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都合とか事情とか 2 ※R18指定で
しおりを挟む~水無瀬side~
(気分上々♪)
心の中で呟き、口角を上げる。
彼が同じ職場で働くようになり、指導をして、それを見守って。
人それぞれになにかを抱えて、それを隠しながら生きていくものだとわかっていても、それを暴きたいと思いはじめたらその気持ちに名前は付けてもいいんじゃないのかと思う。
興味という名の感情から始まったとしても、最低限でも”好意”までいけば多少なりともつながりたいってことだろ?
それでも十分だったけど、今日はなんだかそれだと物足りない。
小林くんは本人はちっとも知らないようだけど、実は俺と同類のお客さんから狙われつつあったりする。
俺予想だとその理由の一つが、俺よりほんの少し高めの身長(175cm)に細めの腰。組み敷きたくなる、そんな後ろ姿。
ようするに、受けにしたい願望をかきたてるんだよね。通り過ぎて行った時に、思わず振り返って眺めてしまうほどに。
それだけじゃなく…髪型と一緒でふんわりとした印象の彼を、自分の下で啼かせたいと想像させる物腰。
彼とシたいことのあれやこれやを想像する攻めは、俺含めてどれくらいいるだろうな。
(…ま、組み敷くはずが、彼の希望で俺の方が下なんだけどね)
そう思いながらも、まんざらでもない気持ちの良さ。彼が持つモノも、俺好み。
(先にヌいといて、正解だったな)
じゃなきゃ、いわゆる即終了だったかもしれなさそうだった。自分で抜くことすらしていなさそうで、刺激には弱そうだった。とかいっても、回数もこなせそうなのもイイ。
(でもなぁー、ヤられる側は経験ありそうな感じだった。……元々コッチ側か? それとも)
彼について知りたいことはあるけれど、それは後でもどうにか出来る。
「上…? 俺はどうしていたら?」
もっとと言われて、組み敷く予定だったそこを叶えついでに最奥まで突かれたくなった。
(…んだけど、その瞬間の表情を見下ろしたいだけだな)
とか考えていたら、どっちが攻めかわからないな。
楽しくなってきて、顔がゆるみそうになるのを、何とか堪える。
快楽の部分以外で楽しく感じながら、男と寝るなんて…どれくらいぶりだろうな。
「とりあえず、ゴム取り換えよっか。俺も取り換えるから」
抱かれる側でも、どっかのホテルでもない限りベッドをあまり汚したくない俺。
パチンとゴムをつけると、なんとなくスイッチがオンになるようで、それもあって着けがち。
視線を感じて顔を上げると、呆けて俺を見ている小林くんがいる。
「…ふ。そんなに見つめないでよ。それとも、着けるの見ていたかった?」
ククッと笑いを堪えつつ聞いてみれば、真っ赤になってうつむくだけ。
「可愛いね…悠有」
そっと手を伸ばして、彼の頬に手をあて触れるだけのキスをする。
顔を離した刹那「…あ」と物足りなそうな彼の声と視線が俺を呷る。
(そういう顔をするから、食べてしまいたくなるんだよ)
彼の胸を手のひらでトンと突いて、ベッドに仰向けにさせてから。
「もっと欲しいんでしょ? 悠有」
不安げに揺れる瞳に呟けば、無言で熱い視線だけを返してきた。
「……いいよ。もっと気持ちよくしてあげる」
彼が息を飲んだ気配に気づきつつも、彼の腰をまたぐような位置に動けば、ためらうような手が俺へと伸ばされる。
「怖くなった? もしかして」
あえてそう聞けば、視線をそらされる。
ふふ…と小さく笑ってから、彼のためらいなんかおかまいなしに腰を上げて勃ちあがったままの彼を後ろで飲み込んでいく。
ぐぐぐ…っとゆっくりと飲み込んでいく様を、じっくりと見せつけながら。
「あ……ッ、ク…」
腹の中を抉りながら持ち上げられそうになる、この感覚。熱のこもった楔が最奥へとたどりつく。
「水無、瀬…」
俺を呼びかけた彼へと覆いかぶさるようにしてから、そっと囁く。
「瑞って呼んでよ、悠有」
おずおずと遠慮がちに「瑞…さん」と呼ばれてみて、彼の声がひどく俺の好みなんだと知る。
甘く、ねだるような声。
「もっと呼んで…」
体を起こし腰をゆるく振って、彼が何度も小さく声をあげるのを聞きながら楽しくなるのを止められない。
「は…っ、ふか…ぃ、コレ」
俺の中の彼が、グン…と質量を増していく。
自然と腰が動き、俺の動きに合わせるように下からも突き上げてくる。
二人の動きが重なり、ゴツンと深い場所へと穿たれた瞬間反射的に腰が引きそうになり、中で彼をギュッと締めつけてしまう。
「瑞さ…、ん。ハ…ァ、ダメだ…これ」
ダメといいながらも、彼の腰の動きは止まらない。
(うん…イイ子♪)
「ふふ…。さっき約束したよね? 気持ちよかったら教えてって…さ」
体を少し倒してから腰をゆるく前後させて、まんべんなく刺激を与えていく。先端だけじゃなく、彼自身のすべてが気持ちよくなれるように。
「ふあぁっ…!!」
その瞬間、彼の目に涙がにじむ。
イヤイヤをするみたいに、首を左右に振って手を俺へと伸ばしてくる。
まるで縋っているようなその手を、パシッと掴んでダメだよと言わんばかりに首を振ってNOを示す。
彼が何かを抱えているのに気づいていたけど、まさかこのタイミングで邪魔をするような悩みなのか?
