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BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる
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「鴇藤さんは、おいくつですか?」
「24。社会人2年目」
「そうなんですね。すごく親しみやすい印象だったから、てっきりまだ、大学生だと思ってました。
……7歳差なら、可能性ある、よね」
「え~嬉しいな。ごめん、最後の方聞き取れなかったんだけど」
「あっいえ! 大したことないので大丈夫です!」
「そう?」
「はい、むしろ独り言みたいなもんです。
あとっ、名前で呼んでもらえますか? 」
「え~と(思い出せ、俺。何ヒナコだっけ、苗字出てこい)」
「日向子です! 桜田 日向子と言います。日向子って呼んで下さい」
鴇藤、桜田、ベルヘルム、ベイリーの4人は、ガゼボで長閑なティータイムを過ごしていた。
同じ日本人であり、唯一心が許せる鴇藤が話し相手なおかげか、桜田は楽しそうに話している。
泣くか黙る姿しか見ていなかったベルヘルムは、自分の不甲斐なさを感じると共に、小さな嫉妬心を芽生えさせるのだった。
「(兄か近所のお兄さんみたいに思ってくれてるのかな? まあ、こんだけ可愛い子に懐かれたら嫌な気はしないな) じゃあ日向子ちゃんって呼ばせてもらうよ。俺の事も蓮で良いよ」
「本当ですかっ、れ、蓮さんっ」
「ん、なぁに? (ちょっと犬っぽい)」
「よっ呼んだだけです。
あ、そうだ。お仕事は何されてたんですか?」
「BAだよ。百貨店の美容部員みたいなもん」
「えっ!? すごいです! あんまり男性の方っていませんよね」
「そうだね、レアだと思う」
桜田は、完全に2人の王子の存在を忘れ、会話に夢中になっていた。
自分の知る世界観、常識を共有する事で、一時的に現実逃避をしている様にも見える程。
鴇藤はその危うさを感じつつ、今はただ話を聞く事に徹した。
「どこで働いてたんです?」
「渋谷の『Carina』って知ってる? そこ」
「知ってます!よく雑誌に載ってますよね。
私、リップ持ってます」
「へ~、嬉しいな。ありがとう」
ふとベイリーは気になった。庇護下に置きたいと考えている青年の仕事について。
聖女が気分良く話している最中に割り込むのは、憚られたが、大した問題ではないだろうと、切り込む事にした。
「レン、BAというのは何だい?
どんな仕事をしていたのか、教えてくれないか?」
「化粧品とかコスメティックは通じますか?
それらのアイテムを使って、肌の状態を良くしたり、顔をデザインしたりするんです」
「化粧ーーああ、貴婦人が顔に粉や唇に赤い染料を塗る事か」
ベイリーは舞踏会や晩餐会で見る厚塗りの女性達を想像した。
「たぶんそうです。それをメイクだとか、化粧と言ってます。
化粧品/コスメは、それに使う粉だったり、メイドさん達が使ってる植物オイルを指したりします」
「それはつまり、レンは侍女や髪結の仕事をしていたのか?」
ベルヘルムとベイリーは顔を顰めた。
家名を持っているはずの鴇藤が、何故その様な仕事をしているのか考え、さぞ苦い人生だったのだろうと想像したからだ。
たしかに、上級侍女の中には貴族も多い。一種のステータスとも言えよう。
しかしそれは、あくまで女性の話だ。男性ではまず有り得ない。髪結は男もいるが、決まって平民だった。
つまり彼は没落した貴族なのではないか?
暗い顔で黙ってしまった王子達に、鴇藤は不思議な気持ちだった。
こうして、誰も的外れな勘違いに気付く事なく、話は進んでいくのであった。
「ん~違う様な気もしますが、被るところはありますね」
「そ、そうか(やはり、そうなんだな。こんなに気丈に振る舞って……レンには出来る限り贅沢を!)」
「それは大変な仕事だったな。ヒナコは何をしていたんだ? (認めたくはないんだろう。ここは話題を逸らしてやるべきだ)」
この憐れむ様な視線は何だ。オカン宰相といい、何故自分がこんな扱いを受けるのか。それから数日して、鴇藤は割と真剣に悩まされる事になる。
「高校生です」
「それは何だ?」
「学生です。勉強する所に通ってます」
ベルヘルムは質問を間違えたと後悔した。
同郷でありながら、ヒナコは学習機関に通える裕福な家に育ったという事だ。
鴇藤に酷な話を聞かせてしまった。そう勘違いしているからだ。
「そう…なのか。さぞ優秀だったんだろうな、ハハ」
「(兄上……)」
「普通ですよ? よっぽど頭が悪いか、家庭の問題か、夢の為とかでない限り、みんな高校までは進学しますから」
「「そうなのかっ!(やはり彼は……いや、夢の為という可能性も)」」
「まあ、大学はまちまちですけどね。大抵の人は4年制か専門学校に進みますね。
俺は文系の大学出ましたけど、専門でも良かったかな~と思ってます」
「「え゛っ?!」」
「へぇ、そうなんですかー。私はまだ迷ってるんですよ」
大学とは何なのか。青空教室の様なものか?
