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カレノコト 4※R18

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~水無瀬side~


クプリと濁った音がして、思ってたよりも熱い悠有の口の中の熱に眩む。

そんな場合じゃないってのに、思っていたよりも”それ”を欲しがっていたのを体で感じてしまう。

どうして…と言いかけて、言い淀む。

こっちへチラリと視線を向けたまま、頭を上下させたり口から離したと思えば舌先で弄んだり。

カリの傘の部分へと強めに舌先を押しあてて、その輪郭をなぞるように舐めあげていく。

そこを刺激されると、俺の腰がヒクンと反応するのを知っているから…そうするんだ。

(これをしているのは…悠有、で、合ってるのか?)

悠有だけが知っているはずの場所を攻められて、それでも疑いたくないのに疑ってしまう。

心の奥で、どっち? と。

なんだか浮気でもしているような錯覚。違うのに、悠有じゃないアイツだったらどうしよう…なんて思ったりもする。

「ね…瑞。後ろも…いいよね?」

解させてほしい時の、悠有の言葉だ。

その言葉にホッとした自分に気づき、複雑な感情を抱く。

悠有の体調的にも、そんなことをしている場合じゃないのに…とか、悠有の中に欲求不満があるからこうしてる? …なら、俺のせい? とか。

(ああ…もう、訳わかんなくなってくる)

最後までやるのかやらないのか、悠有は何も言わない。けど、そこを触らせろってことだ。

「するなら、ベッド行こうよ」

それだけは譲りたくないと言わんばかりに、彼の頭をそっと撫でる。

「おねがい」

そう言いながら。

最後までしないんでも、やるんでも、コトが終わった後にこんな場所でどうにかなりたくない。

それは悠有もだし、俺もだ。

ノリにノッた悠有は、俺を起き上がれなくするなんて普通にする。こんな場所で気を失うとか、嫌すぎる。

冷たくてかたい床で朦朧としたって、俺の家で誰がベッドまで運ぶって話だ。

「……はぁ」

かすかに聞こえたため息に、目を瞠った。

悠有が、このタイミングでため息なんか吐き出すか? ましてやこんな空気の後に、めんどくさそうにため息をつく意味はどこに?

「悠有…?」

眉間にシワを寄せ、悠有の肩をつかむ。

思わず肩をつかんで名前を呼んだ俺に、なんでもないよと言わんばかりに微笑んでみせてから、悠有は「早くおいでね」とだけ呟いて寝室の方へと消えていった。

「今の、なに?」

悠有でもなきゃ、ここんとこ悠有以外として出ていた誰かでもない。新しい誰か? 

「…俺、相手…出来んの?」

名札がついているわけじゃあるまいし、誰…とは決めがたい。結局俺は、誰相手に体を開く?

ゴク…と唾を飲み、悠有に投げ捨てられたバスタオルを洗濯機に放り込み、新しいバスタオルで体を拭く。急いで顔にも塗るものを塗って、寝室へと急いだ。

シャツと下着だけで、早足で寝室へ向かった俺が見たのは、悠有がベッドに…じゃなくベッドの横の床にペタンと座っているところだ。

「そんな場所に座っていないでもいいのに」

手を差し出すと、意外と強めに握り返してきたので、そのまま引っ張って立ち上がらせる。

「…っとっと」

立ち上がらせた悠有は、俺の手をそのままグイッと強めに引っ張ったかと思えば、ベッドに放るようにしてからパッと手を離す。

「わ…っっ! びっくりするじゃない、何するの? 悠有」

ギシッとベッドのスプリングが鳴って、妙な気分になる。

ベッドに倒れ込んだ俺。そこに、ベッドに片膝をつき、俺へと覆いかぶさろうとする悠有の姿が視界に入る。

よくわからないけれど、ちょっと様子を見るしかない。問題は俺の理性と本能のせめぎあいがどうなるかってくらい。

所詮三十路の男の体なんで、刺激を受けると多少なりとも反応するのは仕方がなくて。たとえ、悠有の様子がおかしいとわかっていても、反応だけはしてしまう。ガン勃ちするかしないかは別として。

