短篇小説・黒

ウヲヅゲ

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俺は夜のドライブが大好きだ。 

自慢の真っ白なスポーツカーはいつもピカピカにしてある。

田舎街だから多少スピードを出しても警察のご厄介になる確率はかなり低い。

その日オレはノリにノっていた。
かなり速いスピードで走行していたが、曲がり角の先で対向車車がハイビームのまま、停車しているのを発見した。

こちらがハイビームにしてもハイビームを辞めない。

いい加減にしろよ。
俺様が丁寧に教えてやってるのに、
あの対向車、ハイビームのままハザードたいてやがる。

マジでウザイ。

こういう奴は猛スピードで抜き去ってやるのが一番のストレス解消だ。

俺はアクセルを最大まで踏み込むー

いいな、このエンジンが吼えるような唸りがたまんねぇ!

人が立っている様子は無い。
こんな所で、このスピードで人と当たれば怪我ではすまない。

歩行者がいないことも確認もした。

対向車とすれ違う。
その瞬間、何かが俺の車の前に現れた。

大きな衝撃音とともに何かを吹き飛ばした。

なんで・・・?
対向車はハイビームだったし、人がいるなら絶対にわかる。

俺は見たんだ
間違いなく人の影はなかった

車を停め、震える足で車をおりる。

遠くに跳ね飛ばされた何かが横たわっていた。

「おい、目の前に人がいたのに、何で加速しているんだ!この馬鹿野郎!」

対向車のドライバーが警察と救急に連絡する。

俺は、ただ・・・
もはやクレームが言えるほどの精神状態ではなかった

俺はウザイ対向車を見たくないから走り去りたかっただけだ・・
こちらになにか言っている。
俺を責めていることだけはわかる。
恐怖で足の震えが止まらない。

後で聞いた話だが、自転車で転んだ弟を助ける為、その子のお兄さんが駆け寄ったところを俺が突っ込んだらしい。

対向車はそれを知らせるため、ハイビームにしていたらしい。

対向車のドライバーはそう証言した。

でも、その姿は俺には見えなかった。


何を悔やんでいいか分からない。
見えない所から出てきた歩行者。

スピードを出していたこと?
相手のハイビームに腹を立てたこと?

あぁ、ああ。
俺は両手を合わせうつむき続けた。


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