「聖女に丸投げ、いい加減やめません?」というと、それが発動条件でした。※シファルルート

ハル*

文字の大きさ
上 下
84 / 96

久遠 5 ♯ルート:Sf

しおりを挟む


~シファル視点~


まぁ、俺とひなが想いあってるんだろうことは、いなくなる前になんとなくで伝わっていたところはあったようで。

だからってんじゃないけど、ひなとも話をした上で、俺が絶対に戻ってこない確証が得られないうちは結婚云々は決められないってジークは思っていたという。

「そもそもでさ、シファル」

「…うん」

あの頃の俺とひなの関係性の話になって、ジークが紅茶を一気に飲み干して前傾姿勢を取り、そのままうつむく。

なんだか深刻な話か? とジークの言葉を待っていると、聞き取れないほどの小さな声で何かを呟いた。

「……たの? ひなと」

最後だけは聞き取れたけど、最初がイマイチよく聞こえなかった。

「悪いけど、もう一回」

ジークの方へを体ごと近づくようにして声を拾おうとすれば、短いため息の後にかろうじて聞こえるだろう声がした。

「寝たの? ひなと」

と。

寝た。寝た……? なんで急にそんな話に?

眉間にしわを寄せて、「意味がイマイチ分かんないんだけど」と返せば、「だってさー」と子どものような反応をするジーク。

「シファルがいなくなってから、何回か俺とアレクでひなが寝るまでとか寝てからの様子見とかしてた時のことなんだけど」

そうやって、見守ってくれていたってことか。

うんうんと俺は相槌を打ちながら、その話の続きを聞く。

「いなくなって確か…一か月くらいの時かな。“そういう”つもりはないんだけど、寝るまで横にいてってお願いしたら、叶えてもらえるのかな? それともやっぱりこういうことをいう女の子は、はしたない? シファルに嫌われる? って今にも泣きそうな顔で話されてさ。俺もアレクもひなへの恋愛感情がなかったわけじゃなかったから、ちょっとどうしようかなってなって。結果的に、ひなのベッドは広いからって俺とジークの間にひなを寝かせる格好にして、俺たちが互いを牽制する感じで寝たことがあるんだよ」

「……そ」

反応しにくい。すごく反応しにくい。彼氏として怒るに怒れない状況だろ、それ。わざとじゃないけど、俺がそばにいなくてそうなったってことだもんな。

「まぁ、ひなが眠くなるまで、三人でベッドで行儀悪くちょっとお菓子を食べたりしながらゴロゴロしてさ。そのうちひなが眠ったから、二人でひなを挟むようにして横になったまま見守っていたんだけど。……その、さ。ひなが…寝ている時に」

そこまで言ってから、俺へ向けていた視線をふっ…とそむける。

「ひなが、抱きついて……きて…その、さ…、足を絡めてギュッと抱きついて、顔をスリスリしてくるし、小さく吐息みたいなのあげるし、シファルの名前呼んで…密着しまくってきてさ」

俺自身、ひなとそういう感じで寝たことはない。ただ、手をつないで横になったことはある。

話をしながら当時のことをハッキリと思い出したんだろうジークが、そういうことに免疫がないわけないのに、まるで初心な少年のように真っ赤になって黙り込んでしまった。

そんな状態のジークに俺が言えることといえば、あの当時の俺たちの過ごし方ってだけで。

「さっきジークが聞いてきた寝た寝てないっていうのが、アッチの方向での話なんだとすれば、残念ながらそういう関係まで進んでいなかったんだよね。……浄化前のひなの体調も体調だったし、ひなの中にあった瘴気を取り出さなきゃいけない状況だっただろう? それが終わった後は、浄化の後にやることでナーヴと俺は比較的忙しい方だったし。あれ以上ひなが心を痛めて疲弊して、また瘴気のようなものを体に溜めないようにとも思っていた。…さすがに俺でも察せるよ。あの状況下で、ひなと男と女の関係になりたいとか動き出していたら、ただのバカだろ。あの頃の状況的に、誰かが命を落とすかもしれないって可能性があった。教会の連中のことを思えば、俺だって該当するかもしれないってのがなかったわけじゃなかったし。二度とひなに触れられないかもしれないって頭によぎらなかったわけじゃないけど、だからってひなを自分のモノにしてしまうような男だったら、無責任で自分勝手な男として最後の記憶に残ることになる。それは、ひなを大事に出来てないってことにもなる。……俺なりに大事にしていたつもりだったから、ひなのこと」

