「聖女に丸投げ、いい加減やめません?」というと、それが発動条件でした。※シファルルート

ハル*

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久遠 7 ♯ルート:Sf

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「…ぷは」

懐かしい形状の入浴剤をお湯に放って、沈みながら細かい泡を出して小さくなっていくその光景が懐かしい。

カモミールの匂いに、りんごの匂いが混じった入浴剤。

「あたしがこれを好きだって知ってるのは、家族と柊也兄ちゃんくらいなんだけどね」

お湯に浸かって、手のひらで掬っては指の隙間からこぼして…を繰り返す。ふわりとこの世界にはない匂いで、バスルームが満たされていく。

さっき一緒に渡されたペットボトルは、部屋の方でキンキンに冷やしてもらっている。

「……っっはーーーーっっ…。コーラなんて久々すぎでしょ。二度と口に出来ないって思ってたのに」

楽しみすぎる、お風呂上がりの水分補給。申し訳ないけど、カルの水は前座扱いになるよね。ほんと、悪いけど。

それとそれらを渡される前に咥えさせられた、棒つきのキャンディー。しかもあたしが好きな味の物。

足を伸ばして深めに浸かって、バスルームの天井を見上げて入浴剤の匂いを吸い込むかのように大きく深呼吸をした。

ここに来てからいろんなことが起きたけど、今までで最大のインパクトだ。

シファルが消えてしまっていたことも大ニュースだったけど、戻ってきたことに加えてみんなへの手土産の威力もすごい。

それと、あのシファルの髪にあった…アレ。

「きっとワザとだよね。気づいてほしいのか、気づかせたくないのか。……わかりにくいよ、柊也兄ちゃん」

どうしてあの人がシファルと関わることになったのか、今のあたしにはさっぱりわからない。

みんなに渡された手紙については、きっと時間を置けばほっといてもカルあたりが勝手にしゃべってくれそう。

その手紙のこととかシファルがいなくなる前にナーヴと三人でやっていたことの続き、それについて話もある。

あれもこれも聞きたいことはたくさんあるけれど、優先順位でいけばあたしは最後?

「手土産だけよこして、中途半端な予告だけ見せられた気分だな」

順番にみんなのところで話をしていくって話だったから、結構な時間がかかるんだろう。

あたしを最後にしてくれるというのなら、そのまま一緒に眠れたら……と思ってしまう。

彼が消えてしまう前、浄化のこともあったからだけどキス以上の関係になんかなれなかった。

高校に入る程度の年齢で、元いた世界じゃキスの先をみんなが経験していたのかなんて知らない。

いわゆる経験ずみの平均年齢っていうのかな、そんなのの情報だってない。

同性の友達なんかいないに等しかったんだもん、聞くに聞けなかった。たとえその手の話をしたくても、お兄ちゃんにお前にはまだ早いとか止められたし。

気づけば、19。シファルがいなくなった時と同い年。そして、シファルの話が本当なら彼と同い年。

「もう……子ども扱いは、やだな」

ジークやアレクから子ども扱いされるのは、なんとなくわかるんだけど、それでもやっぱりもうそろそろ大人の女性扱いされたいよ。

「出来ればシファルには特に…意識されたいのに」

恋愛対象というだけで異性という意味で意識されているとわかっていても、女の子として意識されるのと女性として意識されるのじゃ全然違う。

体だって、シファルがいなくなった時よりはいろいろと成長している。……シファルの好みの大きさとかがわからないけどね。

「B…寄りの、C……くらいかなぁ。お城の侍女さんたちの方が胸は大きいんだよね。どうしてこれ以上大きくならないのかな…もう」

お湯に浸かりながら、恨みがましく自分の体を見下ろす。

「もっと意識されたいけど、外見はどんな人がタイプなんだろ。そういう話って、出たためしがないんだよね。みんな紳士だよね。……あっちの世界の男子がどれだけ脳内がそういうので溢れているのか…差が悲しいくらい」

