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第1幕
潜入!ハルト城【裏門攻略部隊】
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風がひとつも吹くこともなく、異様な静けさが辺りを包んでいた。月明かりだけ異様に明るく辺りを照らし出している。
場所はハルト城、正門から見て左後方にある川辺近くの林。
目の前の川には裏門へ通じる橋がある。以前は場内へ物資や交易品を運び入れる入り口として使われていた所だ。つまり、城下町を通ることなく直接城内へ侵入することができる所となる。
ミイナからの情報で、こちら側から入ってすぐ近くの城壁付近の監視塔に、城を包んでいる防護壁を作り出している魔術の核があるとのことだ。城内にあるもう一つの核と結び付いており、どちらかを破壊しないと関係者以外は城に入ることができないと。
その破壊を目的としたチームとして4人。
「ふぅん…以前と変わらない造りにしてる…ってのは本当なんだなぁ。」
「えぇ。旅を始めた頃、こっち側は遠目からだけど見た景色と変わらないわ…何の意図があるのかしら…?」
「わ、私は始めて…緊張します…!」
「俺は準備万端だ、だじぇ!」
林に身を潜めているのは、クロウ、ユキミ、ロア、カインの4人。
ロアとカインは戦略的作戦を立てた戦闘は初めてであり、声に張りはあるものの緊張はそう簡単には溶けないようだ。
「若いわね…私もこんな時があったかしら。」
「ユキミも十分若いだろ?ま、俺らが引っ張らなきゃならねぇのは変わんねぇけどな。おい、ロア!カイン!散々稽古つけてきたんだから自信もてよ!」
隠密行動を要求されているこちらの部隊だが、少しばかり声が大きいようで…。
「ふふふ、ありがとクロウ。さてと…皆、これを身に着けてね。」
そう言うと、ユキミは腰のポーチから小さな石の付いたチャームを人数分取り出し、ひとつずつ渡した。
【透過石の御守り】
そう呼ばれる珍しいアイテムだ。
勿論人が作り出したものではなく、魔物を倒して手に入れたトレジャー品である。
淡く緑と青にキラキラと光るその小さな石に秘められた力は見た目の可愛らしさとは違って奇異なものだ。
「まじかよ…聞いたことはあったけど始めてみたぜ。」
「長年修羅場くぐってなくてよ?月明かりが入りそうなところにつけて頂戴?魔力がなくてもそれで発動できるわ。」
「これってなんですか?」
「おしゃれアイテムってわけじゃないっすもんね?」
その名の通り装備した者の姿を【透過】させることの出来る神秘のアイテムだ。魔術師やエルフの精霊魔法を扱う者は自身の魔力を使って簡単に発動させることが可能だが、魔力を持たない者は自然界から魔力を取り入れることで発動することができる。
例えば月明かり、太陽光が一般的だ。とはいえ早々世に出回る物ではないので取り扱い方を知るものは少ない。
「へぇ…じゃあとうめいになれぇ!!って念じたら見えなくなるんすね?」
「そういうことね。潜入までの距離は短いからそこまで持てば大丈夫だし…そんなに難しく考えないで使ってみてね?」
「わかりました!…あ!音が聞こえます…!」
ドーーン…ゴォォォォ…!
