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41. 優しい日々
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「ミッチ~?」
扉の向こうからは、緊張感のまるで無いゆったりとした声が聞こえてきた。
おそらく、使用人も気付いていたのだろう。というよりも、フィルもお母様の書斎に一緒に入ってきて、そのまま使用人が説明し終わるのを待っていたと考えるのが普通だろう。そうじゃなければ、こんなにタイミング良く来るわけがない。
「もう説明終わったー? 入っても良い~?」
ほら、やっぱりそうじゃないか。
僕は大きなため息をつきながらも、クスクスと笑いだしてしまう。
「旦那様は、忘れ物を届けに行ってまだ戻られていないようです。ただ、そんなに時間はかからないと思うので、まもなくお戻りになると思います」
使用人からのその言葉は、『ゆっくりしている時間はないけれど、少しくらいなら大丈夫』という意味が含まれていた。
その言葉にうなずいたあと、扉を開けてフィルを招き入れた。
「もー、疲れちゃったよ~」
僕にぎゅっと抱きついて、僕にスリスリしながらフィルは言った。
「お疲れ様。リヒター伯爵家の皆さんとは、交流を深められた?」
「うーん。僕、緊張してたから良くわからないよ。……多分、大丈夫だと思うけど。コニーは一緒にいて楽しかったよ。怖い人だったらどうしようかと思ってたから、とても優しい人で良かったよ」
「そっか。それなら僕も安心だ。……いつか、僕もご挨拶できる日が来ると良いな」
きっと、そんな日は来ないのだろうなと思いながらも、フィルの頭を優しく撫でながら言った。
「僕、ミッチと一緒にここで寝たいなー」
「ごめんね、僕もフィルと一緒に寝たいけど、それはできないんだよ」
「んー。わかってるー。ミッチが怒られたら困るから、僕我慢するよ。でも待っててね。コニーが家に来る頃には、ミッチも一緒にいられるように、僕頑張っているからね」
すっかり僕より大きくなって、体もがっしりして、声も低く落ち着いてきて、それでも僕に甘える姿はなにも変わらない。昔の可愛いフィルのままだ。
「ふふふ。ありがとうね。みんなで一緒にいられる日を楽しみにしているね」
今くらい、夢見ても良いよね。
お屋敷にはたくさんの使用人たちが戻ってきて、昔の優しかった頃のお父様に戻っていて、お母様もにこにこと微笑んでいて、コニーとフィルが仲良さそうに手を繋いでいて、そんな家族を見ていられる僕は幸せいっぱいな気持ちに包まれる。
たくさんの子どもたちと、犬や猫や、自然界の動物たちも遊びにやってくるような、素敵な庭。
ご近所さんも招いて、お茶会を開こう。
僕の隣にフレッドがやってきて、ストールをそっとかけてくれるんだ。体の弱い僕を心配してくれるのかもしれない。
優しいフレッドに僕は身を任せながら、楽しそうなみんなを少し離れたところから、微笑んで見つめる。
そんな穏やかな、日々。
「ミッチ?」
夢の世界に入り込んでしまった僕に、フィルは声を掛けた。
「ああ、ごめんね。フィルが結婚して、コニーもハイネル家の仲間入りをしたら、楽しくなりそうだねって思っていたんだよ」
「うん、そうだね。結婚はもう少し先だけど、二人で色々と話し合えたら良いなって思っているよ」
「きっと素敵な家族になれるよ」
親の決めた婚約者で、家同士の政略結婚だとしても、フィルたちはお互いにちゃんと歩み寄ろうとしている。幸せを掴もうとしている。
二人の幸せを願いながら、僕自身も未来への模索をして、気持ち新たに前を見て進んでいかなければいけないなと思った。
扉の向こうからは、緊張感のまるで無いゆったりとした声が聞こえてきた。
おそらく、使用人も気付いていたのだろう。というよりも、フィルもお母様の書斎に一緒に入ってきて、そのまま使用人が説明し終わるのを待っていたと考えるのが普通だろう。そうじゃなければ、こんなにタイミング良く来るわけがない。
「もう説明終わったー? 入っても良い~?」
ほら、やっぱりそうじゃないか。
僕は大きなため息をつきながらも、クスクスと笑いだしてしまう。
「旦那様は、忘れ物を届けに行ってまだ戻られていないようです。ただ、そんなに時間はかからないと思うので、まもなくお戻りになると思います」
使用人からのその言葉は、『ゆっくりしている時間はないけれど、少しくらいなら大丈夫』という意味が含まれていた。
その言葉にうなずいたあと、扉を開けてフィルを招き入れた。
「もー、疲れちゃったよ~」
僕にぎゅっと抱きついて、僕にスリスリしながらフィルは言った。
「お疲れ様。リヒター伯爵家の皆さんとは、交流を深められた?」
「うーん。僕、緊張してたから良くわからないよ。……多分、大丈夫だと思うけど。コニーは一緒にいて楽しかったよ。怖い人だったらどうしようかと思ってたから、とても優しい人で良かったよ」
「そっか。それなら僕も安心だ。……いつか、僕もご挨拶できる日が来ると良いな」
きっと、そんな日は来ないのだろうなと思いながらも、フィルの頭を優しく撫でながら言った。
「僕、ミッチと一緒にここで寝たいなー」
「ごめんね、僕もフィルと一緒に寝たいけど、それはできないんだよ」
「んー。わかってるー。ミッチが怒られたら困るから、僕我慢するよ。でも待っててね。コニーが家に来る頃には、ミッチも一緒にいられるように、僕頑張っているからね」
すっかり僕より大きくなって、体もがっしりして、声も低く落ち着いてきて、それでも僕に甘える姿はなにも変わらない。昔の可愛いフィルのままだ。
「ふふふ。ありがとうね。みんなで一緒にいられる日を楽しみにしているね」
今くらい、夢見ても良いよね。
お屋敷にはたくさんの使用人たちが戻ってきて、昔の優しかった頃のお父様に戻っていて、お母様もにこにこと微笑んでいて、コニーとフィルが仲良さそうに手を繋いでいて、そんな家族を見ていられる僕は幸せいっぱいな気持ちに包まれる。
たくさんの子どもたちと、犬や猫や、自然界の動物たちも遊びにやってくるような、素敵な庭。
ご近所さんも招いて、お茶会を開こう。
僕の隣にフレッドがやってきて、ストールをそっとかけてくれるんだ。体の弱い僕を心配してくれるのかもしれない。
優しいフレッドに僕は身を任せながら、楽しそうなみんなを少し離れたところから、微笑んで見つめる。
そんな穏やかな、日々。
「ミッチ?」
夢の世界に入り込んでしまった僕に、フィルは声を掛けた。
「ああ、ごめんね。フィルが結婚して、コニーもハイネル家の仲間入りをしたら、楽しくなりそうだねって思っていたんだよ」
「うん、そうだね。結婚はもう少し先だけど、二人で色々と話し合えたら良いなって思っているよ」
「きっと素敵な家族になれるよ」
親の決めた婚約者で、家同士の政略結婚だとしても、フィルたちはお互いにちゃんと歩み寄ろうとしている。幸せを掴もうとしている。
二人の幸せを願いながら、僕自身も未来への模索をして、気持ち新たに前を見て進んでいかなければいけないなと思った。
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