なんか放てない。でも、枯渇するまでにはしない。枯れてしまった場合、命にかかわる事態に陥ることもあるってことくらい、俺だって知ってる。ちゃんと勉強したからね。

そして、ギリギリ生きていられる程度まで魔力を吸い取りながら、光魔法で脳の中の記憶を司る場所を弄れるようにセッティングだ。襟足あたりに仕掛けられるように設定だな。小さな魔方陣を準備していく。

場合によっちゃ、魔法を使えること自体忘れさせちゃう。…一時的にだけどね。我ながらえげつないな。記憶操作はダメだろ、記憶操作は。本当は使っちゃダメな系統。だから…使わせないでいてほしいな。

そのONもOFFも、俺の指先一つで行使可能にした。出来ればONにしないで済みますように…。

まあ、それも緊急性がよほど高い場合にだけ行使しよう。

さすがにいろいろやりすぎちゃダメだ。直接攻撃をしないまでも、人というか獣人としてというか、いろいろ使い物にならなくなったり、心を失くしてしまうようなトラウマを与えたいわけじゃないんだから。こっちは、さ。

で、魔法課のおバカさんたちだけに、イリュージョンをかける。性別反転の。しかもね…本人の好みとは真逆のタイプの。それの操作も関係するから、そのための魔法も重ね掛けになるから、さっきの記憶操作の魔方陣に仕込んじゃおう。仕込む場所は頭に近い場所なんだしね。

何人いるのかわからないから、捕縛対象の人数分でオートコピーがかかるようにしよう! いちいちコピーしてらんないもん。

捕まえた後に謝罪があったら、吸収した魔力は半分ほど返す。ゆっくり休めば、そのうち全回復。それと、イリュージョンも解除。捕縛に関しては、解除なし。事情聴取とかあるしね、謝ってきたってさ。やってることがやってることなんだから。

自分たちのプライドと能力をひけらかすために、この場所で生きている無関係で無害の命を軽視したんだ。

「…そう簡単に、許さないからね…っ」

じわりと怒りがこみあげてきて、上空で誰にも聞こえていないだろう呟きを吐き、空を見上げた。

真っ黒な雲が早足で駆けてくるようだ。一気に街へ迫ってくる様が、この場所にいるとよくわかる。

嵐よりも空に現れた魔方陣のことで騒ぎになっている感じの下の様子に、「さーて…っと」と言いながら両手の指を恋人つなぎかって感じで組み、そのまま腕をグググーーーッと前に向かって突き出しながら指を組んだままで手のひらを向こうに見せるようにすれば、手のひらや手首まわり、それと肩のあたりもすこしだけ伸びた気がした。

軽いストレッチだ。

「……ふう」

一息吐いて、阻害をかけていたものを解除する。上空にいきなり現れた別の魔方陣。透明なのにオーロラのように場所によっては色が違って見える。朝陽がのぼってきて、それに反射しているような錯覚をしそうになる。

そこに雨雲が一気に距離を詰めてきて、激しい風雨の音をさせて嵐が上陸した。

普通なら、雨や風が街を襲って街の民はそれに慌てふためく。元々の避難の予定よりも早く嵐が近づいた。ならば、間に合わなかったともっと騒ぎになってもおかしくない事態。なぜならば、雨も風も耳に入ってくる音だけならば相当の規模だとわかるほどだから。

なのに、街はいたって平和。ほんのすこしの霧雨のような雨が、お情け程度に降っているってくらいだ。

インベントリを開いてみれば、ものすごい勢いで雨水が増えては飲み水へと変わっていく。無制限じゃなきゃ、あっという間に満タンだったのかもね。俺だから、どうにか出来た…みたいな?