正門方面から聞こえる戦闘の始まった音。
「始まったみたいね。」
「うっし…それじゃあ俺たちも行きますか…!」
「はい!惹きつけてもらっているうちに!」
忍び足で潜んでいた林から出ると、自身を透過させ、駆け足で橋を渡る。
裏門には勿論鍵がかかっているのだがこれが厄介なもので、魔力による特殊な施錠が施されている。
「『これは器用で判断の早い魔術師がすべき』ね。ミイナが言ってたのに納得だぜ。あいつじゃ珍しい!とかブツブツ言いながら先に進まなさそうだわ。」
「あらあら…誰のことかしらね?ロアくんとカインちゃんは後方を警戒、クロウは上下左右を、お願いね?2分で済ますわ。」
「「はい!」」
ユキミはポーチから薄汚れた黄土色の土で作られた大ぶりの指輪を取り出し指にはめると、門に触れる。すると、何重にも重なった複雑な魔法陣が浮かび上がった。
「うわ…なんだよその指輪…。」
「これ?【暴き出しの指輪】って言うもので、魔術で施された罠や鍵を暴く助けをしてくれるアイテムよ。」
「はぁ…そんなのもあるんだなぁ。助けるってことは簡単に開けてくれるわけじゃないんだ?」
「そう…魔力の含まれた粘土で作った簡単なものだから…でもこの門みたいに古代呪文とか独自の術で施されてるような魔術に対してはとても有効。他者の解除に際して罠が仕掛けられてることがほとんどだから、それの察知と発動してしまった罠の肩代わりをしてくれるわ。だから使い捨てってわけね。」
周囲を警戒しつつ、クロウはユキミが魔法陣をくるくると回しながら素早く、ひとつずつ解除していくのを珍しそうに見つめる。
「これで最後ねっ…!」
門全体に重なるよう描かれていた最後の大きな魔法陣の解除が終わると、門と共に消え、城内への入り口が開かれた。
「門も魔術だったんすか?」
「幻術もかけてたのね…最後まで気付かなかったわ。ここを閉ざしてた魔術師はなかなか腕が立つみたいね。」
ヒューーー…
「ユキミさん!!」
「?!」
「あっぶねぇ!!」
城内へ続く複雑な外周の道に入ろうとした瞬間に暗闇から高速で放たれた黄色の光を帯びたエネルギー弾が飛んできたのだ。
狙いはユキミ。
「俺が…!とりゃぁっ!!」
クロウがユキミを庇たて一緒に壁際まで転がり、ロアが前に駆け出して飛んできた弾を剣ではじくように切り裂くと弾は消えた。
直後にカインが水を帯びた投げナイフを何本か放たれたであろう場所へ打ち返すように投げ入れる。
「ごめんなさい、油断してたわ…。」
「謝るなっての。俺らの役目はお前の護衛も入ってんだから気にすんなって。」
「そうですよユキミさん!わたしの方こそ索敵が甘かったですし…ごめんなさい!」
「透過してるのに見えてるみたいな攻撃っすね…どんなバケモンだよ…。」
カインの投げた投げナイフ。水の精霊の力を纏ったその射線に残る水滴がキラキラと光を帯び、月明かりが照らすと更に明るさが増し、影に隠れたその存在を僅かに現す。
「え…影…?」
暗闇にいる暗闇。
「影は影でも…死の影、とでも言うのかしらね…。」
黒いモヤを帯びたその影の姿はどことなく古い時代の魔術師の格好をしているように見える。目視後、直ぐに壁の影に隠れて次の手を考える。
「さて…どう出る…?」
「うん…クロウさん、ナイフで触れた精霊の声ですけど…生きてるものじゃないって…。」
「俺…そういうの苦手っす…。」
監視塔へ続く道は馬車がギリギリ行き交える程度の幅しかなく、一本道。曲がり角まで数十メートル。遮蔽物はなく攻撃を避けながら進むのは不利。
「ロア、その剣は魔法に強いんだよな?」
「っす!ハザンさんが貸してくれたなんだっけ…【魔術師殺しの剣】?ってやつっす!さっきの弾斬った時めちゃ感じました!」
「おし…じゃあロア、突っ込め!」
「え、ええぇぇ?!」
クロウがニヤニヤとしながらロアの背中をバシバシと叩きながら楽しそうに言った。
「あら…ふふふ。頼もしいわね。」
「勿論カインも一緒に後ろからカバーすんだぞ?んじゃ、いちにのさんーていくぜ?」
「は、はいぃ?!ロ、ロロ、ロアくんがんばろ?!」
