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……触れて、 6
しおりを挟む~水無瀬side~
悠有に気づかれませんようにと思いながら、わずかに唾を飲む。
俺にしては珍しく、緊張してか…喉がカラカラで貼りつきそうになっている。
「ごめんね? ほんと、臆病で」
彼のひとり言のようなモノローグは、まだ続く。
吐き出せるだけ吐いて、俺に聞きたいことがあったら聞いてほしい。
そう願って抱きしめたのに、じわりと俺の胸の中にさっきよりも不安が大きく滲んでいくよう。
彼の背を撫でていたはずの手が、気づけば彼のシャツを握っている。奇しくも、さっき彼が俺にしたことと同じように。
「俺さ、小説やマンガばっかり読んでて。その世界の中には俺が羨む世界や人付き合いがあって。それを読んでいる間だけは、俺もその中の住人になっている気になってて」
「…まあ、そんな気分を味わってくださいってのも、作家さんたちにはあるかもしれないからねぇ。…作家さんたちからすれば、本望ですって話じゃない? それって」
なんて返せば、「だといいけど」と自信なさげな声が返ってくる。
そして「でもさ、恋愛は…どうしてもリンク出来なかった」と呟く。
「経験が足りてないと、話の中や設定に自分を置いてみても、どうしても上っ面って感じなのは話したっけ」
「…たしか聞いたかなー…と」
お互いに同じことの繰り返しばかりになっているので、どこまで話したっけ? みたいな流れも仕方がない。
「で、さ。俺…今、彼氏…出来たんだよね?」
「そういったよね?」
「…だよね。…はは」
再確認。何度目だろう。
「恋をする自分ってものに、憧れがなかったわけじゃなかった。学校もまともに通えなくて、どっちも病人同士の出会いばっかりだったから、互いに生きてたらね! みたいな笑えない会話が当たり前だったし」
たしかにそれは、どっちもいろんな意味で笑えない会話だな。
「病院の関係者に恋をするんでも、相手はこっちの病状を知ってるから、同情っぽいのが透けてみえた気がして。…大きくなったら結婚してくださいってお願いして、玉砕した入院仲間は結構いた。その中の一人になりたくなかったし、いいなと思える人もいなかった。自分の命のことで精いっぱいだったしね」
「…ん」
と、そこまで話したあたりで、悠有が体を離して俺へと向き合う。
「……ごめん。ベッドに寝転がった状態での話でもいい? すこしだけ、腰がだるくて」
あぁ…と思って、枕を整えなおして、そこをポンと手のひらで叩くと悠有がホッとしたように寝転がった。
俺も横に向き合う格好で寝転がって、布団を掛けた。
「手だけつないでいても……いい?」
遠慮がちなお願いに、無言で彼の右手を取って両手で包み込むようにした。
「ありがと」
そう言ったかと思うと、長めに息を吐き出す悠有。緊張しているのがよくわかる。彼の手が冷たいから、尚更わかる。
「――“ボク”ね。自分がいつかする恋はどんなのだろうって、時々妄想してた」
彼の言葉に、違和感を覚える。
(今、なんて?)
