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第66話 交渉成立
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翼は居てもたってもいられないという不安な表情でずっとその場から動かずに座っていた。
キラリ……済まない……こんな肝心な時に俺はお前のことを守ってやれなくて……
もしお前の身に何かあったら……俺は一生後悔しか残らないよ……
あともう少しだけ俺に体力が残っていたなら……
きっとお前を守ってやれただろうに……
頼む……無事に戻って来てくれ……
そこへ猛スピードで黒塗りの高級車が戻ってきた。
黒服の男達が急いで車から降りてきて
黒服A「翼様!遅くなり申し訳ありません!」
慌てて翼に駆け寄る。
翼「キラリは!?キラリはどこですか!?キラリは無事なんですか!?」
黒服の男達はお互い顔を見合わせて
黒服A「心配ありません。お嬢様は自分で自分を護るだけの力がございました。一応ご自宅にお届けする意思は伝えたのですが、警戒されてしまいまして……」
翼「それで!?それでキラリを置いてきたんですか!?」
黒服の男達は目を伏せて気まずそうに無言で立っている。
翼「キラリに会いたいんだ!!!会わせて下さい!!!今回のような事がまたキラリを襲ったら、いったい誰があいつを護ってやるんです!!!俺がキラリを護るんだ!!!お願いです!キラリに会わせて下さい!!!」
翼が必死に懇願するも
黒服A「翼様……申し訳ありません……会長から今は絶対にお嬢様とは接触させてはならないと仰せつかっておりまして……」
翼「なぜ!?なぜです!?」
黒服の男達はうつ向いて黙っている。
翼「もし……もしキラリに何かあったら、俺は斎藤家を捨てる覚悟だ!どうしても会わせてもらえないのなら今すぐに親父にキラリの護衛を付けるよう頼んで下さい!
いや……俺が直接親父に談判します!親父の所へ連れてって下さい!!!」
黒服B「かしこまりました。それでは戻りましょう」
そう言って男は車の後ろ側のドアを開けて翼を車に乗せ、本社ビルに向かった。
~本社ビル~
翼は会長室に通され、しばらく革張りのソファでイライラしながら座っていた。
〝ガチャ〟
不意にドアノブが回りドアが開いて、翼の父がゆっくりと入ってきた。
翼は立ち上がり、詰め寄るように父に
翼「親父はあの時言っただろ!キラリには誰も手を出させないって!!!それが何なんだよ!いきなりキラリは拉致されて、危うく襲われるところだったじゃないか!!!親父が裏で手を回したことはわかってんだよ!親父が約束を反故(ほご)にするんなら、俺だってこの斎藤家とは絶縁する覚悟だ!」
翼が目をむいて怒るのを見て、父はなだめるように
翼の父「まあ落ち着け!今回のことは確かに落ち度はこちらにある。これから彼女には護衛を付けるし、この件が今後二度と起こらないように俺の方でちゃんと手を打っておく」
翼「この間もそう言ってたじゃないか!口約束は信用出来ない!キラリは俺が護る!キラリを俺の側に置いてくれ!」
翼の父「それは……出来ない!」
翼「何故!?何でそんなにキラリに会わせてくれないんだよ!?
翼の父は深くため息を付いてから口を開く。
翼の父「いいか翼……今お前のやることはただ一つだ……将来我が社の経営はお前に委ねることになる。だから、今は先ず大学を卒業して、がむしゃらに経営に対して勉強することなんだ!この大事な時に女に気をとられて片手間に仕事をされては困るのだよ」
翼「そんなことはわかってるさ!でも、その前にキラリの安全確保がなされないのなら、俺はその話を受ける気は更々ないからな!!!」
翼の父「心配するな。お嬢さんのことならもう既に問題は解決している。だからお前は家に帰ってお前の仕事をしろ!」
翼「はぁ!?何がどう解決してるんだよ?」
翼の父「キラリさんには護衛を回した。もう心配ない!」
翼「その証拠は!?今日だってもし俺が目撃しなかったら手遅れになる所だったんだぞ!とにかくキラリに……」
翼の父は、翼の言葉を遮って
翼の父「今はキラリさんのことは忘れろ!!!目の前の仕事に集中するんだ!それがお前とキラリさんにとって最短の道なんだ!」
翼「もういい!!!俺はこの会社を継がない!!!俺は好き勝手にやらせてもらう!!!」
そう言って部屋を飛び出そうとした時、ドアが勝手に開き黒服の男達が入り口に立ち塞がった。
翼は振り返り、鬼の形相で父をにらむ。
翼「一生俺を幽閉するつもりか?それでも俺はこの会社を継がないからな!」
翼の父「フゥ~……わかった……一度だけ会う機会をやろう……しかし、直接二人きりで会うのは許さん!二人でどこかに逃げられては困るからな」
翼はしばらく黙っている。どこまで行ってもこれ以上父親が折れる気は無いことも翼はわかっている。
