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67. 誕生日の宴

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 国王陛下より書簡が届いてから、さらに三ヶ月の月日が流れ、雨が多く太陽の恋しい季節となっていた。
 
 僕たちの十八歳の誕生日前日の夕暮れ、ハイネル伯爵家の屋敷は華やかな灯りに包まれていた。
 広間には、アーホルン公爵家をはじめ、重要な来賓も含めた多くの招待客が集まり、僕たちの十八歳の誕生日を祝うための宴が開かれていた。
 普段は家族内で誕生日を祝うのだけど、今年は卒業と当主交代も重なったため、家族以外の人たちも招待して宴を行うことになった。明日には街へ繰り出して領民への挨拶をすることになっている。

 肩を軽く叩かれたので振り返ると、そこには僕たちの家庭教師をしていた、ゲオルクさんが立っていた。
 僕もフィルもフレッドも、懐かしい昔話に花を咲かせた。ゲオルクさんは、僕たち三人の成長ぶりをとても喜んでくれた。

 豪華な食事と音楽が流れる中、僕たちは笑顔で招待客と交流し、和やかな雰囲気が広がっていた。
 フレッドはアーホルン公爵家の次期当主で、本来は招待客側のはずだけど、主催者側のハイネル家の一員として常に僕に寄り添い、招待客をもてなしてくれた。

 僕たちが十八歳の誕生日を迎えたということは、ハイネル伯爵家の当主交代の時期ときが来たということだ。
 フィルは、お父様の代わりの当主としての役割を託されてから、学業の合間に領土に出向いたり、近隣の貴族との交流の場を設けたりしていた。この僅かな間に、見違えるように立派になったと思う。これならば、これからのハイネル伯爵家を託しても大丈夫だ。

 今日の誕生日の宴の招待状には、事前に当主交代のお知らせも合わせて記してある。先日の貴族会議でも、フィルが十八歳の誕生日の宴をもって、当主の座を受け継ぐことも発表した。

 宴の終盤、フィルは静かに立ち上がり、集まった人々に感謝の言葉を述べた。

「本日は私たちの誕生日の宴へ、お越しいただき誠にありがとうございます。無事十八歳の誕生日を迎えることが出来ました。日頃より応援して下さる皆様に感謝いたします」

 フィルはそこまで言うと会釈をして一呼吸置くと、再び話しだした。

「今宵の招待状にもお知らせしております通り、私フィラット・ハイネルは、本日より新たにハイネル伯爵家当主を、我が尊敬する父より受け継ぎました。ハイネル伯爵家はもとより、この国の今一層の発展のために尽くしていきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます」

 フィルの挨拶に、招待客たちは盛大な拍手を送った。これからの明るい未来を想像できる、立派な挨拶だと思う。

 そして、翌日には街中を練り歩き、領民に直接挨拶をしてから、広場での盛大な祝宴が予定されていることを告げた。招待客は再び拍手で応え、宴は一層の盛り上がりを見せた。


 ◇


 翌朝、街は祝賀ムード一色に染まっていた。前日の屋敷での宴に続き、今日は街に繰り出し領民へ挨拶をすることになっている。
 通りには色とりどりの旗が飾られ、領民たちが笑顔で集まっていた。僕とフィルは、華やかな衣装を身にまとい、馬車に乗って街中を練り歩いた。領民たちは歓声を上げ、手を振りながら僕たちを迎えてくれた。

「おめでとうございます!」

 あちこちから祝いの言葉がかけられると、僕とフィルは笑顔で手を振り返し、それに応えた。
 子供たちは興奮して馬車の近くまで駆け寄ってきたようで『ミッチェル様、フィラット様』と呼びかける可愛らしい声がした。
 護衛が周囲を見守る中、馬車を止めて外に出ると、小さな手で花束を差し出してくれる子供がいた。僕はその花束を受け取り、『ありがとう』と優しく微笑んだ。

 その後僕たちは、広場の近くまで来ると、馬車を降りて歩いて向かった。
 広場には大きなテントが張られ、豪華な食事や飲み物が並べられていた。そこにはたくさんの領民たちが集まってきていて、自由に楽しんでいた。
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