強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*

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歩き出す、恋心 19

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『え、ちょ…どういうこと? こんな展開で書いてない。……え、書き直す? いや……うーん』

戸惑いを隠せていない様子がうかがえる。

「神田……」

その声におかなまいなしで、神田の髪を撫で、その手を髪から頬へと滑らせていく。

「不謹慎だって言われたっていい。先生のくせにって責められたっていい」

そのまま、彼女のあごを指先で持ち上げて唇の端に口づける。

「お前が好きだ。俺だけのモノにしたい。俺を好きだって、言ってくれないか?」

彼女が小さく息を飲んだのがわかる。

「……やっぱ、ダメだよな。俺、イケメンじゃないし、冴えない教師だし」

わざとらしく悲し気に呟いて、彼女の肩に自分の頭をポスンと落とす。

「好きになってもらえるわけ、ねぇのにな。…ごめん」

神田の気持ちを知ってて、あえて言葉にする。

「ほんと…ごめん」

そういった次の瞬間、彼女の肩に乗せた頭をすこしズラして、髪の隙間から首筋にキスをした。

ちゅ…と、しっかり音を立てて。

「……っっ」

彼女の体が緊張したのを感じる。

ちゅ…ちゅ…と何度か繰り返し口づけて、ぽつりと呟く。

「こんなに好きで、ごめんな」

首筋に息がかかる距離のままで。

すると、あの声が聞こえた。

『いいぃぃいいいいい! いただき! うん! コレ、いい! …なにこれ。もしかしてこれってアレなやつ?』

アレなやつと言われても、俺にはさっぱりだ。

『書いていくうちに、キャラが勝手に動き出しちゃう系? …やっば、あたしテンションめっちゃ上がってる?』

その声に、「あぁ、それか」と思った。

きっかけは出来た。

神田が書きたい展開以上のモノを、俺が誘導して作っていけばいい。

本当だったら神田の方が俺へ謝るシーンだったんだ。

「……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」←こんな感じで。

コレもアリでしょう! という展開にすれば、俺が記憶できる可能性はあるんじゃないか。

実際に話を書いている作家本体の年齢までは把握出来やしないとしても、現状、女子高生との恋愛になるわけで。

実際、それが有効かどうかはちょっとした賭けだったけど。

「……先生」

ためらいがちに俺を呼ぶ声。

俺はそっと頭を上げて、神田の目の高さに合わせるように屈む。

あの時、前回の同じタイミングでの選択肢の前に、作者サマは言っていた。

『この恋を、はじめてもらいましょう…か』

ってさ。

(はじめてやるよ、俺主導で)

「好きです、先生」

まっすぐな言葉で返事をくれた彼女に、俺はそれまでの俺らしくない行動に出た。

「じゃあ、俺のモノになって」

放課後の学校の中で、

「……ふ…ぁ」

彼女の呼吸を奪うようなキスを繰り返す。

バレる覚悟は、もう出来ている。

きっと藤原の方には、このシーンの報告も行くんだろう。

「名前、呼んで?」

甘えたように、キスの合間に彼女に囁く。

「だってぇ」

「俺の名前は、だってじゃないよ」

クスクス笑って、もう一度囁く。

「呼んで? 花音だけの…俺にして?」

らしくない。

俺っぽくない!

わかってたってやるしかない。

「…花音?」

もう一度、特別だよってわかるような囁きで、彼女を誘う。

「それとも、やっぱり…俺じゃ」

あえわざとて自分を落とすような発言をすると、簡単に食いつく。

「かっ」

「…ん?」

「かず…さ、さん」

ほら、ね。

「……うれしいよ」

やわらかく微笑んで、喜びを伝える。

至近距離には、真っ赤になって言葉の先を待っているような彼女。

「大好きだよ」

そう告げれば、従順な子犬みたいなその視線とぶつかった。

「ん……ふ…」

それまでの通りなら、彼女がまだ知らないはずの大人のキス。

何度も何度も呼吸を奪い、言葉を奪い。

会話よりも互いの唾液を奪い合うかのようなキス。

右手を彼女の頬に、左手を彼女の腰に回して二人の距離をゼロに近くする。

何度か彼女の腰がふるっと震える。

相手が相手なら、すぐに抱いてしまいたいほどの状況。

でも、それはやらない。

(卒業までは、抱く気はない。散々焦らしてやる。覚悟しろよ、神田)

ちゅ…とリップ音を立てながら体を離すと、とろんとした目の神田が困ったように俺を見ている。

にっこり微笑み、手のひらで何度か頭をポンポンとする。

「花音はいい子だから、俺の言うことは聞いてくれるもんな?」

釘を刺す。

いい子じゃなきゃ、付き合えないよという暗示だ。

「……いい子にしていたら、ご褒美は…ありますか?」

震える声でそう伝えてきた神田に、俺は微笑むだけで言葉にしない。

そうして、腕の中に彼女を収めてからもう一度囁いた。

「こんなに好きなのは、お前だけだよ」

これが彼女に呪いのように絡みつきますようにと願いながら…。

さぁ、恋を始めようか。作家サマ。

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