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第71話 バンド再び……
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シルバーの高級車はキラリの自宅目の前に横付けされ、キラリは車を降りてペコリと頭を下げ礼を言って家の中に入った。
キラリがうつむき加減にリビングを覗くと、そこには薫の姿があった。
薫はキラリの気配を感じ振り返って笑顔で
薫「キラリお帰り~!」
キラリ「ただいま……」
薫「今日はどうだった?いきなりお迎えが来たから驚いたでしょう!」
キラリ「母ちゃん知ってたんだ……」
薫「まぁね。普通は人様の娘を勝手に連れてったりしないでしょ!ちゃんと先方から連絡来てたわよ」
キラリ「はぁ~疲れた……」
キラリは学生鞄を床に放り投げ、グッタリとリビングテーブルの椅子に腰を掛けテーブルに向かって伏した。
薫はそれを見て何も言わずに晩御飯の支度に戻る。
キラリ「ねぇ母ちゃん……今ごろ翼は何してるのかなぁ……」
薫「そうだねぇ……きっとキラリが頑張ってるのと同じように翼も社長になる為の勉強してるんじゃないかな?」
キラリ「………」
~翼の会社~
翼の父が会長室の革張りのソファに腰を下ろし秘書に尋ねた。
翼の父「それで、翼の方はどうかね?」
秘書「はい、とても頑張っていらっしゃるようです。亡き颯(はやて)様にも劣らぬ熱心さで、まるで乾いた砂が水を吸うようにどんどん吸収されるとのことで、その集中力は目を見張るほどだと伺っております」
翼の父はその報告を受けて満足気な表情で頷いた。
翼の父「翼もやっとその気になってくれたようだ。親の私が言うのも何だが、翼も出来は悪い方では無いんだよ。あいつさえその気になれば我が社の経営者としての資格は十分に備え得る素質はある。これも一重にあのお嬢さんのお陰だな……」
~同会社の別室~
翼は役員の指導のもと、会社の経営知識に関する勉強に熱心に取り組んでいた。
コンコン!
部屋のドアを軽くノックする音が聞こえ役員がドアを開ける。
ガチャ……
そこには翼の姉、美麗が立っていた。
役員「これは美麗お嬢様、どうぞお入り下さい」
美麗は役員に一礼して中へ入り翼の側へ座った。
美麗「翼頑張ってるみたいね!」
翼「あぁ……まぁね……」
美麗「キラリちゃんの為ならこのぐらい楽勝か!」
翼「………姉さん、親父は本当にキラリのことを認めてくれる気でいるのかな?」
美麗「どうしたの?」
翼「この前ももう少しでキラリと会えるチャンスがあったのに会わせてもらえなかったんだ……少しだけでいい……ほんの少しでも会いたかった……」
そう言って翼は虚しくなりうつ向いてしまった。
美麗「さすがに約束は守ると思うわよ。あとはあの娘と翼次第ってことね。翼がお父さんの求める水準に達して、更にあの娘が斎藤家に相応しい、翼の伴侶として相応しいまでに成長出来たらきっとお父さんはあの娘を迎え入れる気はあると思うわ!」
翼「あのさ、バンド仲間に連絡取りたいんだけど……」
ちょうどそこへ翼の父がドアを開けて入ってきた。
ガチャ…
美麗「あらお父さんお疲れ様です」
翼の父「なんだ、お前も来てたのか……」
翼「親父……この前話した件だけど……」
翼の父「ん?何だったかな?」
翼「キラリと会わせてもらう件……」
翼の父「そのことなら二人で会うのは聞くことは出来ん!」
翼「そうじゃ無くて、だからバンド仲間に……」
翼の父「翼、今は凄く大事な時期だ!もう少し落ち着いてからにしてくれ!我が社の命運はお前の……」
そこまで言いかけた時に美麗が会話に割って入った。
美麗「お父さん!翼はちゃんと理解してるわ!きっとお父さんの満足の行く結果を必ず出すはずよ!それは全てあの娘を想う一心でのことなの!翼は必死に頑張ってるわ!だからせめてたった一つだけ翼の願いを聞いて上げて下さい!それがお父さんにとっても絶対にプラスになるはず!」
翼の父は顎に手を当て少し考えてから
翼の父「………わかった、お前の好きにしろ!但し、それはそのとき一度切りにしてくれ!今の集中力が切れてしまうと元も子もないからな」
翼「わかってる。だからそのことでバンド仲間と連絡を取りたい!」
翼の父は黙ってうなずき部屋を出ていった。
~氷室悠陽~
悠陽は久々の翼からの連絡に興奮してすぐに凜花に電話をかけていた。
悠陽「というわけでさぁ、やっと翼と連絡取れたんだよ!」
凜花「良かったぁ!キラリも驚くだろうね!今のキラリを見るのは凄く辛いの……あんなに明るかったキラリが心ここにあらずって感じで、いつも凄く淋しそうな目をしてて……」
悠陽「そうだろうね……でもそれは翼だってきっと同じ想いだと思うよ。翼が自分の自由を犠牲にしてまでキラリちゃんのために会社を継ごうとするなんて……」
凜花「キラリも社長夫人になるのね……なんだかシンデレラストーリーみたい!」
悠陽がクスクス笑いながら
悠陽「それでさ、実は……やっぱり言えない」