…と、その住人の中に、動きに違和感があるのがチラホラ見え始めた。

頃合いってあたりか。

隠すつもりがないのか、ただのバカなのか。それとも、ダレカに何をされたのかを自分の目で確かめたいのか。

一人だけは、正解が最後のやつっぽいのが透けてみえるような顔つきだ。嫉妬する奴は、わかりやすいや。

なら、ダレに何をされているのかを見ていたらいいさ。最後まで、ね。

すこしイラつきながら、ソイツから視線を外した。

「さー…て、っと。そろそろ認識阻害を外して、もっと嫉妬に塗れてもらおうかね」

真っ白いローブに身を包み、宙に浮いたままで姿を現わした俺。

何色かわからない髪色なんだろうけど、きっと派手なんだろ? 目立つ格好で、いきなり現れた俺がソイツらを見下ろして人差し指を立てる。

口角を上げて笑って見せてみたけど、高さ的に見えてるかどうか微妙だな。…ま、いいけど。

立てた指をツイッと動かして、魔法使いっぽく今から何かをしますよー? …な空気を醸し出す。

指先を動かしただけの動きで、彼らが展開していた攻撃特化の魔方陣を一つ残らず一瞬で消す。

消した後にエフェクトつけて、小さな星がきらめく感じにしてみたけど…どうかな。白だけじゃなく、淡いピンクとか紫の星も瞬いては消えて…みたいな。

「…ふ。面白くなってきた、不謹慎だけど」

一瞬で魔方陣が消えたことで、さらに対象者がハッキリした。こういうのが驚愕って表情か…憶えとこ。

そうしている間にも、雨と風はひどいままだ。

雨の対策はしてあったけど、風の方はあまりしてないからそよ風みたいのが範囲の中で吹きはじめた。

軽減だけだもんな、風は。雨みたいに流用性がないのが悩みどころ。マジで風力発電なり風車で粉ひくとかなんか、考えてないのかな。国王陛下さんとか、鈴木のおじさんとか。

雨水は着々とインベントリに溜まっていってる。何かの時にお使いくださいなって渡せる、内緒の水だ。この水に何かの効果が出るような付与をすれば、何かしらの交渉が必要な時の材料に出来るんじゃないか?

納品するかわりに、コッチのお願いも聞いてよ…みたいなアレ。

国王陛下との間に鈴木のおじさんが入ってるなら、使いどころがあった場合にはスムーズに渡せる。たまたまだったとはいえ、ナナさんの経由でつながりが出来てよかった相手かもしれない。

まだ、信用に足るかどうかまでは判断しかねているけど。

「……うるさっ」

一部の輩が、口だけ元気だ。ぎゃいぎゃいやかましい。

現段階で逃げる人は、役員とか警察とかギルドの職員とかの指示に従って一定の方向へと向かっている。逃げていない人は、誰で…ナーンダ?

「ってことで、確定」

垂らしていた糸状の光魔法と、地面からは闇魔法のバインドとで動けなくしていく。いろんな意味でね。

「…クッ! な、なんだ! 何が起きている!」

一番抵抗しているのは、あの魔法課の課長かなんかだな。もがこうが何だろうが、俺よりも魔力は下。簡単に解除できるような魔方陣を構築してませんので、あしからず。解除出来るだけのものがあればいいけどー。…ふふん。

「んで…ある意味、趣味と真逆の見た目になるけど、相手によっちゃそれが好みだとか勘違いするかもねー。…どんな相手がお好み、かな?」

魔力を吸いあげつつ、性別反転の魔方陣を行使する。例の記憶関係の魔方陣は、現段階ではONにしない。この後の展開次第。

魔力がどんどん減ってきて、魔力が少ない人から順に膝をつきはじめた。

「…って、え? まさかの展開なんだけど…どういう?」

ちょうど中間くらいの魔力保持対象者が膝をつきはじめたタイミングで、魔法課の課長までもが膝をついた。

魔力の総量とかで課長になったわけじゃないんだな、へえ。技術的にすごいとかそういうのでか? それとも、いわゆるお偉いさんの家系だからってだけでそのポジションにいた? …か、違う理由?

見た目は偉そう、すっごい魔法を使いそう。

でも、とりあえず魔力の総量は一部の部下よりも…下か。まわりにいる部下も、まさかって表情をして課長を見つめていた。

…ってくらいに魔力が少ないのに、なんかすごそうな魔法を俺んちへぶっ放そうとしていたの? あの日。どんなもんかわからないままだったけど、さほど魔力がないのに結構魔力を消費した可能性あったんじゃないの? いつまでも詠唱してたもんね。

あのまま詠唱をし続け、魔法を発動もしくは行使していたら? あの日、もしかしたら命の危機だって危ぶまれたんじゃないの? アノヒト。

(そこまでして自分を上にしたがる理由がわかんない。俺にはそんな崇高なものとか、矜持ってもんがないと思うから、余計に理解不能だ)

