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都合とか事情とか 1 ※R18指定で

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~小林side~


さっきバスルームで吐き出して、初めての感覚が抜けなかったか固さを保ったままリビングへ。

そうして、ベッドルームで水無瀬さんに咥えられたまま欲を吐き出して。

「もしかして、早い人? それとも単純にハジメテくんは、刺激に弱いとかいうアレかい?」

余裕げにそう呟きながら、口角に垂れていた俺に吐き出されたばかりの欲をこぶしで拭う。

「…んなこと言われても、知らないですよ。自分でもどうしたらいいのかわかんないんですから」

ああ、そういえば小説の中にあったな。早くイキたくないからって、脳内で素数だの円周率だのを思い浮かべるやつ。

意識をそっちから外すってことなんだろうか。

「いいんじゃないかな、別に。気持ちイイって思ったら教えてって言ってあるんだし、経験ないのも知ってて相手してるんだから、それで文句を言うつもりはないから安心してよ。…ただ単に」

なんだろう。淡々と状況説明のように話をしてくれたはずなのに、最後の一言の後から俺の顔を見つめたまま黙ってる。

「水無瀬さん?」

首をかしげて彼の名を呼べば、「…ふ」と軽く息を漏らすように笑ってから。

「可愛いって思う対象じゃなかったのに、可愛いところがあるなと思っちゃってね。…ふふ」

なんて言う。

「可愛…」

27歳の男をつかまえて、可愛いとかどういう?

「不思議そうにこっちを見ているけどね、そう思うか思わないかを決めるのは俺。どこがどうとかも、俺だけがわかっていたらいい。…気にしないで。俺が言うことにいちいち反応していたらね、ヤッてる最中に気持ちよくなれないよ?」

そう言われて、どこか面白くなく感じて無意識で下唇をすこし突き出していた。

「んなこといわれたって…」

子どもがいじけているように、プイッと顔をそむけた俺。

「そういうとこも可愛いんだけどねぇ。…まさか、こうなるとはね」

最後の方は小声だったから、なんて言われたのかわからない。

「水無瀬さん、今…なんて?」

気になって聞き返しても、ふふと笑ってごまかされてオシマイ。

「俺を抱く前に、余計なことに気を取られないで」

床からゆっくりと立ち上がって、ベッドへと上がってくる水無瀬さん。

キシッとベッドのスプリングが鳴って、ベッドに腰かけている俺の体がかすかに上下した。

「さ…。ヤろっか、小林くん」

いざなうという言葉がよく似合うだろう、艶のある笑み。水無瀬さんは、明らかに手慣れている人だと感じる。

「よ…よろしくオネガイします」

いざ始めましょうかという言葉を聞けば、体も心も強張ってしまう。

誰かの体に入るということ。一葉とのあの夜にした、逆の立場になる俺。あの夜を塗り替えたい気持ちと別で、さっきから頭の端にかすかにある思考。

(この人を抱く側になれば、一葉が俺を抱きたかった気持ちも理解できるのか?)

縁あって家族になったのに、一葉に抱かれた自分。その状況も一葉の気持ちも、俺には理解できていないし飲みこめてもいない。

余計なことは考えないでと言われたしたけれど、きっと何かのタイミングで脳裏に浮かぶとは思っている。

(その中で、俺なりの答えが出せたら…)

