1 / 2
『狼の妖刀』
しおりを挟む
さあさあ、お立会い!
この業物には数多くの伝説がごぜえやす!
中でもあっしがこの目で見た、一つ語らしてごぜえやしょう!
ある村でのことです。
あっしが村々を渡り歩いていると、際立って目を惹くものがありやした。
それは一つの人だかり。疎らな人だかりは同じものを見ていやした。
例えるならそれは白き犬と、黒き狼。
刃を交える二頭の獣は、そこいらの村人の関心を惹くには、あまりにも見事で――。なんというか、もったいなくすら思えるほどでございやした。
白いのが持っている得物は直刃。業物と一目で分かる、それなりの家柄のお侍が持つことを許されるもの。型も思わず見惚れるほどに美しい。
対する黒いのが持つ得物も、やはり業物。違うところと言やぁ、そいつが乱刃であることと、獣の身の丈に合わぬほどの刀という独特な印象でしたねぇ。
不思議な話でございやしょう? あっしは獣たちのことをなんにも知らんのに、黒い獣にはそういった印象を持ったんです。
黒いのが振るう乱刃はあっしも含め、とてもじゃありやせんが、目で追い切れるもんじゃあなかったんです。それを白いのは丁寧にいなしたり受けたりで、僅かばかりの隙を直刃で当然のように突いて――。神業というのはああいうのなんでしょう。
まるで舞いのようだ――。
刀や剣術の知識など持たない村人たちは、あっしと同じ感想を持ったようです。
やがて、半刻もせずに決着は訪れやした。
黒き獣の腹を貫いた直刃に、思わず息を呑むのも忘れたほど。そりゃあ瞬きしているうちに見逃しそうなほどの出来事でした。
白き獣がそれを抜き取ると同時、黒き獣は糸が切れたように倒れたってぇわけです。
あれが舞いであれば、惜しみない拍手が送られたでしょうねぇ。
ややあって、とある男がこの乱刃の業物を拾い上げたってぇわけです。
不思議とこの刀は売れないもので、時々腕の立つ者が買っていくまであっしのような卑賎な者が眠らせてやる。そうやって巡ってるんですよ。
あれ、買って行かないんですかい?
さあさあ、お立会い! お立会い!
真に強き漢を志す者はいませんかね!
この業物には数多くの伝説がごぜえやす!
中でもあっしがこの目で見た、一つ語らしてごぜえやしょう!
ある村でのことです。
あっしが村々を渡り歩いていると、際立って目を惹くものがありやした。
それは一つの人だかり。疎らな人だかりは同じものを見ていやした。
例えるならそれは白き犬と、黒き狼。
刃を交える二頭の獣は、そこいらの村人の関心を惹くには、あまりにも見事で――。なんというか、もったいなくすら思えるほどでございやした。
白いのが持っている得物は直刃。業物と一目で分かる、それなりの家柄のお侍が持つことを許されるもの。型も思わず見惚れるほどに美しい。
対する黒いのが持つ得物も、やはり業物。違うところと言やぁ、そいつが乱刃であることと、獣の身の丈に合わぬほどの刀という独特な印象でしたねぇ。
不思議な話でございやしょう? あっしは獣たちのことをなんにも知らんのに、黒い獣にはそういった印象を持ったんです。
黒いのが振るう乱刃はあっしも含め、とてもじゃありやせんが、目で追い切れるもんじゃあなかったんです。それを白いのは丁寧にいなしたり受けたりで、僅かばかりの隙を直刃で当然のように突いて――。神業というのはああいうのなんでしょう。
まるで舞いのようだ――。
刀や剣術の知識など持たない村人たちは、あっしと同じ感想を持ったようです。
やがて、半刻もせずに決着は訪れやした。
黒き獣の腹を貫いた直刃に、思わず息を呑むのも忘れたほど。そりゃあ瞬きしているうちに見逃しそうなほどの出来事でした。
白き獣がそれを抜き取ると同時、黒き獣は糸が切れたように倒れたってぇわけです。
あれが舞いであれば、惜しみない拍手が送られたでしょうねぇ。
ややあって、とある男がこの乱刃の業物を拾い上げたってぇわけです。
不思議とこの刀は売れないもので、時々腕の立つ者が買っていくまであっしのような卑賎な者が眠らせてやる。そうやって巡ってるんですよ。
あれ、買って行かないんですかい?
さあさあ、お立会い! お立会い!
真に強き漢を志す者はいませんかね!
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる