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第65話 またしても……
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黒服A「止めろ~~~!!!」
黒服の男が大声でそう叫んだと同時に、キラリは刃物を振りかぶった男の勢いをそのまま利用して、関節を極めながら男をフワッと宙に舞わせ、そして頭から落下させる芸当を見せた。
〝ズドォーン〟
勢いよく頭を強打した若者が
〝ぐあぁ……〟
と絶命したような声を発したあと、グッタリと動かなくなり気絶してしまった。
それを遠目に見ていた黒服の男達は、今目に映っている光景を受け入れるにはあまりにも現実離れしていて、ドラマや映画の撮影現場かと錯覚してしまう。
若者達は一瞬臆したが、キラリを囲うように立っていた若者が怒声を浴びせる。
若者B「お……お前……ぶっ殺すぞ!!!」
若者は自分を鼓舞し押し出すように発した言葉も、キラリの全く動じない態度に逆に気圧される。
キラリ「はぁ!?ぶっ殺す!?誰を!?」
キラリは若者に見下すような視線を浴びせて鼻で笑う。
そしてキラリがゆっくり若者達に近付くと、逆に若者達が後退(あとずさ)り慌てて振り返って車に乗り込む。
キラリがその間抜けな若者達の背中に
キラリ「おい!この弱っちい仲間置いてく気かぁ!?」
その声が聞こえたか聞こえなかったのか、若者達は気絶している仲間を置き去りにしてタイヤをスピンさせながら走り去ってしまった。
キラリ「ったく……何なんだコイツらは……」
キラリは自分の制服のボタンが無くなって、ブラウスもはだけて自分の白い胸元が露出しているのを見て
キラリ「あ~あ……こんなにしてくれやがって……この状況を母ちゃんにどうやって説明すりゃ良いんだよ……」
キラリは薫にどんな言い訳をしようか頭を悩ます。
一方黒服の男達は、この事件が意外な方向で解決したことに信じられない思いだったが、とりあえずキラリを自宅近くまで送ろうと判断した。
黒服の男達はキラリに近付き
黒服A「お嬢さん、翼様の命によりお嬢さんをご自宅近くまで護衛致しますので、どうぞ車にお乗り下さい」
キラリは見ず知らずのいかにも怪しそうな男達に警戒する。
さっきの無謀な若者に続いて見たことの無い黒服の怪しい男達……いったい今何が起きているのかと頭が混乱してしまう。
黒服B「キラリさん、ご心配なさらず。我々はキラリさんのことを存じております。我々は翼様の護衛を仰せつかっているもので、決して怪しいものではありません。むしろ今ここでお嬢さんを置き去りにしてしまっては、我々が翼様に叱られてしまいますのでどうかご同行願います」
キラリ「あんた達は何者!?素人じゃない……」
キラリは無意識に後ずさる。それは正に動物的な直感とも言うべきか、この黒服の男達が相当鍛え抜かれ訓練された雰囲気を醸し出していることを感じ取って、たとえ翼の名前を出されても簡単に男達を受け入れる勇気がない。
黒服A「キラリさんこそ、相当な護身術を身に付けられているご様子……一般の合気道では無い技をお持ちのようですが、いったいどこで教わったのですか?」
キラリ「………」
キラリは警戒心を解かない。
もし自分がこの男達と対峙してねじ伏せる技量があったなら簡単に話も聞いたであろうが、万が一キラリにとって味方では無かった最悪の状況を想定してしまう。それほどまでにこの黒服の男達は戦闘のプロだということだ。
男達はキラリが自分達に警戒しているのを感じて、お互い目を合わせてこれ以上は時間の無駄だと判断し
黒服B「わかりました。では私達は翼様の元へ戻りますのでお気をつけてお帰り下さい」
そう言って振り返り立ち去ろうとした。
キラリ「ちょっと待って!!!あの……本当に翼は居るの?翼に会えるの?」
キラリは前回見知らぬ男に淡い期待を裏切られた悲しい想いをして、裏切られるショックを回避する防衛本能が働き過剰に期待することを恐れはしたが、それでも翼を求める心情が上回る。
黒服の男達は立ち止まって振り返り
黒服A「申し訳ありません、それは出来ないのです……」
黒服の男が眉をしかめてそう言った。
それは、そうして上げたくても出来ないという申し訳なさがそういう表情を作らせていた。
キラリ「どうして!?近くに来てるんでしょ!?どうして合わせてくれないの?」
キラリは半分泣きそうな顔で訴える。
黒服A「キラリさん……申し訳ありませんが、我々も早く翼様の元へ戻らなければならないので……我々の最重要任務は翼様の護衛なのです。それでは……」
黒服の男達はくるりときびすを返して立ち去っていく。
その男達の背中に向かって
キラリ「翼に会わせて!!!お願い!!!もうこれ以上翼の居ない世界では生きていけないの!!!少しで良いから翼に会わせてよ!!!」
キラリの声は哀しみに打ちひしがれた切なさをまとい、男達の胸をえぐる。
一瞬立ち止まったものの、男達は振り返ることなく立ち去って行った。
キラリはその場に泣き崩れ、アスファルトにポタポタと滴が落ちる。
