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恋の追跡※
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そうとなればと、俺は行動に移った。
「にいに!買い物付き合って!」
「テスト勉強ヤバイから教えて!」
「ご飯食べに行こう!」
とかなんとかを毎日。
どうしても外せないとか、うまく誘えなかった時はケンゴさんとミナホさんと協力して義兄の後を付けて…。
なんてのを繰り返してたどり着いた。
「…にいに。」
とある医療機器メーカーの所有するビルの裏手から入る義兄。
とある部屋に入っていく。
ああ、やっぱりかと、大きなため息をついてしまった。
ブーブーブーとスマホが鳴るのを俺は無視してその部屋の扉に耳を当ててみると話し声が聞こえてきた。
「(彰考さんと…にいにだよね…?えっ…)」
最初は普通の会話のように聞こえていた。
「はっ…ぁ…」
「だ…そこはやめ…てくださ…ふぅっ…んっ!」
義兄の口から溢れる甘い声が、扉越しからでもはっきりと聞こえてきた。勿論この部屋が防音じゃないのは中にいる2人もわかっているだろう。
「あぁ…キレイだよ棗…。」
「あっ…あっ…はっ…はぁ…んんっ。」
あの人の声も聞こえる…聞こえた瞬間、初めて彰考さんに対して嫌悪感が、憎悪が湧いてきた。
『やめろ!気持ち悪い!離れろ、許さない!』
怒りに震えながら、ぺたんと。俺はその場にへたり込んでしまった。
それでも、聞き逃さないようにその行為の全てを、声を、音を、耳に焼き付けようとしていた。
ピチャピチャと義兄のどこかを舐める音、グチュグチュ、パチュパチュと一定のリズムを刻みながら鳴り続ける淫らな音。
そして…
「や…彰考にいさ…はげ…し…あっあっ!!」
「はぁッ…あぁ!だ、ダメで…す、もうっ!」
艶やかでいやらしく甘い声を上げる義兄の声を。
「あぁ…イクよ棗っ…私を受け止めなさい!」
「あっ…あぁーっ!やっ…あぁ…!」
どれくらいの時間が過ぎたかわからない。いつの間にかその音は止んでいた。そして扉に足音が近づくのを感じて我に返った俺はその場から離れ、通路の角に身を隠した。
「またな、棗。愛しているよ。」
「…はい、また。」
「ふぅ…相変わらず、か。」
部屋の扉が開き、別れの挨拶をして、義兄はビルを後にしていく。やっぱり、彰考さんと義兄で間違いはなく…。
ブーブー!
「あっ…やば。すごい連絡きてる…。」
見つかる前に俺もビルを出なきゃならないのをうっかりしていた。急いで、静かに非常階段を降りていく。
外に出た俺は逃げるように駆け出した。
数時間後――。
「「響くん。」」
ファミレスで俺はケンゴさんとミナホさんに怒られた。
「気持ちはわかるけどさ、一人じゃ危ないっつーの!響くんまで襲われたらどーすんの!」
「頼んだ俺が言うのもあれだが、もう少し慎重にしないとあぁいう性欲で服従させるような人間には簡単に近づいていいものじゃない。」
「はい…すいません…。」
でもすぐに、「嫌なものを見ただろ?すまなかった。」とか「よく頑張ったね~」と慰めてくれた。
そんな言葉に俺も安心して、涙が出てきてしまった。
「に、にいにがあんな…俺…助けれなかった。悔しい…腹が立つ…!」
ボロボロ泣いてる俺を見てミナホさんが言う。
「よしよし…響くんは棗が本当に、大好き、なんだね。」
「へっ…?」
その言葉に驚いた。
確かに義兄は頼りになるし、優しいし、かっこいいし…好きだ。
でも、ミナホさんの言い方だとそれは…。
「ミナホ…こういうのは他人が教えてやるもんじゃ無いと思うぞ。」
「え?だって俺とケンゴだって棗がいたから今があるんだぜ?それに…俺たちと違って複雑じゃん?少しは自覚させてあげなきゃさぁ?」
恋とか、愛とか、恋人とか。
そりゃ高校生にもなれば気にしないわけがない。通っているのは男子高だから女っ気がないのは仕方ないが、他校の女子生徒と遊んだりとかは普通にあったし、告られた事もある。
でも付き合ったことはない。それはきっと俺の恋愛対象が異性ではないからだ。
それは自覚している…じゃなきゃ義兄の妄想で勃起したりなんてしていない。
そっか…うん…。
