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06※
しおりを挟む妻が顔を背ける。夫の矜持を守るための、妻としての尊厳を守るための、細やかな抵抗だが男がそれを許さない。妻の顎を掴み、強引に前を向かせる。
「いや、やめて、お金ならあげるから……お願いだから……」
「麻美、おれは大丈夫、だから」
瞼を強く閉ざす妻に、自分に、言い聞かせるように、亨は云う。
今この瞬間だけ耐えればいいのだ。そうすれば、きっと嵐は去る。
恐怖心に打ち勝とうと、亨は何度も「大丈夫」と唱えた。
「愛されているね」
しかし、そんな亨を嘲笑うかのように、熱がぐっと押し込まれる。指とは比べ物にならない質量に、亨は瞠目した。
「ゔ、あ゙あ……っ」
苦しい。
痛い。
気持ちが悪い。
呼吸ができない。
こわい。
いやだ。
たすけて。
堪えていた涙がボロボロと溢れてくる。内臓を押し潰される圧迫感は、想像していた以上のものだった。熱が奥へ、奥へと押し進んでくるたびに、男としての矜持を蹂躙されていく。
誰でも良いから、助けてくれ。
「息をして」
耳元で優しい声がする。苦しさから逃れたくて、藁にも縋る思いで、亨は声に従った。
「吸って、吐いて……そう、いい子だ。もう一度、吸って、吐いて……」
耳元の声をなぞるように、亨は懸命に肺を動かした。そうして、少しだけ楽になる。楽になったら自分の腹に何が入っているのか、嫌でも実感する。信じたくなくて、亨は頭を振った。フローリングに額が擦れる。
「あぁ……うそ、だ……」
「現実だよ、ほら」
男がいたずらに腰を揺らすと、内臓が擦られる未知の感覚に襲われ、亨は「ひっ」と短い悲鳴を上げた。
「いやだ、抜いてくれ、頼む、う、ぐっ」
「はぁー……ナカがうねって凄い気持ちいい」
名器だね、と笑いながら男は亨の懇願など意にも介さず、ナカを堪能するかのように腰を小刻みに揺らし続ける。
いやだ、くるしい、きもちがわるい。
なのに、心とは裏腹に亨の体は嫌でも順応しようとしている。腰を小刻みに揺らしていた男がそれをよく分かっているのだろう、動きが次第に大きくなっていき、耳を塞ぎたくなる粘着質な音と、肌どうしがぶつかる乾いた音が聴覚を襲う。
「あ、う、いや、だ、うぐぅ……っ」
男の熱く猛った性器が容赦なく突き入れられるたびに、亨は内臓を押し上げられる圧迫感に呻く。
これはただのオナニーだ。溜まったもの処理するのと変わらない。
必死に云い聞かせながら、唇を噛む。口の中に血の味が広がる。それもこの行為に比べたらマシだった。
早く終わってくれ。どうか、娘が帰ってくる前に、早く。
しかし、男の動きは扱くだけの身勝手な動きではない。亨は違和感を覚えた。
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