「お、おふ?!」
何やら慌てているふたり。そんな様子を見て、クロウはふたりの肩を組み、耳打ちをする。
「俺が散々稽古してやったろ?カインもあいつに精霊の声と通じ方を教えてもらったんだ、俺らが負けるんわけないって。…頼んだぜ?」
ニコリと笑うクロウの顔を見たふたりは落ち着きを取り戻し、タイミングを測って飛び出して行く。
「いい兄貴って感じね?ふふふ。」
「そんなんじゃないっつの…経験不足はあれど潜在はあるから任せれるってことさ。この俺が教えたことちゃーんとできてっか見てやるよっ…てな!ユキミ!あれ頼むわ!」
「ふふ…しっかり道開いて来てちょうだい!」
ワンテンポ遅れてクロウが壁の上登り、ロアたちと同じ方向に走り出す。ユキミは後方からクロウに強化魔法を重ねがけ、慎重に距離を詰めるように進んでいく。
「…攻撃が来ない?」
「油断すんなよ!」
「わかってるもん!精霊さんお願い!」
曲がり角まで数十メートル、その僅かな距離がとても長く感じながら今度は投げナイフではなく、水をナイフ状にした物を作り出して飛ばし、前方に先手をかける。
壁に当たった水ナイフは弾け飛び、キラキラと光を放ち暗闇を照らす。
「…やっぱりいないのか?」
「幻だったわけじゃないと思うんだけど…んうぅん…。」
「ん…剣が!」
ロアの持っている剣がぼんやりと光を帯びた。
魔力に反応している。
「そこか!!」
月明かりで壁の影が出来ている所。
『ナカナカ、ヤッカイナモノヲモッテイル』
人の声ではない何か。頭に直接響くような低くおどろおどろしい不快な声だ。
影の中からヌウッと浮き上がってきたそれはまるで死神のよう。確かに魔術師の風貌ではあるが、ボロボロのローブ一枚、フードを被った頭から見える顔には真っ白な仮面。
「…だから俺こういうタイプ嫌いなんだって。」
「わがまま言わないでよロアくん…クロウさんにいいとこ見せよ!」
『ワザワザスガタヲケシタトテ、ワシノメカラハマルミエダ。オロカナコドモヨ。』
黒く濁った宝石の付いた杖を大きく振り上げ、巻き起こった風がロアとカインを襲う。倒れることは無かったが、衝撃で外装に付けていた【透過の御守り】は吹き飛ばされ、露出させられてしまった。
『コドモニヨウハナイ。アノオンナハドコダ?ニゲタワケデハアルマイ?』
「子供子供って…舐めんなよ!」
「そうです!痛い目にあいますよ!」
目の前の相手を無視して周りを見渡す黒い魔術師に見事に煽られ、攻撃に出る。
魔術師に向かって飛び出したロアは何回も剣を振り、魔術師を後退させていく。それに合わせるようにカインが水のナイフで横から逃げられないようカバーしていく。
『コザカシイ…!』
うまく交わしていた魔術師だが、ロアの剣が僅かでも触れると魔力が四散していく為、少しずつ苛立って来ているようだった。反撃として、先程ユキミへ向かって飛ばしたエネルギー弾を放っていくが、ロアの剣で斬られて無駄に終わる。
「ただがむしゃらに攻撃してたわけじゃないんですから…!」
「バカにしたツケを払ってもらうぜこのバケモノ!!」
曲がり角まで追い詰めたところでロアが更に詰め寄り斬りかかる。
『…マダマダアオイ。』
「げっ?!なんだこれ?!」
「ロアくん!!」
曲がり角は暗闇、最初に居たところ、魔術師のテリトリー。
無数の黒い手が地面の暗闇から伸び、ロアを拘束した。
「これ、影じゃない…!今助けるね!」
『オサナキエルフゴトキニナニガデキル?コノモノノイノチ、ワシノカテニシテヤロウ。』
「私だって…ただ単に投げてたわけじゃないんですから…!精霊さん、おねがいします!」
地響きが鳴り、それが近づいてくるのがわかる。
『コレハ…?』
「ここにはあまり水が無かったから…だったら導けるように沁み込ませて呼んだの…!」
「え…待てよカイン…下からくるってことか?」
ロアの予感は的中。
カインの初撃から水の道標を作っており、それを頼りに川の水を精霊たちが運んで来た。地面、地下から湧き出る噴水のように。
ドッ…ブシャァァァァ!!
