キラリの恋は晴れのち晴れ!

CPM

文字の大きさ
上 下
67 / 80

第66話 交渉成立

しおりを挟む
翼は居てもたってもいられないという不安な表情でずっとその場から動かずに座っていた。

キラリ……済まない……こんな肝心な時に俺はお前のことを守ってやれなくて……

もしお前の身に何かあったら……俺は一生後悔しか残らないよ……
あともう少しだけ俺に体力が残っていたなら……
きっとお前を守ってやれただろうに……
頼む……無事に戻って来てくれ……

そこへ猛スピードで黒塗りの高級車が戻ってきた。
黒服の男達が急いで車から降りてきて

黒服A「翼様!遅くなり申し訳ありません!」

慌てて翼に駆け寄る。

翼「キラリは!?キラリはどこですか!?キラリは無事なんですか!?」

黒服の男達はお互い顔を見合わせて

黒服A「心配ありません。お嬢様は自分で自分を護るだけの力がございました。一応ご自宅にお届けする意思は伝えたのですが、警戒されてしまいまして……」

翼「それで!?それでキラリを置いてきたんですか!?」

黒服の男達は目を伏せて気まずそうに無言で立っている。

翼「キラリに会いたいんだ!!!会わせて下さい!!!今回のような事がまたキラリを襲ったら、いったい誰があいつを護ってやるんです!!!俺がキラリを護るんだ!!!お願いです!キラリに会わせて下さい!!!」

翼が必死に懇願するも

黒服A「翼様……申し訳ありません……会長から今は絶対にお嬢様とは接触させてはならないと仰せつかっておりまして……」

翼「なぜ!?なぜです!?」

黒服の男達はうつ向いて黙っている。

翼「もし……もしキラリに何かあったら、俺は斎藤家を捨てる覚悟だ!どうしても会わせてもらえないのなら今すぐに親父にキラリの護衛を付けるよう頼んで下さい!

いや……俺が直接親父に談判します!親父の所へ連れてって下さい!!!」

黒服B「かしこまりました。それでは戻りましょう」

そう言って男は車の後ろ側のドアを開けて翼を車に乗せ、本社ビルに向かった。


~本社ビル~

翼は会長室に通され、しばらく革張りのソファでイライラしながら座っていた。

〝ガチャ〟

不意にドアノブが回りドアが開いて、翼の父がゆっくりと入ってきた。
翼は立ち上がり、詰め寄るように父に

翼「親父はあの時言っただろ!キラリには誰も手を出させないって!!!それが何なんだよ!いきなりキラリは拉致されて、危うく襲われるところだったじゃないか!!!親父が裏で手を回したことはわかってんだよ!親父が約束を反故(ほご)にするんなら、俺だってこの斎藤家とは絶縁する覚悟だ!」

翼が目をむいて怒るのを見て、父はなだめるように

翼の父「まあ落ち着け!今回のことは確かに落ち度はこちらにある。これから彼女には護衛を付けるし、この件が今後二度と起こらないように俺の方でちゃんと手を打っておく」

翼「この間もそう言ってたじゃないか!口約束は信用出来ない!キラリは俺が護る!キラリを俺の側に置いてくれ!」

翼の父「それは……出来ない!」

翼「何故!?何でそんなにキラリに会わせてくれないんだよ!?

翼の父は深くため息を付いてから口を開く。

翼の父「いいか翼……今お前のやることはただ一つだ……将来我が社の経営はお前に委ねることになる。だから、今は先ず大学を卒業して、がむしゃらに経営に対して勉強することなんだ!この大事な時に女に気をとられて片手間に仕事をされては困るのだよ」

翼「そんなことはわかってるさ!でも、その前にキラリの安全確保がなされないのなら、俺はその話を受ける気は更々ないからな!!!」

翼の父「心配するな。お嬢さんのことならもう既に問題は解決している。だからお前は家に帰ってお前の仕事をしろ!」

翼「はぁ!?何がどう解決してるんだよ?」

翼の父「キラリさんには護衛を回した。もう心配ない!」

翼「その証拠は!?今日だってもし俺が目撃しなかったら手遅れになる所だったんだぞ!とにかくキラリに……」

翼の父は、翼の言葉を遮って

翼の父「今はキラリさんのことは忘れろ!!!目の前の仕事に集中するんだ!それがお前とキラリさんにとって最短の道なんだ!」

翼「もういい!!!俺はこの会社を継がない!!!俺は好き勝手にやらせてもらう!!!」

そう言って部屋を飛び出そうとした時、ドアが勝手に開き黒服の男達が入り口に立ち塞がった。

翼は振り返り、鬼の形相で父をにらむ。

翼「一生俺を幽閉するつもりか?それでも俺はこの会社を継がないからな!」

翼の父「フゥ~……わかった……一度だけ会う機会をやろう……しかし、直接二人きりで会うのは許さん!二人でどこかに逃げられては困るからな」

翼はしばらく黙っている。どこまで行ってもこれ以上父親が折れる気は無いことも翼はわかっている。

翼「わかった……じゃあ今度バンドのメンバーとライヴをやりたい。そこにあいつを招待してやりたい!」

翼の父は無言でうなずく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

処理中です...