「ね。瑞」

声と同時に悠有が、下着を剥ぎ取るように脱がせた。

そうして、半身を捩じったような格好でベッドに倒れ込んだ俺の足をつかみ、勢いよくガバッと開いた。その勢いで、上半身が仰向けの格好へと変えさせられる。

「俺ね…ダメなんだ」

俺と自分を呼ぶのは、多分悠有。

「瑞、抱きたい。こんな時なのに」

俺の足をつかんだままの悠有の手が、すこし冷たい。

「でも、悠有は体調が」

今日はやめとこうよと暗に伝えた俺に、悠有が唇を噛んで首を振る。

何度も何度も、イヤダイヤダと駄々をこねているように。

「明日、体調に問題がなくって、仕事にも行けて。それで元気に過ごせたら…しようよ」

体調のせいや色んな理由で休んでしまったことに、悠有は罪悪感を抱いていたはずで。これでヤることをヤッてしまって、その影響でまた体調を崩したらまた落ち込むだけだ。

自分が落ち込む原因を自分で何度も作ってしまう。いわゆる負のループに近いものだ。

「俺だって悠有に抱かれたいよ? でも…悠有の体が心配なのも本音だよ?」

言葉にした通りで本音ではある。でも、どこか悠有の状態を探ってもいる。それだって事実だ。

俺の言葉を聞いても、悠有は首をぶんぶん振るだけ。

「悠有? ちゃーんと言葉にしてって言ってるよね? だから、言ってよ。どうしてもしたいっていうなら、その理由を」

俺の中の悠有は、体調のことがあったら線引きしなきゃいけない時は出来るって思っていて。

だから、俺の質問への悠有が寄こした答えに俺は驚かされた。

「理由? そんなもの、一つしかないよ。俺だって……性欲がある、その辺の男と一緒なんだから。好きな相手を抱きたいって思って、何が悪いの」

重めのトーンで吐き出されたのは、いたって普通の男の主張だ。

「体? わかってるよ、んなこと。わかってるけど、それでも………」

と…ためらう様子を見せてから、吐き出すように告げた。悠有らしくなく、顔をぐしゃっと歪ませて、何かに怒ったような顔つきで。

「自分でもおかしいって思ってるよ! 具合が悪い時になんで勃っちゃうのか! って。でも体が欲しがってるんだ、瑞のことを。舐めて、触れて、つまんで、挿れて、瑞のあの時の声聞かなきゃ、落ち着けない! 抱かせてよ! 瑞! じゃなきゃ……じゃなきゃ……”ボク”は」

途中まで悠有の叫びのような言葉に、心臓がギュッとつかまれそうな気持ちになってた。

――のに、最後の最後で違う意味で心臓がひゅっと冷えた。

「…ね、お願い。瑞。瑞は俺のだって、感じさせて」

俺の足を強く握りながら、ボロボロと涙をこぼす悠有。

「俺の…でしょ?」

「え…」

「違う……”ボク”の」

「…え」

どう反応していいのかわからなくなる。

混乱して固まる俺に、どっちのかわからない悠有の姿をした誰かが呟いた。

「も…いいよね。抱いても」

急に冷静な声でそう言われて、言葉が上手く出なかった。

つかんでいた足首のあたりから、冷えた手が体の中心へと肌を撫でながら上がっていく。

「…こんな状態の自分を見せつけておいて、勃ってほしいとか…浅ましいなって思ってるよ。んな場合じゃないのも、自分を想ってくれる人の気持ちを無視してるようなのも呆れちゃうよ。実際、ね」

淡々と、冷静に自己分析でもしているかのような呟きが続く。

「それでもね、瑞。その体に甘えさせて? どしても…もう、限界だよ。……もう、瑞に触れなきゃ、一番奥に吐き出さなきゃ…自分を保てる自信がないんだ」

独り言みたいに呟いてから、俺のシャツに手をかけて一気に脱がせていく。気づけば、どこも隠せない状態にされてしまった。

ふぅ…と息をついてから、悠有の手がまた体に触れはじめる。

腹筋のあたりから、悠有の指先がそっと撫でるようにたどって行き、やがて胸の頂にある淡く色づいた尖りにたどりつく。

指先で軽く押しながらくるりと輪郭をなぞられると、馴染んだ体温と感触に体が素直に反応しはじめる。

「…あは。勃ってきた。…よかった」

なぞった後には、親指と人差し指でその形と色を主張し始めたそこをこねるように弄ぶ。

「ん…っっ」

それどころじゃないって頭の中でわかってるのに、声は勝手に出てしまう。

悠有以外の前じゃ、そこまで声が出ちゃう相手なんかいなかったのに、不思議だよ。ほんと。

「お願い…瑞。このままじゃ…壊れちゃう、から」

壊れちゃうのは、悠有? それとも悠有じゃない誰か? そうじゃなく、そのどっちでもない何か?

