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いつ、誰がこの恋をはじめた? 8
しおりを挟むその空間から、日常へ。
目が覚めて、自分がいる場所が把握できた。
「俺は、誰かが書いている、なにかのゲームの二次小説の中にいるのか」
触れれば温かいのに、自分の体温が偽者のような気がしてしまう。
俺がいるのは、夢の中みたいなものなのか?
俺は、俺じゃないのか?
「俺は、どうやって生きてんだよ」
体を起こしたまま、ベッドの上で手のひらを見下ろす。
「俺の感情は、誰のものなんだよ」
不思議な感覚に、妙な焦燥感。
そして、
「神田、か」
どっちが巻き込まれたのか、どっちもなのか、とにかく俺と神田の話なんだってことだけは理解した。
「納得は一切出来てねえけどな」
俯き、手のひらで乱暴に前髪をかき上げる。
「学校には行かなきゃ、か」
この学校に行かなきゃというのも、誰かの指図なんだろう。
「俺の人生じゃねえのかよ」
大きくため息を吐き、タバコに手を伸ばす。
火を点けかけて、一瞬、ためらう。
(タバコがどうとか言ってたっけな)
思い出しながら、火を点けて一息吸い込む。
「……っはぁ」
出来たのは、理解だけ。これっぽっちも納得出来ねえ。
「俺、どうなるんだっての」
なんてボヤきながら、指の間から立ち上っていく煙をぼんやりみていた。
簡単にシャワーを浴びて、身なりを整えて。
「はあ」
ため息を吐いて。
この一連の流れも、作者が書いているのかな。
俺のやることなすこと、なにもかも?
昨日のことを思いだして、その流れで神田にタバコの匂いがするとか言われて、あいつを可愛いと感じて。
「それから」
問題が解けてスッキリしたと口にした彼女に、俺は。
(一瞬、手に力が入ったっけ。あの時はわからなかったけど、きっと)
手のひらを開いては閉じてを繰り返す。
「あいつの頭を、撫でたくなった気がする」
無意識に、踏みとどまったんだろう。
その後にも、笑った彼女を見て変な緊張感があったはず。
「……どこからどこまでが、手のひらの上なんだ」
自分の存在理由を疑う。
それと、
「18禁だけは、なんとか回避しないとまずいだろう」
ってことに、焦りが生まれる。
俺は高校教師。
神田は、女子高生=未成年。
誰かの話の中なんだろうが、俺が勝手に傷つけていいものだなんて思っていない。
(……Eカップ)
いろんな思考が混じって、訳がわからなくなっていく。
「だいだい、あいつから見たら俺はオッサンだろうし」
変な言い訳をして、後頭部を掻く。
「俺、抗うことは可能なのか?」
なにもかもを誰かの好きにされたくない。
俺の気持ちは俺のもののはずだし、神田だってそうだろう。
「でも、強制…フラグって、強制なんだろ?」
問題は、そこだった。
どこまで干渉出来るのか、手さぐりになるだろうこれからの俺の生活。
「強制って、なんなんだよ」
ため息をこぼし、考えるのを諦めて学校へと向かった。
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