俺があの頃のことを思い出しながら、ゆっくりと説明していくと、ジークが短く息を吐いた。

ホッ…とした。そんな感じで、短く。

「いや、ね?」

と、切り出して、俺と同じようにゆっくりと話していく。

「シファルには言ってなかったけど、俺とアレク、浄化の前の段階でひなに王族だけがやるプロポーズをしてあったんだよ。本人は受け入れたつもりはなかったんだけど、結果的に好意的な気持ちは送ってもらえたっていうかさ。……それ・・によって、ひなが使える力っていうかさ。そういうもの増やしてあげたかったし、俺たち二人だけがひなにあげられる最大級の盾で剣だと思ってさ。シファルが戻ってこなかったら、王族に名を連ねなくってもずっとそばで護るつもりだったんだ。どっちともそういう関係になってもならなくても、すべてをひなの心に任せようってね。――ったら、ああいうことをひながしてくるもんだから、もしかして浄化の前の段階で、そこまで関係を進めていたんじゃないかって。…あまりにも普通に抱きついてきてさ。腕にグイグイひなの…こう…胸、が……その…」

ゆっくりと話していたはずなのに、最後の方はどんどん声が小さくなってしまっていった。

「……へぇーーー」

最後の話が話だっただけに、俺は棒読みで相槌だけを打った。

俺がいなくなった後で、一体どんな夢を見ていたんだ? ひなは。

手をつないで寝た記憶があっても、それ以上は本当にない。

(想像だけなら、何度もしたけど)

「ね、シファル」

悶々としながら紅茶を手に取って、ズズッとすすり飲む。

冷めてきてちょうど飲みやすいけど、どこかほろ苦い。

こうして生きて戻ってきているから、こんな平和な悩みを思い浮かべられるんだとしても、それでも……俺自身が決めつけて答えを出すわけにはいかないと決めただけに…決まるまでの時間が焦れったい。

俺があっちに帰れる話をした時に、何度も首を振って泣いていたひな。

あのイヤイヤの意味も、ちゃんとひなの言葉で聞かなきゃダメだ。自分勝手に悪い方に考えてもっと悲しませるかもしれないし、いい方向に考えて先走りたくもない。

「…ね、シファルってば」

俺だって年頃のオトコノコなんだから、ひなを抱きしめて、頭の先からつま先までめちゃくちゃ可愛がって、ベッドから出られないくらいに抱き潰したかった。…そこまでの体力が俺にあるかは別としても、薬草使ってどうにかすればなんとかなるかもしれないし。

実際、王城の薬剤師の中に王族の子作りの補助として、媚薬のレシピってもんが存在してるのを俺は知っている。

ジークとアレクはなんだかんだいっても、ひなに紳士な対応をしつづけてくれているから、ひなと二人の間にその手の間違いは起きていなかったっぽい。

特にジークなんかひなが現れる前は、どっちかっていうと軽い感じだったのに、ここまで誠実な人間だったとはな。

結果的に二人がひなを護ってきたようなもんだろ?

まるで横取りみたいで、罪悪感が襲ってくる。二人がひなにプロポーズをしたってんなら、本来ならば王族から婚約者は奪えないんだから。

しかも、ひなからのお願いって形とはいえ、それがキッカケで同衾したんだろ? 腕にひなの胸が当たったんだよな? ひなは誰かにそこを責められたら、二人と結婚しなきゃいけないレベルだろ? ひなの世界じゃ、そういうので結婚相手を決めることがないかもしれなくても。

「シファル!!!」

ジークが三回も俺のことを呼んでいたことに気づけず、考えごとに集中しすぎた俺はボソッとひとり言をこぼしてしまった。

そばにジークがいたことを、すっかり忘れて。

「…俺なんか、まだキスしか出来てないってのに…」

ため息まじりに吐き出したそれに、ジークが盛大にふき出す。

「ぶっふ」

息なのか声なのか悩むようなそれに、ビクッと反応してジークへ顔を向ける。

「ぶ…っ、クックックックッ…ふはははははっっ」

最初は堪えながら笑っていたのが、堪えきれなくなって勢いつけて腹を抱えて笑い出した。

「は…。え、な、なに? ジーク?」

何に反応したのかわからず、ジークのすぐそばで結構なボリュームの笑い声を聞かされている俺。

「えぇー…。なんなんだよ、もう」

眉間にしわを寄せて、怪訝な顔つきでジークから距離を置こうとする俺を見て、ジークが俺の真横に腰かけて肩を組む。

「シファル…忍耐強いんだな? 俺とアレクも相当なもんだけど」

「は?」

いきなり忍耐がどうとか言われて、首をかしげる。

「まあ、あれだよ。シファル」

肩をポンポンと叩くジークの顔には、同情にも近い表情が浮かんでいた。

「ひなに…シファルなりに伝えるべきこと伝えてて、ひなが戻りたいって思っていた願いを叶えられそうなことも隠さずに伝えて。あとは…ひなの決定待ちってなっててさ。……もしも、これからを望まれたなら、俺たち主導でキッチリ場を整えるから、その後だったら好きにしなよ。…あ。ひながシファルとの関係をこれまで以上に進めたいって願った場合だけね」