だが、聖女の口ぶりだと、高校の次が大学だと推測出来る。
つまり鴇藤は高等教育機関を卒業したという事か。それなら何故、侍女の真似事を?
卒業後に没落したとしても、働き口はいくらでもあるはずだ。
もしや全て勘違いで、鴇藤という男は自らその道に進んだ酔狂な人間なのかも知れない。
そうであれば、この無害そうな男の認識を改めなければ。
おおよそ合っている様で、最も大事な部分が誤解されているが、誰も正す者は居ない。
「そうなんだ。まあ、ゆっくり考えなよ(戻れない限り、虚しいだけだから)」
「はい! そうだ今度私にメイクしてくれませんか?
私、少しならメイクポーチに入ってるので」
「いいよ。俺も確認しないと分からないけど、カバンの中身が無事だったら、ある程度揃ってるはずだから」
「やったぁ。そしたら一緒に取りに行きましょう。私、まだこの建物以外見れてないんです」
「ん~、ベイリー殿下良いですか?」
鴇藤は自分の身元引き受け人に尋ねる。
ベルヘルムは当然反対するだろうが、鴇藤の謎が頭を占め、聞こえていない様だった。
その様子を面白そうに眺め、ベイリーは笑顔で許可を出した。
自分もついて行くからと言って。
ティータイムはお開きになり、其の足で彼等は魔術団員が生活する魔術塔へ向かった。
「ずいぶん楽しそうですね、聖女様」
「だって、蓮さんと一緒ですから。貴方達の事は全く信用してませんけど、蓮さんは私と同じ誘拐された被害者ですもん」
鋭い眼光で質問に答えた桜田に、ベイリーは苦笑するしかなかった。
「(今時のJKってこえ~、恨み節全開でドストレートだな)」
「24。社会人2年目」
「そうなんですね。すごく親しみやすい印象だったから、てっきりまだ、大学生だと思ってました。
……7歳差なら、可能性ある、よね」
「え~嬉しいな。ごめん、最後の方聞き取れなかったんだけど」
「あっいえ! 大したことないので大丈夫です!」
「そう?」
「はい、むしろ独り言みたいなもんです。
あとっ、名前で呼んでもらえますか? 」
「え~と(思い出せ、俺。何ヒナコだっけ、苗字出てこい)」
「日向子です! 桜田 日向子と言います。日向子って呼んで下さい」
鴇藤、桜田、ベルヘルム、ベイリーの4人は、ガゼボで長閑なティータイムを過ごしていた。
同じ日本人であり、唯一心が許せる鴇藤が話し相手なおかげか、桜田は楽しそうに話している。
泣くか黙る姿しか見ていなかったベルヘルムは、自分の不甲斐なさを感じると共に、小さな嫉妬心を芽生えさせるのだった。
「(兄か近所のお兄さんみたいに思ってくれてるのかな? まあ、こんだけ可愛い子に懐かれたら嫌な気はしないな) じゃあ日向子ちゃんって呼ばせてもらうよ。俺の事も蓮で良いよ」
「本当ですかっ、れ、蓮さんっ」
「ん、なぁに? (ちょっと犬っぽい)」
「よっ呼んだだけです。
あ、そうだ。お仕事は何されてたんですか?」
「BAだよ。百貨店の美容部員みたいなもん」
「えっ!? すごいです! あんまり男性の方っていませんよね」
「そうだね、レアだと思う」
桜田は、完全に2人の王子の存在を忘れ、会話に夢中になっていた。
自分の知る世界観、常識を共有する事で、一時的に現実逃避をしている様にも見える程。
鴇藤はその危うさを感じつつ、今はただ話を聞く事に徹した。
「どこで働いてたんです?」
「渋谷の『Carina』って知ってる? そこ」
「知ってます!よく雑誌に載ってますよね。
私、リップ持ってます」
「へ~、嬉しいな。ありがとう」
ふとベイリーは気になった。庇護下に置きたいと考えている青年の仕事について。
聖女が気分良く話している最中に割り込むのは、憚られたが、大した問題ではないだろうと、切り込む事にした。
「レン、BAというのは何だい?
