18 / 32
第18話
しおりを挟む
僕は朋美さんとの運命を強く感じる。なんというタイミングなのか、今まさに朋美さんが通過するタイミングで僕が朋美さんに電話をかけ呼び止めた。神様は僕達を祝福してくれてるに違いない!
「朋美さん、とりあえず乗って下さい」
朋美さんが助手席に座り
「和ちゃん、ちょうど今コンビニ寄ってから帰ろうと思ったら和ちゃんの車が見えて!それで驚かそうと思って近寄ったの。そしたら電話が鳴って」
朋美さんはケラケラと笑いながら言った。
「でもね和ちゃん、もし隣に女性が乗ってたらどうしようかと思っちゃった。内心けっこうドキドキしながら近づいたんだよ!」
僕は心の中で、確かに一歩間違えれば隣に女性が居たかも知れないと、朋美さんに対しての後ろめたさで胸が締め付けられる想いだった。
「朋美さんお疲れ様!やっぱり朋美さんと一緒に居ると落ち着くんですよねぇ~。僕には朋美さん以外考えられないや!」
さっきまでの重い気持ちが晴れてついそんな言葉を口にしてしまった。その微妙にいつもと違う僕の様子を朋美さんは敏感に察知したらしく、助手席から僕の方を覗きこむ。
「和ちゃん…何かあった?」
朋美さんは少し不安気に聞いてきた。僕はまさか他の女性と会っていたなどとはとても言えず、悟られないように
「凄く淋しくておかしくなりそうだったんですよ!」
と、おどけて見せた。すぐに朋美さんは明るい表情に変わって笑っている。けど、その笑顔の奥に何かしらきっと感じ取っているのだろう。どこかぎこちない笑顔が、更に僕に罪悪感が襲ってくる。
「朋美さん…コンビニで何か買い物あるんですよね?行きましょうか?」
この場の空気を変える為に朋美さんを促す(うながす)
「そうね、今晩はコンビニのお弁当にしようかと思ってたの。でも…和ちゃん…」
朋美さんが僕の晩御飯を心配しているのだと思った。一人ならコンビニの弁当でもいいが、僕にまでそんなもので間に合わせるのが気が引けるといったところか…
「朋美さん、別に僕も一人ならコンビニ弁当とかで間に合わせることもしょっちゅうで、僕のこと気を遣ってくれてるのなら…」
「じゃあ、和ちゃんが嫌じゃなきゃ今日はお弁当にしましょ?」
「いいですよ!今日は僕の家にします?あ…でも…仕事帰りだし、ゆっくりお風呂でも入って休みたいですよね…」
「私は明日遅番だからそんなに慌てることも無いんだけど…」
「じゃあ僕ん家で!」
まだぎこちなさは残るが、お互い暗黙の了解で一緒に過ごすのが当たり前のようになってきている気がする。それが僕にとっては何よりも幸せに思えた。
コンビニで買い物したあと僕の家に二人で戻って夕飯を済ませ寛ぐ(くつろぐ)。僕は自然を装って然り気無く朋美さんの隣に座ってリモコンでテレビをつけた。朋美さんも自然に僕を受け入れ、僕の肩に頭を乗せてきた。内心まだ少しドキドキしながら朋美さんの肩に手を回し、軽く自分の方へ抱き寄せる。朋美さんの手は僕の太ももに置いてある僕の手を軽く握る。その柔らかく温かい人肌に僕は意識が遠退きそうなほど官能的な幸せを感じた。
ふと、梅田さんとのやり取りが頭を過った(よぎった)。いきなりホテルに誘ってきた。まだ大人の経験も無い僕を…いつかは…僕も朋美さんと大人の関係に発展するんだろうか…朋美さんは、これまでに何人の男(ひと)と関係を持ってきたんだろう…僕にはまだ一人として女性を知らないのに…朋美さんはいったい…
そんなことを考えて勝手にメラメラとジェラシーが僕の心を乱す。本音を言えば、朋美さんも僕だけであって欲しいという無理難題な独占欲が、朋美さんに向けて若干の苛立ちに変わる。そして、つい朋美さんに対して意地悪な質問をしてしまった。
「朋美さん…朋美さんは…いったい何人の人…と…」
それ以上僕は口にすることは出来なかったが、僕が何を云わんとしたかは朋美さんはすぐに察知したらしく
「和ちゃん…」
朋美さんは僕の方を見て少し悲しげな表情を浮かべる。きっと朋美さん自身も、僕にどんな言い訳をしていいか迷っているのではないかと、そんな風に感じた。
「和ちゃん…私は和ちゃんだけのもの…他の誰のものでも無いの…」
僕は朋美さんのその言葉に、これ以上余計な詮索(せんさく)をしてはいけないと感じた。
「朋美さん、ありがとう!その言葉が何よりも嬉しいです」
そう言って二人の間にしばらく沈黙が続いた。
過去に朋美さんにどんなことがあろうと、そんなの関係無いよな…そんなの…
そう、頭の中で理解しようとしても、やはり僕がまだ未経験なのが、やるせなさを増幅させている。僕の頭の中は少し混乱気味だった。
朋美さんと…抱き合いたい…いったい僕は何でこんなに変な妄想に囚われて(とらわれて)いるんだろ?梅田さんに変に刺激されたせいだ!
