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……触れて、 4※微R18かな? な内容です
しおりを挟む~小林side~
「とりあえず一回ヌくって程度でね。じゃなきゃ、のぼせちゃうだろ?」
こういう風に慣れた感じで「どう?」と言ってくるあたりは、酔っぱらってノるの? ノらないの? と振ってきた時と同じだ。
慣れているというか、言い方悪いがビッチな発言というか。
複雑な気持ちになりつつも、脚の間で熱と固さを保った俺は元気なままだ。
水無瀬さんが濡れた前髪をかきあげなおし、舌を伸ばして根元の方から舐めあげていく。主張している杭の形をなぞるように。
「…んんっ」
思わず声がもれてしまう。
カサの部分のくぼみを舌先でくるりとなぞってから、クプ…と低い音をたてながら咥えこんで一気に喉奥まで飲み込んでいく。
「あ…っ」
腰が引ける。
俺の反応に気をよくしたのか、ひたいに汗を浮かべて口いっぱいに俺自身を頬張って、口内では舌先を動かし。
激しくもなくゆるすぎもない速さで繰り返し…繰り返し…頭を上下させながら刺激される。
顔を歪めながら彼を見下ろし、顔を紅潮させつつすこしずつ速さを増していく彼の頭に手を置いた。
ふ…と彼がその手に気づき、視線だけ上げてくる。
どこか甘えた瞳に見えて、可愛いなと思った。その想いのままに、頭に置いた手で頭を撫でると、目が細められてどこか嬉しそうに笑んで口内の吸い寄せを強めてきた。
じゅる…グプ…じゅ…るっ…グジュ…ッ。
彼の中に入っていた時のような、激しく濁った水音が繰り返される。
お湯の中で透けてみえる彼自身も、とうに勃ちあがっているというのに、彼の目も口もそれを求めてくる気配はない。
「ダメ…だよ、ねぇ……っ。俺、ばっか…り」
いっそのこと彼に最後までシてもらった方が、彼も俺も一緒にイケるんじゃないのか? と思うのに、その言葉が切り出せない。――どうしても。
どっちも経験ずみならではの発想だとしても、その方が自分の方だけに負担をかけず、かつ水無瀬さんに心配をかけずに吐き出すことが出来るかもしれないのに。
――どうしても、言えない。一葉が重なってしまうとわかっているから、言えない。消せない傷が、俺を苦しめる。
顔を歪めて彼を見下ろす俺を見上げていた水無瀬さんが、強めに吸い上げながらいまだに収まらないままの杭から口を離す。
手だけで強めに扱きながら「ねえ」とトロンとした目で俺へ問いかける。
「指だけ…挿れていい? 指だけでも、思い出しちゃう?」
その提案に別な意味で眉をひそめた。
気を使わせている。俺と一葉との関係性のせいで、彼の行動を狭めてしまっている。
目の前の彼は、ただただ俺の体調を見つつ欲を吐き出せるようにと考えてくれているのがわかる。
互いの欲に素直になるだけでいいのなら、とっくに勃っているモノを使ってしまえばいいだけの話。
それを出してこないあたり、思ったよりも気を使わせてしまっているんだ。
いいとも嫌だとも口に出せず、視線をそらしてコクリとうなずいた。
彼がこれからすることがわかってるからか、まるで期待していたかのように後ろの孔がひくんと反応したのを感じる。
そして、思った。
(どうして反応してるんだ)
と。
そこを責められるのは、俺にとって義弟に突き上げられた痛い思い出に紐づくことのはずなのに……。
右手でゆるゆると杭を扱きながら、舌先で孔のまわりを舐めてから軽く口を開けた孔へと舌先をねじ込む。
挿し込まれたのが舌先だとわかっているのに、腰が震える。こんなにわずかな刺激にすら弱い。
「あ、ンッ…ッッ」
数回舌先をねじ込んでから、手のひらを上にした状態で左手の人差し指をつぷ…とすぼみの中心へと沈めていく。
すこしずつ…すこしずつ割り込むように、細いけど確かな圧迫感が体の中に触れた。
「はぁ……ッン、…っく、あ…っ」
数回人差し指が出たり入ったりしたかと思えば、やがて指は二本へと本数を増やされてしまう。
「やぁ…っっ!!」
グブッとはしたない音をたてて、一気に指が沈み込んでいく。
「あぁぁあっっ!!」
声を堪えることが出来ない。
腹の方にある前立腺の位置だろう。そこを彼が的確に、そして強めに指で撫でているのだから。
指の腹にソコが触れるたびに、中がきゅっと締まってしまう。そんなつもりがなくても、体は勝手に彼の指を絞め殺さんばかりに締めつけていた。
強めの刺激に素直に反応した杭がビクビクと動いては、あっという間にのぼりつめそうな俺を知らせる。
涙がジワリと浮かんできた。こんな状況になったのは、全部俺のせいじゃないか。そう思えたからだ。
一葉の指とは違うとわかっていても、納得は出来ないんだ。上書きをするでもなく、水無瀬さんに一葉を重ねている俺がいる。――のに、同時に一葉と重ねている部分があるくせに、まるで別腹扱いで快楽に流されたように熱量を増していく俺の一部分。
(これじゃ…ダメだ。水無瀬さんの気づかいだってわかっていても、それをブチ壊してでも…俺は)
先走った体液が鈴口から垂れているのを、水無瀬さんが舐めとろうとした瞬間。俺の手がその口をふさぐ。
「……ダメだ。これ以上は……ダメだ」
水無瀬さんにこれ以上のことをさせたくない。だけど、彼が俺を楽にしてやりたいと思う気持ちも無碍に出来ない。
(なら、互いの体に負担が少ない方法は)
困ったように俺を見上げる水無瀬さんに首を振ってから、手を差し出して立たせる。
彼の体を反転させて、その背中をトンと押す。
バスタブの中ですこしよろけながら、よろけた先にある壁に手をついた彼。
「そのまま…腰を突き出して、足をすこしだけ開いてて」
実体験は全くない。知識だけがあるのみだ。きっと水無瀬さんの方が、俺が今からしようとしていることを察しているはず。
(上手く出来るかわからないけど、なんとか二人ともが気持ちよくなれば)
彼の太ももの間に今にも弾けそうなほど固くなったモノを挿し込み、彼の熱を帯びた杭を下から支えながら押し上げるように腰を動かして突き出していく。
先端からタラタラとだらしなく垂れっぱなしの先走りが、まるで潤滑液みたいだ。
「悠…有ぅっ」
俺を止めようとしてるのか、半身を捻ってこっちを振り返って。
「い…からっっ」
不慣れながらも、彼の腰を両手で掴んでその腰に打ちつけるように何度も抽挿を繰り返す。
繰り返し突き刺していけば、カサの部分に彼の熱が何度も触れてその度にビクンと跳ねては彼自身を持ち上げてしまう。
ぐちゅ…クチュッ…ズッ…ぐちゅ…っっといやらしく誘う音をさせているのは、どっちの先走りなんだ?
「悠…っ…有」
彼の呼吸があがり、乱れていく。
「ダメ、…って言って、るじゃ…っ……んあッ」
このまま彼の中に挿れてしまえばすむ話なのかもしれないのに。
そうしたら、もっと…一緒に気持ちよくなれるのに。
「瑞…さ、んっ」
不意に名前が口からもれて、胸の中がジクジクした。
呼んでいいのか、まだ自分の中で答えを出せていなかったのに。
背中から抱きしめ、腰だけを動かして彼を揺さぶる。
イケそうでイケない。歯がゆい。でもどうしたらいいのかわからない。けど、気持ちがいいから腰を止めたくもない。
(あぁ…っ、どうしたら……? 気持ちよくしてあげたいのに)
腰をつかんでいた俺の手に彼の手が重なって、俺の右手が前へと誘われる。
「一緒に…握って?」
はぁ…はぁ…と乱れる呼吸の隙間、彼が教えてくれる。
二人の熱をひとつに重ねて、一緒に扱けばいいんだ…と。
自然と腰の動きも大きくなる。彼の手と俺の手がさらに熱量を増していくモノを包み込むと、まるで彼の中に入っているような錯覚を起こしそうになった。
ゴリ…ゴリ…と重ねられた彼の熱い杭の裏筋を俺自身が刺激をしていくたびに、見下ろした先にある彼の孔がひくひくと動いてはまだ挿れないの? と言わんばかりに艶めかしく口を開ける。
(ダメだ…。そこまでやったら、彼が気にかけてくれていることもなかったことにしてしまいそうだ)
挿れるか挿れないかだけで、ヤってることは大差ないのをわかっていても、最後を超えるなと呪いのように言い聞かせる。
「悠有…! 悠有っっ!」
