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いつ、誰がこの恋をはじめた? 10
しおりを挟むこの感情の名前は、なんなんだろうな。ホント。
可愛いなと思う。
それは好意的に感じていないと思わないことだってのは、さすがの俺でもわかる。
出来の悪い生徒を可愛がるそれなのか。
親の背中を必死についてくる子供への情みたいなものか。
それとも、冗談抜きで愛情というなの情なのか。
自分の中でも、揺れ動く感情に混乱している。
とはいえ、俺も大人だ。
(顔に出すわけにはいかない)
最後のそれが完全に該当したら、マズイ。
作者の陰謀めいたそれなんだとしても、未成年者とはマズイ。
それに、どこの誰かわからないやつに誘導された恋心なんざごめんだし。
立ったまま胸を手のひらでトントンしながら、呼吸を整えようとしている彼女。
ハアハアいいながら、俺が自分の言葉を待っているのがそんなに嬉しいもんか。
「どうかしたのか?」
そう、口にした瞬間、脳内に響く馴染みつつあるあの音と声。
『選んでください。頭を撫でる。顔に貼りついた髪の毛を、指先で掬う』
(……は? 二択で、しかもどっちにしても神田に触れろってことか)
どっちを選んでも、同じ結果が見える気がしてならない。
(いや、待てよ? 神田が俺のことをどう思っているかによって、効果は違うよな)
とっさにそう思って、こぶしを口元に持っていき、うーんと悩んでから。
「ほら、髪の毛、食べちゃいそうだぞ」
いいながら、指先で頬に貼りついていた髪の毛の束を掬い取った。
そのままその髪の束を、彼女の左耳にかけてやる。
と、そこまでやってから、感じた視線に目線を動かす。
口をポカンと開けて、真っ赤な顔で何か言いたげにして、どこか困った顔で見つめている彼女。
「ん?」
もしかして撫でた方がよかったのか? それとも、耳にかけたのがセクハラだとか言われるのか?
「か、神田? 悪い、耳、触っちまって」
何か言われたわけでもないのに、反射的に謝ってしまう。
「気持ち悪かっただろ、ごめんな」
彼女に触れた右手を、左手でペシペシ叩く。
「もうしないから、な?」
苦笑いしか出来なくなった俺に、フリーズしていたはずの神田の手が触れる。
「そんなっっ!!」
そういって左手に叩かれ続けていた右手を、柔らかな二つの手が包み込む。
「……そんなこと、ない…もん」
きゅっと、力を込めて。
でも、優しく包み込まれた。
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