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王都編
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しおりを挟む「おかえりなさいませ。ディオン様、ルーカス様」
「ああ。急で悪いが厨房を貸してくれ。
調理の邪魔はしないよう、気を付ける」
「ただいま帰りました」
すげ。メイドと執事のお出迎えって、こんなに壮観なんだ。
出る時は、パパさんとメアリーママさんが支度中で、今の半分くらいだった。
やー、この人数は緊張するって。
「かしこまりました。直ぐに料理長に伝えて参ります。
その間にお召し物を」
「頼む。
ルーカス、着替えよう」
「おう」
「そうだ。料理長に1人、手が空いてる者をつける様に言ってくれるか」
「はい、その様に」
用意してもらった服に着替え、部屋で待っていると、ディオンが来た。
「もう準備出来たって?」
「いや、その前にご褒美をもらおうと思って」
ディオンが手で軽く合図をすれば、お世話してくれていたメイドさんが、一礼して静かに部屋を出て行く。
なんか今の仕草って映画のワンシーンみたいだ。
「何すれば良い?
あ、チョコ食う? 食べさしの分、まだあるよ」
「じゃあ、食べさせて」
「お、おう。あ~ん」
わざわざ、ひと口大に割ってやったのに、半分だけ齧った。
「う、なんか食い方がエロい」
「そうか?」
だって、俺の目をじっと見ながら、ゆっくり近付いて来たんだぞ。
見せ付ける様に食うし。
「てか、これくらい一度に食えよ。残さないで……わっ」
「ちゅ。……ん? どうかしたか」
「俺の指まで食う事ないだろっ!
赤ちゃんかよっ」
あー! コッチが小っ恥ずかしい!
居た堪れなくなって、ソファーから立ちあがろうとした瞬間。
ーーあっという間に視界が一変し、綺麗な柄の描かれた天井が見えた。
俺、押し倒されてね?
「こら。まだご褒美をもらってないのに、何処行く気だ」
「いや、別にどこにも……つか、重い」
「あ? 体重かけない様にしてやってるだろ」
確かに、一切重みはかかってない。
だけど、男としてこの体勢はキツいというか。
「ご褒美って、なに」
「ルーカスのキスが欲しいな」
「はっ?」
どうした。変態に感化されたか?
ディオンがおかしくなった。どうしよう。
「ほら、ルーカス」
「いやいやいや。何の冗談」
「……アイツとはしたのに、オレはダメなのか?」
やっぱりだ。変態に対抗心を燃やしてるんだ! でも絶対後悔するぞ。
あんな性悪の言葉に左右されて、男のキスを欲しがるだなんて。
黒歴史以外の何ものでもねーよ?!
「冷静になって、ディオン。
絶対あとで、後悔するからっ」
「しない」
「するってば!」
「じゃあ、しょうがないか」
「うんうん。そうだーーーっふ、まっ!」
「ん、あまい」
そりゃ、チョコレート食べましたからね。
ーーっ厄日だ。しかもキス長い。しつこいぃっ!
「はぅ…ま、んん、ふあ……息で、ん、ぅんんっ」
「はっ、可愛い。気持ちい? 涙目だぞ」
「ちがっ。これは、せいりてきな、っ涙でっんっ、もっ、またぁっ?」
何回するんだよ。意地張りすぎだろ~っ。
くそっ。ディオンの奴、見た目通りキスが上手い。
腰抜けそうっ。負けるな、俺。
男としての矜持を守れ。
「はあっ、ん、ちゅ、ゃぁ……あっ、だめっ」
「んー? 何がダメなんだ?
あぁ、上顎とか」
「んっ!」
なんか、ねっとり舐められた。
ゾワゾワするっ。
「良い子だ、ルーカス。
はあっ、舌もっと出して」
「ふぇ、したぁ? あっ、んん。すっちゃ、やぁ」
「吸われるのが気持ち良いんだ。
クスッ。ココも気持ち良くなっちゃった? モジモジさせて、やらしーのっ」
「ひゃっ!」
ちょっ、待った!
ソコはダメだ!!
ヤバイっ。気持ち良すぎて、どうにかなりそうっーー
「なあ、触っていいか」
「ゃ、そんな耳元でっ」
「いいよな、ルーカスっ」
ディオンの熱い吐息が、耳にっ。
俺、開いてはイケナイ扉を開いちゃうかもっっ。
ーーコンコン
「んんっ!
ふぁっ、ディオンっ人、はぁ、来たっ!」
「……ちっ」
「ルーカス様、ご準備が整いました」
「あっ、はーい! わかっ、りましたぁ!
ちょっと待って下さいね。タイがズレちゃって……」
ヤバイヤバイ。入って来ないで!
見られたら終わる!
「では私がお手伝い致しましょうか」
「へっ?」
「いや、オレがやる。
少ししたら、厨房に行くから。君は持ち場に戻れ」
「ーー! ディオン様もご一緒でしたか。
承知しました。失礼致します」
よ、良かったぁ~。
見られずに済んだ。
力抜けたっていうか、グッタリだよ。
「っっっ。ディィーオォーンンー!!」
俺を見下ろしたままのディオンを、ボコスカ殴れば、やっと上から退いた。
「痛いって」
「俺の方がイテーよ!
見ろよ、この唇! ヒリヒリするぅっ、絶対腫れてるー!」
ーーぺろっ
「は?」
「だって痛いって言うから」
「だから舐めましたってか?」
「ああ」
さも当然みたいな顔して、何しやがるっ。
呆れた。コイツはポンコツだ。
昼間、ちょっとムカつく野郎にやられたからって、それを男でやるか?
倫理観とかの問題じゃねー。
頭の問題だ。こんなんが第3騎士団の副団長だなんて、世も末だぜ。
「ルーカス、もう1回したい」
「寝言は寝て言え」
「仕方ない。今日は諦めるか」
一生諦めろ! バカヤロウ!
「立てるか?」
「誰のせいだと。
メレンゲ役はディオンにしてもらうからな」
「めれんげ? 分かった」
ハンッ。メレンゲを侮るなよ。
ハンドミキサーなしで、卵白を泡立てる辛さを知るがいい。
ついでに生クリームもホイップしてもらおうかっ!
明日は筋肉痛に苦しめっ。
「くっくっく」
「……どうした、気持ち悪いぞ」
「うるへー」
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