「ぐはぁーー?!」
『チィッ!スガコワサレタカ…!』
テリトリーの丁度真下から勢いよく飛び出した水は暗闇を壊し、ロアも吹き飛ばして救出もした。若干ロアはダメージを受けたようだが無事なようだ。
「なんかデジャヴだな…ロアのやつ…。」
『?!』
「ロアには悪いけど、いいとこ頂いちゃおうか。」
噴出した水飛沫が霧状になり周辺の視界を悪くしていた。魔術師もその中にいた為、後方に現れたクロウの姿を視認できず…
『ヒキョウモノガ…ァ』
素早い動きで魔術師の体を刻み、バラバラとなり、黒い塵となって消えた。仮面と杖がカランカランと音を立てて転がる。
「お前に言われたかないっつの。俺らのはちゃんとした作戦だよ、作戦。」
「作戦ね…あの子達を危ない目に合わせておいてよく言うわね。」
「ちゃんと横で見てただろー?こんくらいしのげなきゃこれから先もたないし、いい勉強になっただろうし。ちゃんと考えて動けててえらかったぞーお前らー!」
噴水の向こう側に向かって声をかけると「あざーっす!」と返事が聞こえた。
「私も子供扱いしてたらいけないみたいね。さて、ねぇ、あなた本体これでしょ?」
ユキミが自分のヒールで杖の黒い宝石を踏みつけながら、鋭い眼光で睨み付ける。
『…。』
「黙って何かチャンスでも伺ってるのかしら?無駄よ?この靴も魔法のアイテムだもの。ま、でも?私を狙ったのは正解よ。この作戦、このチームは私がいないと成り立たないもの、よく判断したわ。それに、私も油断してしまった。悔しいわ…。」
グリグリと地面に埋め込みそうなくらい強く踏みつけ続けるユキミ。
「悔しいから、私がとどめを刺してあげるわね?さよなら卑怯者さん?」
ガヂンッ!
と、鈍い音と共に宝石が砕けバラバラになった。
「…ユキミさんドSなんですね。」
「やだクロウどうして敬語なの?女は強いものよ?知らなかったかしら?」
「いやこれは強いとか…あ、何でもない…。」
新しい一面を目撃したクロウはユキミから一歩引きながら、収まった噴水の向こう側から来たロアとカインと合流した。
「最後失敗して面目ないっす…」
「わたしもこんな派手にしちゃってごめんなさい…隠密行動のはずなのに…。」
「気にすんなって。あの黒いやつ出てきた時点でバレてたから少しくらいは平気だよ。まぁこのあと進むときに少し面倒かもしれないけどな。」
「とりあえず動けるなら核の破壊をやってしまいましょう。少し時間を取られたちゃったから、ね。」
監視塔は目の前、階段を駆け上り核の破壊をする。
「これは簡単ね。防護魔法を解除したらロア君の剣で破壊しちゃってくれるかしら?」
「っす!」
門同様にくるくると核を包む魔法陣の防護魔法を解除する。ここに来る敵はいないと過信してたのか簡単なものしかかけられておらず、数秒で解除を終え、ロアが核を真っ二つに割る。城に向かって伸びていた魔力の流れが途切れ、僅かに屈折し、薄ぼやけて見えていた城の全景がはっきりと顕になった。
「よし、カイン。もうひと仕事だ。」
「はい!合図代わりの…癒やしの雨を降らせます…!」
水の精霊と会話しながら大きな水球を上空に作り出して弾けさせる。優しく降り注ぐ水の粒は生けるものには命を与え、死せる者には安らぎを与えるもの…らしい。
「…それにしてもこの剣すごいっすね。魔法に強いってのわかるっすけど刃こぼれもしてないっす。」
「刃こぼれしないのはお前の扱いがうまくなってるからだろ?なんせ、先生は俺だからなぁ!はははぁ!」
「先生はクロウさんですけど師匠はアクリスさんっす!!」