理解しきれない感情に、口元を歪めた。

魔法課の連中と、数人の何かしらのよからぬことを目論んでいたっぽい対象者が全員膝をついた。

と同時に、性別転換…っと。まるでリバーシみたいに、真逆の性別に…なぁれ☆

地上が、めっちゃざわついてる。

「…ぷっ。あっはははははは」

こんな状況下で腹を抱えて笑ってる俺は、まるで悪役みたい。上空にあった魔方陣を消して、空を覆うような魔方陣を展開させて、いろんな属性の魔法を自由に使いまくっているのにちっとも疲れた様子も何もない。

身に着けているものが真っ白なローブじゃなく、黒だったらもっと悪役感出たかもな。…でも、白の方が魔力も乗りやすいしいろいろよかったんだよね。

そんな真っ白なローブを身に纏った俺が、相手に何も言わず、聞かず。ゆっくりと地上におりていく。

こうしている間の相手の態度は、何も変わっていない。ずいぶんと余裕なんだな。

「……どーも、お久しぶり」

すこしの距離を取って、宙に浮いたままで話しかける。

「可愛らしい格好になれたね? …おめでと」

ちょっと煽るように、ね。

「お前は…っ」

そう言って、相手の視線の先はやっぱり俺の頭の方。頭を見てから、俺の顔を見る。…なんだろ、この様子見されてる感。地味にイラつく。

「自分らが何をやらかしたのか、わかってる? 何をやろうとしたのか、わかってる?」

警告とばかりに話しかけた俺に、ギャルっぽいのやら赤ちゃんっぽいのやら清楚系やら…いろんな顔をした魔法課の連中が言い返す。でも声も一緒に変えてないから、ふた昔前のオカマさんみたい。一人だけ声が高めなのがいるから、女の子っぽさが若干あるけど。

「お前は、無関係だろう!」

課長だろう女性が声を張り上げた。

「そうだ、そうだ」

「消えろ」

「邪魔をするな。折角展開したものが台無しじゃないか、何故消した」

「そうだ!」

「何故消した!」

何故って、そのまま放置しておくとこの街がマズいからなんですけど?

「お前のような奴が、余計な手出しをするな」

「この国には我らだけが在ればよいのが、なぜわからぬ」

えっと…最後の方のは、俺のせいじゃないなぁ。

チリッと種火のような感情が灯って、自分で思ってたよりも低い声で呟き出す俺。

「文句があるなら、国に言えばいいじゃん。街で暮らす人たちとかいろんなものとかを巻き込まないでさ。…言葉、話せるよね? こうして俺にくっだらない言葉を吐いているのと同じ口を使って、俺たちはここが不満ですって言えばいいのに。……ダメだって言われるのわかってるから、言わないクチ? それとも度胸も勇気もなくって、言えないクチ? どっちなのさ」

ため息まじりに、やれやれ感をたっぷり出しつつ正直な気持ちの一部をぶつけてみる。ほんとに一部ね?

「高い場所で見下ろしているだけの奴らには、我らの思いなど理解できるはずがないのだ」

あー、はいはい。話をすることから逃げる典型的パターン、きた。

「それってさ、一回でも話をした上で言ってる?」

ここは、ツッコまないとね。

「最低限、国から依頼をされた仕事をこなしていれば、たとえ国でも我らが行なっていることへの余計な口出しは無用だ。最低限のことすらこなしていないのならば、まだしもな」

「うーん。じゃあ、やっといてってことをやってさえいれば、殺人だって盗みだってやってもいいって法があるの? この国には」

と、俺が言い返せば、ブレスレット経由でイチさんの声が脳内に響いた。

「んなこと、ないですよ」

ハッキリと、まっすぐな声で。

ちょっとの間を置いてから、捕縛された見た目だけはいろんな女の子の奴らに話しかける。

「今、ちょっと調べたら、んなことないってわかったんだけど。…言ってること、おかしいよねー。なんか。偏っているっていうか、誰のために…何のためにその力を使おうと思えるの? 親? 兄弟? それとも単純に…私情? もしも最後のそれが当たってるならさ、国の機関に身を置かないで、勝手にやってなよ。好きに研究が出来る環境を使って、好きにやっていいよ? って国が言ったの? たとえ新しい魔法を開発したって、それで国を発展させたり誰かのためになってくれるなら…って予算を捻出して、研究のための環境を整えて、給料を払って…。……アンタらの趣味や承認欲求のために、投資してんじゃないと思うけど? その部署にいるわけじゃない俺ですら、それっくらいのことわかる。……無駄に知識や経験だけあったって、せまっ苦しい視野で世の中見てるだけじゃ…活かされるべきものが活かされるわけないじゃん。……ね、アホなの? アンタら全員そろって、ア・ホ・な・の?」

