強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*

文字の大きさ
上 下
31 / 37

歩き出す、恋心 17

しおりを挟む


「すっごい! 先生! 先生っ!」

打った俺よりも喜んでくれる神田が、駆け寄ってきた。

「あのね! こう、ポーンって! ふわって」

興奮しすぎ。

(あぁ、もう、ほんと…可愛く見えちゃう設定にでもなってんのか?)

胸がとくんとくんとあの感情を告げる音を立てる。

「……ぷ」

こぶしを握って、口元へ。

思わず笑ってしまったのを隠そうとしたのに、声が漏れてたみたいで。

「あ、笑ってるし。ひっどいなぁ、先生」

今さっきまで頬をほんのり染めて、興奮していたのに、今はもうご機嫌ななめだ。

そんなとこも可愛く見える。

作家サマの補正かなんかなのかな。

(でも嫌だ。俺の感情は、俺のものであってほしい)

「ごめん、ごめん」

そういいながら、床のボールを彼女に手渡す。

「じゃ」

と言ってから、ゴールを指さして。

「一本、いってみよっか」

なんて、告げてみる。

ちょっとからかい気味にそう言えば、目で、いかにも嫌ですと返してくる。

「…………あの、キレイなシュートの後に、あたし?」

照れても見えるし、苦手なことを嫌がっているようにも見える。

まぁ、そもそも「じゃあなんでやってたの?」って聞きたくなることをやっていたわけだけど、この話の展開上に必要な流れだったんだろう。

「そうだな、あの辺からやってみよっか。ただし、俺が言うように打ってみて」

おかまいなしに、言葉を続ける俺。

「え、ちょ…せ、せn…」

戸惑う彼女へと手を差し出せば、臆しつつも俺の手を握る。

「ぜったい、無理だし」

拗ねたようにボヤくけど、握られた俺の手を握り返してきた。

「えへへ」

なんて、本当に嬉しそうに笑って。

その笑顔が、胸に刺さる。

本音の笑顔か、違うのか。

聞きたい気持ちがあるのに、聞けるはずもない。

(お前は、俺のどこが好きなんだよ。俺と…どうなりたいんだよ)

コレを恋と呼んでいいのか、切なさで満たされてしまう。

恋に飢えているわけでもないのに、縋りつきたくなる。

(俺に厳しすぎやしないか? 神田。お前視点の話なんだとしたら、俺の願いなんかなかったことになるんだろう?)

あんまりすぎるだろ? 俺のことが好きだっていうわりに。

(俺のことが本当に好きなら、もっと……俺の気持ちも……)

顔に出ないようにして、奥歯をぎゅっと噛みしめる。

以前のような話の展開の中であった、体の関係。

そのきっかけも何もかもの流れを俺は知ることがないまま、この場所に戻された。

また同じ展開に流されてしまうのなら、今度こそ俺の言葉で俺の体で抱きしめたい。

恋愛小説のわりに、この作家サマ=神田は俺の感情に関しては扱いがかなり雑すぎる。

(……もしかしたらだが、そこが穴になったりもするのか?)

雑さゆえに、その部分は目が届いていないと想定してみて…と、神田と会話を続けながら頭だけはフル回転だ。

(神田が俺の行動やセリフを自分好みに特化して誘導しているとして、逆に俺が誘導を仕掛けたら?)

別にコイツと恋愛をすることになったことに、異論を唱えるつもりはないんだ。

ただ、さ。

(恋愛するなら、やっぱ相手の思うままだなんてごめんだ。神田だけのシナリオで進めてたまるかよ)

ボールを手にしたまま、「…ふ」と笑った俺を見て、神田が一瞬視線をそらした。

「恋愛は、二人でするもんだからな…」

小声でもらした自分の思いに、顔をあげなきゃと感じた。

うつむいていたら、足元をすくわれそうだ。

「せんせぇ?」

動きが止まった俺に、少し困ったような顔つきで見上げてくる彼女に。

「さ。やってみようか、俺と」

好意を前面に出して、俺は微笑んだ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...