いろんな期待を抱きつつ、ベッドに寝転がって俺へと手を差し出す水無瀬さんの体に跨る。

「さて…と。出来ればキスから始めたいけど、何か初体験に憧れのシチュエーションとか手順とかない?」

一応気を使ってくれたっぽい発言に、ゆるく首を振った。

「そう? じゃ…おいで? 小林……んんっ」

と、水無瀬さんは小さく咳払いをしてから、眉間にしわを寄せて。

悠有ゆう。悠有くん。……悠有、かなぁ」

俺の名前を呼んでみて、俺へと視線を戻した。

「名前呼ぶけど、いいよね? 悠有って」

そう言ったかと思えば、機嫌よく微笑んで自分を指さし。

「俺は、みずきさんでいいよ。呼び捨ては苦手っぽいし」

俺の同意もないうちに、どんどん勝手に話を進めていく。

戸惑いを隠せない中で、じんわりと胸にしみるような感情に口元がゆるみそうになる。

たまに見かける小説でもない話じゃない。普段名字で呼ぶのに、最中の時だけ下の名前で呼び合うってやつだ。

下の名前で呼ぶのも呼ばれるのも、記憶の範囲内じゃいなかった気がするんだ。

自分よりもすこし年下の同級生の中で、互いに距離を測りながら互いを呼び合っていた気がする。

だからかな。俺へのためらいも遠慮もないのが、なんだか嬉しくて。

「…ぜひ」

なんて、素直に返してしまう。

そんな俺の顔を見て、水無瀬さんが一瞬固まってから瞬きの後に口角を上げて俺をもう一度誘った。

「おいで? …悠有」

と。

ドクドクと早鐘を打つような心音が、俺の緊張感をさらに高めていく。

彼の首の横にあたる場所に、両手をつく。まるで壁ドンとかいうやつっぽい。

水無瀬さんとの距離は、俺が伸ばした腕の長さ分だけ。

「早く…、キスしてよ」

甘く誘う声に、俺は抗うことなく顔を近づける。

最初は触れるだけ。ちゅ…ちゅ…と啄むようなキスを繰り返し、彼が薄く唇を開いたタイミングで彼との距離をゼロにした。

ぎこちなく舌先をすべり込ませると、誘導するように舌先が口の中で踊る。

静かな部屋の中で、乱れる呼吸と唾液が絡み合う音だけしか聴こえない。

息継ぎの仕方がわからなくて、か。彼のキスに溺れて、か。酸素が足りないかのように、頭がボーッとしてくる。

キスをしながら彼の片手が、俺の半勃ちだったモノを指先で輪郭をなぞるように触れていて。

腰がひくんと反応するのが、どこか恥ずかしい。

「んあ……は、ぁ……っ、んふ…っっ」

キスを深めるたびに、水無瀬さんの口からは甘い声しか聴こえなくなる。

(もっとその声が聴きたい)

疼きはじめるソコをどうにかしたい気持ちと、水無瀬さんが教えてくれる極上のキスをまだ味わいたい気持ちがせめぎあう。

「悠有…、もう……欲しいんだけど」

それを引くも押すも、水無瀬さんのたった一言でどっちにでも転がっていく。

つくづく職場での顔とは違う顔なんだと思い知る。

職場での水無瀬さんへ先輩として抱いていた好意がなくなるわけじゃないけど、不思議な気持ちになっていく。

これから始まる時間が、“これから”のものになるのか”期間限定”になるのか。

後者だったなら少し寂しい気もすると考える自分がいる時点で、俺は目の前の彼に……。

彼から手渡されたゴムとジェルを受け取り、ぎこちなく着けた初めてのゴムに違和感を抱きつつもジェルでこれからつながるだろう場所を潤す。

くちゅりくちゅりとそこに指を這わせ、馴染ませ、挿し込んでは熱を上げて。

「ふふ……。結構おっきいね、悠有の。…早くいれて?」

熱を帯びて固くおきあがったモノを、ひくつきながら俺を誘う孔へ先端だけ触れさせてみる。口づけるように。

ふにゅ…と触れたソコは、目の前でこれからを期待するように見上げている彼の気持ちそのままのよう。

生き物のように小さく口を開いては、俺の侵入を待っている。

「キスしながらでも…いいかな」

ごくんと唾を飲んでから、自分へと暗示をかけて体を彼へと傾けた。

顔を近づけつつ、片手でさっき自身でキスをしたソコへと先端を押し込む。

グググッと反発される感覚を押し分けていく。

「……ア……っ」

彼がキスの合間に吐息をもらす。肉厚な部分がクプリと彼の中に収まっていく。

(ものすごい圧迫感に、押し返されそうになる…!)

「…んー…っっ! そのま、ま…ググっと…奥まで」

「…あぁ…」

キスなんかしている余裕がなくなっていく。

締めつけられながら、彼の熱い体内へともっと入りたくて、彼の腰を両手で掴んで。

「奥まで……っっ」

グプッと濁った水音がしたと気づいた刹那、彼の腰が一瞬だけ引いて、反射的に逃がすまいと強く腰を掴んだ。

と同時に、多分最奥だろう場所へ、ゴツンと一気に穿つ。

中がギュッと締まって、それだけで気持ちよさしかなくなっていく。

「も…っと!」

その声に煽られたように、ぎこちなく腰を動かす。

動かしていく角度や速さで、中の動きが変化していく。それを直に感じさせられていった。

「ん…っ、こ…っちが、イイ」

そういいながら彼が横向きの格好になって、足を持ってと目で伝えてきた。

膝から脚を持ち上げる状態になると、アソコがさっきよりも密着しているのがわかる。

さっきよりももっと深くつながれるのが気持ちよくって、感情をそのままに腰を動かしし続けていく。

「あっ……ハァ…んっ、や…ハァ…っ」

パンッパンッと肌同士がぶつかる音の合間に、濁った音と水無瀬さんの吐息が混じっていく。

ゴロンとうつぶせるように体位を変えられたかと思えば、俺を背にするようにして体を起こす水無瀬さん。

「ね…、このまま抉るように激しくヤッ…って?」

膝立ちの彼を背中から抱きしめ、固さが増していく杭をおき上がっている角度そのままでゴツンと打ちつけた。

「あぁぁあああっっ!!! イイッ! もっと…っ」

グプグプと音が鈍く濁った音が増していくと、彼が上半身を捻るようにして顔を近づける。

「キス…してよ…んあ…っ、ね、ぇ…っ」

甘えた声で、キスをせがむ彼に。

「…可愛い」

なんて囁いて、奥へと思いきり穿つと同時にキスをした。

「んむ…ンンンーーーッッッ!!!」

その瞬間、水無瀬さんの中が俺自身を引きちぎりそうなほどにキツく締めつけてから。

「んんっ……は、ぁ…ン」

体をふるりと震わせて、ゴムの中に欲を吐き出していた。腰が何度も細かく震えるたびに、中もそのたびに締めつけられてつられるように俺も彼の中で熱を吐く。

「く……っ、イ…イく…っ」

イった瞬間、彼を背中から抱く腕に力を込めて。

「…もっと……シたい」

ねだるように、彼の耳裏から囁く。

息を乱しながら腕の中の彼が、ふわりと微笑み呟いたのは。

「じゃあ、今度は上にならせて?」

もっと深くつながる体位のおねだりだった。




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