「小説やマンガみたいに目で追ってるだけの平面的な恋じゃなくて、今…“ボク”自身がそのど真ん中にいて、リアルに触れられる立体的な恋をしている。誰かの話じゃなく、これは自分の恋なんだ……って、そう気づいた時、こわくなった」
(聞き間違いじゃない。今もさっきも、自分のことを“ボク”って言った)
普段は自分を俺と呼ぶ彼が、急に自分を”ボク”と呼びだした。その違和感の意味は何だろう。
彼の話に耳を傾けながら、小さな変化からも目をそらせない。
「自分の体のコト。……過去の傷。本やマンガの中のように、ページをめくれば傷がなくなってるなんて、本当は非現実的で。――人の心に触れるのも触れられるのも、すごくこわいのが現実だ。明日は平気になってるだなんて、嘘っぽい。そして、その本音や臆病な自分を知って?……と、希うのがもっと……こわい、よ。さっき、臆病でごめんねって言ったのも、結構勇気がいった」
悠有が話している非現実だの嘘っぽいだのは、映画の中でしかありえない…まるで魔法のような状況の話だろうか。
街が壊滅したって、誰かが失恋したって。話の中でたった1ページめくってみて、『あれから10年後』とか書かれていたら街は復旧してましたってやつや、失恋してても数行後には新しい恋が失恋してあいた心の穴を埋めていたとかいうやつのことかな。
その経過がどこにも書かれていないパターンのやつだろう、多分。そこに至るまでの、本人の葛藤も苦悩も見えないやつ。
それを悠有自身に置き換えてみれば、義弟とのことや自分の体のことだって、回復するまでの間に抱えてきたいろんな感情が通り過ぎた場所に…今、悠有はいる。まだ消えていない義弟とのことで受けた、心の傷。簡単には癒えないし、何かをキッカケにフラッシュバックする。
思い出したいわけじゃないのに、コトが起きたその瞬間に引き戻されてしまうんだろう。本人は何一つ望んでいないのに。
そんな仮想設定の中には存在していない、自分の恋。
俺が男だからとかどうとか以前の話をしているんだと感じた。
「――俺は知ってるよ? とっくに、ね。悠有の心が揺れやすいのも、怖がりなのも。それと、甘えたがりなことも」
俺の言葉を泣き出しそうな顔つきで聞いていた悠有の顔が、最後の一言を聞いた瞬間…真っ赤になった。
「違……っ。甘えたり、って。いや…違ってないけど……言葉にしないで。めちゃくちゃ恥ずかしい」
動揺しているさまが、ものすごくわかりやすい。
クククッと堪えながら笑うと、おかしな声になる。
「笑うなら笑ってもいいよ……もう。なんだか子どもに見られている感じだ」
視線をそらして、顔を赤くしたまま黙り込む悠有の額に、そっと顔を近づけてキスをする。
「さっき、悠有がね? もっと触れてって言えたらいいのにって言ってたよね」
向き合ったまま互いの鼻先をスリ…ッと寄せてから、至近距離で問いかける。
「俺だって言いたかった。俺に…もっと触れたいって言ってって。深いとこまで入りたいって思ってほしいなって」
あごだけを突き出すようにして、かすめるようなキスをして。
「もっと……もっと…欲深くなってよ。悠有が俺のこと、独占して?」
次は、彼の唇をついばんで。
「悠有だけの俺に…してよ」
そして、次は交わすだけのキス。舌なんか絡めもしない。
「不安も、嫉妬も、憧れも、羨望も、憎たらしいと思うことが出来たって、俺に伝えて?」
あー…と薄く唇を開きながら、唇を重ねる。
「ん…っっ」
舌先を絡め、顔の角度を変えながら息継ぎをして、また深く口づけて。
彼が息継ぎを失敗して、あっぷあっぷになっていても、クス…と小さく笑って呟いた。
「もちろん、俺のことがどれくらい好きだとかも、さっきみたいに好きだよって言葉だけでも、愛情がこもった気持ちだって欲しいな。……俺、結構いろんなものを欲しがるから。だから……悠有」
ちゅ…っと触れるだけのキスをもう一度してから、両手で包みこんでいた彼の手を自分へ引き寄せ、悠有の目を見ながらこぶしの形になっていた彼の手を開き…手のひらへ口づけた。
「このキスの意味、悠有なら知ってるよね?」
体をつなぐ前のコーヒータイム。ラム酒が香る中で、手のひらにキスをした。
彼の反応を見て、彼もこのキスの意味を知っていると気づいたっけ。戸惑いの方が顔に出まくってて可愛かった。
どういう意味で、ここにキスしているのか? って感じでさ。
『求愛』
あの時よりももっと深くて重たい意味で、改めて同じ場所にキスをしている。
その手の知識がもしも彼にあるのならば…。
(出来れば意趣返しみたいなものをしてほしいんだけどね。……そう願うのは、今の段階じゃ贅沢な願いかな)
口角だけを上げて、フッ…と笑む。
悠有が真っ赤な顔をして、呼吸を忘れたみたいに口をパクパクしているだけでずっと困ったように俺を見つめている。
手のひらにもう一度、わざとリップ音を立ててキスをして、キスの間はずっと悠有の目からそらさず。
まるで挑むようなその視線を不安げな目で見ていた悠有の瞳が、きゅっと細められる。
そして空いていた左手を俺の首へ回すようにしたかと思えば、すこしだけ身を乗り出すようにさっきみたいに俺の肩に自分の頭を乗っけて。
……ちゅ…ちゅ……とたどたどしく聴こえるリップ音が、繰り返される。
首筋への、『執着』という名のキスでのお返し。
そんな彼が愛しくて、可愛くて、そのキスの意味そのままで本気で俺に執着してほしいと感じて俺は彼の右手を離し。
「…好きだ……っ」
真似るように彼へと腕を回して抱きつき、首筋へとキスを落とした。
「“ボク”だって…好きっ!」
その声は、負けたくないって言ってるみたいで。
「…可愛い」
思わず頭に浮かんだことが、ポロッともれてしまったほど。
互いの首筋へのキスをいくつかずつ落としあった後に、悠有が耳元で囁く。
「ね。…その……ね? 神田くんって……元カレ、なの?」
きっとあの店以降で、彼が聞きたかったことの一つなのかな?
