上 下
15 / 75

14. 変わりゆく関係

しおりを挟む
 僕たち双子は十一歳で、フレッドは十三歳になっていた。
 この頃になると、僕たち双子とフレッドの関係性が少しだけ変わってきていた。

 僕はフレッドに初めて会った時、とても懐かしいような、温かな気持ちに包まれた。それ以来、何かデジャヴのような不思議な感覚に陥ることが度々あった。一緒にいる時間が長くなればなるほど、その気持ちは大きくなる一方だった。

 そして、それを確かめたくて、意識的に二人きりになる時間を作ろうとしてしまい、それはよくないことだと自分に言い聞かせる日々が続いていた。僕とフィルは双子だし、フレッドにとっては雇い主の愛息子たち。差別などしてはいけない存在なのだから。

 それに、僕には再会を約束した恋人の『リク』がいる。きっとリクも転生をし、どこかで僕を探しているはずだ。そのリクを裏切ることは出来ない。
 それでも、ずっと一緒に過ごしているフレッドに対する感情が変わってきているのは、確かだった。


 フィルがフレッドに抱く感情もまた、変わってきているように思う。
 フレッドが家に来たばかりの頃は、うるさいくらいにまとわりついて懐いていたのに、最近は何か様子が少し違う。
 ゲオルクさんやお父様が、フレッドとフィルを良きライバルとして見ていたようだし、お互いに高め合うように煽っているようにも感じた。フィルはそのせいなのか、特にフレッドをライバル視しているように思えた。

 なぜ僕がその中に入っていないのか。それは、僕にも心当たりがあった。
 もともと身体の強い方ではなかったけれど、最近は体調が不安定になる日が増えた。せっかくゲオルクさんが勉強のために外へ連れ出してくれるはずだったのに、僕だけが行けなくなることが何度かあった。





「ミッチが行かないなら、ぼくも行かない!」

 ベッドで横たわる僕の横で、フィルが不満そうに頬を膨らませている。

「ごめんね、フィル……」
「ミッチは悪くないよ! ぼくはミッチが心配だから、そばにいて看病したいんだ。……なのにお父様は、ぼくだけ連れて行くって! なんでフレッドは看病していいのに、ぼくはだめなの!?」

 フィルが、僕のことを大好きで慕ってくれているのはよく知っている。だから一緒に行きたがっているのも分かるし、体調を崩しているのなら、看病したいと言い出すのも想像できた。

「フィルは、この家の次期当主になるからだ」
「それならミッチだってそうじゃないか!」

 年の違う兄弟だったら、長男の僕が次期当主として選ばれる可能性が高い。けれど僕達は双子だ。どちらがこのハイネル伯爵家を継いでもおかしくない。
 だから、どちらが継いでもいいように、僕達は少しずつたくさんのことを学んでいる。

「熱を出しているのに、無理やり連れて行くのか?」

 キャンキャンと喚くフィルに、フレッドが答えた。
 本来ならば使用人がこんな口の聞き方をしてはいけないのだけど、僕たちだけしかいない場所では、友達のように話してほしいとお願いしたんだ。
 だからフレッドは、遠慮などせずスッパリと言い切った。

 本当なら、今日は僕も街へ出て実際の商談に同席する予定だった。それなのに体調を崩してしまって、今こうやってベッドで寝ている。

 今までなら、僕が体調を崩してしまった日は、フィルとフレッドだけついて行き、僕は一人で留守番だった。
 そういう時は、体調を崩したとはいえ、最低限のことは一人でどうにかできたので、それでも問題はなかったんだ。

 けれど今日はどうだろう。体が鉛のように重く、熱い。それに、なんとなく体も心もざわざわして落ち着かない。
 前世の記憶のある僕は、この体のだるさには覚えがある。

 まさか……ね。

 僕は、この世界に転生してきたばかりの頃にも感じた嫌な予感を、再び気付かないふりをして、無理やり心の奥に閉じ込めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

「本編完結」あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。 そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。 オメガバースですが、R指定無しの全年齢BLとなっています。 (ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります) 6話までは、ツイノベを加筆修正しての公開、7話から物語が動き出します。 本編は全35話。番外編は不定期に更新されます。 サブキャラ達視点のスピンオフも予定しています。 表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat) 投稿にあたり許可をいただき、ありがとうございます(,,ᴗ ᴗ,,)ペコリ ドキドキで緊張しまくりですが、よろしくお願いします。 ✤お知らせ✤ 第12回BL大賞 にエントリーしました。 新作【再び巡り合う時 ~転生オメガバース~】共々、よろしくお願い致します。 11/21(木)6:00より、スピンオフ「星司と月歌」連載します。 11/24(日)18:00完結の短編です。 1日4回更新です。 一ノ瀬麻紀🐈🐈‍⬛

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

処理中です...