凜花「なになに?気になるでしょ!」
悠陽「これ絶対内緒ね!実はさ……」
凜花「えぇ!?本当!?すご~い!?そんなのキラリじゃなくても私が泣いちゃう!」
キラリがうつむき加減にリビングを覗くと、そこには薫の姿があった。
薫はキラリの気配を感じ振り返って笑顔で
薫「キラリお帰り~!」
キラリ「ただいま……」
薫「今日はどうだった?いきなりお迎えが来たから驚いたでしょう!」
キラリ「母ちゃん知ってたんだ……」
薫「まぁね。普通は人様の娘を勝手に連れてったりしないでしょ!ちゃんと先方から連絡来てたわよ」
キラリ「はぁ~疲れた……」
キラリは学生鞄を床に放り投げ、グッタリとリビングテーブルの椅子に腰を掛けテーブルに向かって伏した。
薫はそれを見て何も言わずに晩御飯の支度に戻る。
キラリ「ねぇ母ちゃん……今ごろ翼は何してるのかなぁ……」
薫「そうだねぇ……きっとキラリが頑張ってるのと同じように翼も社長になる為の勉強してるんじゃないかな?」
キラリ「………」
~翼の会社~
翼の父が会長室の革張りのソファに腰を下ろし秘書に尋ねた。
翼の父「それで、翼の方はどうかね?」
秘書「はい、とても頑張っていらっしゃるようです。亡き颯(はやて)様にも劣らぬ熱心さで、まるで乾いた砂が水を吸うようにどんどん吸収されるとのことで、その集中力は目を見張るほどだと伺っております」
翼の父はその報告を受けて満足気な表情で頷いた。
翼の父「翼もやっとその気になってくれたようだ。親の私が言うのも何だが、翼も出来は悪い方では無いんだよ。あいつさえその気になれば我が社の経営者としての資格は十分に備え得る素質はある。これも一重にあのお嬢さんのお陰だな……」
~同会社の別室~
翼は役員の指導のもと、会社の経営知識に関する勉強に熱心に取り組んでいた。
コンコン!
部屋のドアを軽くノックする音が聞こえ役員がドアを開ける。
ガチャ……
そこには翼の姉、美麗が立っていた。
役員「これは美麗お嬢様、どうぞお入り下さい」
美麗は役員に一礼して中へ入り翼の側へ座った。
美麗「翼頑張ってるみたいね!」
翼「あぁ……まぁね……」
美麗「キラリちゃんの為ならこのぐらい楽勝か!」
翼「………姉さん、親父は本当にキラリのことを認めてくれる気でいるのかな?」
美麗「どうしたの?」
翼「この前ももう少しでキラリと会えるチャンスがあったのに会わせてもらえなかったんだ……少しだけでいい……ほんの少しでも会いたかった……」
そう言って翼は虚しくなりうつ向いてしまった。
美麗「さすがに約束は守ると思うわよ。あとはあの娘と翼次第ってことね。翼がお父さんの求める水準に達して、更にあの娘が斎藤家に相応しい、翼の伴侶として相応しいまでに成長出来たらきっとお父さんはあの娘を迎え入れる気はあると思うわ!」
翼「あのさ、バンド仲間に連絡取りたいんだけど……」
ちょうどそこへ翼の父がドアを開けて入ってきた。
ガチャ…
美麗「あらお父さんお疲れ様です」
翼の父「なんだ、お前も来てたのか……」
翼「親父……この前話した件だけど……」
翼の父「ん?何だったかな?」
翼「キラリと会わせてもらう件……」
翼の父「そのことなら二人で会うのは聞くことは出来ん!」
翼「そうじゃ無くて、だからバンド仲間に……」
翼の父「翼、今は凄く大事な時期だ!もう少し落ち着いてからにしてくれ!我が社の命運はお前の……」
そこまで言いかけた時に美麗が会話に割って入った。
美麗「お父さん!翼はちゃんと理解してるわ!きっとお父さんの満足の行く結果を必ず出すはずよ!それは全てあの娘を想う一心でのことなの!翼は必死に頑張ってるわ!だからせめてたった一つだけ翼の願いを聞いて上げて下さい!それがお父さんにとっても絶対にプラスになるはず!」
翼の父は顎に手を当て少し考えてから
翼の父「………わかった、お前の好きにしろ!但し、それはそのとき一度切りにしてくれ!今の集中力が切れてしまうと元も子もないからな」
翼「わかってる。だからそのことでバンド仲間と連絡を取りたい!」
翼の父は黙ってうなずき部屋を出ていった。
~氷室悠陽~
悠陽は久々の翼からの連絡に興奮してすぐに凜花に電話をかけていた。
悠陽「というわけでさぁ、やっと翼と連絡取れたんだよ!」
凜花「良かったぁ!キラリも驚くだろうね!今のキラリを見るのは凄く辛いの……あんなに明るかったキラリが心ここにあらずって感じで、いつも凄く淋しそうな目をしてて……」
悠陽「そうだろうね……でもそれは翼だってきっと同じ想いだと思うよ。翼が自分の自由を犠牲にしてまでキラリちゃんのために会社を継ごうとするなんて……」
凜花「キラリも社長夫人になるのね……なんだかシンデレラストーリーみたい!」
悠陽がクスクス笑いながら
悠陽「それでさ、実は……やっぱり言えない」
凜花「なになに?気になるでしょ!」
悠陽「これ絶対内緒ね!実はさ……」
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