「はー?!何が違うんだよ!!」
ロアとクロウは言い合いをしながら階段を降り、その後ろからロアとユキミが見守りながら付いていく。
「確かに自身の力もあるとは思うけれど…。」
「ユキミさん…?」
「道具の力に溺れないこと。色んなアイテム使ってる私が言うのも何だけど、大事なこと。ロア君のことしっかり見てあげてねカインちゃん。」
「わかってます!すぐ調子乗るからビシッとやりますね!」
自分たちの役割を一旦終え、階段を降りるまでの間少し和やかな雰囲気だが…ユキミは少しばかり不安を覚えていた。
「(ハザン…あんたが…力に溺れることなんて、ないわよね?)」
未だに鳴り響く正門からの戦闘音。激しさを増すその音に。
場所はハルト城、正門から見て左後方にある川辺近くの林。
目の前の川には裏門へ通じる橋がある。以前は場内へ物資や交易品を運び入れる入り口として使われていた所だ。つまり、城下町を通ることなく直接城内へ侵入することができる所となる。
ミイナからの情報で、こちら側から入ってすぐ近くの城壁付近の監視塔に、城を包んでいる防護壁を作り出している魔術の核があるとのことだ。城内にあるもう一つの核と結び付いており、どちらかを破壊しないと関係者以外は城に入ることができないと。
その破壊を目的としたチームとして4人。
「ふぅん…以前と変わらない造りにしてる…ってのは本当なんだなぁ。」
「えぇ。旅を始めた頃、こっち側は遠目からだけど見た景色と変わらないわ…何の意図があるのかしら…?」
「わ、私は始めて…緊張します…!」
「俺は準備万端だ、だじぇ!」
林に身を潜めているのは、クロウ、ユキミ、ロア、カインの4人。
ロアとカインは戦略的作戦を立てた戦闘は初めてであり、声に張りはあるものの緊張はそう簡単には溶けないようだ。
「若いわね…私もこんな時があったかしら。」
「ユキミも十分若いだろ?ま、俺らが引っ張らなきゃならねぇのは変わんねぇけどな。おい、ロア!カイン!散々稽古つけてきたんだから自信もてよ!」
隠密行動を要求されているこちらの部隊だが、少しばかり声が大きいようで…。
「ふふふ、ありがとクロウ。さてと…皆、これを身に着けてね。」
そう言うと、ユキミは腰のポーチから小さな石の付いたチャームを人数分取り出し、ひとつずつ渡した。
【透過石の御守り】
そう呼ばれる珍しいアイテムだ。
勿論人が作り出したものではなく、魔物を倒して手に入れたトレジャー品である。
淡く緑と青にキラキラと光るその小さな石に秘められた力は見た目の可愛らしさとは違って奇異なものだ。
「まじかよ…聞いたことはあったけど始めてみたぜ。」
「長年修羅場くぐってなくてよ?月明かりが入りそうなところにつけて頂戴?魔力がなくてもそれで発動できるわ。」
「これってなんですか?」
「おしゃれアイテムってわけじゃないっすもんね?」
その名の通り装備した者の姿を【透過】させることの出来る神秘のアイテムだ。魔術師やエルフの精霊魔法を扱う者は自身の魔力を使って簡単に発動させることが可能だが、魔力を持たない者は自然界から魔力を取り入れることで発動することができる。
例えば月明かり、太陽光が一般的だ。とはいえ早々世に出回る物ではないので取り扱い方を知るものは少ない。
「へぇ…じゃあとうめいになれぇ!!って念じたら見えなくなるんすね?」
「そういうことね。潜入までの距離は短いからそこまで持てば大丈夫だし…そんなに難しく考えないで使ってみてね?」
「わかりました!…あ!音が聞こえます…!」
ドーーン…ゴォォォォ…!