長々と講釈を垂れてから、地面に下りて捕縛されている連中の目の前で俺はいつものようにいつものことを始める。

念話でナナさんに話しかける。ブレスレットを使って…。

『シャーリーさんに、二人と同じもの送っちゃってもいい? 直接確認取りたいことあるんだ、本人とそのそばにいるだろう国王陛下に』

俺がそう話しかけると、『今、城の方にいると思いますよ。二人とも。多分、執務室あたり』と返事があった。

こないだ会った時に、万が一に備えてフルネームを見させてもらってある。多分、大丈夫。送れるはず。

『じゃ、ちゃちゃっと創って、送らせてもらいますね!』

と俺が言えば、『ちゃちゃっと…で錬成できる人、アペルさんくらいだって』と表情が見えそうな声がした。

自分がやらかしたんだろうことを自覚しつつ、錬成陣を描きこんでいく。

そうしてインベントリの方から、素材を取り出して錬成陣の中央に配置して…導火線のような線の先に発動のための陣を配置して…っと。

パンパンッと手を叩き、魔力を送って「よい…せっと、錬成っ!」わざとらしく言葉にして、奴らの目の前で錬成をしてあのブレスレットを創りだす。

もちろん、結界で覆ってあったから邪魔も入らなきゃ煙くもない。

出来上がったブレスレットのプレートの部分に、あの二人と同じように名前を刻印していく。

『Shirley』…と掘って、魔石の状態も確認してから、光魔法で大事に包んでからシャーリーさんの元へと転移させる。

郵便魔法みたいなもんだけどね。

即時即答が欲しいから、向こうが手にするまでの状況が脳内に映るようにしておいた。気が気じゃないもん。

『うおっ! なんだなんだ! 急に何か現れたぞ』

『シャーリー! 紅茶がこぼれてる!』

『ぬあっ! あっちぃ!! いや、そんなことよりも、これだ! なんだ、これは』

あー…、会ったことないけど国王陛下の声か? これ。一緒にティータイム? 朝っぱらから? すいぶんとのんびりしてんだな、おい。こっちは大変なんですけど。

『魔石だ、魔石…。……は? なんだ、何か音がしたぞ?』

『ワシには何も聞こえておらぬ』

『え? んな…バカな。こんなにハッキリ聞こえているぞ?』

とか聞こえたあたりで、つながったのが分かった俺。

『鈴木のおじさん、聞こえてます? アペルです』

『アペ、ル?』

なんだかたどたどしいな、おい。

『えーと、急ぎで通信機を送らせてもらいました。ちょっと早急に確認取りたいことがあったんで、今から言うことをそばにいる国王陛下に聞いてもらっていいですか?』

要約して念話で語りかける俺。パッと見、錬成を終えた後に無言でジッとしているだけにしか見えない俺を、あの輩がめちゃくちゃ睨みつけてきている。それと、口だけは元気だから文句ばっかり。

けど、言ってることが全然反省らしいものがない。マジで悪いことをしようとしたって理解してないんだな。

雑音になりつつある声を無視して、俺は鈴木のおじさん経由で国王陛下に尋ねる。

『目の前にいる、今回バカなことをやらかした魔法課の連中。全員魔法がまともに使えなくなってもいいですかね?  もしくは、魔法を使えたこと自体…忘れさせてもいいですか?』

と。

それは目の前の連中らから、それまでの彼らが縋りついてきたすべてを奪うことだし、国が今まで支えてきたすべてもを捨てさせることになるかもしれないことで。

鈴木のおじさんが、息を飲んだのを察して。

『申し訳ないですが、5分しか渡せないんですが…答えを下さい。さすがに事が事なんで、俺の一存で片をつけて事後報告はしたくないんで』

妥協案といっていいのか微妙な言葉を伝えて、俺は目の前で地面に膝をついたままの彼らを見下ろしていた。



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