体がほんのり赤く色づき、上半身を捻って俺を呼ぶ彼が口パクで願ってくる。
『キスして』
と。
気持ちが昂って頭の先まで気持ちよさのことしか考えられない。もっと! もっと…!! と腰を打ちつけた。
ちゅ…ちゅ…と啄むようなキスを繰り返しながら、満たされていく自分を感じる。
このままずっと彼を抱きつづけられたら、どんなに幸せだろう。彼の服を奪って、外に出しもせずに、ただただ体を重ねる日々を繰り返せたら。
一葉には感じることのなかった想いを抱き、腰の動きをさらに速めると二つの熱量が一気に膨らむ。
「イ、くっ…っ」
「ぅア………っっ!!!!」
二人の手のひらで強めに握ったソレから、二人分の白く濁った精液が一気に弾けたようにバスルームの壁へと吐き出される。
「ア…っ! っく、あ…っっ」
限界まで溜め込んでいたほどに、いつまでも吐き出される精液が、一緒にソレらを握っていた手の甲に垂れてくる。
ビュル…っ、と何度も吐き出して程なくして、水無瀬さんがそのままバスタブに膝をつく。
ばしゃんとお湯が大きく鳴り、立ったままだった俺の太ももにもたれ掛かるように身を寄せた。
「大丈夫…ですか?」
バスタブに垂れてきそうな吐き出したものを、慌ててお湯をかけて排水溝の方へと逃がす。
それでもすべてを流すことなどできず、いくらかはバスタブに流れ落ちてしまった。
「ごめんなさい。…せっかく体を流して、お風呂もキレイなはずだったのに」
視線を合わせられない。なんだかものすごい罪悪感が胸の中を満たしていく。
は…っ、は…っ…とまだすこし呼吸を乱したままで、水無瀬さんがその口を開く。
「バ…ッカじゃないの……はっ…はぁ…、もう」
いろんな意味でそう言われているんだろう、俺は。
「…ごめんなさい」
バスタブのへりに腰かけて、水無瀬さんとは反対の方へと顔を向けてうなだれる。
頭がのぼせてきて、すこしだけふわふわしてくる。
こういうところもダメなんだ。ふらついたら心配をかけてしまう。
(平気なところを見せなきゃ)
ゴク…と唾を飲み、立ち上がってバスタブから出ると、シャワーで下半身だけ簡単に流す。
汚くしてしまったのは、下だけだったからな。
「飲むもの持ってきます!」
バスルームのドアを引くと、ぶわっと湯気が脱衣所へと逃げるように出ていっては霧散する。
バスタオルでざっと体を拭いて腰にそのまま巻いて、キッチンへと急いで向かった。
冬じゃあるまいし、そこまで寒暖差があったわけじゃないのに、急に涼しい場所に出たことや動いたこと諸々が重なった。
たったそれだけなのに、それだけでも十分だったんだろう。
「…あ」
小さく声をあげて、冷蔵庫の手前で膝をつく。あとすこしで冷蔵庫だったのに。
クラッとしたなと思ったら、一瞬目の前が真っ暗になって気づけば膝をついて床にへたり込んでいる自分がいた。
(こんなところを見せられない。急いでバスルームに戻らなきゃ)
腕が震えている。心臓も激しく強く鳴り続け、呼吸をもっともっとと煽るように速めていく。
(このままじゃ、彼に嫌われてしまう)
あれっぽっちのことでこんな風になってしまうなら、彼に求めてもらえなくなるかもしれない。
「…イヤ、だっっ」
負担や重荷や面倒ごとに感じさせたくない。感じてほしくない。
――あの、母親が毎日毎日働きづめだった時の自分をそう思ってしまったように。そう思っていた自分に戻りたくない。
頭を抱えて床にうずくまる。
早く戻らなきゃと思うのに、あの頃の感情に戻りかかる自分を現実に戻せない。
「嫌だ……っ」
うずくまった俺の背中に、やわらかなあたたかさが触れる。バスタオルが掛けられていた。
「…え」
強張った体を解くことが出来ない。ぎこちなく顔だけなんとか上げれば、髪から水滴をこぼしたままの彼がそこに立っていて。
目の前で冷蔵庫が開けられて、水やお茶を彼が取り出しているのが視界に入る。
本当は俺がそれを彼にと思っていたはずなのに、それっぽっちも出来なかった。
「ほんと…手がかかるね? 悠有は」
その言葉に目をぎゅっと強くつぶる。
幻滅させたと思った。それ以外の訳がないと思うほどの言葉だっただろう?