正門方面から聞こえる戦闘の始まった音。
「始まったみたいね。」
「うっし…それじゃあ俺たちも行きますか…!」
「はい!惹きつけてもらっているうちに!」
忍び足で潜んでいた林から出ると、自身を透過させ、駆け足で橋を渡る。
裏門には勿論鍵がかかっているのだがこれが厄介なもので、魔力による特殊な施錠が施されている。
「『これは器用で判断の早い魔術師がすべき』ね。ミイナが言ってたのに納得だぜ。あいつじゃ珍しい!とかブツブツ言いながら先に進まなさそうだわ。」
「あらあら…誰のことかしらね?ロアくんとカインちゃんは後方を警戒、クロウは上下左右を、お願いね?2分で済ますわ。」
「「はい!」」
ユキミはポーチから薄汚れた黄土色の土で作られた大ぶりの指輪を取り出し指にはめると、門に触れる。すると、何重にも重なった複雑な魔法陣が浮かび上がった。
「うわ…なんだよその指輪…。」
「これ?【暴き出しの指輪】って言うもので、魔術で施された罠や鍵を暴く助けをしてくれるアイテムよ。」
「はぁ…そんなのもあるんだなぁ。助けるってことは簡単に開けてくれるわけじゃないんだ?」
「そう…魔力の含まれた粘土で作った簡単なものだから…でもこの門みたいに古代呪文とか独自の術で施されてるような魔術に対してはとても有効。他者の解除に際して罠が仕掛けられてることがほとんどだから、それの察知と発動してしまった罠の肩代わりをしてくれるわ。だから使い捨てってわけね。」
周囲を警戒しつつ、クロウはユキミが魔法陣をくるくると回しながら素早く、ひとつずつ解除していくのを珍しそうに見つめる。
「これで最後ねっ…!」
門全体に重なるよう描かれていた最後の大きな魔法陣の解除が終わると、門と共に消え、城内への入り口が開かれた。
「門も魔術だったんすか?」
「幻術もかけてたのね…最後まで気付かなかったわ。ここを閉ざしてた魔術師はなかなか腕が立つみたいね。」
ヒューーー…
「ユキミさん!!」
「?!」
「あっぶねぇ!!」
城内へ続く複雑な外周の道に入ろうとした瞬間に暗闇から高速で放たれた黄色の光を帯びたエネルギー弾が飛んできたのだ。
狙いはユキミ。
「俺が…!とりゃぁっ!!」
クロウがユキミを庇たて一緒に壁際まで転がり、ロアが前に駆け出して飛んできた弾を剣ではじくように切り裂くと弾は消えた。
直後にカインが水を帯びた投げナイフを何本か放たれたであろう場所へ打ち返すように投げ入れる。
「ごめんなさい、油断してたわ…。」
「謝るなっての。俺らの役目はお前の護衛も入ってんだから気にすんなって。」
「そうですよユキミさん!わたしの方こそ索敵が甘かったですし…ごめんなさい!」
「透過してるのに見えてるみたいな攻撃っすね…どんなバケモンだよ…。」
カインの投げた投げナイフ。水の精霊の力を纏ったその射線に残る水滴がキラキラと光を帯び、月明かりが照らすと更に明るさが増し、影に隠れたその存在を僅かに現す。
「え…影…?」
暗闇にいる暗闇。
「影は影でも…死の影、とでも言うのかしらね…。」
黒いモヤを帯びたその影の姿はどことなく古い時代の魔術師の格好をしているように見える。目視後、直ぐに壁の影に隠れて次の手を考える。
「さて…どう出る…?」
「うん…クロウさん、ナイフで触れた精霊の声ですけど…生きてるものじゃないって…。」
「俺…そういうの苦手っす…。」
監視塔へ続く道は馬車がギリギリ行き交える程度の幅しかなく、一本道。曲がり角まで数十メートル。遮蔽物はなく攻撃を避けながら進むのは不利。
「ロア、その剣は魔法に強いんだよな?」
「っす!ハザンさんが貸してくれたなんだっけ…【魔術師殺しの剣】?ってやつっす!さっきの弾斬った時めちゃ感じました!」
「おし…じゃあロア、突っ込め!」
「え、ええぇぇ?!」
クロウがニヤニヤとしながらロアの背中をバシバシと叩きながら楽しそうに言った。
「あら…ふふふ。頼もしいわね。」
「勿論カインも一緒に後ろからカバーすんだぞ?んじゃ、いちにのさんーていくぜ?」
「は、はいぃ?!ロ、ロロ、ロアくんがんばろ?!」