腰の動きを止めないままで、彼を組み敷き見下ろしながら冷えた目で吐き捨てるように告げた。
「何をためらってんのかわかんないけど、そっちの都合とか事情とかぶっちゃけどうでもいいよ。今は…ンッ……んなもん、すっ飛ばして……は…ァ…気持ちイイことだけ…追えばいいのに」
何かを思い出したのか、あからさまに動揺したのが見て取れた。
「やめな…って……言ってン……あ…ッ…だろ?」
ある意味物理的に、俺へと意識を戻させようとする俺。腰の動きを速める。
俺を抱いていながら、別の誰かが浮かんだのか? もしかして。
ぐちゃぐちゃになりながらも、体ごと俺へと向かせたい気持ちが湧いてくる。
「み…ずきさ…んっ」
ためらい? 戸惑い? 動揺? 困惑? …混乱?
彼を占める感情を知りたくて、腰の動きを速める。
「俺だけ……見てなよ」
腰をふわりと浮かして、一気に自分へ突き刺すように彼の杭を受け入れる。
ビクンと跳ねる腰。声にならないほどに、突き上げていく快感。彼の腰の上でのけぞったまま、吐き出した熱。
中で彼をキツく締めつけて離さない自分を感じて、彼へと視線を流す。
(この体は、逃したくないなぁ…)
そう思った相手は、きっと初めて。
初めて感じた想いに、嫌な感じはしない。
彼より先に達してしまったと同時に、彼が切なげに見上げていることに気づく。
「もうすこしだけ…っ」
そういって体を起こした彼が、俺を腰に乗せたまま抱き合うような格好で腰を揺らしてきた。
何を悩んでいるのか知らないけど、今にも泣き出しそうな顔でキスを求めてきたから、癪だったけど応えてやる。
「ほら…あーん、して」
じわり…汗を浮かべながら、互いに腰を動かしたままどんどんキスを深くしていく。
「ん、む……ふぁ…ンッ」
着けっぱなしにしてたゴムの中で、先に吐き出した欲が自分に絡みついててなんだか邪魔くさく感じて精液ごとゴムをズルッと剥ぐ。
彼の腹にペチッとまた固さを戻した俺自身が当たり、抱き合うようにキスをするたびに彼の肌と触れて擦れる。
その視線は、一瞬。
ちらっと俺自身へと向けたかと思えば、彼の右手でそれが包みこまれて上下に扱かれていく。
キスをし、互いの胸で固く尖って主張する乳首を指先で転がして。
気持ちよくするはずが、俺の方があっという間に高められてしまう。腰に痺れるような感覚が走り、意識が飛びそうだ。
「イイ…っ、瑞…さ……」
目の前の彼が息を詰めて腰の動きを速めていけば、俺の中で圧迫感が一気に増した。
「ク…ッッ!!!」
イく瞬間、彼が俺を強く抱きしめて、最奥で精を吐き出す。体を小さく震わせて、息を吐くだけで上手く吸えていない。
「は…っ、はっっ…はっ…はっ」
息を吸いなよとからかいついでに囁いてやろうと耳へと顔を近づけたその時、彼の口からかすかに聞こえた声。
「ごめん…一葉」
誰かへの謝罪。
目を閉じて、そのままベッドへと仰向けになって意識を手離した彼の目尻には涙が溜まっていた。
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