みんながそういうことに興味ないわけじゃないのかもだけど、あたしに聞かせないようにしてくれている可能性もある。

「そういうのって、たいていジークが抑えているよね。それと、アレクあたりが教育によくないとかお父さんみたいなことを言っていそう」

なんとなく想像してみて、くすくす笑う。本当にそんな感じがしてきてしまう。

さっきのようにまた手のひらでお湯を掬っては、指の間からこぼして。それを繰り返しながら、ため息をつく。

自分が考えなきゃいけないことから逃げているって自覚があっても、今だけはそんな自分を許してあげたくてどうしようもないことばかり考えていた。

シファルはさっき言ったよね。

「元いた場所に戻れる、か」

シファルの手土産や彼の髪に仕込まれているものを見れば、どこに行っていて帰ってきたのか。そして誰に会っていたのか……を察することは容易い。それもあたししかわからない内容だ。

たまたまあっちに飛んだのかな。それに、こっちとの時間軸がまったく違うことや、シファルの怪我が治っていること。……三年間で得た能力で視た、シファルとは違う魔力。あの魔力の残滓も、きっとワザと。…でも、マイナスの魔力じゃなくて、むしろ…あたたかかった。あれがシファルを無事に戻してくれたモノでもあるのかな。

(あぁ…聞きたいことがいろいろある)

あっちに帰る方法があるよと言われて、ここに来たばかりの時なら飛びついたのかもしれない。

不安を抱えながらだったとはいえ、自分で髪色を変えることもカラコンを着けることも決めて、見た目からの変化だとしても自分が変わりたいと思っていた。新しい環境で前に進むために、鎧から新しくしようってやつだ。

まだスタートラインに立つ前の段階だったから、その先がそれっぽっちの変化のみで変えられるかどうかは見えていなかった。予想も立てられるだけの状況でもなかった。

どんな学校、どんなクラスメイト、どんな先生がいて、その中に入った時の自分が想像できるか。中学の時の自分を知っている誰かが同じ場所にいたら、その時の自分が何を出来るか。新しい場所で新しい自分になろうとした自分は、誰かに助けてと言えるか。誰かにそばにいてと伝えられたか。

想像するだけの材料がなにもないタイミングでの、この場所への召喚。

誰もあたしを知らない人たちばかりだったからこそ、大胆に出来た部分もあった気がする。それになにより、あたしという人間を受け入れてくれた人がいた。そこが大きかった。

聖女という人材を求めていて、そこに召喚されたあたしがいて。

本人的には本物じゃないんですけどねと思いつつも、なにかの力が自分を変えてくれ、浄化の助けになれて。

この場所だったから、あたしが生まれ変われたんじゃないかって思わなかった日はない。

元の場所で本当に生まれ変われたのか、ここで過ごせば過ごすだけ…自信がなくなっていった。結局委縮しちゃっていたかもしれないなって、自分の性格を考えたらそんな答えになってた。

この場所じゃなくても、同じ街にある高校じゃなくて、まったく違う環境に飛びこもうとするくらいじゃないといけなかったのかもしれないと思ったりした。

いっそのこと、海外とか? 英語を話せたわけじゃなかったけど、それもひとつだったかもだし。

手のひらでお湯を掬ってから、顔を洗うようにパシャッとお湯をかけてから顔を上げる。

「…はー…っ」

元いた場所に戻って、召喚されてからの時間経過がどうなっているのかとか、最低限必要なことを聞いてから。

「それからだって、話を進めるのは遅くないはず。即決が必要なら、シファルはそう言うはずだもん」

元いた場所に戻るための期限は、もしかしたら決まっていないのかもしれないよね。

普通に考えれば、召喚された時に必要なものを同じようにそろえるってことになる。召喚の時には、相当の魔力が必要とされていたはずなんだよね。たくさんの魔法士だったか召喚士だったかが、かなりな人数…しばらくの間使い物にならなくなっていたとか聞いたのは、浄化が終わって以降の話。

浄化が終わるまでの間は秘されていた情報が多すぎて、後から後からいろんな話が出てきた時は驚くことが多かったっけ。

これまで召喚をしては浄化を頼み、元の場所に帰還した聖女はゼロだった。そもそもで望まなかった人もいたし、過去の聖女たちの動向を知って、口にすらしなかった聖女もいた。

過去に出来なかったなら、自分が口にしたって期待するだけ空しくなるだけだって諦めたくなったのだろう。

あたしが聞いたタイミングはたしか、過去の聖女たちのことを知るずっと前だ。

それまでに出来なかったことを、やってみなきゃわからないじゃない! と言い出せる人は稀有だ。

んなことが言える人はきっと、研究とか未知の土地を開拓する人とかだったりしてね。探求心とかもあるんだろうけど、心が折れない人は強そうだ。

まぁ、あたしにはそういうことは過去の聖女たち同様で口にしなくなった。早い段階で聞いて、過去にはないって返ってきたら普通はそう思い込むもんだ。

「――でも、今回は違う…と」

あたしたちは今後のこの場所で、浄化のために聖女を召喚することがなくなるようにと動いている。

そして、それが叶えば…あたしは最後の聖女になって、帰還すればその痕跡もなくなってしまうのだろう。

「…………迷う必要なんかないのかもしれないのに。もう、そんなチャンスはなくなるかもしれない。…のに、帰りたくないって思っているあたしも…いる。ここに居場所があるって…大事にしたいって……思ってるあたしが、いる」

聖女じゃなくなっても、王様はここにいていいと言った。救ってくれた恩人を、こっちの身勝手で召喚してしまった罪を償うためにも、事が終わったからと捨て置くような王でいるつもりはない…って。

最終的にあたしが召喚システム自体を責めたことで、相当の年数をかけて繰り返してきたことをそのままにして、研究すること自体しなくなったやり方を、国自体が犯した罪と決定した。

渦中にいれば、視野が狭くなり、一歩引いて第三者の目を持つ者を配置すべきということすら見えていなかったことも罪の一つとした。

「王様が自分で自分を断罪して、首を斬れとか言った時は驚いたな」

ギロチンによく似たものを外に設置し始めた時には、驚きすぎて動けなかった。時代錯誤もさながら、そんな方法で自分たちの罪をチャラにしようとしてるのか? ということも。

死刑を推奨もしなきゃ、それ以外の方法だけでいいとも思わない。ただ、散らかしたものは片づけてからいなくなってよと思っただけだ。

収束されていない状況で、ジークやアレクにお後よろしくなんてしたら、あの二人が大変になるってことくらい…素人のあたしですらわかることだもん。そんな状況に二人を置きたくなかったのもあったから、「首を斬るとかありえない! バカですか!」って、王様をバカ呼ばわりしたってしばらく貴族や側近の人たちに避けられていたことも懐かしい。

シファルがいなくなっても、いつかまた会えるって信じたかったあたしが王様に罰として与えたのが、王様が持っている魔法の属性のこともあってシファルが守っていた薬草畑の管理だ。

「何が何でも枯らさない。それと、乾燥して使うものに関しては、シファルの記録を見ながら時期を間違わずに収穫の後…乾燥して保存。シファルが戻ってきてもそれまでと同じように作業が出来る環境づくりをしてください」

って言いながら、シファルが毎日つけていた記録を何冊も渡して、そうして普通の農家のおっさんみたいな恰好で過ごさせた。

そのうちヒゲが邪魔だとか言い出してキレイに剃った時は、ずいぶんと若返ってた。畑の管理もしていたから日焼けもして、王妃さまが時々こっそりのぞきにいていたのが面白かったな。

「……思い出ばっかりだ」

思い出せば思い出すだけ、嫌なことも多少あっても本当に多少だった。一番の嫌な思い出は、シファルが消えたことだった。って、だけ。他は最後の最後にはいい思い出になってたはずだ、多分。