(よりによって、神田くんが悠有を不安にさせる要因だったとはね)
んな訳ないとどこかで思って、選択肢に含めてもいなかった。
でもそれだって、結局は俺の思い込みなだけであって、悠有の中ではもしかしたらって相手に映ったんだろう。
「違うよ。ちなみにだけど、神田くんが高校の頃うちの店で遅番担当だった子だよ」
とか言えば、目を見開いてただ驚くだけ。
「……だけ?」
その表情をそのままに確認されたから、俺は微笑んでうなずく。
「だけ……なんだ…。そ、か」
ホッとしたように息を吐く悠有が、ギュッと抱きついてくる。
それを受け止めて抱きしめ返してから、後頭部を撫でるように手を動かす。
ふわふわの悠有の髪が、指の間からこぼれる。
「妬いてくれてた?」
その感情を意識させたくて、あえて囁く俺に。
「やっぱりアレが嫉妬だったのか……」
なんて、バツが悪そうにうつむく彼。
口元のにニヤけに気づかれないようにしつつ、「初めて?」と問う。
一瞬の沈黙のその後に、キスをくれていたはずの首元から顔を離して指先で俺の耳を引っ張る悠有。
「いったたたっ」
「痛くしてるからね」
「ひどくないか?」
「…さっき、俺に意地悪したのはどっち」
まるで子ども同士のような、始まったばかりの恋人同士のようなじゃれあい。
布団をかぶった状態でそんなことをやってるもんだから、じゃれているうちにどんどん布団に潜り込んでしまってたよう。
髪はぐちゃぐちゃ、お互いにシャツは着ていたのになぜかパンツだけ穿き忘れたままって…マヌケな格好だ。
「ね、悠有」
髪を指で撫でつけて、直してあげながら呟く。
「もう…恋なんかしないって…言わないで」
始まったばかりの恋の終止符を打たれるのか、内心びくびくしていた。
夢にまで見て呟いていた、あの言葉。それは本気で叶えようとしているのか? と自分にしては珍しく動揺した。
「始まったばかりだから、もっと……もっと…お互いのこと怖がらずに触れあって、さ。それで…下手な小細工なんか俺もしないって誓うから、手の内も胸の内も全部…ぜーんぶ……ぶつけてこうよ。悠有が初めての恋だっていうのと俺もあんま変わらないから。体の方だけ特化して経験あるだけで」
精いっぱいの気持ちを素直に吐き出せば、俺に髪を直されていたはずの彼が真っ赤な顔をして髪を直していた手を弾く。
パシンという高くて乾いた音が部屋に響いたかと思えば、彼がおもむろに体を布団から出して起こしてから呟く。
「イヤなんだってば、そういうの」
拗ねた顔をして布団に寝ころんだままの俺を見下ろして、なおも非難する。
「経験値の差は嫌ってくらい肌で感じたけど、そういうの…リセットして。俺だけで新しく経験値にしてよ」
あまりにも素直すぎる物言いに、茶化すつもりなんかなかったのに自然と口からポロッと出てしまう。
「お…おぉ…すご…ぉ」
それを耳にした悠有は、一瞬で顔を真っ赤にして指先で俺の口角を引っ張って。
「口は禍の元って言葉、知ってる?」
ため口っぽくなっているのが、なんだか嬉しくて顔が勝手に笑ってしまう。
「ひっへる(知ってる)」
「知ってたら、このタイミングで笑う?」
「ひゃんへはな(なんでかな)」
「ん? なんでかな? かな。……って、他人事みたいに言わない!」
「ふひゃひゃ」
おかしくなってきて、声をあげて笑ってしまった俺に悠有は口角にあった指先を思いきり横に引っ張ってから。
「バ…バカッ。瑞なんて俺よりも年上の癖に、バカ! アッチの方だけ優秀で、他は全部バカ!」
バフッと勢いつけて布団を掛けて、俺へと背中を向ける。でもちゃんと俺に布団は掛かっている状態のままなのが、どうしてもおかしくて。
「怒ってるように見えないんだけど」
彼の背中から抱きついて、肩甲骨あたりに頭をグリグリとこすりつける。
「怒ってないから」
「はいはい」
「はいはいとか、バカにしてるし」
「してないよ」
「してるよ、100パー」
「確率高いねぇ」
「100だからね」
「……してないよ? バカになんて」
「……嘘くさい」
「ひどっ」
なんてやりとりをして、ギュッと抱きついたままちょっと無言でいたら彼からは寝息が聞こえてきた。
そっと体を起こして、彼の額に手をあてる。
「…まだすこし熱がありそうだな」
彼をそのままに、彼がさっき使っていた体温計を持ってきて検温する。
「微熱か。一番ダルいね、これは」
ふう…と息を吐き、やっと一つの大きな荷物を下ろせた気がして顔を上げる。
「さーて、一服しようかな」
キッチンへと向かって、換気扇のスイッチをつけてから。
「……ふーーーーっっ」
紫煙を吸い込まれるがままに、上へ向かって吐き出す。
一本吸い終えてから、なるべく音を立てないように探し物をする。彼とした小さい約束のために。
すこし昔のハードが二種類見つかって、初心者でもやれるソフトだっけと昔のことを思い出して。
そうしてからネットで二本くらいゲームソフトをカートに入れて、後日一緒に出来たらとその日を想像する。
体だけつながっていたら、気持ちもそのうち追いついて付き合っているって思えるんだろうとどこかで思っていた浅い恋愛経験ばかりの自分。
さっき悠有にも伝えたけど、実質、大差ない恋愛経験のような気がする。
だから……だから……。
「一緒に試行錯誤しながら、付き合うってことを知っていけたらいいな。悠有と」
相手を知りたい。自分を知ってほしい。一緒に歩きたい。相手を守りたい。そんな感情を拾い集めていけば、気づけばそれがどうしてそんな感情になったのかを嫌でも知らされる。
嫌じゃないけど、痛感するんだ。
――させられたんだ。悠有が痛いと、俺も痛かったって。
スタスタと冷蔵庫の方へ行き、野菜室を漁る。
「冷蔵庫掃除でもするか」
中途半端な野菜を集めて、大きめの鍋にザクザクと切った野菜たちを放り込む。
時々やる、野菜室の大掃除スープ。今日は、えりんぎ1つにしいたけ2つ、半端な人参と長ネギ、野菜炒め用にカットされて売られていた野菜の残り。それとブロックベーコン。
水を入れてコンソメも入れて、ややしばらく煮てからぶつ切りのベーコンを追加で放り込んで。
「……ん。いい匂いがするな」
この匂いにつられて、何気に食いしん坊の彼が目を覚まさないかと期待する。
塩コショウと、すこしのめんつゆ。かき混ぜてから、味見をすれば。
「お腹空いた…」
力ない声で起きてくる、子どものような彼がそこに立っていた。
「おはよ」
「…んー…」
開かない目をこぶしで何度もこすりつけて、まだフラフラとした足取りでリビングへと歩いてくる。
「そっち座ってなよ。今できたばかりだから、持っていくよ」
「んー…」
ソファーに寝転んだ彼は、さっきのままの格好だから下だけ丸出しの状態。
「ぷ……クックックックッ…」
可愛くてバカな彼氏がお腹を壊さないように、腰に毛布を掛けてやると。
「起きるってば」
上半身を起こして、前後に揺れながら同じ言葉を繰り返す。
「はいはい。今、スプーン持ってくるよ」
「…う、ん」
寝るんだろうなと思ってるので、持ってきたスープは一つ。
「よい…っしょ」
ソファーに腰かけた俺は、彼の頭を持ち上げて左足で膝枕ってもんをしてやり。
「いただきまーす」
彼の顔にスープがこぼれないようにと、空いている右前側に体を傾けて。
「…んっ。上出来じゃん」
彼が目を覚まして、先に食べた俺を羨む顔を想像しながらベーコンを食んだ。
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