キラリ「つばさ~………どうして?どうしていつもこうなの……すぐ近くに居るんでしょ?どうして……もう限界なんだよ……」
黒服の男が大声でそう叫んだと同時に、キラリは刃物を振りかぶった男の勢いをそのまま利用して、関節を極めながら男をフワッと宙に舞わせ、そして頭から落下させる芸当を見せた。
〝ズドォーン〟
勢いよく頭を強打した若者が
〝ぐあぁ……〟
と絶命したような声を発したあと、グッタリと動かなくなり気絶してしまった。
それを遠目に見ていた黒服の男達は、今目に映っている光景を受け入れるにはあまりにも現実離れしていて、ドラマや映画の撮影現場かと錯覚してしまう。
若者達は一瞬臆したが、キラリを囲うように立っていた若者が怒声を浴びせる。
若者B「お……お前……ぶっ殺すぞ!!!」
若者は自分を鼓舞し押し出すように発した言葉も、キラリの全く動じない態度に逆に気圧される。
キラリ「はぁ!?ぶっ殺す!?誰を!?」
キラリは若者に見下すような視線を浴びせて鼻で笑う。
そしてキラリがゆっくり若者達に近付くと、逆に若者達が後退(あとずさ)り慌てて振り返って車に乗り込む。
キラリがその間抜けな若者達の背中に
キラリ「おい!この弱っちい仲間置いてく気かぁ!?」
その声が聞こえたか聞こえなかったのか、若者達は気絶している仲間を置き去りにしてタイヤをスピンさせながら走り去ってしまった。
キラリ「ったく……何なんだコイツらは……」
キラリは自分の制服のボタンが無くなって、ブラウスもはだけて自分の白い胸元が露出しているのを見て
キラリ「あ~あ……こんなにしてくれやがって……この状況を母ちゃんにどうやって説明すりゃ良いんだよ……」
キラリは薫にどんな言い訳をしようか頭を悩ます。
一方黒服の男達は、この事件が意外な方向で解決したことに信じられない思いだったが、とりあえずキラリを自宅近くまで送ろうと判断した。
黒服の男達はキラリに近付き
黒服A「お嬢さん、翼様の命によりお嬢さんをご自宅近くまで護衛致しますので、どうぞ車にお乗り下さい」
キラリは見ず知らずのいかにも怪しそうな男達に警戒する。
さっきの無謀な若者に続いて見たことの無い黒服の怪しい男達……いったい今何が起きているのかと頭が混乱してしまう。
黒服B「キラリさん、ご心配なさらず。我々はキラリさんのことを存じております。我々は翼様の護衛を仰せつかっているもので、決して怪しいものではありません。むしろ今ここでお嬢さんを置き去りにしてしまっては、我々が翼様に叱られてしまいますのでどうかご同行願います」
キラリ「あんた達は何者!?素人じゃない……」
キラリは無意識に後ずさる。それは正に動物的な直感とも言うべきか、この黒服の男達が相当鍛え抜かれ訓練された雰囲気を醸し出していることを感じ取って、たとえ翼の名前を出されても簡単に男達を受け入れる勇気がない。
黒服A「キラリさんこそ、相当な護身術を身に付けられているご様子……一般の合気道では無い技をお持ちのようですが、いったいどこで教わったのですか?」
キラリ「………」
キラリは警戒心を解かない。
もし自分がこの男達と対峙してねじ伏せる技量があったなら簡単に話も聞いたであろうが、万が一キラリにとって味方では無かった最悪の状況を想定してしまう。それほどまでにこの黒服の男達は戦闘のプロだということだ。
男達はキラリが自分達に警戒しているのを感じて、お互い目を合わせてこれ以上は時間の無駄だと判断し
黒服B「わかりました。では私達は翼様の元へ戻りますのでお気をつけてお帰り下さい」
そう言って振り返り立ち去ろうとした。
キラリ「ちょっと待って!!!あの……本当に翼は居るの?翼に会えるの?」
キラリは前回見知らぬ男に淡い期待を裏切られた悲しい想いをして、裏切られるショックを回避する防衛本能が働き過剰に期待することを恐れはしたが、それでも翼を求める心情が上回る。
黒服の男達は立ち止まって振り返り
黒服A「申し訳ありません、それは出来ないのです……」
黒服の男が眉をしかめてそう言った。
それは、そうして上げたくても出来ないという申し訳なさがそういう表情を作らせていた。
キラリ「どうして!?近くに来てるんでしょ!?どうして合わせてくれないの?」
キラリは半分泣きそうな顔で訴える。
黒服A「キラリさん……申し訳ありませんが、我々も早く翼様の元へ戻らなければならないので……我々の最重要任務は翼様の護衛なのです。それでは……」
黒服の男達はくるりときびすを返して立ち去っていく。
その男達の背中に向かって
キラリ「翼に会わせて!!!お願い!!!もうこれ以上翼の居ない世界では生きていけないの!!!少しで良いから翼に会わせてよ!!!」
キラリの声は哀しみに打ちひしがれた切なさをまとい、男達の胸をえぐる。
一瞬立ち止まったものの、男達は振り返ることなく立ち去って行った。
キラリはその場に泣き崩れ、アスファルトにポタポタと滴が落ちる。
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