強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*

文字の大きさ
上 下
25 / 37

歩き出す、恋心 11

しおりを挟む


「距離だけどうにかすればいいって話じゃないですよ。…というか、神社の一件以外にも、いろいろやらかしているようで?」

後頭部を掻き、生徒に説教をされている現実を痛感する。

でも、今、こいつは言った。

神社の一件以外、と。

俺が知らない何かだとすれば、できれば情報がほしい。

危険といえば危険。

なにか証拠があったら、俺が知らないとはいえ認めなければただの無責任な大人にしか見えない。

「どこまで掴んでいるんだ、お前は。俺と、彼女のことを」

あえて、名前を言わない。

「そうですねぇ」

と呟いてから、あごに手をあて「ふぅむ」といいつつ、首を傾げた。

「セリフも全部辿った方がいいですか? テスト準備期間の勉強のあたりから」

視線だけ右上に流し、その頃を思い出しながら…か、話を振ってきた。

「は?」

テスト準備期間、って。

「付き合うまえからじゃねえかよっ」

ツッコまずにはいられなかった。

まさかの、二人が始まる前からって…。

「ハッキリと人前でいちゃついていたのが今回っていうだけで、辿ってみたらこっそり会っていたのとかいろいろ出てきちゃった…みたいな。……というか、大変ですね。先生」

「なにがだよ」

さも他人事っぽい言葉に、眉間にしわを寄せる。

「先生、モブキャラなのに、巻き込まれてて」

聞き覚えのあるワードが飛び出した。

「愛されるって、大変そう」

続けて口にしたのが、さっき以上に他人事だと言わんばかりの言葉で。

「お前の目的はなんなんだよ、一体」

どこか、焦燥感を煽られている感覚がするのに、乗らずにはいられなくて。

「さっき言ったでしょう? 何度同じことを言えばいいんですか」

「……そんなお前を見てて、味方になるとか思えるはずがない」

「大人になると、純真な子供の心を疑うようになってしまうんですね。悲しい現実です」

「いやいやいやいや。そうじゃないよな? お前みたいなのが純真って、どこをどう見たらそう見えるっていうんだ」

「…失礼な。これでもピュアな方だと自負しているんですけど」

「自負は、口にするだけなら誰にでもできるだろ」

チラリと腕時計へと視線を流し、「時間ですね」と呟く藤原。

「じゃあ、信用に足るか、見せてみたらいいのでしょう?」

そういったかと思うと、体育館の方へと踵を返した。

「おい! 藤原っ!」

気になる言葉を置いて、先に戻ろうとする背中に声をかければ、顔だけ振り向いて。

「……彼女に好意を抱いているのは、少なくないんですよ? 先生」

さっきのように貼りつけたような笑顔で、呟いた。

味方だと言われたのに、味方だと安易に受け止められない。

(そもそも、あいつが言ってたことを気にせずにはいられない)

どういう意味か、“モブキャラ”と言った。

「まさかのあいつが、作家サマ? …だとしたら、彼女への好意を口にするのは何か違うし」

その真意はいつか掴めるのか、語るのか。

「あいつが自分から語るとは、到底思えないな」

俺の敵だとしても、彼女に好意を持っているのであれば、最悪…彼女を傷つけることはないだろう。

(俺だけでやれることには、作者のせいで制限があるのがネックだ)

あいつが知っているらしい、今までの俺たちのこと。

俺だけで彼女を守り切れないドコカがあるなら、協力者として利用してやる!

「聞こえは、かなり悪いけどな。利用って…悪役みてぇ、俺」

そもそもで、だ。

俺がいるこの小説は、誰視点の話なのかを理解していない。

やたら俺を褒めていたような作家の呟きは、なんとなく憶えているけど。

「ちっとも俺に優しくない展開じゃねえか」

とてもじゃないけど、ヒーローとは思えない。

モブ・オブ・モブとか言われた俺。

「せめて彼女の前でくらい、カッコいいと思われたいとこだが…」

自虐にも近い言葉を吐きつつ、藤原の後を追う。

「何をしてもかっこよさとは無縁なのが悲しい事実ってのがな」

地味な教師としての定位置に、あの頃の俺に戻れたらすこしはかっこいいとこ見せられたのかななんて、たらればを頭に浮かべていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...