どんな仕事をしていたのか、教えてくれないか?」
「化粧品とかコスメティックは通じますか?
それらのアイテムを使って、肌の状態を良くしたり、顔をデザインしたりするんです」
「化粧ーーああ、貴婦人が顔に粉や唇に赤い染料を塗る事か」
ベイリーは舞踏会や晩餐会で見る厚塗りの女性達を想像した。
「たぶんそうです。それをメイクだとか、化粧と言ってます。
化粧品/コスメは、それに使う粉だったり、メイドさん達が使ってる植物オイルを指したりします」
「それはつまり、レンは侍女や髪結の仕事をしていたのか?」
ベルヘルムとベイリーは顔を顰めた。
家名を持っているはずの鴇藤が、何故その様な仕事をしているのか考え、さぞ苦い人生だったのだろうと想像したからだ。
たしかに、上級侍女の中には貴族も多い。一種のステータスとも言えよう。
しかしそれは、あくまで女性の話だ。男性ではまず有り得ない。髪結は男もいるが、決まって平民だった。
つまり彼は没落した貴族なのではないか?
暗い顔で黙ってしまった王子達に、鴇藤は不思議な気持ちだった。
こうして、誰も的外れな勘違いに気付く事なく、話は進んでいくのであった。
「ん~違う様な気もしますが、被るところはありますね」
「そ、そうか(やはり、そうなんだな。こんなに気丈に振る舞って……レンには出来る限り贅沢を!)」
「それは大変な仕事だったな。ヒナコは何をしていたんだ? (認めたくはないんだろう。ここは話題を逸らしてやるべきだ)」
この憐れむ様な視線は何だ。オカン宰相といい、何故自分がこんな扱いを受けるのか。それから数日して、鴇藤は割と真剣に悩まされる事になる。
「高校生です」
「それは何だ?」
「学生です。勉強する所に通ってます」
ベルヘルムは質問を間違えたと後悔した。
同郷でありながら、ヒナコは学習機関に通える裕福な家に育ったという事だ。
鴇藤に酷な話を聞かせてしまった。そう勘違いしているからだ。
「そう…なのか。さぞ優秀だったんだろうな、ハハ」
「(兄上……)」
「普通ですよ? よっぽど頭が悪いか、家庭の問題か、夢の為とかでない限り、みんな高校までは進学しますから」
「「そうなのかっ!(やはり彼は……いや、夢の為という可能性も)」」
「まあ、大学はまちまちですけどね。大抵の人は4年制か専門学校に進みますね。
俺は文系の大学出ましたけど、専門でも良かったかな~と思ってます」
「「え゛っ?!」」
「へぇ、そうなんですかー。私はまだ迷ってるんですよ」
大学とは何なのか。青空教室の様なものか?
だが、聖女の口ぶりだと、高校の次が大学だと推測出来る。
つまり鴇藤は高等教育機関を卒業したという事か。それなら何故、侍女の真似事を?
卒業後に没落したとしても、働き口はいくらでもあるはずだ。
もしや全て勘違いで、鴇藤という男は自らその道に進んだ酔狂な人間なのかも知れない。
そうであれば、この無害そうな男の認識を改めなければ。
おおよそ合っている様で、最も大事な部分が誤解されているが、誰も正す者は居ない。
「そうなんだ。まあ、ゆっくり考えなよ(戻れない限り、虚しいだけだから)」
「はい! そうだ今度私にメイクしてくれませんか?
私、少しならメイクポーチに入ってるので」
「いいよ。俺も確認しないと分からないけど、カバンの中身が無事だったら、ある程度揃ってるはずだから」
「やったぁ。そしたら一緒に取りに行きましょう。私、まだこの建物以外見れてないんです」
「ん~、ベイリー殿下良いですか?」
鴇藤は自分の身元引き受け人に尋ねる。
ベルヘルムは当然反対するだろうが、鴇藤の謎が頭を占め、聞こえていない様だった。
その様子を面白そうに眺め、ベイリーは笑顔で許可を出した。
自分もついて行くからと言って。
ティータイムはお開きになり、其の足で彼等は魔術団員が生活する魔術塔へ向かった。
「ずいぶん楽しそうですね、聖女様」
「だって、蓮さんと一緒ですから。貴方達の事は全く信用してませんけど、蓮さんは私と同じ誘拐された被害者ですもん」
鋭い眼光で質問に答えた桜田に、ベイリーは苦笑するしかなかった。
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