「朋美さん、とりあえず乗って下さい」
朋美さんが助手席に座り
「和ちゃん、ちょうど今コンビニ寄ってから帰ろうと思ったら和ちゃんの車が見えて!それで驚かそうと思って近寄ったの。そしたら電話が鳴って」
朋美さんはケラケラと笑いながら言った。
「でもね和ちゃん、もし隣に女性が乗ってたらどうしようかと思っちゃった。内心けっこうドキドキしながら近づいたんだよ!」
僕は心の中で、確かに一歩間違えれば隣に女性が居たかも知れないと、朋美さんに対しての後ろめたさで胸が締め付けられる想いだった。
「朋美さんお疲れ様!やっぱり朋美さんと一緒に居ると落ち着くんですよねぇ~。僕には朋美さん以外考えられないや!」
さっきまでの重い気持ちが晴れてついそんな言葉を口にしてしまった。その微妙にいつもと違う僕の様子を朋美さんは敏感に察知したらしく、助手席から僕の方を覗きこむ。
「和ちゃん…何かあった?」
朋美さんは少し不安気に聞いてきた。僕はまさか他の女性と会っていたなどとはとても言えず、悟られないように
「凄く淋しくておかしくなりそうだったんですよ!」
と、おどけて見せた。すぐに朋美さんは明るい表情に変わって笑っている。けど、その笑顔の奥に何かしらきっと感じ取っているのだろう。どこかぎこちない笑顔が、更に僕に罪悪感が襲ってくる。
「朋美さん…コンビニで何か買い物あるんですよね?行きましょうか?」
この場の空気を変える為に朋美さんを促す(うながす)
「そうね、今晩はコンビニのお弁当にしようかと思ってたの。でも…和ちゃん…」
朋美さんが僕の晩御飯を心配しているのだと思った。一人ならコンビニの弁当でもいいが、僕にまでそんなもので間に合わせるのが気が引けるといったところか…
「朋美さん、別に僕も一人ならコンビニ弁当とかで間に合わせることもしょっちゅうで、僕のこと気を遣ってくれてるのなら…」
「じゃあ、和ちゃんが嫌じゃなきゃ今日はお弁当にしましょ?」
「いいですよ!今日は僕の家にします?あ…でも…仕事帰りだし、ゆっくりお風呂でも入って休みたいですよね…」
「私は明日遅番だからそんなに慌てることも無いんだけど…」
「じゃあ僕ん家で!」
まだぎこちなさは残るが、お互い暗黙の了解で一緒に過ごすのが当たり前のようになってきている気がする。それが僕にとっては何よりも幸せに思えた。
コンビニで買い物したあと僕の家に二人で戻って夕飯を済ませ寛ぐ(くつろぐ)。僕は自然を装って然り気無く朋美さんの隣に座ってリモコンでテレビをつけた。朋美さんも自然に僕を受け入れ、僕の肩に頭を乗せてきた。内心まだ少しドキドキしながら朋美さんの肩に手を回し、軽く自分の方へ抱き寄せる。朋美さんの手は僕の太ももに置いてある僕の手を軽く握る。その柔らかく温かい人肌に僕は意識が遠退きそうなほど官能的な幸せを感じた。
ふと、梅田さんとのやり取りが頭を過った(よぎった)。いきなりホテルに誘ってきた。まだ大人の経験も無い僕を…いつかは…僕も朋美さんと大人の関係に発展するんだろうか…朋美さんは、これまでに何人の男(ひと)と関係を持ってきたんだろう…僕にはまだ一人として女性を知らないのに…朋美さんはいったい…
そんなことを考えて勝手にメラメラとジェラシーが僕の心を乱す。本音を言えば、朋美さんも僕だけであって欲しいという無理難題な独占欲が、朋美さんに向けて若干の苛立ちに変わる。そして、つい朋美さんに対して意地悪な質問をしてしまった。
「朋美さん…朋美さんは…いったい何人の人…と…」
それ以上僕は口にすることは出来なかったが、僕が何を云わんとしたかは朋美さんはすぐに察知したらしく
「和ちゃん…」
朋美さんは僕の方を見て少し悲しげな表情を浮かべる。きっと朋美さん自身も、僕にどんな言い訳をしていいか迷っているのではないかと、そんな風に感じた。
「和ちゃん…私は和ちゃんだけのもの…他の誰のものでも無いの…」
僕は朋美さんのその言葉に、これ以上余計な詮索(せんさく)をしてはいけないと感じた。
「朋美さん、ありがとう!その言葉が何よりも嬉しいです」
そう言って二人の間にしばらく沈黙が続いた。
過去に朋美さんにどんなことがあろうと、そんなの関係無いよな…そんなの…
そう、頭の中で理解しようとしても、やはり僕がまだ未経験なのが、やるせなさを増幅させている。僕の頭の中は少し混乱気味だった。
朋美さんと…抱き合いたい…いったい僕は何でこんなに変な妄想に囚われて(とらわれて)いるんだろ?梅田さんに変に刺激されたせいだ!
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ちょっと訳ありご当地アイドルな私とさらに訳あり過ぎなアイドルヲタな俺の話
麻木香豆
恋愛
引きこもりなトクさんはとある日、地方アイドルを好きになる。
そしてそんなアイドルも少し訳ありだけど彼女の夢のために努力している!
そんな二人が交互に繰り広げるラブコメ。
以前公開していた作品を改題しました
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる