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53. 運命を超える
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「はぁぁぁぁ……よかった……」
僕の返事を確認すると、フレッドはへなへなと床に座り込んだ。
そうだ。フレッドはいつも何事に対しても控え目だった。決して出しゃばったり偉ぶったりはしない。
そんな人が、人生を大きく左右するような愛の告白をして、平気なわけはないんだ。
「僕は、リクを裏切りたくないのに、フレッドにも惹かれていると気付いてしまって、それからずっと葛藤していたんだ。……でも目の前にいるのは、フレッドだけどリクでもある。だから、僕は何も諦める必要がない。……こんな夢みたいなことがあるんだね……」
僕は溢れ出る思いをすべて吐き出すように、一気に言葉を連ねた。
そして、自分の気持ちを噛みしめるように、手元の指輪を見つめ、ぎゅっと握りしめた。
「安心したら、力が抜けてしまって……」
僕の言葉を黙って聞いていたフレッドが、弱々しい声をあげた。
さっきまで、キリッとした表情で、スマートに愛の告白をしてきた人が、今は目の前で力なく座り込んでいる。
「僕もまだ心臓がドキドキしているよ」
僕はそう言いながら、しゃがみ込んでいるフレッドに手を差し出した。
フレッドは恥ずかしそうな笑みを浮かべると、僕が差し出した手を取り立ち上がった。そして、そのまま両手で僕の手を包み込んだ。
「どんどんミッチに惹かれていったけど、俺は身寄りのない孤児。使用人としてそばにいることを許されていたけど、こんなに身分の違う人間が、思いを伝える資格はないと思っていたんだ」
フレッドはそう言いながら、僕の左手の薬指に、そっと婚約の証のペアリングをはめた。
「本当は、もっとちゃんとした場所でプロポーズしたかったのに、こんなところでごめんね。思いが溢れて、伝えずにはいられなかったんだ。……ミッチは、ここには良い思い出はないよね……」
「ううん、大丈夫だよ。この部屋にはつらい思い出も多いけど、フレッドのおかげで、全てが塗り替えられそうだよ。きっとこれからは、何度も訪れたい場所になるよ」
申し訳なさそうに言うフレッドの手を握り返すと、今度は僕からフレッドの薬指に指輪をはめた。
「前世で……僕は、リクのことを信じきれずに、嫉妬して疑ってしまったんだ。そのせいで……リクは……」
ちゃんと話さなきゃいけないのに、僕は言葉に詰まってしまう。泣いちゃダメだ。ちゃんと伝えなきゃ。
「あとで、海渡くんに聞いたんだ。リクが僕にプロポーズをしようと、指輪を用意してくれていたって。そして、僕はリクからの最後のプレゼントを受け取った。……悩んだよ。僕にこの指輪を持つ資格なんてあるんだろうかって。けど、もう一度頑張ってみようと思わせてくれたのも、この指輪なんだ」
フレッドは、僕が不安にならないように、手を優しく包みこんだまま、僕の言葉をただ黙って静かに聞いてくれた。
「結局、僕も命を落としてしまったけど、生まれ変わって再び出会うことができた。……リクの言葉を信じて、自分の命を粗末にしなくてよかった……」
フレッドは、うんうんとうなずく。
「俺たちは運命の番ではないのかもしれないけど、それすらも超えるんだ。だって、生まれ変わって再会してまた恋に落ちるなんて、運命としか言いようがないだろう?」
「そうだね。運命を超える運命なんて、最強だね」
僕たちは、先程までの少ししんみりしてしまった気持ちを吹き飛ばすように、二人で顔を見合わせて笑った。
『運命の番』という強力な絆を、さらに上回る運命がある。そんな相手に出会えたのは奇跡だ。
「あとで、正式にみんなに伝えよう。その場で改めて、プロポーズをするよ」
「うん。ありがとう。……えへへ、なんか照れくさいな」
ポリポリと恥ずかしそうに頭をかく僕を、フレッドは再びぎゅっと抱きしめた。
「もうすぐ連絡が来るから。そしたら、ここを出て、みんなのもとへ向かおう」
「え? みんなのもとへって?」
不思議そうに聞き返した僕に、フレッドはうんと軽くうなずくと、気合を入れるように言った。
「これから、家族会議が始まる」
僕の返事を確認すると、フレッドはへなへなと床に座り込んだ。
そうだ。フレッドはいつも何事に対しても控え目だった。決して出しゃばったり偉ぶったりはしない。
そんな人が、人生を大きく左右するような愛の告白をして、平気なわけはないんだ。
「僕は、リクを裏切りたくないのに、フレッドにも惹かれていると気付いてしまって、それからずっと葛藤していたんだ。……でも目の前にいるのは、フレッドだけどリクでもある。だから、僕は何も諦める必要がない。……こんな夢みたいなことがあるんだね……」
僕は溢れ出る思いをすべて吐き出すように、一気に言葉を連ねた。
そして、自分の気持ちを噛みしめるように、手元の指輪を見つめ、ぎゅっと握りしめた。
「安心したら、力が抜けてしまって……」
僕の言葉を黙って聞いていたフレッドが、弱々しい声をあげた。
さっきまで、キリッとした表情で、スマートに愛の告白をしてきた人が、今は目の前で力なく座り込んでいる。
「僕もまだ心臓がドキドキしているよ」
僕はそう言いながら、しゃがみ込んでいるフレッドに手を差し出した。
フレッドは恥ずかしそうな笑みを浮かべると、僕が差し出した手を取り立ち上がった。そして、そのまま両手で僕の手を包み込んだ。
「どんどんミッチに惹かれていったけど、俺は身寄りのない孤児。使用人としてそばにいることを許されていたけど、こんなに身分の違う人間が、思いを伝える資格はないと思っていたんだ」
フレッドはそう言いながら、僕の左手の薬指に、そっと婚約の証のペアリングをはめた。
「本当は、もっとちゃんとした場所でプロポーズしたかったのに、こんなところでごめんね。思いが溢れて、伝えずにはいられなかったんだ。……ミッチは、ここには良い思い出はないよね……」
「ううん、大丈夫だよ。この部屋にはつらい思い出も多いけど、フレッドのおかげで、全てが塗り替えられそうだよ。きっとこれからは、何度も訪れたい場所になるよ」
申し訳なさそうに言うフレッドの手を握り返すと、今度は僕からフレッドの薬指に指輪をはめた。
「前世で……僕は、リクのことを信じきれずに、嫉妬して疑ってしまったんだ。そのせいで……リクは……」
ちゃんと話さなきゃいけないのに、僕は言葉に詰まってしまう。泣いちゃダメだ。ちゃんと伝えなきゃ。
「あとで、海渡くんに聞いたんだ。リクが僕にプロポーズをしようと、指輪を用意してくれていたって。そして、僕はリクからの最後のプレゼントを受け取った。……悩んだよ。僕にこの指輪を持つ資格なんてあるんだろうかって。けど、もう一度頑張ってみようと思わせてくれたのも、この指輪なんだ」
フレッドは、僕が不安にならないように、手を優しく包みこんだまま、僕の言葉をただ黙って静かに聞いてくれた。
「結局、僕も命を落としてしまったけど、生まれ変わって再び出会うことができた。……リクの言葉を信じて、自分の命を粗末にしなくてよかった……」
フレッドは、うんうんとうなずく。
「俺たちは運命の番ではないのかもしれないけど、それすらも超えるんだ。だって、生まれ変わって再会してまた恋に落ちるなんて、運命としか言いようがないだろう?」
「そうだね。運命を超える運命なんて、最強だね」
僕たちは、先程までの少ししんみりしてしまった気持ちを吹き飛ばすように、二人で顔を見合わせて笑った。
『運命の番』という強力な絆を、さらに上回る運命がある。そんな相手に出会えたのは奇跡だ。
「あとで、正式にみんなに伝えよう。その場で改めて、プロポーズをするよ」
「うん。ありがとう。……えへへ、なんか照れくさいな」
ポリポリと恥ずかしそうに頭をかく僕を、フレッドは再びぎゅっと抱きしめた。
「もうすぐ連絡が来るから。そしたら、ここを出て、みんなのもとへ向かおう」
「え? みんなのもとへって?」
不思議そうに聞き返した僕に、フレッドはうんと軽くうなずくと、気合を入れるように言った。
「これから、家族会議が始まる」
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