「簡単に失えるような思い出じゃなくなってしまったのに、急に帰れるって言われても心の準備が…」

それにあたしがここから元の場所に戻れば、シファルとも一緒にいられなくなる。それは当たり前の話だ。

彼の表情は、あたしが帰ることを何とも思ってないの? と頭によぎるほどにいたって普通に見えて悲しかった。

心の中では、本音は違うと信じたい自分もいる。けれど、あの話が出た瞬間は、突き放されたようで胸が痛かった。

気持ちを表現する言葉が浮かばず、ただ泣きながら首を振るしか出来なかった。そんなことで、気持ちが伝わるわけないのに。

はあ…とため息をつき、立ち上がる。

あがってすぐにカルの水を飲んで、それから体を拭いてガウンを纏って部屋に戻る。

裸足でカーペットの上を歩いていく。足の裏をくすぐるような毛足の長いカーペット。

ペットボトルを手にして、バルコニーへ続くドアを開けた。

てすりに寄りかかって、ペットボトルのキャップをグッと握りこんで。

「ふわ…ぁ、懐かしい」

カシュッと一瞬だけ炭酸が抜けるような音をさせて、蓋が開いた。

口をつけて、コーラを飲む。炭酸自体がこの国になくて、本当に久しぶりの感覚に目を閉じた。

鼻から抜けるコーラの匂いと炭酸の不思議な感触。舌がピリッとして、その刺激を伝えてくる。

「美味しいっっ」

二度と飲めないかもしれないのに、風呂上がりということも相まって手と口が止まらない。

何度となく口へとペットボトルを運んでしまうし、飲みたいだけその手を傾けてしまうんだから。

「…っく、っく…ん。ぷはぁーーーーっっ、最高!」

ここでも似たものが作れればいいのにな。でも材料があっても、機材とかがなきゃダメなんだよね。そこまでの知識はあたしにはないから、やっぱりこれを飲み干したらもう飲めないのかもね。

「でも元いた場所に帰れば、また飲める」

そのために帰るとかじゃないけど、単純な話…そういうことでもある。

便利なものであふれるあの場所に戻れる。魔法やスキルがある世界も魅力的だけど、やっぱり不便といえば不便だもの。

もしも、の話。

あたしがいた場所の文明や知識を知ってるだけ持ち込んだとすれば、便利になるかもしれないけどそのリスク何かあるんだろうか。そういう想像するための知識や経験が足りないから、あまり大っぴらには動き出せない。

聖女だったあたしが、この場所で生きていくとすれば無能だと思われる生き方は避けたい。

デトックスウォーターやフォンダンウォーターに関しては、デメリットはないなと感じたから相談したところもあったんだけど。よくある異世界転移や転生もので、現代の知識を使って改革とかってのと比べたら地味かも。

半分まで飲んだところで、ペットボトルのふたをしてから、親指と人差し指と中指でキャップの部分を挟み込むようにして持ち、プラプラさせながらボーッと空を眺める。

入浴しているうちに、空は夕暮れの空が夜になりかかっている空にじわりと滲んでいくように染まってきていた。

「もうすぐ夜、か」

そういえば、あの夜もこんな感じだったっけ。

ジークとアレクに託した、遺書。それを書いた日。

自分の死を意識しながら書いた、何通もの手紙。生きたいと思いながら書いて、何か所も涙で滲んだ手紙たち。

「今すぐ死なない上に、帰れる……か。人生だいぶ変わったな、あたし」

ペットボトルを目の高さまで上げて、空になっている上半分の部分越しに景色を眺める。

「これからどう生きたいか次第……だよね」

まだ夕暮れが残る方へとペットボトルを掲げて空を覗けば、すこしだけ歪んで見える。

「は…。面白いな。見方を変えると、こんな風に空が映るんだ」

透明なのに透明じゃなく。そのままのようでいて、すこし歪んでズレて目に映る空。

「見方を変える、か」

三年経って、あたしもすこしは変われただろうか。

「きっと答え合わせの時が来たんだな。…ね? 柊也兄ちゃん」

この場にはいない、懐かしい顔を思い出そうとする。

――けど、もう…思い出せない。脳裏に浮かぶのは、よく似ていると最初から思っていたジークの顔。

すっかりここに染まっている自分を知って、短く息を吐き、笑った。


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