「お、おふ?!」
何やら慌てているふたり。そんな様子を見て、クロウはふたりの肩を組み、耳打ちをする。
「俺が散々稽古してやったろ?カインもあいつに精霊の声と通じ方を教えてもらったんだ、俺らが負けるんわけないって。…頼んだぜ?」
ニコリと笑うクロウの顔を見たふたりは落ち着きを取り戻し、タイミングを測って飛び出して行く。
「いい兄貴って感じね?ふふふ。」
「そんなんじゃないっつの…経験不足はあれど潜在はあるから任せれるってことさ。この俺が教えたことちゃーんとできてっか見てやるよっ…てな!ユキミ!あれ頼むわ!」
「ふふ…しっかり道開いて来てちょうだい!」
ワンテンポ遅れてクロウが壁の上登り、ロアたちと同じ方向に走り出す。ユキミは後方からクロウに強化魔法を重ねがけ、慎重に距離を詰めるように進んでいく。
「…攻撃が来ない?」
「油断すんなよ!」
「わかってるもん!精霊さんお願い!」
曲がり角まで数十メートル、その僅かな距離がとても長く感じながら今度は投げナイフではなく、水をナイフ状にした物を作り出して飛ばし、前方に先手をかける。
壁に当たった水ナイフは弾け飛び、キラキラと光を放ち暗闇を照らす。
「…やっぱりいないのか?」
「幻だったわけじゃないと思うんだけど…んうぅん…。」
「ん…剣が!」
ロアの持っている剣がぼんやりと光を帯びた。
魔力に反応している。
「そこか!!」
月明かりで壁の影が出来ている所。
『ナカナカ、ヤッカイナモノヲモッテイル』
人の声ではない何か。頭に直接響くような低くおどろおどろしい不快な声だ。
影の中からヌウッと浮き上がってきたそれはまるで死神のよう。確かに魔術師の風貌ではあるが、ボロボロのローブ一枚、フードを被った頭から見える顔には真っ白な仮面。
「…だから俺こういうタイプ嫌いなんだって。」
「わがまま言わないでよロアくん…クロウさんにいいとこ見せよ!」
『ワザワザスガタヲケシタトテ、ワシノメカラハマルミエダ。オロカナコドモヨ。』
黒く濁った宝石の付いた杖を大きく振り上げ、巻き起こった風がロアとカインを襲う。倒れることは無かったが、衝撃で外装に付けていた【透過の御守り】は吹き飛ばされ、露出させられてしまった。
『コドモニヨウハナイ。アノオンナハドコダ?ニゲタワケデハアルマイ?』
「子供子供って…舐めんなよ!」
「そうです!痛い目にあいますよ!」
目の前の相手を無視して周りを見渡す黒い魔術師に見事に煽られ、攻撃に出る。
魔術師に向かって飛び出したロアは何回も剣を振り、魔術師を後退させていく。それに合わせるようにカインが水のナイフで横から逃げられないようカバーしていく。
『コザカシイ…!』
うまく交わしていた魔術師だが、ロアの剣が僅かでも触れると魔力が四散していく為、少しずつ苛立って来ているようだった。反撃として、先程ユキミへ向かって飛ばしたエネルギー弾を放っていくが、ロアの剣で斬られて無駄に終わる。
「ただがむしゃらに攻撃してたわけじゃないんですから…!」
「バカにしたツケを払ってもらうぜこのバケモノ!!」
曲がり角まで追い詰めたところでロアが更に詰め寄り斬りかかる。
『…マダマダアオイ。』
「げっ?!なんだこれ?!」
「ロアくん!!」
曲がり角は暗闇、最初に居たところ、魔術師のテリトリー。
無数の黒い手が地面の暗闇から伸び、ロアを拘束した。
「これ、影じゃない…!今助けるね!」
『オサナキエルフゴトキニナニガデキル?コノモノノイノチ、ワシノカテニシテヤロウ。』
「私だって…ただ単に投げてたわけじゃないんですから…!精霊さん、おねがいします!」
地響きが鳴り、それが近づいてくるのがわかる。
『コレハ…?』
「ここにはあまり水が無かったから…だったら導けるように沁み込ませて呼んだの…!」
「え…待てよカイン…下からくるってことか?」
ロアの予感は的中。
カインの初撃から水の道標を作っており、それを頼りに川の水を精霊たちが運んで来た。地面、地下から湧き出る噴水のように。
ドッ…ブシャァァァァ!!
