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語り手

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「この日時で…はい…サインをお願いします。」

『フフ、小僧!褒めてやろう!はっはっはっ…!』

「あ、いえ…も、もう来ないでくださいね…。」

この決め台詞はマニュアルなので気にしちゃだめですよ?

いやー無事に見つかって良かったですね!半日潰れちゃいましたけど。

「はぁ…ほんと疲れちゃった…。」

「で、でも、すぐに見つかって良かったと思う…。」

「そうね…まるで自ら近づいてきたみたいな。不思議なことがあるものね。あ、さすがに休憩しようウルメくん!飲み物買ってくるね!」

「あ、ありがとう…書類まとめておくよ。えっと…。」

「お砂糖抜きのカフェラテでしょ?まかせて!」

あんな嬉しそうな顔のウルメくん久しぶりに見ました。お気に入りの飲み物覚えてもらえてて良かったですねぇ。

「ねぇ…あんた何かした?」

え?私が?何をです?

「何をって…うーん。そんなこと無いか…無いわよね。」

怪訝な顔をして給湯室のコーヒーメーカーを使ってカフェラテを作るほまれちゃん。

そんな顔してるとシワだらけになっちゃいますよー?

「ほんと二言目には失礼なことばっかり言うわね…!」

失礼だなんて!ほまれちゃんの美貌が失われてしまうのが惜しいだけです!笑って笑ってー?

「笑ってほしいなら静かにしてれば…ふぅ。まぁなんかよくわからないけど…ありがとう。」

ありがとうなんて!いやぁ、私との会話の喜びをわかって頂けたようで嬉しい限り!もっともっとお話しましょうね!

「調子のらないで…まったく。」

熱いですからこぼさないように持っていくんですよ!

…。

ありがとう。

この言葉、受け取ってもいい、ですかね?神様?

******

散乱した虹色の玉をまた、ひとつひとつ手に取り確認していくほまれとウルメ。

あまりの数に途方に暮れていたが…コロコロとひとりでに転がって近づいてくる玉がひとつ。

「これ…まさか…?三日月さん、これ、みて!」

「え?…あっ!これよ!これ!あった!」

その玉を拾い上げたウルメは、ほまれと共に確認した。
そしてそれは…あの神が求めていた魂の玉だったのだ。

******

すごいでしょ?これ私です。

いつも真面目にやってますがね?今回はいつも以上に真面目にやりました。

何であそこからこの流れになったか?

それは私が『天の声』であり、この世界の『語り手』であることの強制力を使ったから。まぁ使うというかいつものように話すだけ。

他の異世界で言うところのスキルみたいなものですかね?ここも一応異世界ですから、そういうのあるんですよ。

まぁ…これは本来の使い方なのか?と言われると恐らく違うでしょう。今回のこれは私がほまれちゃんの為に強制的に『語り手』をした…やっていいことだったかはわかりません。

もし…私が介入せず、見つけられず、神への対応が変わっていたとしたら、あの魂は選別漏れで記憶も全て消され村人Aとして生きてたかもしれませんし、また、別の世界で記憶を持ったまま違う人生を歩んでいたかもしれません。

それを、私が、行き先を、ほまれちゃんの望む先へと導いてしまった。

あとでここの神に怒られるか消されるもしれませんが…私を天の声にしたことと『語り手』としたのは神なので…。

もう一つ言えば、ほまれちゃんにだけ声が届く仕様なのが…いや、お話できるのは嬉しいんですけども。

「ぷはぁ…少し落ち着いたね、ウルメくん。もう1件片付けたらご飯にしよう!おはいりくださーい!」

「えぇ…?今からだと…社食終わっちゃうんじゃないかな…あぁ…?!いらっしゃいませ、こ、こちらにおかけください。」

やる気満々で元気いっぱいのほまれちゃんと、それに振り回されるみんなを見守るのは辞めたくはないですね。
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