「…自覚はあります。」
「お?え?マジ?」
「今まで…そう考えちゃいけないって。義兄だからって認めないでいた…んだと思います。」
2人は頷いてゆっくり話す俺の言葉を聞いてくれた。
「そう認めるのが怖くて…それを伝えて、にいにに避けられたらどうしようかとか…にいにはちゃんとにいにとして俺と接してくれてるから…。」
…本当は出会った時から俺の心に義兄はずっといて、それが家族としての好意で、愛である…と決めつけてただけだったんだと。
この間のケンゴさんから聞いた話と、今さっきの出来事を振り返ると、確かにまだ義兄に対しての彰考さんの仕打ちは家族としても許せないのは当たり前だけど…それ以上に…。
「俺のにいにに…あんなことしてるなんて許せない…。」
「俺の…ときましたか!」
「…俺たちが火を付けたようなもんだぞ?責任取れよミナホ。」
いつの間にか止んだ涙の向こうの俺の目、まだ赤くなってるだろうけど、ケンゴさんとミナホさんは分かってくれたみたい。
「あんな風に『ごめん』って言うにいにはもう見たくない。助けなきゃ。」
「責任取れとの仰せなので…ってわけじゃないけど、最初から俺たちも協力するつもりだし。それにいい考えがあるしね!」
「いい考え…?」
3人で頭を寄せてテーブルの真ん中に集まって小さな声でその『いい考え』を聞いて…。
「…棗にも少しダメージがありそうだが。」
「これ以上傷つけない為!俺達だって棗を助けたい気持ちは同じでしょーが!それにこれなら1番効果あるって。」
「にいに…。でも、確かに効果あると思います。やりましょう。」
話を聞いてから今日まで、すべての日々を引き止めることができず、自分の気持ちを認めることすらできていなかったせいで力不足で、弱かったと思う。
けど、今なら…家族としても、ひとりの男としても、立ち向かえる。そんな気がしてる。
「それじゃ…明後日またここで。」
「にいに、俺が…俺達が助けるから。」
…例え血の繋がりのある唯一の肉親が相手だとしても、俺が一人には絶対させないから。
待ってて。
「にいに!買い物付き合って!」
「テスト勉強ヤバイから教えて!」
「ご飯食べに行こう!」
とかなんとかを毎日。
どうしても外せないとか、うまく誘えなかった時はケンゴさんとミナホさんと協力して義兄の後を付けて…。
なんてのを繰り返してたどり着いた。
「…にいに。」
とある医療機器メーカーの所有するビルの裏手から入る義兄。
とある部屋に入っていく。
ああ、やっぱりかと、大きなため息をついてしまった。
ブーブーブーとスマホが鳴るのを俺は無視してその部屋の扉に耳を当ててみると話し声が聞こえてきた。
「(彰考さんと…にいにだよね…?えっ…)」
最初は普通の会話のように聞こえていた。
「はっ…ぁ…」
「だ…そこはやめ…てくださ…ふぅっ…んっ!」
義兄の口から溢れる甘い声が、扉越しからでもはっきりと聞こえてきた。勿論この部屋が防音じゃないのは中にいる2人もわかっているだろう。
「あぁ…キレイだよ棗…。」
「あっ…あっ…はっ…はぁ…んんっ。」
あの人の声も聞こえる…聞こえた瞬間、初めて彰考さんに対して嫌悪感が、憎悪が湧いてきた。
『やめろ!気持ち悪い!離れろ、許さない!』
怒りに震えながら、ぺたんと。俺はその場にへたり込んでしまった。
それでも、聞き逃さないようにその行為の全てを、声を、音を、耳に焼き付けようとしていた。
ピチャピチャと義兄のどこかを舐める音、グチュグチュ、パチュパチュと一定のリズムを刻みながら鳴り続ける淫らな音。
そして…
「や…彰考にいさ…はげ…し…あっあっ!!」
「はぁッ…あぁ!だ、ダメで…す、もうっ!」
艶やかでいやらしく甘い声を上げる義兄の声を。
「あぁ…イクよ棗っ…私を受け止めなさい!」
「あっ…あぁーっ!やっ…あぁ…!」
どれくらいの時間が過ぎたかわからない。いつの間にかその音は止んでいた。そして扉に足音が近づくのを感じて我に返った俺はその場から離れ、通路の角に身を隠した。
「またな、棗。愛しているよ。」
「…はい、また。」
「ふぅ…相変わらず、か。」
部屋の扉が開き、別れの挨拶をして、義兄はビルを後にしていく。やっぱり、彰考さんと義兄で間違いはなく…。
ブーブー!
「あっ…やば。すごい連絡きてる…。」
見つかる前に俺もビルを出なきゃならないのをうっかりしていた。急いで、静かに非常階段を降りていく。
外に出た俺は逃げるように駆け出した。
数時間後――。
「「響くん。」」
ファミレスで俺はケンゴさんとミナホさんに怒られた。
「気持ちはわかるけどさ、一人じゃ危ないっつーの!響くんまで襲われたらどーすんの!」
「頼んだ俺が言うのもあれだが、もう少し慎重にしないとあぁいう性欲で服従させるような人間には簡単に近づいていいものじゃない。」
「はい…すいません…。」
でもすぐに、「嫌なものを見ただろ?すまなかった。」とか「よく頑張ったね~」と慰めてくれた。
そんな言葉に俺も安心して、涙が出てきてしまった。
「に、にいにがあんな…俺…助けれなかった。悔しい…腹が立つ…!」
ボロボロ泣いてる俺を見てミナホさんが言う。
「よしよし…響くんは棗が本当に、大好き、なんだね。」
「へっ…?」
その言葉に驚いた。
確かに義兄は頼りになるし、優しいし、かっこいいし…好きだ。
でも、ミナホさんの言い方だとそれは…。
「ミナホ…こういうのは他人が教えてやるもんじゃ無いと思うぞ。」
「え?だって俺とケンゴだって棗がいたから今があるんだぜ?それに…俺たちと違って複雑じゃん?少しは自覚させてあげなきゃさぁ?」
恋とか、愛とか、恋人とか。
そりゃ高校生にもなれば気にしないわけがない。通っているのは男子高だから女っ気がないのは仕方ないが、他校の女子生徒と遊んだりとかは普通にあったし、告られた事もある。
でも付き合ったことはない。それはきっと俺の恋愛対象が異性ではないからだ。
それは自覚している…じゃなきゃ義兄の妄想で勃起したりなんてしていない。
そっか…うん…。
「…自覚はあります。」
「お?え?マジ?」
「今まで…そう考えちゃいけないって。義兄だからって認めないでいた…んだと思います。」
2人は頷いてゆっくり話す俺の言葉を聞いてくれた。
「そう認めるのが怖くて…それを伝えて、にいにに避けられたらどうしようかとか…にいにはちゃんとにいにとして俺と接してくれてるから…。」
…本当は出会った時から俺の心に義兄はずっといて、それが家族としての好意で、愛である…と決めつけてただけだったんだと。
この間のケンゴさんから聞いた話と、今さっきの出来事を振り返ると、確かにまだ義兄に対しての彰考さんの仕打ちは家族としても許せないのは当たり前だけど…それ以上に…。
「俺のにいにに…あんなことしてるなんて許せない…。」
「俺の…ときましたか!」
「…俺たちが火を付けたようなもんだぞ?責任取れよミナホ。」
いつの間にか止んだ涙の向こうの俺の目、まだ赤くなってるだろうけど、ケンゴさんとミナホさんは分かってくれたみたい。
「あんな風に『ごめん』って言うにいにはもう見たくない。助けなきゃ。」
「責任取れとの仰せなので…ってわけじゃないけど、最初から俺たちも協力するつもりだし。それにいい考えがあるしね!」
「いい考え…?」
3人で頭を寄せてテーブルの真ん中に集まって小さな声でその『いい考え』を聞いて…。
「…棗にも少しダメージがありそうだが。」
「これ以上傷つけない為!俺達だって棗を助けたい気持ちは同じでしょーが!それにこれなら1番効果あるって。」
「にいに…。でも、確かに効果あると思います。やりましょう。」
話を聞いてから今日まで、すべての日々を引き止めることができず、自分の気持ちを認めることすらできていなかったせいで力不足で、弱かったと思う。
けど、今なら…家族としても、ひとりの男としても、立ち向かえる。そんな気がしてる。
「それじゃ…明後日またここで。」
「にいに、俺が…俺達が助けるから。」
…例え血の繋がりのある唯一の肉親が相手だとしても、俺が一人には絶対させないから。
待ってて。
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