手がかかるだなんて、どこの子どもへの言葉だ?
床に四つん這いになっていた俺の体を、彼はゆっくり起こしていく。そっと目を開けると、怒ってるでもなく呆れた様子でもなく、いたって普通の態度に見えた。
「…はい。体をちゃんとタオルで包んでから、水分…あぁ、ゆっくりね。ほら…ん? 上手く飲めない? 手が少しまだ震えているね? 嫌じゃなきゃ、口移しで飲む?」
どうしてこんな風にしてもらえるのか不思議で、涙を浮かべながらただ彼を見つめる。
彼が口に麦茶を含んで、唇を重ねてくる。
ひんやりとした麦茶が、飲み込むしかないとでもいわんばかりに喉へと流れていく。その流れに乗って、素直に飲み込む。
それを五度ほど繰り返したあたりで、それまで俺に合わせてしゃがんでいた彼が立ち上がり、手を差し出しながら反対の手を背中を支えるようにあてる。
「そろそろ立てるかな? このままここにいても、固い床は体に良くないよ。それにいい加減何か着なきゃ、風邪をひくよ」
ポロポロ…ポロポロ…と涙がこぼれてしまう。
(また、だ。また、手を煩わせた。片手で足りる日付の間に、何度彼を困らせた?)
戻ってしまう。
あの頃の情けなくてカッコ悪くて、自分じゃどうにもできない体を持て余しては泣くだけだった自分に。
ベッドまで彼に掴まりながら、涙を止めることも出来ないままでたどり着いた。
簡単に心が引っ張られてしまう弱さを、一葉にも見透かされていたんじゃないのか?
だから、消化したはずのことであっけなく心を揺さぶられて、乱されてしまうんだ。
神田くんのことだって、そう。
目の前の彼の過去にいたたくさんの相手がどんな人だって、今は自分が彼氏だって言いきれる自信がないから気にしてしまうんだ。
母親は再婚し、一葉のことがあって距離的にも離れ、義父とはそこまで距離も近くもなれず、きっといまだに担当医と患者の延長線で。
一葉とは兄弟に戻るに戻れない場所まできてしまったまま、一人になることを選んで。
初めての恋に浮かれていても、何もかもが初めての俺なんかに価値はない。
何の魅力がある? この俺に。
「……ひっ…グス…」
ベッドに腰かけたまま、また泣きじゃくる姿ばかりを見せる俺は愛されるはずがない。
やっぱり恋なんか出来ないんだ、こんなポンコツに。だったら、最初からしないと思っていた方がよかったのに…。
(それでも心の奥底では、望んでいた。愛されたい…と)
もう恋なんかしないと言い聞かせるように、夢の中で告げたはずなのに。それでもそれを許してくれる俺も心のどこかにいてほしがってて。
(寂しい…寒い…哀しい……誰かに愛される自分でいたいのに、そんな自分になれない)
「う…っ、ズズッ…ぐす……」
さっきまで体中で感じていた熱を共有しあいたい。
触れて、触れられたい。
「水無瀬…さ、ん」
シャツを着た彼が横に腰かける。
「……もう。瑞って呼んでくれないと、返事しないよ?」
彼のシャツのすそを、ぐいとつかんでから、小さな声で呼ぶ。
「瑞…さん」
「瑞」
「みず、き」
「…ん。よく出来ました」
その声と同時に、彼が着ているものと同じシャツが頭から被せられた。
「はい、これ着て」
「…ん」
シャツを着た途端、彼が真横から背中に腕を回して抱きしめてくる。
「……ほんと、バカなんだよね。悠有は」
さっき言われたことをまた繰り返し囁かれる。
その言葉になんのリアクションも取れない。バカなのは自分が一番わかってるだけに、余計に。
「……バカだよ」
抱きしめられているのに、抱きしめ返す勇気すらないんだから、彼が言うようにバカなんだろうな。
なんのリアクションもしない俺を、さっきよりももっと強く抱きしめて彼は囁いた。
「この俺に、こーーーんなにも悠有のこと…好きにさせといて。…そんな表情するなんて…バカすぎる」
って。
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