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いつ、誰がこの恋をはじめた? 13
しおりを挟む夕暮れ。
窓から差し込む、オレンジ色の光。
その中で、部員が誰もいない場所で、たった一人で。
「もう! なんで入らないの? ……こう、だよね? ……そ、れっっ」
運動神経悪くなさそうなのに、見ている範囲内で一本もシュートが決まっていない。
「むーーーーーっっ」
まるで子どものように、ちょっとふてくされはじめてるし。
(この娘を可愛いだとか、愛おしいだとか。そう思っちゃうことから、逃げられないんだろうな)
作者のさじ加減なんだとしても、見た目だけが可愛いとかじゃなくて。
「困ったもんだ。どこがどうじゃなく、説明できないくらいまでになってるなんてな」
体育館の入り口で、小さな声で呟いた。
認めるさ。
どうしようもない。
きっかけを作ったのが、なにかのゲーム好きな二次作家なんだとしても、俺が抱きはじめたこの感情を嫌う理由がなくなった。
(懐かしいこの感情を、好意的に思いはじめているんだから)
ただ、それを彼女に伝えるかどうかは、また別の話だ。
だいたい、教師と生徒だし、そもそも論だが彼女は未成年だ。
「……下手だな」
そういいながら、彼女の方へと近づいていく。
どういうシーンを描きたくて、この選択肢を作者が選んだのかは知らない。
「あ! やだ! みて…たの? 先生」
構えて、あとは打つだけという瞬間に、俺は言葉をかけたようだ。
何とも言えない半端な格好で、俺の方へと振り向いた彼女。
「ずいぶんと散らかったままなんだな。あいつらは片づけていかなかったのか?」
散乱しているボールをひょいと拾い上げ、片づけていく俺。
「まあ、はい。保健室から帰ってきたら、こう……でした」
苦笑いしながら、俺と一緒に片づけしだす。
「で、それがどうしてシュート練習?」
ボールを一つ拾って、3Pシュートの場所で軽く放る。
「……あ」
ゆるやかな弧を描き、ゴールネットのかすかなパサッという音だけをさせて、ボールは床に落ちた。
ものすごく久しぶりだったのに、上手いこと打てた。
表向きには淡々としているけど、内心じゃガッツポーズしてる俺。
「すっごい! 先生! 先生っ!」
打った俺よりも喜んでくれる神田が、駆け寄ってきた。
「あのね! こう、ポーンって! ふわって」
興奮しすぎ。
「……ぷ」
こぶしを握って、口元へ。
思わず笑ってしまったのを隠そうとしたのに、声が漏れてたみたいで。
「あ、笑ってるし。ひっどいなぁ、先生」
今さっきまで頬をほんのり染めて、興奮していたのに、今はもうご機嫌ななめだ。
「ごめん、ごめん」
そういいながら、床のボールを彼女に手渡す。
「じゃ」
と言ってから、ゴールを指さして。
「一本、いってみよっか」
なんて、告げてみる。
「…………あの、キレイなシュートの後に、あたし?」
目で、嫌だと言っているような気がしたが。
「そうだな、あの辺からやってみよっか。ただし、俺が言うように打ってみて」
おかまいなしに、言葉を続けた。
「え、ちょ…せ、せn…」
戸惑う彼女へと手を差し出せば、臆しつつも俺の手を握る。
「ぜったい、無理だし」
拗ねたようにボヤきつつも、握られた俺の手にきゅっと力を込めてきて。
「えへへ」
なにやら嬉しそうに笑った。
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