翼「わかった……じゃあ今度バンドのメンバーとライヴをやりたい。そこにあいつを招待してやりたい!」
翼の父は無言でうなずく。
キラリ……済まない……こんな肝心な時に俺はお前のことを守ってやれなくて……
もしお前の身に何かあったら……俺は一生後悔しか残らないよ……
あともう少しだけ俺に体力が残っていたなら……
きっとお前を守ってやれただろうに……
頼む……無事に戻って来てくれ……
そこへ猛スピードで黒塗りの高級車が戻ってきた。
黒服の男達が急いで車から降りてきて
黒服A「翼様!遅くなり申し訳ありません!」
慌てて翼に駆け寄る。
翼「キラリは!?キラリはどこですか!?キラリは無事なんですか!?」
黒服の男達はお互い顔を見合わせて
黒服A「心配ありません。お嬢様は自分で自分を護るだけの力がございました。一応ご自宅にお届けする意思は伝えたのですが、警戒されてしまいまして……」
翼「それで!?それでキラリを置いてきたんですか!?」
黒服の男達は目を伏せて気まずそうに無言で立っている。
翼「キラリに会いたいんだ!!!会わせて下さい!!!今回のような事がまたキラリを襲ったら、いったい誰があいつを護ってやるんです!!!俺がキラリを護るんだ!!!お願いです!キラリに会わせて下さい!!!」
翼が必死に懇願するも
黒服A「翼様……申し訳ありません……会長から今は絶対にお嬢様とは接触させてはならないと仰せつかっておりまして……」
翼「なぜ!?なぜです!?」
黒服の男達はうつ向いて黙っている。
翼「もし……もしキラリに何かあったら、俺は斎藤家を捨てる覚悟だ!どうしても会わせてもらえないのなら今すぐに親父にキラリの護衛を付けるよう頼んで下さい!
いや……俺が直接親父に談判します!親父の所へ連れてって下さい!!!」
黒服B「かしこまりました。それでは戻りましょう」
そう言って男は車の後ろ側のドアを開けて翼を車に乗せ、本社ビルに向かった。
~本社ビル~
翼は会長室に通され、しばらく革張りのソファでイライラしながら座っていた。
〝ガチャ〟
不意にドアノブが回りドアが開いて、翼の父がゆっくりと入ってきた。
翼は立ち上がり、詰め寄るように父に
翼「親父はあの時言っただろ!キラリには誰も手を出させないって!!!それが何なんだよ!いきなりキラリは拉致されて、危うく襲われるところだったじゃないか!!!親父が裏で手を回したことはわかってんだよ!親父が約束を反故(ほご)にするんなら、俺だってこの斎藤家とは絶縁する覚悟だ!」
翼が目をむいて怒るのを見て、父はなだめるように
翼の父「まあ落ち着け!今回のことは確かに落ち度はこちらにある。これから彼女には護衛を付けるし、この件が今後二度と起こらないように俺の方でちゃんと手を打っておく」
翼「この間もそう言ってたじゃないか!口約束は信用出来ない!キラリは俺が護る!キラリを俺の側に置いてくれ!」
翼の父「それは……出来ない!」
翼「何故!?何でそんなにキラリに会わせてくれないんだよ!?
翼の父は深くため息を付いてから口を開く。
翼の父「いいか翼……今お前のやることはただ一つだ……将来我が社の経営はお前に委ねることになる。だから、今は先ず大学を卒業して、がむしゃらに経営に対して勉強することなんだ!この大事な時に女に気をとられて片手間に仕事をされては困るのだよ」
翼「そんなことはわかってるさ!でも、その前にキラリの安全確保がなされないのなら、俺はその話を受ける気は更々ないからな!!!」
翼の父「心配するな。お嬢さんのことならもう既に問題は解決している。だからお前は家に帰ってお前の仕事をしろ!」
翼「はぁ!?何がどう解決してるんだよ?」
翼の父「キラリさんには護衛を回した。もう心配ない!」
翼「その証拠は!?今日だってもし俺が目撃しなかったら手遅れになる所だったんだぞ!とにかくキラリに……」
翼の父は、翼の言葉を遮って
翼の父「今はキラリさんのことは忘れろ!!!目の前の仕事に集中するんだ!それがお前とキラリさんにとって最短の道なんだ!」
翼「もういい!!!俺はこの会社を継がない!!!俺は好き勝手にやらせてもらう!!!」
そう言って部屋を飛び出そうとした時、ドアが勝手に開き黒服の男達が入り口に立ち塞がった。
翼は振り返り、鬼の形相で父をにらむ。
翼「一生俺を幽閉するつもりか?それでも俺はこの会社を継がないからな!」
翼の父「フゥ~……わかった……一度だけ会う機会をやろう……しかし、直接二人きりで会うのは許さん!二人でどこかに逃げられては困るからな」
翼はしばらく黙っている。どこまで行ってもこれ以上父親が折れる気は無いことも翼はわかっている。
翼「わかった……じゃあ今度バンドのメンバーとライヴをやりたい。そこにあいつを招待してやりたい!」
翼の父は無言でうなずく。
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