ジークが言っていることがわかって、また頭が痛くなった。

(頭の中でボヤいてたつもりだったのに、口に出てたんだな。さっきの)

恥ずかしくてこの場を去りたいのに、まだ話が最後まで終わっていないだけに出ていけない。

「…わかってるよ。じゃなきゃ、俺だってそういうことに興味があるそれ相応の歳なんで。既成事実作ってしまえば! とか浮かばなかったわけじゃないけど、ひなの方から俺に抱かれたいって、そういう関係になりたいって望まれてからの方がいいって気持ちの方が上回ったから。…優先順位は、いつだってひなの気持ちのつもりだよ。俺は」

なんてポツリポツリと話せば、肩にあったジークの手がまたポンポンと慰めるように触れてくる。

「ひなは自分以外に気を使いすぎるから、決めるまでに時間がかかるだろうって思ってる。……わかってて、待つって決めたから」

「……そうだね」

そんな話をしてから、俺の肩にあるジークの手をそっと避けて、体をジークへと向ける。

「もしも。……ひなが元の場所に戻るって決めた場合、ジークとアレクに協力をしてほしいことがある。国が所有権を持ってるんだよね? ひなの体から抜いて属性変換したヤツ。それと、集めていた瘴気も同じように魔石みたいにしていたよな? ……三年経過したのは知ってるけど、同じものがあればそれを、なきゃ同等の物を用意したいんだ。……ひなを向こうに送り届ける時に必要な魔力の足しにしたいんだ。その場にいる魔術師の魔力切れとかを起こす事態になるよりも、かなり負担は軽くなるはず。……というか、多分あるんだろうって知ってる・・・・んだけどさ。…その魔石っぽいやつ。管理者は、どっち?」

しなきゃいけない話の最後だ。

アレクにしなかったのは、ジークの方が王位継承権第一位だから。そこは、それが筋だろうと思っていた。

「……知ってる・・・・って、どうやって情報を手に入れてるんだか。シファルが会った人間、味方にしたら心強いけど、敵には絶対にしたくない相手にしか思えないんだけど」

「あー……、それ、めちゃくちゃ思った。でも…ものすごくひなを大事に想ってる人だったよ。本当の妹のように」

俺がそう呟けば、ジークはさっきよりすこし顔をゆるめて、でも困ったように呟いた。

「ひなには、父親とか兄とか…いっぱいいそう」

「そう…だな」

ひなが元いた世界で悲しい思いをした時期があったのは知っている。けど、今、ひなを大事に想っている人はみんな…たとえ兄っぽく思われていたとしても、その立場を利用してひなを困らせたりなんかしない。

いつだってひなの気持ちに寄り添おうとする人ばかりだ。

「ひなは愛されすぎなんだよ」

こんなんで、ひながここに残らないってなったら、みんなの心の中にポカンと穴が開きそうだ。

「…だな」

二人で笑いあってから、その魔石についての話をし、ジークの部屋を出る。

「やっぱ、ナーヴは明日一日かけて話をするか。……ってことを言いに行かなきゃな」

ナーヴの都合もあるだろうから、そこを確認して。

「あ。その前にカルの部屋が近いから、もうすこし後で行くって言っておくか」

一旦右へと行こうとした足を止め、踵を返す。

タタタタッと小走りで向かったカルの部屋。

ノックをすると、ガタガタッと大きな物音がした後に勢いよくドアが開けられた。

「あっ、にき!」

開いたドアからのぞいた弟の顔は、昔よく見た幼い顔にも見えて。

「…ごめんな。もうちょっとだけかかる」

そういって、子どもにするように頭を撫でてしまった。

「……っっ」

カルが息を飲んだ瞬間、「あ…」と手を引っ込める。

「ナ…ナーヴのとこに、明日一日時間をくれって言いに行こうと思っていて」

子ども扱いしてしまった自分に思いのほか動揺して声が詰まった俺の耳に、ある声が入る。

「…ここにいるぞ」

その声にカルの肩越しに、部屋の中をのぞく俺。

「ナーヴ?」

いないだろうと思っていた本人登場に、俺はポカンとして口を開けたままでナーヴを見ていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

親友に裏切られ聖女の立場を乗っ取られたけど、私はただの聖女じゃないらしい

咲貴
ファンタジー
孤児院で暮らすニーナは、聖女が触れると光る、という聖女判定の石を光らせてしまった。 新しい聖女を捜しに来ていた捜索隊に報告しようとするが、同じ孤児院で姉妹同然に育った、親友イルザに聖女の立場を乗っ取られてしまう。 「私こそが聖女なの。惨めな孤児院生活とはおさらばして、私はお城で良い生活を送るのよ」 イルザは悪びれず私に言い放った。 でも私、どうやらただの聖女じゃないらしいよ? ※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

処理中です...