「ぐはぁーー?!」
『チィッ!スガコワサレタカ…!』
テリトリーの丁度真下から勢いよく飛び出した水は暗闇を壊し、ロアも吹き飛ばして救出もした。若干ロアはダメージを受けたようだが無事なようだ。
「なんかデジャヴだな…ロアのやつ…。」
『?!』
「ロアには悪いけど、いいとこ頂いちゃおうか。」
噴出した水飛沫が霧状になり周辺の視界を悪くしていた。魔術師もその中にいた為、後方に現れたクロウの姿を視認できず…
『ヒキョウモノガ…ァ』
素早い動きで魔術師の体を刻み、バラバラとなり、黒い塵となって消えた。仮面と杖がカランカランと音を立てて転がる。
「お前に言われたかないっつの。俺らのはちゃんとした作戦だよ、作戦。」
「作戦ね…あの子達を危ない目に合わせておいてよく言うわね。」
「ちゃんと横で見てただろー?こんくらいしのげなきゃこれから先もたないし、いい勉強になっただろうし。ちゃんと考えて動けててえらかったぞーお前らー!」
噴水の向こう側に向かって声をかけると「あざーっす!」と返事が聞こえた。
「私も子供扱いしてたらいけないみたいね。さて、ねぇ、あなた本体これでしょ?」
ユキミが自分のヒールで杖の黒い宝石を踏みつけながら、鋭い眼光で睨み付ける。
『…。』
「黙って何かチャンスでも伺ってるのかしら?無駄よ?この靴も魔法のアイテムだもの。ま、でも?私を狙ったのは正解よ。この作戦、このチームは私がいないと成り立たないもの、よく判断したわ。それに、私も油断してしまった。悔しいわ…。」
グリグリと地面に埋め込みそうなくらい強く踏みつけ続けるユキミ。
「悔しいから、私がとどめを刺してあげるわね?さよなら卑怯者さん?」
ガヂンッ!
と、鈍い音と共に宝石が砕けバラバラになった。
「…ユキミさんドSなんですね。」
「やだクロウどうして敬語なの?女は強いものよ?知らなかったかしら?」
「いやこれは強いとか…あ、何でもない…。」
新しい一面を目撃したクロウはユキミから一歩引きながら、収まった噴水の向こう側から来たロアとカインと合流した。
「最後失敗して面目ないっす…」
「わたしもこんな派手にしちゃってごめんなさい…隠密行動のはずなのに…。」
「気にすんなって。あの黒いやつ出てきた時点でバレてたから少しくらいは平気だよ。まぁこのあと進むときに少し面倒かもしれないけどな。」
「とりあえず動けるなら核の破壊をやってしまいましょう。少し時間を取られたちゃったから、ね。」
監視塔は目の前、階段を駆け上り核の破壊をする。
「これは簡単ね。防護魔法を解除したらロア君の剣で破壊しちゃってくれるかしら?」
「っす!」
門同様にくるくると核を包む魔法陣の防護魔法を解除する。ここに来る敵はいないと過信してたのか簡単なものしかかけられておらず、数秒で解除を終え、ロアが核を真っ二つに割る。城に向かって伸びていた魔力の流れが途切れ、僅かに屈折し、薄ぼやけて見えていた城の全景がはっきりと顕になった。
「よし、カイン。もうひと仕事だ。」
「はい!合図代わりの…癒やしの雨を降らせます…!」
水の精霊と会話しながら大きな水球を上空に作り出して弾けさせる。優しく降り注ぐ水の粒は生けるものには命を与え、死せる者には安らぎを与えるもの…らしい。
「…それにしてもこの剣すごいっすね。魔法に強いってのわかるっすけど刃こぼれもしてないっす。」
「刃こぼれしないのはお前の扱いがうまくなってるからだろ?なんせ、先生は俺だからなぁ!はははぁ!」
「先生はクロウさんですけど師匠はアクリスさんっす!!」
「はー?!何が違うんだよ!!」
ロアとクロウは言い合いをしながら階段を降り、その後ろからロアとユキミが見守りながら付いていく。
「確かに自身の力もあるとは思うけれど…。」
「ユキミさん…?」
「道具の力に溺れないこと。色んなアイテム使ってる私が言うのも何だけど、大事なこと。ロア君のことしっかり見てあげてねカインちゃん。」
「わかってます!すぐ調子乗るからビシッとやりますね!」
自分たちの役割を一旦終え、階段を降りるまでの間少し和やかな雰囲気だが…ユキミは少しばかり不安を覚えていた。
「(ハザン…あんたが…力に溺れることなんて、ないわよね?)」
未だに鳴り響く正門からの戦闘音。激しさを増すその音に。
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