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② 猫を保護しました
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「なあ、あの広場に、また転生してきたやつがいるらしいぞ。しかも猫だって 」
「え? 野良猫じゃなくて? 本当に転生なのか?」
「目の前に突然現れたらしい。猫の転生なんて珍しいよな。保護しようとしたら逃げちまったらしい。ライオネル、お前のお仲間かもよ? ちょっと探してこいよ」
静かな街の片隅にひっそりと佇む、小さな書店。そこに併設されたこぢんまりとしたカフェ。
唯一いた客にコーヒーを出したあと、くるりとカールした明るい栗色の髪をしたライオネルと呼ばれた若者が、友人であるヘンリーとそんな会話をしたのが昼前のこと。
この街では、何故か街の真ん中にある公園の一角に、転生者が突如として現れる。しかも転生してくるのは皆獣人だ。
ライオネル自身も、猫獣人の姿でこの街にやってきた転生者だった。
ただ、この街で猫獣人はとても珍しく、過去数十年振り返っても、猫獣人がいたことはないらしい。
転生してきたライオネルを助けてくれたのが、先程のヘンリーの祖母ヘレンだった。
今は、助けてくれたヘレンが営むお店で、働かせてもらっている。
ヘンリーの話だと、公園に現れたのは完全に猫だったらしい。けどもしかしたら、珍しい猫獣人の転生者かもしれない。
今日は閉店時間を早め、お昼過ぎには店じまいをし、はやる気持ちを抑えつつ公園へと足を運んだ。
公園に辿り着くと、ライオネルは一直線に殆ど使われていない遊具の裏へと回った。
「あ、いた」
確信を持って行った場所には、グレーの毛色の猫が、小さく身を隠すように丸くなっていた。
こんな場所では、警戒心を解いて休むことは出来ないだろう。すぐこちらに気付き顔を上げた猫は、不安げに瞳を揺らした。
自身が転生したばかりの不安な気持ちを思い出し、大丈夫だから安心して……と、ゆっくりと数回瞬きをし、ニッコリと微笑みかけた。
「はじめまして、ライオネルです。キミに会いに来たよ」
まるで人間相手に自己紹介をするように声を掛け、そっと手を差し出した。
でも、自分より大きな人間に突然出された手は、猫にとっては怖いものでしかなかった。
猫はビクッと小さく震え、耳をぺたりと倒した。
「あー、ごめん、怖かったよな。……ああ、固まっちゃってる」
ちょっと困ったように、へにょりと笑う。
そして差し出した手を引っ込めると、なるべくびっくりさせないように、優しく声をかけた。
「俺ね、一人暮らしで寂しいんだ。だから、キミには話し相手になってほしいんだよ。……美味しいご飯とお布団を用意するので、今から家に来ませんか?」
猫相手にまるで交渉するかのように話しているライオネルは、普通だったら変な人扱いされるのかもしれない。
けれど、獣人が多いこの街では、動物相手に普通に話しかけるのは、決しておかしいことではなかった。
優しく声をかけながら、怖がらせないように、そーっと背中をなでた。
ちょっとびっくりしたようだけど、今度は撫でたその手をぺろりと舐めた。
猫にとって手を舐めるという行動は、相手への警戒心を解き、心を許した時だ。
言葉は交わさなかったけど、ライオネルの提案が受け入れられたことを意味していた。
「え? 野良猫じゃなくて? 本当に転生なのか?」
「目の前に突然現れたらしい。猫の転生なんて珍しいよな。保護しようとしたら逃げちまったらしい。ライオネル、お前のお仲間かもよ? ちょっと探してこいよ」
静かな街の片隅にひっそりと佇む、小さな書店。そこに併設されたこぢんまりとしたカフェ。
唯一いた客にコーヒーを出したあと、くるりとカールした明るい栗色の髪をしたライオネルと呼ばれた若者が、友人であるヘンリーとそんな会話をしたのが昼前のこと。
この街では、何故か街の真ん中にある公園の一角に、転生者が突如として現れる。しかも転生してくるのは皆獣人だ。
ライオネル自身も、猫獣人の姿でこの街にやってきた転生者だった。
ただ、この街で猫獣人はとても珍しく、過去数十年振り返っても、猫獣人がいたことはないらしい。
転生してきたライオネルを助けてくれたのが、先程のヘンリーの祖母ヘレンだった。
今は、助けてくれたヘレンが営むお店で、働かせてもらっている。
ヘンリーの話だと、公園に現れたのは完全に猫だったらしい。けどもしかしたら、珍しい猫獣人の転生者かもしれない。
今日は閉店時間を早め、お昼過ぎには店じまいをし、はやる気持ちを抑えつつ公園へと足を運んだ。
公園に辿り着くと、ライオネルは一直線に殆ど使われていない遊具の裏へと回った。
「あ、いた」
確信を持って行った場所には、グレーの毛色の猫が、小さく身を隠すように丸くなっていた。
こんな場所では、警戒心を解いて休むことは出来ないだろう。すぐこちらに気付き顔を上げた猫は、不安げに瞳を揺らした。
自身が転生したばかりの不安な気持ちを思い出し、大丈夫だから安心して……と、ゆっくりと数回瞬きをし、ニッコリと微笑みかけた。
「はじめまして、ライオネルです。キミに会いに来たよ」
まるで人間相手に自己紹介をするように声を掛け、そっと手を差し出した。
でも、自分より大きな人間に突然出された手は、猫にとっては怖いものでしかなかった。
猫はビクッと小さく震え、耳をぺたりと倒した。
「あー、ごめん、怖かったよな。……ああ、固まっちゃってる」
ちょっと困ったように、へにょりと笑う。
そして差し出した手を引っ込めると、なるべくびっくりさせないように、優しく声をかけた。
「俺ね、一人暮らしで寂しいんだ。だから、キミには話し相手になってほしいんだよ。……美味しいご飯とお布団を用意するので、今から家に来ませんか?」
猫相手にまるで交渉するかのように話しているライオネルは、普通だったら変な人扱いされるのかもしれない。
けれど、獣人が多いこの街では、動物相手に普通に話しかけるのは、決しておかしいことではなかった。
優しく声をかけながら、怖がらせないように、そーっと背中をなでた。
ちょっとびっくりしたようだけど、今度は撫でたその手をぺろりと舐めた。
猫にとって手を舐めるという行動は、相手への警戒心を解き、心を許した時だ。
言葉は交わさなかったけど、ライオネルの提案が受け入れられたことを意味していた。
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