顔が胸へと近づき、ちゅ…っという音とやわらかい感触は同時で。

胸に悠有を抱くようにして頭に腕を回す。そっと抱きしめて、髪を指で梳く。すこし汗ばんでいる悠有の髪。さっきまで熱を出していたからかな。

時に舌先で強めに撫で、時に歯で甘く噛み。そして、キスマークでもつきそうなほどに、強く吸いあげて。

「ん、あ…っ」

胸なんか性感帯じゃなかったのにな。俺の方が彼よりも明らかに経験値高かったはずなのに、すっかり悠有に開発されてきちゃってんじゃない? 俺のカラダ。

「もっと聞かせて…」

「は…っ、ン」

堪えられる段階は、とっくに過ぎている。もう、無理だ。

ふ…っと、悠有の指が後孔に触れた。

「あまりやってないのに、やわらかい? …準備してた?」

ううんと首を振ると、「そっか」と短く呟く悠有。

そんな場合じゃないって思ってたから、触れもしていなかった。

なのに、受け入れやすい状態になっているってことは…きっと”そういう”ことなんじゃないのかな。

「ココ…俺のこと…待ってくれていたみたいで…嬉しいって…思ったらダメかな」

俺のカラダが俺の気持ちよりも素直で、正直で、彼に貫かれるのを待っていた…ってことでいいのかもしれない。

嬉しそうな悠有の声にホッとしたのと同時に、悠有の変わりように動揺を隠せないでいる俺を責めたくもなった。何やってんだよ、お前は…って。

悠有がこうなった状況と環境と、悠有が心と体にしまいこんでしまったモノのこと。

それらを理解していたようで、まだまだ理解が足りていなかったと痛感している。

俺の胸の尖りを吸い、甘く噛むこの男は、今…甘えているんだ。

俺の足に、とっくに起き上がっている悠有の熱の塊が当たっている。すごく…固い。

もうとっくにガン勃ちしてるって感じるのに、それでも俺をちゃんと気持ちよくして、つながる場所も解してから…と自分の欲だけを優先せずにいてくれている。

こんなに優しいのは、悠有…だろ?

「…舐めるよ?」

傍らにあったクッションをつかんで、俺の腰の下に突っ込んで。

「ふふ。…丸見えで、エッチだね? 瑞」

俺に恥ずかしい格好をさせておいて、笑うんだ。

”これ”もヤる時にスイッチが入りだした悠有が見せる表情のはず。

(ああ…一つずつ確認をしてしまう。悠有だけを選んで抱かれたくなる。…でも、それは違うんじゃないかっていう、勘にも似たものが俺を引き留める)

後孔に舌を這わせ、ひくつくそこに舌先を挿れ、さらに受け入れようと口を開けてしまうはしたないその場所を舐めながら、俺の熱を扱く手は強くて速い動きだ。

「や…! ダメ、悠有…っ、イッちゃう、からっ」

「いいよ…イきなよ」

と言いつつ、今度は舌先が解していた場所へ指がぐちゅ…っと沈めこまれた。

「んあっ…っ、強…っい、よ……や…悠有っ」

一本だったのはほんのわずかな時間で、あっという間に指は二本に増やされていた。

グプグプと何度も抽挿を繰り返されて、腹の中を強めに擦られて。

「ダ…ダメっ! そこ…ダメッ」

一気に高みへと連れて行かれてしまう。腰が浮く。悠有の指をキュウキュウと締めつけたら、もっと感じちゃうってわかるのに、力を抜くことが出来ない。

「瑞のダメ…は、イイとかもっと…だよね」

中の圧迫感が一瞬で変わる。

指がさらに増やされたのを、体で感じる。

「ほー…らっ、言いなよ、瑞。イかせて…って、さ!」

最後の一言で、腹の方をわざと強めに擦ってきた。

「あぁああっっ!!!」

堪えるなんて、無理だ。

「イくって言ってから、イくんだよ? 瑞」

気持ちよさにギュッとつぶっていた目を薄く開くと、そこにいたのは愉悦の表情を浮かべている彼で。

イくって言わなきゃ、許してくれなさそうな表情に抗いたくなる。そんな欲望が頭をもたげる。

言わなきゃどうなるんだろうって、彼の言葉の裏側にある命令に従いそうになる。

「…ン、あぁっ…!!」

言うまでもたず、自分へと吐き出してしまう。

「言わなきゃダメって…言ったのに。…ダメじゃ…んっっ…ホラッ、瑞。お利口さんじゃなかったから…」

「ぐ、ぅ…っ!!!」

一気に最奥まで貫かれて、腹の奥がついていけてない。内臓が持ち上がったみたいな感覚に、くぐもった声がもれる。

は…っ、はっ…っと、かろうじて呼吸をしているほどの圧迫感と勢いのある抽挿が、俺を攻める。これでもか、と。

ズンッと腹の底から、思いきり揺さぶられる。

それを体はとっくに喜んでいて、彼の熱をキュウキュウと締めてつけている。そうすると、もっと気持ちよくなることを知っているから。

「悠有…っ悠…有……っ」

中がさっきから小さく震えては彼を何度も締めつけて、吐き出すこともなく俺がイッてることを知らせてくる。

腹の上から悠有が擦りあげているとこを、手のひらで軽く押してくる。

「…ふ。こんなとこまで入ってんの、わかる? こん…な、風に……さっ」

ゴリゴリと内壁を思いきり擦られる。まるで、抉られてるみたいな感覚。わずかな往復だけで、イキっぱなしな状態にもっていかれた。

「あ…あぁ……ン、ぅあ…っ!!!」

思いきり吐き出したいのに、もどかしいほどに中だけが震えてる。俺の熱を帯びた杭は、だらしなくよだれを垂らしているように、白濁としたものをこぼしっぱなしだ。

「イキっぱ…の瑞……好き、だ…よっ」

ここに来て、さらに奥へとゴツっと挿しこまれて、一瞬、腰が浮いた。

これはマズいと、体が察したんだ。

チカチカする。頭が持っていかれる。自分の中がどうなってるのかなんて、気になんかできない。欲に忠実な獣に好き勝手されてるだけのオナホみたいになってく。

ゆらゆら揺らされて、目の焦点が合ってんのか合ってないのかわかんない。

「瑞…可愛い……好きだよ」

愛を囁く悠有が今、誰かとか…、俺になにを求めてんのかとか。

(無理…っ! 考えてる隙なんか、くれもしない!)

俺を組み敷き、悠有がもう一度ガツンと肌と肌がぶつかるほどに強く挿し込んだと同時に、脱力した俺のカラダがふわりと浮いてから悠有の方へと勝手に抱きついた。

その俺を抱きとめたまま、今度は悠有が仰向けになって俺はくにゃりと悠有へとなだれ込む。

…と、つながってる状態なのは変わらずなので、いつになっても吐き出さない悠有の熱に俺は突き刺されたままだ。

腰をくねらせて、中をえぐるようにねじ込まれていく。

「んぐ…っ」

声にならない。これ以上はダメだ。本気でダメになる。明日も仕事なのに、悠有はまだ回復してないのに、きっと話さなきゃいけないことは話せていないのに。

「好きにさせてくれる瑞…好き」

しなだれかかったままの俺に、悠有が甘く囁く。

やってることは遠慮ナシな行為なのに、俺を抱きしめる腕はどこか遠慮がちだ。

「好き…大好き……瑞…好き…」

繰り返し繰り返し、俺に自分の気持ちを知らしめるみたいに。

「好きなんだよ…瑞…はあ…っ、好き…好きだ…瑞」

自分に、言い聞かせてるみたいに。

「ね、撫でてよ。頭…イイコイイコって」

脱力しつつ、顔を悠有の方へとなんとか向けると、今にも泣き出しそうになっている彼の顔が目に飛び込んできた。

(…え? 悠有の中で一体…なにが?)

フラッと体をふらつかせながらも、すこしだけ体を起こして悠有の頭へと手を伸ばす。

頭を抱くようにして、その流れで手を動かせば、汗ばんだ悠有の頭を撫でられる。

悠有もそれに合わせて俺を抱きしめてきた。

…と、抱き合ったままで体がグルンと回り、向き合って横になった格好になった俺と悠有。

目が合って、どっちも無言で見つめあって。

自然とキスをしていた。軽い、ただのキスを。

ふに…と触れて、離れて。体も、一人分くらいの間をあける程度、離して。その距離から見つめ合って。

「――――っっ」

…と、息を飲んだ。

今、目の前にいて、俺をまっすぐに見つめている悠有がいて。

悠有はふわりと笑んで、その表情だけで俺のことを好きだという気持ちが伝わってくる。

今まで何度も見てきたはずの悠有の微笑みなのに、まるで初めてその表情を見たかのように俺は目が離せなくなっていた。





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